やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第3版 はしがき
 この本のコンセプト(何を学ぶことができるのか,何が身につくのか)は,「だれもが研究を行ううえで知っておくべき必要最低限の知識」,「教えてくれなかった研究者としてのマナー(実はとっても大事)」,「うっかりミス,カン違い,無知に気づかせてくれるテキスト」,「やりたい研究を実施するための前提条件(知識・態度・こころえ)に気づく」,「社会人としてのコンピテンシー(総合的能力)を知る」,「これからはじまる人生行路の荒波を乗り越えるための羅針盤になる」としました.もっと端的に言い換えるならば,この本を読んで,いつか「あ〜,知っておいてよかった」と思ってもらえたら嬉しいです.そして,とにかく,わかりやすく,見やすく,使いやすく,親しみやすいように,工夫をしました.
 いま,看護専門職が新たに身につけなければならない「知」の内容が急速に増加しています.世界的にいえば「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」:SDGs(エスディージーズ)が代表的なものとしてあります.SDGsとは2015年9月の国連サミットで採択されたもので,国連加盟193カ国が2016年1月から2030年の15年間で達成する地球全体の目標です.「どうすれば,これからもこの惑星で人類は生存できるのか」と心配し,全世界の人々が案を持ち寄って,議論して,決定した壮大な「人類の約束事」です.そのために17の目標を挙げています.そのひとつに,「すべての人への健康保障;誰一人取り残さない」という目標があります.そして,この目標達成のためには,看護専門職は必要不可欠な存在とされています.健康課題を解決するためには,人々の生活の多様性,複雑性,地域性を考慮しなければならず,社会環境の変化を知らなければなりません.なかでも,グローバル(世界が身近になる・地球市民になる)化,オンライン(コンピューターのネットワーク上でつながる)化は,否応なしに押し寄せて来ています.第3版改訂では,これらの社会情勢の変化に対応できるための「知識」を新しく追加しました.
 ここに,本著がすべての人々が21世紀を人間らしく生き抜くための一助となることを夢みて.
 2021年12月12日
 李 節子
Part1 研究とは
 1 研究の原点について
  「研究」にとりかかる前に
  専門分野(領域)と「研究」
  「研究」って何?
  「研究」によって創られる「言葉」
  知的筋肉バトル―「研究」の生みの苦しみと喜び
  研究の原点―何のための,誰のための研究なのか
  科学者とは
  「学ぶ」ということ
 2 看護領域における研究とは
  「看護研究」とは,なんでしょうか?
  看護研究のテーマ(課題)について
  学際的な看護研究
  看護研究テーマ(課題)の「切り口」
 3 看護研究と看護実践
  看護とヒューマニズム
  看護実践と看護研究
 (資料1)看護研究の動機・テーマ(課題)のチェックシート
Part2 「看護実践力」と「研究的思考」
  看護実践に必要とされる能力
  「地球市民」リテラシー
  インテグリティ
  コンピテンシー
  メタ認知
  21世紀の看護:ニュージェネレーション
  SDGsとUHC:グローバル化と看護の役割
  在日外国人の健康支援を担う看護専門職
Part3 文献検索・文献講読
 1 文献検索・文献講読の基礎知識
  看護の文献を探して,読むことの意義
  文献とは,一次資料・二次資料とは
  情報リテラシー(情報活用能力)
  「情報」とは
  データとは
  エビデンスとは
  ことば(用語)の再発見と修正
  概念とは
  「看護診断」も「概念」
  そのお店のコンセプトは
  「こころの健康」とは
 2 文献検索の実際
  図書館で文献を探す
  二次資料(文献検索データベース)の種類
  クリティカルシンキングとクリティーク
  「無知の知」そして「自信と勇気」
 (資料2)文献検索のチェックシート
Part4 研究論文の構成要素
  論文の種類
  学術論文の構成
  論文を書くということ
Part5 論文作成の基本ルールとマナー
  研究計画書とは
  論文の題名(タイトル)
  筆者とオーサーシップ
  要旨(抄録,まとめ)
  キーワード
  論文の本文
  謝辞
  文献
  全体の文章の段落文字・番号
  投稿規程
 (資料3)研究論文「謝辞」の具体的記載例
 (資料4)学術論文原稿の内容チェックシート
Part6 看護研究における倫理
 1 医療分野における倫理規制
  ニュルンベルクの綱領とヘルシンキ宣言
  研究の倫理審査委員会
 2 看護研究と倫理規定
  ICN看護師倫理綱領
  個人情報保護法と看護研究
  OECD理事会勧告8原則
  看護職の倫理綱領と個人情報の保護
  「適正に取り扱う」とは
  オンラインとオフライン
  オンライン調査
 (資料5)研究論文(抄録等)「倫理的配慮」の具体的記載例
 (資料6)子どもを取り巻く地域の「助け合い」と伝承に関する調査のお願い
Part7 看護研究方法論
 1 研究のアプローチ
  「素朴な疑問」の解決ステップ
  探求のアプローチ法─帰納法と演繹法そして仮説
 2 研究方法
  研究方法の4分類
  研究データ収集法の4分類
 3 研究デザイン
  「研究デザイン」と「概念枠組み」
  「独立変数」「従属変数」とは
 4 量的・質的研究について
  量的研究・質的研究
  統計学(統計的分析)
  4つの測定尺度
  信頼性・妥当性
  研究における量的・質的研究のリスク
Part8 プレゼンテーション(発表)
 1 研究におけるプレゼンテーション
  研究してプレゼンテーションするのは,なぜ?
  研究発表・学びの場:学術集会
  プレゼンテーション:口演発表とポスター発表
 2 プレゼンテーションでの注意事項
  発表で使う日本語の形式 「ですます調」と「である調」の使い方
  発表全体の内容と構成
  発表時間
  話し方
  服装・身だしなみ
  姿勢・態度
  スライド・配布資料
  美しいスライド作成の工夫
  オーラルコミュニケーション
  オンライン・コミュニケーション
  データダイエットについて
 3 座長・演者として
 4 自分の「あがり」との付き合い方
 (資料7)オンライン・コミュニケーションこころえチェックシート
 (資料8)学会・シンポジウム等における演者・座長の具体的やりとりの一例
 (資料9)プレゼンテーション(発表)チェックシート
Part9 研究指導
  研究指導の前に
  看護研究指導(授業)のねらい
  看護研究評価基準
  研究活動のプロセス
  必ずすべき研究活動
  研究計画発表(中間発表)
  研究活動の「要かなめ」
  論文の書き方
 (資料10)看護研究授業の進め方(例)
 (資料11)看護研究の基礎評価表(ゼミ教育)
 (資料12)看護研究(論文作成)評価表
 (資料13)研究計画書
 (資料14)抄録の書き方演習ノート タイトル 緒言〜結論まで
 (資料15)実際の学術論文とそのおさえておくべきViewpoint