序文
柔道整復業務においても,西洋医学で近年重視されているEBMと同様,根拠に基づいた施術が必要であり,社会的にも求められている.その意味では柔道整復師が施術に際して,超音波観察装置を用いることは有効なツールであり,多くの施術所でも取り入れられつつある.
著者は,これまで柔道整復師を対象に超音波による運動器の観察について,手引書を著してきた.たとえば「柔道整復師のための超音波観察法」は共著,「入門運動器の超音波観察法」(日本超音波骨軟組織学会編)は一執筆者として著した.この度は数年にわたって実践してきた運動器の超音波観察を症例集としてまとめて上梓することとした.
近年,柔道整復師の業務に関しては,本来の業務範囲である外傷からかけはなれ,慢性疾患の施術や慰安的施術が多くなっていることは,非常に残念でならない.柔道整復師の臨床において,科学的根拠として超音波観察法が根付くことにより本来の業務への回帰・発展に資するであろうことを祈念している.
幸いにも装置の発展により,今まで以上に画像も鮮明になっており,さらに施術現場で得られたデータをもとに,「エコー観察のコツやエコー観察のメリット」を最大限に活かせるように「超音波観察のポイント」を具体的にまとめることができたと自負している.エコー観察を目指す施術家にとっては,きっと役に立つものになると確信している.
また,本症例集の中には多くのX線像やMRI像が掲載されている.日常の施術にあたっては,柔道整復の守備範囲を認識し,診察については多くの医師に照会し,そしてその診断結果をフィードバックしていただき,施術の背景とすることができた.本書の中に使用した各画像については提供された医師および患者様に掲載の同意をいただいたことを付しておく.
共著者である中村辰三先生はこの領域の嚆矢としてご活躍されてきたが,各疾患の概要部分を担当され,また全編を通してご高閲をいただいた.川村茂先生は図表を中心に担当され,超音波の理論的な面から全体のチェックをいただいた.
増田は,超音波観察を系統的にわかりやすく理解されるために,日々経験する数多くの症例から適当と思われる症例を選定することとし,共著者に供覧することでより客観性を高められた.今回は,これまでになく構想から執筆・校正に多大な時間を費やしたが,その反面逆に新しい発見も数々あり,本書ではそれらを随所に反映させることができたと思う.
今後もさらに多くの施設によって症例が蓄積され,大学などにおいても実験や研究により,超音波観察が施術の一環として発展することを願う次第である.
なお,本書に表記されている疾患名に関しては,あえて一部整形外科的傷病名も採用しているが,我々の業務を正しく導くために使用したことにご理解いただきたい.また,本書の症例に関しては,あくまで柔道整復業務を遵守し,外傷の程度に差はあるが,明確な負傷原因を認めており,慢性的な疾患ではないことを追記しておく.
最後に,画像提供にご協力いただいた医師の先生方,そして執筆とともに貴重なご指導をいただいたお二人の先生にはこの場をかりて感謝申し上げる次第である.
2012年8月
増田雅保
柔道整復業務においても,西洋医学で近年重視されているEBMと同様,根拠に基づいた施術が必要であり,社会的にも求められている.その意味では柔道整復師が施術に際して,超音波観察装置を用いることは有効なツールであり,多くの施術所でも取り入れられつつある.
著者は,これまで柔道整復師を対象に超音波による運動器の観察について,手引書を著してきた.たとえば「柔道整復師のための超音波観察法」は共著,「入門運動器の超音波観察法」(日本超音波骨軟組織学会編)は一執筆者として著した.この度は数年にわたって実践してきた運動器の超音波観察を症例集としてまとめて上梓することとした.
近年,柔道整復師の業務に関しては,本来の業務範囲である外傷からかけはなれ,慢性疾患の施術や慰安的施術が多くなっていることは,非常に残念でならない.柔道整復師の臨床において,科学的根拠として超音波観察法が根付くことにより本来の業務への回帰・発展に資するであろうことを祈念している.
幸いにも装置の発展により,今まで以上に画像も鮮明になっており,さらに施術現場で得られたデータをもとに,「エコー観察のコツやエコー観察のメリット」を最大限に活かせるように「超音波観察のポイント」を具体的にまとめることができたと自負している.エコー観察を目指す施術家にとっては,きっと役に立つものになると確信している.
また,本症例集の中には多くのX線像やMRI像が掲載されている.日常の施術にあたっては,柔道整復の守備範囲を認識し,診察については多くの医師に照会し,そしてその診断結果をフィードバックしていただき,施術の背景とすることができた.本書の中に使用した各画像については提供された医師および患者様に掲載の同意をいただいたことを付しておく.
