やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 本書は,初めて解剖学を学ぶ人に,解剖学では,何をどのように,どこまで学べばよいのかをわかりやすく書いています.
 「解剖学は暗記することが多くて大変だ」とよく聞きます.確かに,通常の解剖学教科書を見ると,およそ2,000〜4,000もの用語が記載されています.人体の構造は複雑であり,医学の進歩とともに記載項目が増加するのは当然です.複雑な人体の構造を理解することが解剖学を学ぶ目標です.複雑な構造を理解していくには,重要な基本構造の理解から進めていくことが必要です.そして,私たちの体は骨や筋などさまざまな器官からできているので,まず,基本的な機能を担う器官ごとにまとめて学んでいくとわかりやすくなります.
 解剖学の用語には,それに対応する人体構造があります.本書では,複雑な人体の構造のうち特に重要な構造を取り上げて,簡潔に解説しているので,この簡潔な説明を読んだ後,解剖学の用語を使って自分で説明をしてみるとよいでしょう.説明を続けると,基本的で重要な構造ほど繰り返しその用語を使うことになり,覚えようとしなくても理解が進んでいきます.
 この本を手に取ってみている諸君は,解剖学の科目が課される何らかの試験を受けることになっていることが多いと思います.「楽しく」「わかりやすい」ことをうたう解剖学の参考書は他にも散見されますが,国家試験のレベルにまで対応したものはなかなか見当たりません.本書は学問的にしっかりとした解説を行い,理学療法士・作業療法士,看護師,柔道整復師,はり師・きゅう師など医療関係の国家試験にも十分に対応できるものになっています.可能なかぎりイラストをあわせて掲載していますので,知識の整理に活用してください.また,最終章として「運動からみた局所解剖学」を設け,それまでに学んだ解剖学の知識を実際の体の動きとして理解できるよう工夫しています.
 よりわかりやすい「やさしい解剖学」としていくために読者のご批判やご助言をいただければ幸いです.
 2016年1月 著者一同
 序
第1章 人体の構造
 (野田 亨)
 1.人体を客観的に観察する視点
  1)肉眼解剖学
   (1)系統解剖学 (2)局所解剖学 (3)体表解剖学
  2)肉眼解剖学で使われる基本的医学用語
   (1)姿勢を表す用語 (2)方向,座標軸,平面を表す用語
   (3)身体の部分を表す用語 (4)身体内部の空間を表す用語
   (5)体表から触れることのできる部分の名称
  3)顕微解剖学
   (1)組織学 (2)細胞学 (3)発生学
第2章 細胞と組織
 1.細胞の構成
  1)細胞膜
   (1)膜の分化(細胞の極性) (2)細胞間結合装置 (3)膜の動態
  2)細胞質と核
   (1)膜に包まれていない構造 (2)膜に包まれている細胞小器官
 2.組織
  1)上皮組織
   (1)単層上皮(扁平,立方,円柱)
   (2)多列上皮(多列円柱,重層扁平,重層円柱,移行) (3)上皮細胞の特徴
   (4)腺の概念とその分類
  2)支持組織
   (1)結合組織 (2)軟骨組織 (3)骨組織 (4)血液
  3)筋組織
   (1)骨格筋 (2)平滑筋 (3)心筋
  4)神経組織
   (1)神経細胞(ニューロン) (2)支持組織(グリア)
第3章 骨格系
 (中村陽市)
 1.骨格系総論
  1)骨
   (1)骨の生理的作用 (2)骨の形状および性状による分類 (3)骨の構造
