やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第5版の序文
 本書(第5版)は精神医学,精神保健学,心理学,精神看護学の発展に貢献された先生方が執筆された第4版を受け継ぎ,成長,発達,社会適応の側面から心の健康をとらえるという基本的な考え方に立って編集しています.序章「精神保健とはなにか」,第1章「心の発達」,第2章「セクシュアリティと精神保健」,第3章「生活の場とクライシス(精神的危機)」といった総論部分,第4章「医療現場における精神的危機」,第5章「がんと共に生きる人の精神保健」,第6章「災害後の精神保健活動:看護職のこころのケア」,第7章「アディクションと精神保健」といった各論部分により構成しています.いずれの章も,人生で出会うさまざまな事柄と精神の健康について理解を深めるために不可欠な内容です.このたび,第7章「アディクションと精神保健」という新たな章が加えられています.著者の松本俊彦先生は,物質関連問題,すなわち物質使用が引き起こす健康被害や社会的な弊害に関し,数々の講演をされ,マスコミでもよくお見かけする先生です.松本先生に本章を執筆いただくことで,わたしたちの当たり前の身近な生活の有り様と心の健康とは強くつながり合っていることを実感します.心の健康をより身近なこととして理解しやすくなったのではないかと思います.
 本書を学ぶことで,人は人生のどこかで心の健康が損なわれるかもしれないと理解するようになるでしょう.それはあなたの家族かもしれないし,親友かもしれません.また,あなた自身かもしれません.人は学校や職場,あるいは家庭で,思うようにならないことを山ほど経験し苦悩します.ときには自らの対処能力を超え,家族や友人による十分な支えも得られず,心の健康を保てなくなるかもしれません.小学校でのいじめ,中学校での不登校やひきこもり,解雇,破産,結婚,離婚,定年退職など,人によってはこうした予測しようもなかったできごとを経験します.自分に自信がもてなくなるかもしれません.しかし,たとえ人生のどこかで心の健康を損なってしまうことがあっても,家族の世話に寄りかかるばかりでなく自立して社会の一員として希望する人生を再び送りたいと思うものです.われわれ看護職は,そうした支援の担い手となり,さらに手から手へと支援をつないでいく役割が求められています.
 本書は教科書として役立つだけでなく,看護学を専攻する学生にとって人生の道案内的な内容も多く含まれています.看護学生はもちろん,すでに卒業されて日常の臨床現場や地域保健活動において活躍されているみなさんにとっても,実践の手引きとしてお役立ていただけたら幸いです.
 最後に,本書の改訂に関してご尽力いただきました医歯薬出版株式会社の編集担当者のみなさま,関係各位に心より御礼を申し上げます.
 2020年2月
 編者一同


第4版の序文
 本書(第4版)は1998年の初版から18年目を迎えました.精神医学,精神保健学,心理学,精神看護学の発展に貢献された先生方により執筆された第3版を受け継ぎ,人間の心の健康を成長,発達,社会適応の側面から捉え,心の健康を守るという「精神看護学」の考え方に基づいています.
 本書は,序章「精神保健とはなにか」,第1章「心の発達」,第2章「セクシュアリティと精神保健」,第3章「生活の場とクライシス(精神的危機)」といった総論部分と,第4章「医療現場における精神危機」,第5章「がんと共に生きる人の精神保健」,第6章「災害後の精神保健活動:看護職とこころのケア」といった各論部分により構成されています.いずれの章も,人が人生で出会うさまざまな事柄と精神の健康について理解を深められる内容です.
 本書を学ぶことで,人は人生のどこかで精神の健康が損なわれるかもしれないと理解するようになるでしょう.それはあなたの家族かもしれないし,親友かもしれません.また,あなた自身かもしれません.人は学校や職場で,あるいは家庭で思うようにいかないことを山ほど経験し苦悩します.時には自らの対処能力を超え,家族や友人による十分な支えも得られず,精神の健康を保てなくなるかもしれません.小学校でのいじめ,中学校での不登校,高校中退後のひきこもり,就職してからの解雇,破産,離婚など,人によってはこうしたことを意図していなかったこととして経験します.自分に自信がもてなくなるかもしれません.しかし,たとえ人生のどこかで精神の健康を損なってしまうことがあっても,家族の世話に寄りかかるばかりでなく自立し,社会の一員として希望する人生を再び送りたいと思うものです.看護職には,そうした支援の担い手となる役割が求められています.