共著者である中村辰三先生はこの領域の嚆矢としてご活躍されてきたが,各疾患の概要部分を担当され,また全編を通してご高閲をいただいた.川村茂先生は図表を中心に担当され,超音波の理論的な面から全体のチェックをいただいた.
増田は,超音波観察を系統的にわかりやすく理解されるために,日々経験する数多くの症例から適当と思われる症例を選定することとし,共著者に供覧することでより客観性を高められた.今回は,これまでになく構想から執筆・校正に多大な時間を費やしたが,その反面逆に新しい発見も数々あり,本書ではそれらを随所に反映させることができたと思う.
今後もさらに多くの施設によって症例が蓄積され,大学などにおいても実験や研究により,超音波観察が施術の一環として発展することを願う次第である.
なお,本書に表記されている疾患名に関しては,あえて一部整形外科的傷病名も採用しているが,我々の業務を正しく導くために使用したことにご理解いただきたい.また,本書の症例に関しては,あくまで柔道整復業務を遵守し,外傷の程度に差はあるが,明確な負傷原因を認めており,慢性的な疾患ではないことを追記しておく.
最後に,画像提供にご協力いただいた医師の先生方,そして執筆とともに貴重なご指導をいただいたお二人の先生にはこの場をかりて感謝申し上げる次第である.
2012年8月
増田雅保
上肢帯:(1)
1.肩鎖関節損傷
上肢:(2〜14)
2.肩棘上筋腱板損傷(表層断裂)
3.肩棘上筋腱板損傷(広範囲断裂)
4.肩棘上筋腱板損傷(腱内断裂)
5.腱板炎・滑液包炎(1)
6.腱板炎・滑液包炎(2)
7.石灰沈着性腱板炎
8.上腕二頭筋長頭腱損傷
9.上腕二頭筋長頭腱部分断裂
10.肩関節後方関節唇損傷
11.Bennett損傷
12.ルーズショルダー
13.上腕部に生じた石灰化
14.上腕骨大結節骨折(2分骨折)
肘部:(15〜19)
15.上腕骨遠位端部骨折・肘関節通顆骨折
16.上腕骨内側上顆裂離骨折
17.上腕骨外側上顆炎
18.肘内側側副靭帯損傷
19.橈骨頸部骨折
手部:(20〜23)
20.橈骨遠位端部骨折
21.中節骨裂離骨折
22.PIP関節背側脱臼
23.骨性マレットフィンガー
下肢帯:(24)
24-(1).上前腸骨棘剥離(裂離)骨折
24-(2).下前腸骨棘裂離骨折
下肢:(25〜29)
25.大腿骨頸部骨折
26.変形性股関節症,股関節臼蓋不全
27.大腿骨骨化性筋炎
28.ハムストリングスの肉離れ
(1)外側ハムストリングスの肉離れ
(2)内側ハムストリングスの肉離れ
29.中間広筋挫傷
膝部:(30〜39)
30.腸脛靭帯炎
31.膝蓋靱帯炎
32.膝蓋靱帯部分断裂
33.有痛性分裂膝蓋骨
34.前膝蓋滑液水腫
35.Hoffa病
36.変形性膝関節症に伴う関節水腫
37.Osgood-Schlatter病
38.半月板損傷
39.膝PCL(後十字靭帯)付着部裂離骨折
下腿部:(40〜41)
40.脛骨疲労骨折
41.下腿三頭筋外側頭肉離れ
足関節部:(42〜48)
42-(1).腓骨螺旋骨折(1)
42-(2).腓骨螺旋骨折(2)
43.腓骨先端骨折
44.腓骨疲労骨折
45.アキレス腱炎・微小断裂
46.前距腓靱帯損傷(ATFL)・stage 2
47-(1).中足骨骨折(1)
47-(2).中足骨骨折(2)
48.足底腱膜炎
体幹:(49〜52)
49.頸部捻挫
50.第6頸椎圧迫骨折
51.第10肋骨骨折
52-(1).脊柱起立筋損傷(1)
52-(2).脊柱起立筋損傷(2)
参考文献
索引
観察のヒント
肩鎖関節−動的な観察も大切
エラストグラフィーによる確認
石灰沈着症の読影のコツ
超音波観察のメリット1
長頭腱の描出方法
動的観察のメリット
経過判断の有用性
炎症と高エコー像・音響学的考察
エコーイメージによる徒手整復