   (4)骨の発生と成長 (5)骨のリモデリング (6)骨折と治癒
 2.骨格系各論
  1)頭蓋骨
   (1)脳頭蓋 (2)顔面頭蓋 (3)小児の頭蓋 (4)内頭蓋底
   (5)外頭蓋底
  2)脊柱
   (1)椎骨
  3)上肢骨
   (1)上肢帯 (2)自由上肢骨
  4)胸郭
  5)下肢骨
   (1)下肢帯 (2)骨盤 (3)自由下肢骨
 3.関節
  1)関節の分類
   (1)不動性関節 (2)可動性関節(滑膜性関節)
  2)可動性関節の構造と分類
   (1)可動性関節の構造 (2)可動性関節の分類
第4章 筋系
 (菊田彰夫)
 1.筋の形態,付着,機能
  1)骨格筋
  2)筋の付着と腱
   (1)起始と停止
  3)筋の形状
   (1)筋の形状
  4)腱の形状
  5)筋の機能
  6)筋の補助装置
   (1)筋膜 (2)筋支帯 (3)筋滑車 (4)滑液包 (5)腱鞘
   (6)種子骨
  7)筋の運動の種類と筋の作用による分類
   (1)屈曲と伸展 (2)内転と外転 (3)内旋と外旋 (4)前腕の運動
   (5)足の運動
 2.体幹体肢の筋
 3.背部の筋
  1)背部浅層の筋
   (1)僧帽筋 (2)広背筋 (3)菱形筋 (4)肩甲挙筋
  2)背部深層の筋
   (1)深背筋第1層 (2)深背筋第2層
 4.頭部の筋
  1)顔面筋
   (1)主な顔面筋
  2)咀嚼筋
   (1)4対の咀嚼筋
  3)下顎骨の運動
 5.頸部の筋
  1)広頸筋
  2)胸鎖乳突筋
  3)舌骨筋
   (1)舌骨上筋 (2)舌骨下筋
  4)後頸筋
   (1)斜角筋 (2)椎前筋
  5)頸部の筋膜
 6.胸部の筋
  1)胸部浅層の筋
   (1)大胸筋 (2)小胸筋 (3)鎖骨下筋 (4)前鋸筋
  2)胸部深層の筋
   (1)肋間筋 (2)その他の胸部深層の筋
  3)横隔膜
   (1)横隔膜の孔および血管・神経の通路 (2)呼吸運動
 7.腹部の筋
  1)前腹筋
   (1)腹直筋 (2)錐体筋
  2)側腹筋
   (1)外腹斜筋 (2)内腹斜筋 (3)腹横筋 (4)白線
   (5)腹直筋鞘
  3)後腹筋
   (1)腰方形筋
  4)鼠径靱帯
  5)鼠径管
   (1)鼠径管の壁
  6)骨盤底の筋
 8.上肢の筋
  1)上肢帯の筋
   (1)棘上筋 (2)棘下筋 (3)三角筋 (4)小円筋 (5)大円筋
   (6)肩甲下筋 (7)肩関節の運動と筋
  2)上腕の筋
   (1)屈筋群 (2)伸筋群 (3)上腕の筋の作用
  3)前腕の筋
   (1)屈筋群 (2)伸筋群
  4)手の筋
 9.下肢の筋
  1)下肢帯の筋
   (1)内寛骨筋 (2)外寛骨筋
  2)大腿の筋
   (1)伸筋群 (2)内転筋群 (3)屈筋群 (4)下腿の運動
  3)下腿の筋
   (1)伸筋群 (2)腓骨筋群 (3)屈筋群 (4)膝窩 (5)足の運動
   (6)筋支帯
  4)足の筋
   (1)足背の筋 (2)足底の筋
第5章 血液と循環系:心臓・血管系・リンパ系
 1.血液
   (1)血液の構成成分 (2)造血 (3)血球
 2.循環系
  1)心臓
   (1)心臓の外形,位置,心膜
  2)心臓の4室:心房,心室
  3)心臓の弁装置
   (1)房室弁:三尖弁,僧帽弁 (2)動脈弁:肺動脈弁,大動脈弁
  4)心臓の血管と神経
  5)心臓の壁構造
  6)刺激伝導系
 3.血管系
  1)動脈
  2)毛細血管
  3)静脈
  4)循環路