 本書は教科書として役立つだけでなく,看護学を専攻する学生にとって人生の道案内的な内容も多く含まれています.看護学生はもちろん,すでに卒業されて日常の臨床現場や地域保健活動において活躍されているみなさんにとっても,実践の手引きとしてお役立ていただけたら幸いです.
 最後に,本書の改訂に関してご尽力いただきました医歯薬出版株式会社の編集担当者のみなさま,関係各位に心より御礼を申し上げます.
 2016年11月
 編者一同


第3版の序文
 本書の第2版が出てからすでに5年余りがたった.この間,精神保健をめぐる状況は大きく変化した.年代別にみても子どもの場合には,不登校だけではなくいじめや軽度発達障害(多動性障害など)の問題がよくとり上げられるようになってきた.また,青年期におけるいわゆる「社会的ひきこもり」の増加,成人期における自殺の増加やうつ病・過労死の問題,さらには超高齢社会を目前としての認知症の問題などは精神保健だけではなく社会的な問題にもなっている.
 そしてこうした社会的背景の変化をもとに発達障害者支援法や障害者自立支援法,改正労働安全衛生法,自殺防止対策基本法といったような法律の制定や改正が行われたのもここ5年である.
 ストレスの多い現代社会では,さまざまなメンタルヘルス上の問題が増える一方でそれらに対応できる家族や共同体の力が衰えているため,行政・福祉的な施策やボランティア活動も含めた対応とともに専門的な支援が求められるようになっている.また,医療現場においても生活習慣病や慢性疾患,癌の末期などでは患者の気持ちや生活背景など精神的な面を考慮したサポートが重要になってきているだけではなく,医療スタッフ間に生じる人間関係の問題等への対処など看護業務を円滑にこなしていくためにも精神保健の知識が必要とされるようになっている.
 本書は,こうした社会状況の変化や医療現場におけるニーズの変化を踏まえて内容を一部見直し今回第3版を発刊することにした.精神保健とは,精神的健康を維持するだけではなく精神的危機に陥ったり精神障害となった場合にでも,いかに健康な部分をとり戻していくか,を見据えて行う活動である.看護学生はもとより日常の臨床や地域保健活動にとり組んでいる看護スタッフの実践ガイドとしても本書がお役に立てれば幸いである.
 2007年7月
 藤田長太郎


第2版の序文
 医学や関連諸科学の飛躍的な進歩は医療内容の専門化・高度化をもたらし,医療が受け持つ範囲を拡大してきた.今日では,保健医学,予防医学,治療医学,リハビリテーション医学などを包括した総合的医療が社会のニーズとなっている.
 精神保健は,精神の健康に関する学問であり,精神的健康を維持・向上させる実践活動でもある.変化の激しい現代社会においては,社会的・心理的ストレスに曝される機会が多く,さまざまな不適応状態に対する精神保健的対応が急務となっている.このような精神的問題を取り扱うには,現象として現れた症状だけでなく,その背後にある個人の生活史や対人関係にも目を向ける必要がある.
 精神保健的対応を必要とする問題は,実社会の中だけではなく,医療現場にも認められるようになってきた.内科や外科などの一般診療科に通院中・入院中の患者に発現し,身体疾患の治療阻害要因になってしまう精神的問題の頻度は決して少なくない.そのような場合には,過去に解決したと思われていた生活上の課題が再び患者の苦痛の源になっていることが少なからず存在する.それらは,発達過程上の問題,性の問題,職場・学校・家庭・近隣地域などの生活の場で発生する問題などである.したがって,看護スタッフはライフステージ上の諸問題に関する基本的な知識を身に付けておくことが求められている.
 さらに今日の医療現場においては,難治性で慢性の身体疾患患者や癌末期患者,サポートシステムの脆弱な高齢患者や児童患者などに対する危機介入も重要な看護業務となっている.また,阪神・淡路大震災を契機に,自然災害・人為災害の被災者が受けるトラウマに対する継続的な精神保健的支援活動の必要性が認識され,その領域における看護スタッフの役割も重要となっている.
