やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 統計学とは「データを取り扱うための技術学」であり,「いろいろな健康現象や社会現象などを統計学的な手法を駆使し,その背景や意味を理解する学問」である.コメディカルの分野では,いろいろな健康現象や社会現象の意味や背景を理解することは重要なことであり,そのための統計学の学習は不可欠である.
 しかし,従来の統計学テキストは,むずかしい数式を多く用いたり,実用例においても計算式の解説に終始したりするものが多い.また,コンピュータの活用においては,いろいろなマニュアル本がたくさん出回っているが,多様な細かい使用解説のものが多いのが現状である.
 本書は,とくにコメディカルの分野における学生,研究者および医療従事者にとって日常業務および調査研究を進めるにおいて必要と思われる統計学の基礎およびその実用例に内容を限定し,できるだけ記号等による数式を避けた.また,図表にはポイントを明示したわかりやすい解説を付記した.
 全4章のうち,第1章を「統計の基礎」とし,統計学の基礎的な考えや手法等を解説した.第2章は「調査票からデータベースの作成まで」,第3章は「データのまとめ方」とし,学生,研究者および医療従事者に必要なデータの収集やまとめ方の実践的な方法を解説した.第4章は「検定・比較の方法」とし,科学的な根拠を持ってデータを使用するための基礎的な知識や多用されている検定および比較の方法を中心に,その実用例を通して学習できるようにした.
 しかも本書は,統計学の基礎およびその実用例に応じて,多機能な表計算ソフト「エクセル」を効率よく使用できるように工夫した.つまり,コンピュータが苦手な人,数式が苦手な人でも使えるように,日常業務および調査研究に必要な「エクセル」の基礎および応用の機能を中心に,その使用手順を図示化してわかりやすく解説した.
 学生から研究者,医療従事者,専門家まで,テキストまたは参考書として広くご活用いただければ幸いである.
 2009年9月
 宮城重二
 はじめに
第1章 統計の基礎
 1─1 統計学とは
 1─2 データと情報
  (1)データと尺度
   1.データとは 2.データの区分け
  (2)情報とは
 1─3 統計の基礎的数値
  (1)比率と比
   1.比率(百分率)とは 2.比とは
  (2)「単位」あたりの率
  (3)指数
   1.人口指数 2.基準値対比としての指数
 1─4 データ整理の基礎
  (1)実数と比率の意味
   1.「クロス集計表」の比率算出法 2.誤解を生む比率のみの表示 3.「複数回答」の比率の算出法・図示法
  (2)データの再カテゴリー化
   1.再カテゴリー化の方法と意義 2.再カテゴリー化の表示の工夫
 1─5 代表値と散布度
  (1)代表値
   1.平均値(Mean) 2.中央値・最頻値
  (2)散布度
   1.分散・標準偏差 2.四分位偏差 3.変動係数
 1─6 データの分布と正規分布
  (1)階級と度数分布表
   1.階級 2.度数分布表
  (2)区分基準の活用
   1.人口の階級・区分 2.判定規準の活用─高血圧の例
  (3)正規分布とは
   1.正規分布とその特徴 2.標準正規分布とその応用
 1─7 相関・関連と回帰
  (1)相関・関連,回帰とは
   1.相関・関連とは 2.回帰とは
  (2)量的データの関係
   1.相関係数 2.回帰直線
  (3)質的データの関係
   1.φ(ファイ)係数 2.関連係数
 1─8 母集団と標本
  (1)母集団と標本
   1.母集団・標本とは 2.標本抽出と統計的推論
  (2)標本抽出法
   1.単純無作為抽出法 2.等間隔抽出法 3.多段抽出法
 1─9 エクセルの基礎
  (1)エクセルとは
   1.エクセルの初期画面および画面構成 2.四則演算子および数式の活用 3.おもな関数一覧
  (2)エクセル使用の基礎
   1.数式・関数の使用の基礎 2.図・グラフの使用の基礎
第2章 調査票からデータベースの作成まで
 2─1 調査の企画・実施手順
  (1)調査目標の明確化
   1.記述調査と仮説検証調査 2.記述調査の目標設定 3.仮説検証調査の目標設定
  (2)調査対象・方法の決定
   1.調査の規模と対象集団 2.調査方法 3.集計要領および集計表
  (3)調査票の作成
   1.作業仮説と質問項目 2.質問の回答形式 3.質問文の作成法 4.調査手引きの作成
  (4)調査の実施
  (5)集計・分析
 2─2 データベースの作成
  (1)ケースと変数
  (2)調査票と入力ポイント
   1.調査票と変数名 2.ID番号 3.データのコード化
 2─3 エクセルの応用(1)
  (1)入力データのチェック方法
   1.最小値・最大値による方法 2.エラー値の確認・解決法
  (2)変数の追加とデータ入力
   1.SUM関数による自覚症状得点の算出・追加 2.数式によるBMIの算出・追加 3.並び替えによるBMIの3区分
第3章 データのまとめ方
 3─1 1変数のまとめ方
  (1)質的データのまとめ方
   1.度数および比率・比による単純集計 2.再カテゴリー化によるカテゴリー整理
  (2)量的データのまとめ方
   1.平均値・標準偏差によるまとめ 2.階級およびカテゴリーによるまとめ
  (3)データの変換方法
   1.量的データから質的データへの変換 2.質的データの数量化
 3─2 2変数のまとめ方
  (1)質的データのまとめ方
   1.度数および比率によるクロス集計 2.クロス集計の「比率」比較 3.φ係数・関連係数によるまとめ
  (2)量的データのまとめ方
   1.カテゴリー別平均値または比率によるまとめ 2.クロス集計の「単位あたり比率」比較 3.相関係数によるまとめ
 3─3 エクセルの応用(2)
  (1)ピポットテーブルの形式と集計方法
  (2)ピポットテーブルによるクロス集計
   1.質的データのクロス集計(実数・%) 2.量的データのクロス集計(平均値)
第4章 検定・比較の方法
 4─1 仮説検定の考え方
  (1)統計的仮説とは
   1.帰無仮説と対立仮説 2.なぜ帰無仮説か
  (2)危険率と自由度
   1.危険率(有意水準) 2.自由度
  (3)検定の基本的手順
  (4)両側検定と片側検定
 4─2 単純集計・クロス集計の検定
  (1)単純集計の検定(適合度の検定):χ2検定
   1.理論分布との適合度の検定 2.基準分布との適合度の検定
  (2)クロス集計の検定(独立性の検定):χ2検定
   1.2×2表の独立性の検定 2.m×n表の独立性の検定
 4─3 平均値に関する検定
  (1)標本平均と母平均の差の検定:t検定
   1.t分布表によるt検定 2.標準正規分布表によるz検定
  (2)対応のない2標本の平均値の差の検定
   1.等分散の検定:F検定 2.分散が等しい場合:t検定
 4─4 相関係数に関する検定(t検定)
 4─5 対応のある2標本に関する検定:効果判定
  (1)2つの平均値の差の検定:t検定
  (2)2つの比率の差の検定:マクネマーの検定
 4─6 危険因子の比較・推定
  (1)相対危険(リスク比)
  (2)オッズ比

 付表
  付表1 χ2分布表
  付表2 t分布表
  付表3 標準正規分布表
  付表4─1 F分布表(5%点)
  付表4─2 F分布表(1%点)
 索引