やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 『カラー写真で学ぶ基礎看護技術』第3 巻は,「シャワー浴の援助」「食事の援助」「排泄の援助」「呼吸を整える援助」「体温を整える援助」「採血の援助」で構成されています.
 まず,「シャワー浴の援助」は,患者にとってベッド上での清拭による清潔保持から前進し,健康回復の実感が持てる生活行動の援助であると同時に,ベッドから離れ浴室までの移動,浴室という特別な環境変化,石鹸の使用などによって,身体的負荷や転倒の危険をはらんでいる生活行動でもあります.また,看護学生が臨地実習で多く関わる援助の一つです.そこで,本書では,患者の安全を確保しながら看護師がどのように行動すれば良いのかが伝わるように整理しました.
 次に,「食事の援助」と「排泄の援助」を取り上げています.「食べることと排泄すること」はひとにとって基本的な生理的欲求であり,日々何度となく繰り返される生活行動です.また,ひとにとって「食べること」は一番の楽しみや喜びであり,「排泄すること」は,人生の最後まで他人の世話になりたくないと願うプライベートな生活行動です.つまり,健康生活を営む上で最も中核にある生活行動なのです.援助を任される看護師はそのことを理解し,誠実に患者と向き合い,関わってほしいと思います.
 さらに,「呼吸を整える援助」「体温を整える援助」「採血の援助」の治療的援助に関連する項目を取り上げています.治療的援助は,その方法によっては患者の健康状態の急激な悪化や苦痛を与えることにもなりかねない援助です.つまり,形態機能学や疾病の知識をもって適切にアセスメントができていることが前提ということです.その上で,一定の決められた方法を確実に正確に実施できるようになることが求められます.本書では,初学者の看護学生が安全で根拠のある技術を獲得できることをめざし,手技が詳細に理解できるように手元の写真を多くしています.
 本書第3 巻は,先に発行された第1 巻と第2 巻に続くものとしてまとめました.3 冊を通して,さまざまな看護技術のなかでも,看護学生が身につけてほしい基本的な技術が示されています.そして,看護学生が臨地実習で遭遇するであろう場面を想定したCASE(事例)を設定したことで,健康障害の程度により患者個々に適切な援助方法をより多面的に思考できると考えています.しかしながら,本書に示した援助方法が唯一ではありません.看護技術の修得において,皆様が本書の援助方法をヒントにさまざまなことを考え創造し,何度も試行錯誤を繰り返しながら,より患者に添った実践につなげられるように活用していただければ幸いです.
 看護技術の提供は,看護そのものであり,看護師の価値観,知識や技の程度が反映され,それらすべてが自分の手を介して患者に伝わります.常に,患者にとって最善の方法は何か,看護の視点から考え続ける姿勢をもち,ひとつひとつの技術を丁寧に実践していかれることを願っています.
 最後になりましたが,第3 巻発行にあたり,全体構想等のご指導ご助言をいただきました北里大学名誉教授・千里金蘭大学看護学部客員教授岡崎寿美子先生に深く感謝いたします.
 2014 年6 月
 著者代表 山本直美
 はじめに

第1章 シャワー浴の援助
 (久米弥寿子)
 CASE 左半身不全麻痺患者のシャワー浴
第2章 食事の援助
 (伊藤朗子・山本直美)
 CASE 1 ベッド上臥床での食事援助
 CASE 2 口腔内の清潔ケア
 CASE 3 車椅子での食事援助
 CASE 4 義歯の清潔と管理
第3章 排泄の援助
 (梅川奈々)
 CASE 1 臥床患者のオムツ交換
 CASE 2 尿器,便器の使用方法
第4章 呼吸を整える援助
 (冨澤理恵)
 酸素吸入
 CASE 1 病棟における酸素吸入
 CASE 2 酸素ボンベによる吸入
 吸引
 CASE 口腔・鼻腔内吸引
第5章 体温を整える援助
 (山本純子)
 CASE 1 発熱(軽熱)がある患者への冷罨法
 CASE 2 発熱(中等熱)がある患者への冷罨法
第6章 採血の援助
 (冨澤理恵)
 CASE 採血の実施

 COLUMN
  満足感をつくりだすシャワー浴
  日本人の「一汁三菜」と健康
  和食膳の配置の意味
  看護の視点からのポジショニング
  食に関することわざ
  食べることの意味
  オムツの経済的負担について
  排便時に排尿が見られる理由
  加湿の基準
  ガスボンベ充填圧
  吸引器具は使い捨て?
  凍傷の予防
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  採血で貧血?
  針刺し“事故”について