 本書は,不安や葛藤などの正常範囲の心理的・精神的反応から,明らかに病的状態までの幅広い精神状態に対して適切な精神看護を実践するために,個々の問題の医療現場における位置づけを明らかにし,その理論的理解と臨床的理解を深めることを目的とした書である.看護学生はもちろん,日常の臨床において,看護スタッフの実践の手引きとしても少しでもお役に立てれば幸いである.
 2001年7月
 太田保之


序文
 医学や関連諸科学の飛躍的な進歩は医療内容の専門化・高度化をもたらし,医療が受け持つ範囲を拡大してきた.今日では,保健医学,予防医学,治療医学,リハビリテーション医学などを包括した総合的医療が社会のニーズとなっている.このような現象の社会的背景には,人口の高齢化,疾病構造の変化,人々の健康に対する関心の高まりなどが存在しており,医療や福祉における看護スタッフの果たす役割は量的にも質的にも極めて大きなものになっている.これを受けて新しくカリキュラム改正が行われ,従来各看護学でバラバラに扱われた内容と,精神保健などを統合して精神看護学として独立した.
 精神保健は,精神の健康に関する学問であり,精神的健康を維持・向上させる実践活動でもある.変化の激しい現代社会においては,社会的・心理的ストレスに曝される機会が多く,さまざまな不適応状態に対する精神保健的対応が急務となっている.このような精神的問題を取り扱うには,現象として現れた症状だけでなく,その背後にある個人の生活史や対人関係にも目を向ける必要がある.
 精神保健的対応を必要とする問題は,実社会の中だけではなく,医療現場そのものにも認められるようになってきた.内科や外科などの一般診療科に通院中・入院中の患者に発現し,身体疾患の治療阻害要因になってしまう精神的問題の頻度は決して少なくない.そのような場合には,過去に解決したと思われていた生活上の課題が再び患者の苦痛の源になっていることが少なからず存在する.それらは,発達過程上の問題,性の問題,職場・学校・家庭・近隣地域などの生活の場で発生する問題などである.また,それらの問題が常に明確な形で顕在化するとは限らない.表現型を変えて関連問題として露呈することもあるし,不安・抑うつなどの精神症状として現れることもある.別の身体症状として出現することも知られている.したがって,看護スタッフはそれらのライフステージ上の諸問題に関する基本的な知識を身に付けておくことが求められている.
 さらに今日の医療現場においては,難治性で慢性の身体疾患患者や癌末期患者,サポートシステムの脆弱な高齢患者や児童患者などに対する危機介入も重要な看護業務となっている.慢性疾患や障害を抱えて生活する患者が増加し,人生に関する価値観も多様化しているため,従来の疾患単位を中心にした知識では対応不可能な問題に直面することが多くなっている.看護スタッフには,患者やその家族が有するニーズを的確に把握する感性,生命の尊厳に対する倫理観,高度の専門知識を基盤とした総合的な分析力・判断力・実践力,他の医療スタッフとの協調性などが求められている.さらに,対人関係の心理学やコミュニケーション論に関しても予備知識が必要である.
 本書は,不安や葛藤などの正常範囲の心理的・精神的反応から,明らかに病的状態までの幅広い精神状態に対して適切な精神看護を実践するために,個々の問題の医療現場における位置づけを明らかにし,その理論的理解と臨床的理解を深めることを目的とした書である.看護学生はもちろん,日常の臨床において,看護スタッフの実践の手引きとしても少しでもお役に立てれば幸いである.
