やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 本書は,画像描出技術(実技)に特化し,画像描出までこの一冊でできるように初学者に理解しやすく構成された内容となっています.
 本書の企画の契機は,一般社団法人日本超音波骨軟組織学会(以下,本学会)で開催されている教育セミナーにおいて,参加者から実技を学ぶための書籍を求める声が多く寄せられたことにあります.その期待に応える形で本学会の学術部を中心として出版構想に着手しました.
 ここ数年で運動器の超音波観察の進化はめざましく,多くの医療に携わる方々から注目されるようになってきています.運動器に関する超音波の書籍も増えており,その多くは著名な医師などにより執筆され,新しい知見が次々と常識化されています.一方で,画像描出の基本となるプローブワークに関しては,プローブの持ち方や走査法を細かく解説した書籍は数少ない状況です.本学会ではプローブワークに主眼を置いたハンズオンセミナーを行っていますが,参加者より「書籍に記載されているとおりに行っているが,同じ画像が撮れない」あるいは,「再現性のある撮り方のコツを教えてほしい」などとプローブワークに関する相談を受けます.超音波観察は,わずか数mmの違いで全く別の画像になってしまうため,書籍と同じ画像が得られず苦労されております.それは(その大きな理由は)基本的なプローブワークについて理解が不十分であるということがわかりました.これらのことから本学会では,今必要な情報は何か,ポイントとなる項目は何かなどについて出版企画会議を重ね,本書は「プローブワークに特化した内容にすべきである」との結論に至りました.
 本書の特長は,数ある書籍と同じような画像を描出できるプローブワークを詳しく学べることです.超音波観察をこれから始めようと考えたときには,いろいろな書籍と本書を一緒に使用することにより,さらに理解が深まるようにプローブワークの基本的な事項を多数記載しています.従来の書籍だけでは理解が難しかった基本的な部分まで本書を通じて理解できるようになり,そして正しいプローブワークを身につけることが可能となるよう重点をおきました.本書を活用することで,より多くの書籍の理解が深まり,知識の整理がしやすくなることと思います.超音波というツールを用いて他職種と同じ土俵の上で意義のある討論ができる契機になり,そして多くの医療に携わる方々のレベルアップ,日常の施術に役立つ参考の一助となるよう本書が使われることを願い,巻頭の挨拶とさせていただきます.
 なお,本書に表記されている症例では,整形外科的傷病名が含まれており,職種によっては業務の範囲を超えるものもありますが,鑑別が必要なものは採用し,正しく学んでいただくことを目的として記載していることをご理解ください.
 最後に本書を作成するにあたって執筆者の多大なご尽力と貴重なご意見,ご指導いただきました多くの諸先生方,そして本書を編集する機会を提供して下さった医歯薬出版株式会社のご協力に深く感謝いたします.
 2017 年11 月
 一般社団法人 日本超音波骨軟組織学会 会長 山田直樹
基礎編
 表示方法(金田 晋)
 はじめに /短軸走査 /長軸走査
上肢編
 肩関節(山田直樹)
  〈前方走査〉
   1.短軸走査
   2.長軸走査
  〈外上方走査〉
   1.長軸走査
   2.短軸走査
  〈後方走査〉
   1.短軸走査
 肘関節(曽山良之輔)
  〈前方走査〉
   1.短軸走査
    (1)上腕骨遠位 /(2)上橈尺関節
   2.長軸走査
    (1)腕橈関節 /(2)腕尺関節
  〈外側走査〉
   1.長軸走査
    (1)上腕骨外側上顆
   2.短軸走査
    (1)上腕骨外側上顆 /(2)橈骨頭
  〈内側走査〉
   1.長軸走査
    (1)上腕骨内側上顆部〜内側側副靱帯前斜走線維
   2.短軸走査
    (1)上腕骨内側上顆〜肘頭
  〈後方走査〉
   1.長軸走査
    (1)肘頭,肘頭窩 /(2)上腕骨小頭
   2.短軸走査
    (1)上腕骨骨幹部遠位〜腕尺関節
 手関節(新井達也)
  〈掌側走査〉
   1.短軸走査
   2.長軸走査
  〈背側走査〉
   1.短軸走査
   2.長軸走査(橈骨遠位)
  〈橈側走査〉
   1.短軸走査
   2.長軸走査
  〈尺側走査〉
   1.短軸走査
   2.長軸走査
 手指部(新井達也)
  〈掌側走査〉
   1.長軸走査
   2.短軸走査
    (1)中手骨レベル /(2)基節骨近位レベル /(3)基節骨遠位レベル /(4)中節骨近位レベル
  〈背側走査〉
   1.長軸走査