 4.肺循環
  1)肺循環の経路
   (1)肺までの経路 (2)肺胞と毛細血管 (3)肺からの経路
 5.体循環の動脈
  1)上行大動脈
  2)大動脈弓と3本の枝
   (1)総頸動脈 (2)外頸動脈 (3)内頸動脈 (4)脳の血管
   (5)鎖骨下動脈
  3)上肢の動脈
   (1)腋窩動脈 (2)上腕動脈 (3)橈骨動脈 (4)尺骨動脈
   (5)浅掌動脈弓 (6)深掌動脈弓
  4)下行大動脈(胸大動脈,腹大動脈)
   (1)胸大動脈とその枝 (2)腹大動脈とその枝 (3)総腸骨動脈とその枝
  5)下肢の動脈
   (1)大腿動脈 (2)膝窩動脈 (3)前脛骨動脈 (4)後脛骨動脈
 6.体循環の静脈
  1)上大静脈とその枝
   (1)腕頭静脈 (2)内頸静脈 (3)鎖骨下静脈 (4)腋窩静脈
   (5)上腕静脈 (6)橈骨静脈・尺骨静脈
  2)奇静脈系:胸部の静脈
   (1)奇静脈
  3)下大静脈とその枝
   (1)肝静脈 (2)腎静脈
   (3)副腎静脈・生殖腺静脈(精巣静脈・右卵巣静脈) (4)総腸骨静脈
   (5)内腸骨静脈 (6)外腸骨静脈と下肢の静脈 (7)大腿静脈・膝窩静脈
   (8)前脛骨静脈 (9)後脛骨静脈
  4)肝門脈循環
   (1)脾静脈 (2)上腸間膜静脈 (3)下腸間膜静脈
  5)皮静脈
   (1)外頸静脈 (2)上肢の皮静脈 (3)下肢の皮静脈
  6)硬膜静脈洞
 7.胎児循環
   (1)胎盤 (2)胎児の血液の循環
 8.リンパ系
  1)リンパ系の機能
  2)リンパ管
  3)リンパ本幹と胸管
  4)リンパ器官・組織
第6章 内臓
 (野田 亨)117
 1.消化器系
  1)口腔
   (1)口唇 (2)舌 (3)歯
  2)唾液腺
  3)咽頭
   (1)嚥下の諸相
  4)消化管の基本構造
   (1)粘膜 (2)粘膜下組織 (3)筋層 (4)漿膜(腹膜)または外膜
  5)食道
  6)胃
  7)小腸
   (1)十二指腸 (2)空腸と回腸
  8)大腸
   (1)盲腸 (2)結腸 (3)直腸
  9)肝臓
   (1)肝小葉 (2)小葉間結合組織(グリソン鞘)の構成 (3)門脈
  10)胆嚢
  11)膵臓
   (1)外分泌腺 (2)内分泌腺
 2.呼吸器系
  1)鼻腔
  2)副鼻腔
  3)喉頭
  4)気管・気管支
  5)肺
   (1)肺の構造 (2)胸膜 (3)呼吸のメカニズム
   (4)呼吸に関わる筋 (5)肺胞を構成する細胞
   (6)呼吸器系の病態
 3.泌尿器系
  1)腎臓
   (1)左右の位置 (2)組織構造 (3)尿の流れ
   (4)レニン・アンギオテンシン・アルドステロン(RAA)系
  2)尿管
  3)膀胱
  4)尿道
 4.生殖器系
  1)男性生殖器
   (1)精巣 (2)精子の経路 (3)前立腺
   (4)尿道球腺(カウパー腺) (5)陰茎
  2)女性生殖器
   (1)卵巣 (2)卵管 (3)子宮 (4)腟 (5)会陰と外陰
   (6)胎盤 (7)乳腺
 5.内分泌系
  1)松果体
  2)下垂体
   (1)後葉 (2)前葉 (3)中間葉
  3)甲状腺
   (1)組織構造 (2)甲状腺ホルモンの分泌 (3)病理
  4)上皮小体
  5)副腎
   (1)病理
第7章 神経系
 (小室正人)
 1.神経系とは
  1)中枢神経系と末梢神経系
  2)神経系の発生
  3)脳の進化と発生
   (1)魚の脳 (2)ヒトの脳の発生