 1998年8月
 太田保之
序章 精神保健とはなにか
 (半澤節子)
 1 精神の健康とストレス
 2 精神の健康と心身の変化
  事例:中学生の弟のひきこもり
 3 精神の健康とライフサイクル,セクシュアリティー,生活のなかのクライシス
 4 精神の健康と医療現場,災害被害者,アディクション
 5 精神の健康と社会とのかかわり
第1章 心の発達
 (河野伸子)
 1 はじめに
 2 発達の様相
  発達の原則
  世代を通してつながるいのち
 3 ライフサイクル(人生周期)という考え方
 4 各ライフサイクルにおける発達
   1)出生前の時期
   2)乳児期(出生〜1歳半ごろ)
   3)幼児期前期(1〜3歳ごろ)
   4)幼児期後期(遊戯期)(3〜6歳ごろ)
   5)学童期(およそ6〜12歳)
   6)青年期(およそ10〜30歳)
   7)成人期(およそ25〜30歳から65歳まで)
   8)高齢期(老年期)(65歳以上〜死まで)
第2章 セクシュアリティと精神保健
 (宮原春美,中根秀之)
 1 人間の性(セクシュアリティ)とその発達
   1)性の捉え方
   2)セクシュアリティの意義
   3)セクシュアリティの発達
   4)セクシュアリティへの対応
   5)性に関する精神健康問題
第3章 生活の場とクライシス(精神的危機)
 1 クライシスとはなにか(戎 正司,佐藤博俊)
  ストレスとレジリエンス
  ライフイベント
  クライシスとは
  クライシスの分類
   1)内的成長に伴う危機(発達危機)
   2)状況的危機
   3)社会的危機
  クライシスの発生と経過
  クライシスの回避・解決モデル
  クライシス対処と自殺防止
  クライシスにおける看護師・保健師の役割
 2 家庭における危機(服部祥子)
  現代の家庭とその課題
   1)家庭の現状
   2)結婚および夫婦関係
   3)親子関係
  家庭における危機的状況
   1)夫婦関係における危機的状況
   2)親子関係における危機的状況
  家庭における危機と今後の課題
   1)家庭・家族の新しい形と機能
   2)高齢社会と家庭
 3 学校における危機(渋谷恵子)
  学校教育の動向と問題
  不登校
   1)不登校の要因
   2)不登校への対応
  非行
   1)非行の要因
  いじめ
   1)いじめの要因
   2)いじめられる子ども・いじめをする子ども
   3)いじめに対する対応
  体罰
  発達障害
   1)発達障害の概要
   2)特殊教育から特別支援教育への転換
  社会的ひきこもり
   1)ひきこもりの定義と実態
   2)ひきこもりに対する取り組み
  養護教諭(学校ナース)の役割
 4 職場における危機(浜田芳人,太田保之)
  職場環境の変化と職業性ストレス
  職場のメンタルヘルス不調の現状
  精神障害と労災認定の現状
  産業精神保健の動向
  職場のメンタルヘルスケアの実際
   1)新メンタルヘルス指針と4つのケア
   2)3段階の予防対策
  産業保健師の役割
 5 地域における危機(菅崎弘之,藤田長太郎)
  地域精神保健の動向
  地域における高齢者危機
   1)高齢者の心理特性
   2)認知症高齢者に関する危機
   3)認知症高齢者を抱える家族の危機
   4)高齢者の自殺の危機
第4章 医療現場における精神危機
 1 医療現場の危機に影響する要因(小島操子)
  危機を引きおこす出来事
  出来事の受け止め
  ソーシャル・サポート
  対処機制/防衛機制
   1)対処機制
   2)防衛機制
 2 危機のプロセスと看護介入
  さまざまな危機モデル
  危機の問題解決モデル
  フィンクの危機モデルと看護介入
   1)危機のプロセス
   2)危機への働きかけ
 3 慢性疾患・障害における危機
  障害を伴った患者の特性
  障害の受容に至るプロセス
  障害の受容に影響する要因
  障害受容への援助
   1)障害受容のプロセスに応じた援助
   2)日常生活の援助と日常生活動作の拡大
   3)感覚遮断・過負荷に対する援助
   4)役割修正・再獲得への援助
   5)ソーシャル・サポートと社会資源の活用
 4 医療現場の人間関係(川名典子)
  医療現場の人間関係の現状
   1)チーム医療
   2)医療者間の人間関係
  看護職の精神保健
   1)看護職のストレス
   2)看護職の精神保健と自己主張
   3)リエゾン精神看護─看護師のための看護師
 5 医療現場における精神的ケアの実際