    (1)MP関節レベルの走査 /(2)PIP関節レベルの走査 /(3)DIP関節レベルの走査
   2.短軸走査
    (1)中手骨遠位レベル /(2)PIP関節レベル /(3)DIP関節レベル
  〈橈側走査・尺側走査〉
    (1)PIP関節(第3 指)側副靭帯の走査 /(2)母指MP関節の走査
下肢編
 股関節(曽山良之輔)
  〈前方走査〉
   1.大腿骨骨幹部前方の短軸走査
   2.大腿骨骨幹部前方の長軸走査
   3.大腿骨近位部前方の長軸走査
   4.股関節前方,大腿骨頭・頸部の長軸走査
   5.下前腸骨棘から関節部を長軸走査
  〈外側走査〉
   1.大腿骨骨幹部外側の短軸走査
   2.大腿骨大転子の短軸走査
   3.大腿骨大転子の長軸走査
  〈後方走査〉
   1.大腿骨大転子を後方より長軸走査
   2.股関節後方の長軸走査
 膝関節(矢島 勇)
  〈前方走査 (1)大腿下部前面〉
   1.長軸走査
   2.短軸走査
    (1)大腿下部前面近位部 /(2)大腿下部前面中間部 /(3)大腿下部前面遠位部
  〈前方走査 (2)膝蓋骨〜下腿近位部〉
   1.長軸走査(膝蓋骨)
   2.短軸走査(膝蓋骨)
   1.長軸走査(膝蓋腱)
   2.短軸走査(膝蓋腱)
    (1)近位部 /(2)中間部 /(3)遠位部
  〈内側走査〉
   1.長軸走査 / 2.短軸走査
  〈外側走査〉
   1.長軸走査
    (1)大腿骨外側上顆から外側側副靭帯(LCL) /(2)大腿骨外側顆から腸脛靭帯(ITT)
   2.短軸走査
    (1)大腿骨外側上顆から外側側副靭帯(LCL) /(2)大腿骨外側上顆から腸脛靭帯(ITT)
  〈後方走査〉
   1.長軸走査 / 2.短軸走査
 下腿部(勝田淨邦)
  〈後方走査〉
   1.アキレス腱付着部の短軸走査
   2.アキレス腱付着部の長軸走査
   3.アキレス腱の短軸走査
   4.アキレス腱の長軸走査
   5.腓腹筋筋腱移行部の短軸走査
   6.腓腹筋筋腱移行部の長軸走査
   7.腓腹筋,ヒラメ筋の短軸走査
   8.腓腹筋,ヒラメ筋の長軸走査
  〈後外側走査〉
   1.腓骨筋腱支帯部の短軸走査
   2.腓骨筋腱支帯部の長軸走査
   3.長腓骨筋,短腓骨筋の短軸走査
   4.長腓骨筋,短腓骨筋の長軸走査
 足関節(金田 晋)
  〈外側走査〉
   1.外果(Lateral Malleolus)長軸・短軸走査
   2.前距腓靭帯(Anterior talo fibular ligament:ATFL)の長軸・短軸走査
   3.踵腓靭帯(Calcaneofibular ligament:CFL)の短軸・長軸走査
   4.二分靭帯(Bifurcate Ligament:BL)の長軸走査
  〈前方走査〉
   1.前下脛腓靭帯(Anterior inferior tibio-fibular ligament:AITFL)の長軸走査
  〈内側走査〉
   1.内果(Medial Malleolus)の短軸・長軸走査
   2.三角靭帯(Deltoid ligament:DL)の長軸走査
 足部(金田 晋)
  〈内側走査〉
   第1 中足骨,内側楔状骨,舟状骨,距骨,内側長軸・短軸走査
  〈背側走査〉
   1.距骨,舟状骨背側短軸,長軸走査(ショパール関節,リスフラン関節),第1 趾,中足趾節間関節,趾節間関節,背側走査
   2.距骨頸部,距骨滑車部,脛骨,距骨長軸,舟状骨,立方骨,楔状骨背側短軸,長軸走査,ショパール関節,リスフラン関節,近位趾節間関節,中足趾節間関節,趾節間関節背側走査
  〈外側走査〉
 第5 中足骨・基節骨・中節骨・末節骨,外側長軸走査・短軸走査
  〈底側走査〉
   踵骨長軸走査・短軸走査
体幹編
 肋骨(金田 晋)
  〈前方・後方走査〉

 観察症例
  上腕二頭筋長頭腱炎
  上腕二頭筋長頭腱断裂
  腱板損傷
  肘内障
  骨棘を伴った上腕骨外側上顆炎
  内側型野球肘
  肘関節捻挫に伴う血腫
  橈骨遠位端骨折(掌側)
  橈骨遠位端骨折(背側)
  PIP関節捻挫
  第5 指基節骨骨折
  第4 指基節骨での斜骨折
  単純性股関節炎
  膝蓋上嚢に貯留した水腫
  分裂膝蓋骨(Saupe III型)
  オスグッド・シュラッター病
  ファベラ(腓腹筋外側頭種子骨)
  アキレス腱炎
  腓腹筋内側頭肉ばなれ
  外果骨折
  前距腓靭帯損傷
  踵腓靭帯損傷
  踵立方靭帯損傷,踵骨前方突起損傷
  前下脛腓靭帯損傷
  リスフラン関節症
  末節骨骨折
  肋骨骨折

  索引