やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第4 版に寄せて
 好評をいただいている『嚥下障害ポケットマニュアル』の第4 版を出版する運びとなりました.初版の刊行が2001 年ですから18 年の歳月が流れました.
 第3 版を出版したのはチームリーダーである藤島が2008 年に聖隷三方原病院から浜松市リハビリテーション病院に異動した直後の2011 年でした.当時,浜松市リハビリテーション病院はまだ嚥下診療の体制も整わず,スタッフも不足していました.今回はこれまでの内容を踏襲しつつも,浜松市リハビリテーション病院の診療を中心においた内容で,執筆者を大幅に変更しています.最新の情報を取り入れるとともに,文献を見やすい形に整えるなどの工夫を加えてあり,第3 版までを読まれた方にもかなり新鮮な内容になっていると思います.
 特に,最近進歩が著しく注目されている手術,また現場で困っている臨床倫理の項目について,これまでのポケットマニュアルとは一線を画した内容となっています.
 通読しても,項目ごとに拾い読みしても,折に触れて参照してもよいと思います.本書が,皆様のお役に立てば幸いです.
 2018 年8 月
 浜松市リハビリテーション病院
 病院長 藤島一郎


第3 版に寄せて
 嚥下障害ポケットマニュアルは初版以来,2011 年で10 年目を迎えました.第2 版を改訂後,多くの皆様から刷新を要望されながら増刷ごとの手直し程度にとどまっておりました.これはリーダーである藤島が聖隷三方原病院から浜松市リハビリテーション病院に異動するという変化や,スタッフの入れ替わりなど診療体制が激変したことなどが原因しております.しかし,その後,私どもの嚥下障害臨床は聖隷三方原病院,浜松市リハビリテーション病院,聖隷浜松病院の3 病院が連携して行う体制へと発展し,より充実したものとなっています.このたび時代の変化にも対応して内容を大幅に改め,新たな章を追加するなどいたしました.執筆者名も「聖隷三方原病院嚥下チーム」から「聖隷嚥下チーム」へと改めております.
 今回の改訂では,基本的な骨格部分に関して,新たな知見を入れた大幅な追記修正,ないし全面改訂を行いました.さらに,神経疾患,精神疾患,頭部外傷の項目,運動学習の項目,多数のコラムを新たに書き下ろしました.執筆陣もかなり交代し,聖隷グループで現在,実際に嚥下臨床や教育などに関わり,学会などでも活躍している医療スタッフとなっています.
 今後もよりよいものにしていきたいと思っております.ご意見やご要望があればお寄せください.
 第3 版もこれまで通り常にポケットに入れて臨床現場で役立つマニュアルとしてご活用いただければ幸いです.
 2011 年8 月
 聖隷嚥下チーム
 代表 藤島一郎

 編集部注:日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 医療検討委員会(嚥下調整食特別委員会)により,2013 年9 月に「嚥下調整食分類2013」が発表されたことに伴い,第3 版増補にあたっては,読者の便宜をはかるため,同学会HP(http://www.jsdr.or.jp/doc/doc_manual1.html)にあるそのすべての内容を巻末に記載した.


第2 版に寄せて
 初版の嚥下障害ポケットマニュアルは幸いにも多くの読者に歓迎された.その後,いろいろなご意見をいただき,またいくつかの新知識,修正などを入れてわずか出版後2 年ではあるが改訂する運びとなった.ハンディな大きさに多くの内容を盛り込むことは大変ではあるがやりがいのあることである.
 主な改訂は,(1)レイアウトとしてメモの欄を設けたこと,(2)印刷のカラーで読みにくいところを直したこと,(3)図の修正(今回もSTの新居素子さんが快く担当してくれた),(4)不足分の内容を補い,新知見を追加したこと,などである.これによって使い勝手がさらに良くなり,臨床現場でより役立つ小冊子になったと思われる.
 今後も皆様のご意見を取り入れてより良いポケットマニュアルにしてゆきたいと考えている.
 尚,第2版からは情報の正確さと読者の便宜を図るため,「刷」を重ねて大きな修正,追加などがあった場合には,医歯薬出版のホームページに修正情報を載せることとした.適宜ご参照いただければ幸いである.
 2003 年2 月
 聖隷三方原病院嚥下チーム
 代表 藤島一郎