 2.中枢神経系
  1)灰白質と白質
  2)髄膜とクモ膜下腔,髄液
  3)脳室
  4)髄液(脳脊髄液)の経路
 3.脳
  1)大脳(終脳)
   (1)大脳の表面 (2)大脳の内部
  2)間脳
   (1)視床 (2)視床下部 (3)視床後部
  3)中脳
   (1)大脳脚 (2)赤核 (3)黒質 (4)四丘体
  4)延髄
  5)小脳
   (1)小脳皮質の分類と機能
  6)脳と血管
   (1)大脳動脈輪(ウィリス動脈輪) (2)硬膜とその血管
 4.脊髄
  1)脊髄の概念
   (1)灰白質 (2)白質 (3)脊髄の動脈 (4)脊髄の硬膜
 5.伝導路
  1)下行性伝導路
   (1)錐体路 (2)錐体外路系
  2)上行性伝導路
   (1)体性感覚の伝導路
 6.末梢神経系
  1)脳神経
   (1)嗅神経 (2)視神経 (3)動眼神経 (4)滑車神経
   (5)三叉神経 (6)外転神経 (7)顔面神経 (8)内耳神経
   (9)舌咽神経 (10)迷走神経 (11)副神経 (12)舌下神経
  2)脊髄神経
   (1)頸神経叢 (2)腕神経叢 (3)胸神経 (4)腰神経叢
   (5)仙骨神経叢
 7.自律神経系(植物神経系)
  1)交感神経系(胸腰系)
   (1)交感神経幹 (2)副交感神経系(頭仙系)
第8章 感覚器
 1.視覚器
  1)視覚器の形
   (1)眼窩とその周辺 (2)眼瞼
  2)眼球
   (1)眼球壁 (2)眼球の内容
  3)眼の動脈
  4)眼と神経
   (1)視覚反射 (2)視覚の伝導路 (3)眼筋と神経
 2.平衡聴覚器
  1)聴覚器
   (1)外耳 (2)中耳 (3)内耳
  2)前庭器
第9章 運動からみた局所解剖学
 (中村陽市)191
 1.頭頸部
  1)顎(顎関節)の動き
   (1)顎関節の構造 (2)顎関節の運動
   (3)顎関節の脱臼(下顎脱臼) (4)顎関節症
  2)嚥下運動
  3)頸部の動き
   (1)頸部の構造 (2)頸部の運動 (3)環軸椎亜脱臼
 2.体幹
  1)脊柱の動き
   (1)脊柱の構造 (2)脊柱の運動 (3)脊柱の各部の運動
   (4)脊柱側弯症
  2)胸郭の動き
   (1)胸郭の構造 (2)胸郭の運動
  3)骨盤の動き
 3.上肢
  1)鎖骨の動き
   (1)胸鎖関節と肩鎖関節の構造 (2)胸鎖関節と肩鎖関節の運動
  2)肩甲骨の動き
   (1)肩甲骨の関節の構造 (2)肩甲骨の運動 (3)翼状肩甲骨
  3)肩(肩関節)の動き
   (1)肩関節の構造 (2)肩関節の運動 (3)腕神経叢損傷
   (4)五十肩
  4)肘(肘関節)の動き
   (1)肘関節の構造 (2)肘関節の運動
  5)手首(手関節)の動き
   (1)手関節の構造 (2)手関節の運動 (3)手根管
   (4)手根管症候群と猿手
  6)指の動き(母指以外)
   (1)指の構造 (2)指の運動(手根中手関節と中手指節関節)
   (3)指の運動(近位・遠位指節間関節) (4)中手筋による指の運動
  7)母指の動き
   (1)母指の構造 (2)母指の運動 (3)フロマン徴候
   (4)神経の損傷と手指
 4.下肢
  1)大腿(股関節)の動き
   (1)股関節の構造 (2)股関節の運動
  2)膝(膝関節)の動き
   (1)膝関節の構造 (2)膝関節の運動 (3)前十字靱帯の断裂
  3)足首(足関節)の動き
   (1)足関節の構造 (2)足関節の運動

 索引