腱性マレットの保存療法について
筋肉の超音波観察のコツ
新しいソフトウェア・エラストグラフィーによる画像判断
ドプラの普及とエラスト画像
膝蓋骨のプローブ走査のコツ
超音波観察のメリット2
オスグッド病に対するエコー的分類法
半月板の超音波観察の多様性・荷重エコー観察法
プローブ走査・エコー観察の手順
足関節損傷における複合損傷
骨観察時のポイント・短軸走査のポイント
アキレス腱抽出のコツ
ATFL動揺性の観察・動的観察法
ATFL描出のコツ1
ATFL描出のコツ2・症例から
疲労骨折の観察時の注意点
所見の取り方
足底腱膜の観察
肋骨骨折観察の工夫
腰部観察
腰部エコー観察の限界と工夫
1.肩鎖関節損傷
上肢:(2〜14)
2.肩棘上筋腱板損傷(表層断裂)
3.肩棘上筋腱板損傷(広範囲断裂)
4.肩棘上筋腱板損傷(腱内断裂)
5.腱板炎・滑液包炎(1)
6.腱板炎・滑液包炎(2)
7.石灰沈着性腱板炎
8.上腕二頭筋長頭腱損傷
9.上腕二頭筋長頭腱部分断裂
10.肩関節後方関節唇損傷
11.Bennett損傷
12.ルーズショルダー
13.上腕部に生じた石灰化
14.上腕骨大結節骨折(2分骨折)
肘部:(15〜19)
15.上腕骨遠位端部骨折・肘関節通顆骨折
16.上腕骨内側上顆裂離骨折
17.上腕骨外側上顆炎
18.肘内側側副靭帯損傷
19.橈骨頸部骨折
手部:(20〜23)
20.橈骨遠位端部骨折
21.中節骨裂離骨折
22.PIP関節背側脱臼
23.骨性マレットフィンガー
下肢帯:(24)
24-(1).上前腸骨棘剥離(裂離)骨折
24-(2).下前腸骨棘裂離骨折
下肢:(25〜29)
25.大腿骨頸部骨折
26.変形性股関節症,股関節臼蓋不全
27.大腿骨骨化性筋炎
28.ハムストリングスの肉離れ
(1)外側ハムストリングスの肉離れ
(2)内側ハムストリングスの肉離れ
29.中間広筋挫傷
膝部:(30〜39)
30.腸脛靭帯炎
31.膝蓋靱帯炎
32.膝蓋靱帯部分断裂
33.有痛性分裂膝蓋骨
34.前膝蓋滑液水腫
35.Hoffa病
36.変形性膝関節症に伴う関節水腫
37.Osgood-Schlatter病
38.半月板損傷
39.膝PCL(後十字靭帯)付着部裂離骨折
下腿部:(40〜41)
40.脛骨疲労骨折
41.下腿三頭筋外側頭肉離れ
足関節部:(42〜48)
42-(1).腓骨螺旋骨折(1)
42-(2).腓骨螺旋骨折(2)
43.腓骨先端骨折
44.腓骨疲労骨折
45.アキレス腱炎・微小断裂
46.前距腓靱帯損傷(ATFL)・stage 2
47-(1).中足骨骨折(1)
47-(2).中足骨骨折(2)
48.足底腱膜炎
体幹:(49〜52)
49.頸部捻挫
50.第6頸椎圧迫骨折
51.第10肋骨骨折
52-(1).脊柱起立筋損傷(1)
52-(2).脊柱起立筋損傷(2)
参考文献
索引
観察のヒント
肩鎖関節−動的な観察も大切
エラストグラフィーによる確認
石灰沈着症の読影のコツ
超音波観察のメリット1
長頭腱の描出方法
動的観察のメリット
経過判断の有用性
炎症と高エコー像・音響学的考察
エコーイメージによる徒手整復
腱性マレットの保存療法について
筋肉の超音波観察のコツ
新しいソフトウェア・エラストグラフィーによる画像判断
ドプラの普及とエラスト画像
膝蓋骨のプローブ走査のコツ
超音波観察のメリット2
オスグッド病に対するエコー的分類法
半月板の超音波観察の多様性・荷重エコー観察法
プローブ走査・エコー観察の手順
足関節損傷における複合損傷
骨観察時のポイント・短軸走査のポイント
アキレス腱抽出のコツ
ATFL動揺性の観察・動的観察法
ATFL描出のコツ1
ATFL描出のコツ2・症例から
疲労骨折の観察時の注意点
所見の取り方
足底腱膜の観察
肋骨骨折観察の工夫
腰部観察
腰部エコー観察の限界と工夫