  治療的・発達促進的環境─看護がもつ潜在的な精神的ケア
  看護師による積極的な精神的ケア
   1)一般病院のなかの精神的ケアの対象者
   2)一般病院における精神的ケアの実践
第5章 がんと共に生きる人の精神保健
 1 ホスピス・緩和ケア(田村恵子)
  ホスピスの歴史
   1)ホスピスの語源
   2)ホスピスの始まり
   3)近代ホスピスの設立
   4)日本のホスピス
  ホスピスの理念と原則
  緩和ケアの発展
   1)緩和ケアの定義
   2)緩和ケアの適用
 2 がんサバイバーシップ;がんと共に生きる人々のエンパワーメント
  がんサバイバーシップ
   1)がんサバイバーとがんサバイバーシップ
   2)がんサバイバーシップの4つのステージ
   3)日本におけるがんサバイバーシップ
  がん対策基本法とがん医療のネットワーク
   1)がん対策基本法の目的と理念
   2)地域におけるがん医療のネットワークづくり
 3 がんサバイバーの心理とケア(前滝栄子)
  がん告知とインフォームド・コンセント
   1)がん告知における日本の現状
   2)真実を伝える
  がん患者の心理的特徴
   1)がん患者の心理プロセス
   2)がん患者の主な精神症状とその対応
  終末期の生存の時期におけるケアの実際
   1)苦痛の緩和
   2)その人らしさを重視した日常生活支援
   3)十分なコミュニケーション
 4 がんサバイバーを支援する家族のケア(市原香織)
  家族の理解
   1)看護における家族の概念
   2)家族の状態のアセスメント
  がんサバイバーの4つの時期と家族のケア
   1)急性期の生存の時期の家族のケア
   2)延長された生存の時期における家族のケア
   3)長期的に安定した生存の時期における家族のケア
   4)終末期の生存の時期における家族のケア
  死別後の家族のケア
第6章 災害後の精神保健活動:看護職とこころのケア
 (加藤 寛)
 1 災害の及ぼす心理的影響
  正常な心理的反応
  トラウマ体験とPTSD
   1)PTSDの歴史的変遷
   2)PTSDの主症状
  死別と悲嘆反応
  二次的ストレスがもたらす影響
 2 被災者・被害者に対する心理的ケア
  こころのケアの必要性と基本となること
  必要な戦略
   1)積極的に被災者のもとに出向く(アウトリーチ)
   2)精神的な支援活動であると強調しすぎず,求められていることを行う
   3)正しい知識をもつ
   4)精神症状をスクリーニングする
   5)多職種が連携する
  災害後のメンタルヘルスケアの実際─阪神・淡路大震災後の活動
  東日本大震災後の活動
 3 災害救援者の受ける心理的影響とその対策
  災害救援者の心理的影響
  看護職の受けるストレス状況
  災害救援者を守るために
第7章 アディクションと精神保健
 (松本俊彦)
 1 物質関連問題の動向
  アルコール関連問題の実態と対策
   1)疫学
   2)疾病負荷量
   3)社会的損失
   4)アルコール健康障害対策基本法
  わが国における薬物乱用の推移と近年乱用されている薬物
   1)覚せい剤
   2)睡眠薬・抗不安薬
   3)大麻
   4)危険ドラッグ
   5)その他の薬物
 2 物質依存症とはどのような病気か
  「依存症」という病気の歴史
   1)道徳的問題と見なされていた時代
   2)2人の「アル中」の出会いと自助グループの誕生
   3)依存症概念の成立
  物質依存症の特徴
   1)原発性の病
   2)慢性・進行性・非可逆性の病
   3)否認の病
   4)死に至る病
   5)交代性・「伝染」性の病
 3 物質依存症の治療と回復
  治療の歴史
   1)隔離や罰の限界
   2)自助グループの誕生・久里浜方式
   3)その後の物質依存症治療
  物質依存症治療の現在
   1)「慢性疾患」としての物質依存症
   2)回復のための選択肢と治療継続性
   3)底つき体験・否認打破から動機づけ面接へ
   4)家族の支援
  薬物問題をめぐる諸問題
   1)患者の違法薬物使用を知った医療者の対応に関する法的問題
   2)刑の一部執行猶予制度
   3)ハームリダクション
   4)学校における薬物乱用防止教育
 4 非物質依存症(嗜癖行動)の概念と対策の現状
  非物質依存症は存在するのか
  ギャンブル障害
   1)ギャンブル障害の実態
   2)ギャンブル等依存症対策基本法と治療・相談支援体制の整備

 索引