まえがき
 本書はポケットやカバンに入れて手軽に持ち運べ,実際の臨床の場で必要な手技と知識をコンパクトに調べやすいようにまとめたものである.嚥下障害は患者数も多くベッドサイド,在宅,外来などで常にその場の対応が必要とされる.嚥下障害に関しては多くの著書や雑誌の特集号が出され,講習会や研究会,学会などで知識を得る機会が多くなったが ,目の前の患者さんに何をどうすればよいかというときすぐ調べられるハンディな本は少ない.当初は聖隷三方原病院の嚥下セミナーテキストを念頭においていたものであったが,より多くの人に活用いただけることを考えて出版される運びとなった.
 本書の特徴はポケットサイズということの他に「訓練法の実際」について多くのページを割いていること,また,たくさんのイラストを用いてSTや看護職員などが具体的な訓練法を理解しやすいように解説している点である.訓練法はあいうえお順で引きやすくし,症状別の対処法も巻末にまとめて表にしてある.脳卒中や神経疾患などの機能的原因による成人の嚥下障害を中心に記載しているが,嚥下障害臨床全般のエッセンスを盛り込むように努力した.小児に関しては同じ聖隷福祉事業団おおぞら療育センターの横地健治先生に執筆していただいた.きれいなイラストはSTの新居素子さん,表紙は清水一男氏に描いていただいた.深謝いたします.
 皆様のご意見,ご批判を仰ぐと共に嚥下障害ビデオシリーズなどと合わせて活用していただければ幸いである.
 2001 年8 月
 聖隷三方原病院嚥下チーム
 代表 藤島一郎
1 基礎的知識
 (藤島一郎)
2 嚥下障害の病態と原因疾患
 (藤島一郎)
3 スクリーニング,評価,検査
 (藤島一郎,重松 孝,金沢英哲,國枝顕二郎)
4 リハビリテーションの考え方と治療
 (藤島一郎)
5 リスク管理
 (國枝顕二郎,西村 立)
6 訓練法
 摂食嚥下訓練の実際(北條京子,森脇元希,岡本圭史,重松 孝,國枝顕二郎)
 呼吸理学療法(俵 祐一,大曲正樹)
 運動療法(森下一幸,花井 聡)
 作業療法(刑部 恵)
7 病棟における摂食嚥下障害の看護
 (田中直美,白井洋子)
8 歯科の役割
 (野本亜希子,大野友久,橋詰桃代,波多野真智子)
9 経管栄養
 (藤森まり子,田中直美)
10 嚥下調整食とレシピ
 (石野智子,小柳雄一)
11 神経筋疾患,頭部外傷,精神疾患と摂食嚥下障害
 (谷口 洋,片桐伯真,中村智之)
12 重症心身障害児(者)の嚥下障害と治療
 (横地健治)
13 嚥下障害に対する口腔,咽頭の手術
 (金沢英哲)
14 摂食嚥下障害と臨床倫理
 (藤島一郎)

 <巻末資料>
  学会・研究会
  摂食嚥下障害評価表
  嚥下造影(VF)評価用紙
  摂食嚥下の能力のグレード
  摂食嚥下障害患者における摂食状況のレベル(food intake level scale:FILS)
  摂食嚥下障害グレード判断基準
  窒息・誤嚥のリスクマネジメントマニュアル
  摂食嚥下障害の症状と看護計画
  栄養チューブ挿入位置確認マニュアル
  誤嚥侵入スケール
  嚥下障害の症状別対処法
  聖隷三方原病院嚥下障害症例2,552 名の治療成績

 <索引>

 コラム・Note一覧
  コラム1-1 嚥下とツバメ(藤島一郎)
  コラム1-2 聖隷三方原病院の嚥下専門外来(八木友里)
  コラム6-1 黎明期の摂食嚥下チームの立ち上げとSTの役割(小島千枝子)
  Note 1-1 用語:さまざまな用語が使用されるので注意(藤島一郎)
  Note 1-2 嚥下の期(stage)と相(phase)(藤島一郎)
  Note 1-3 感覚入力と運動出力(藤島一郎)
  Note 1-4 脳幹網様体(藤島一郎)
  Note 1-5 水がむせやすいわけ(藤島一郎)
  Note 1-6 人の直立と嚥下(藤島一郎)
  Note 1-7 嚥下に関する平成30 年(2018 年)の診療報酬改定(藤島一郎)
  Note 1-8 インフォームドコンセント(IC)(藤島一郎)
  Note 2-1 偽性球麻痺における軟口蓋の動き(藤島一郎)
  Note 2-2 嚥下筋の特殊性について(藤島一郎)
  Note 2-3 咽頭異常感(藤島一郎)
  Note 3-1 「むせ」と咳(藤島一郎)
  Note 3-2 gagについて(藤島一郎)
  Note 3-3 VF検査用椅子(藤島一郎)
  Note 3-4 即席嚥下造影用ゼリー(藤島一郎)
  Note 3-5 バリウムボール(藤島一郎)
  Note 3-6 咳を誘発するネブライザー(藤島一郎,田中直美)
  Note 3-7 発話明瞭度(5 段階評価)(藤島一郎)
  Note 4-1 障害と障がい,障碍(藤島一郎)
  Note 4-2 筋力強化(藤島一郎)
  Note 4-3 摂食時の誤嚥をどこまで許容するか?(藤島一郎)
  Note 4-4 リハビリテーションの限界と外科的治療の適応は?(藤島一郎)
  Note 4-5 経口摂取が不十分なときの栄養補助はどうするか?(藤島一郎)
  Note 5-1 医療・介護関連肺炎(國枝顕二郎)
  Note 5-2 フレイル(frailty)(藤島一郎)
  Note 5-3 皮下輸液(藤島一郎)
  Note 6-1 食道入口部拡張専用ダブルバルーン(北條京子)
  Note 6-2 片麻痺の場合(特に半側空間無視=USNを伴う場合)(藤島一郎)
  Note 6-3 半腹臥位と頸部回旋(横向き嚥下)(藤島一郎)
  Note 6-4 OD錠について(藤島一郎)
  Note 6-5 MDTP(藤島一郎)
  Note 6-6 ストロー飲みとすすり飲みの相異(藤島一郎)
  Note 6-7 四大認知症と摂食嚥下障害(藤島一郎)
  Note 6-8 ボツリヌス毒による嚥下治療(藤島一郎)
  Note 10-1 発達期の嚥下調整食(藤島一郎)