第3版 改訂の序
本書「看護ケアの根拠と技術」では,初版および第2版のサブタイトルを「学ぶ・試す・調べる」としていました.そこには,学ぶ・試す・調べることにより根拠を理解し,技術の応用力・発展力が身につき,「臨床において個別的で創造的なケアをすることができる」,「看護技術は発展する」という考えが基盤にありました.この考えは今も変わりません.
本書の読者の方々からは,根拠を列挙するのみならず,根拠に基づいてケアを行ううえでのポイントや禁忌が示されており実践的であること,また,多角的な見地で根拠を示したうえで看護現場での現実的な対応や工夫が提案されているところに価値を認めていただいております.また,追加検討が必要な事項や今後の課題を示した「さらに検証」が自身の研究テーマの検討に役立ったという声もいただきました.
このような声から,本書がねらいとした「臨床において個別的で創造的なケアをすることができる」「看護技術は発展する」という思考が進んでいるという感覚がありました.そこで,第3版では本書の意義を再検討し,サブタイトルも「学ぶ・活かす・共有する」へと変更しています.
このサブタイトルは以下のような本書の活用意義を表しています.
1)看護者は,ケアの方法にはどのようなものがあるのか,あるいは自分が考えたケアの妥当性について,まず調べる(学ぶ).
2)そこから得られた知識を対象者に適用できるかを考え,工夫する(活かす).
3)実施したケアの効果を公表する(共有する).
この3)に該当する研究発表が活性化し,それが,さらに本書にも反映し,「看護技術は発展する」というサイクルを促進することを期待しています.
第3版では,実践現場の変化をとらえて,新たなエビデンスの追加検討と基本技術項目・根拠の見直しを行い,内容の刷新を図りました.多職種連携やチーム医療が重要となる今,他職種の技術を応用できる部分も取り入れて看護技術を発展させたり,連携・協働するための共通の技術をつくり出す視点も取り入れました.また,「図表やイラストを多く盛り込んでほしい」とのご要望にこたえ,ビジュアル化を図りました.
今後もこれまでと同様に,看護技術に関連する理論と実践を注意深く見つめ,さらなる検討を重ね,本書を発展させていきたいと思います.
改訂にあたり,本書を活用していただいている読者の皆さま,そして医歯薬出版編集部の皆さまのご支援に深く感謝申し上げます.
2018年12月
編者ら
第2版 改訂の序
本書は,初版の発行から既に7年が経過しました.この間に,看護技術に関する研究は積み重ねられ,また初版で掲載していたガイドラインの刷新等もあり,改訂の必要性に迫られました.そこで,初版発行後に新たなエビデンスが出てきたものを検討し,全面的に基本技術項目・根拠の見直しを行い,内容の差し替えを行いました.
なお,本書では,ひとつひとつの看護技術のケアの根拠を多角的に捉え,それらを丁寧に解説することに努めています.なぜなら,看護職は根拠をふまえた基本技術を修得しているだけでは,ユニークな存在である対象者に適した看護を実践することは困難だからです.看護の現場では,基本的知識を踏まえて,対象に応じた看護技術の応用・発展のさせ方を考えることが必要になります.したがって本書は,対象者に適した看護援助を創意工夫していくことができるように,臨床での技術のポイント,実証報告,さらに検証,と思考を深めていけるように構成しています.また,禁忌事項の項目は,医療安全教育にも役立てられると考えます.
看護職が目指す,個別的で質の高い看護,説明できる看護実践のためには,ホリスティックな観点でのアセスメント能力,コミュニケーション能力,看護技術力,そして科学的思考が求められます.本書がその一助になれば幸いです.「看護技術は発展する」という考えのもと,今後も看護技術に関連する理論と実践を注意深く見つめ,さらなる検討を重ね,本書を発展させていきたいと思っています.
改訂にあたり,これまで本書を活用していただいている読者の皆様,そして医歯薬出版編集部の皆様のご支援に深く感謝申し上げます.
2013年1月
編者ら
はじめに
看護専門職は,看護の専門的知識と技術を活用して,対象者に最適な個別的で創造的な看護ケアの実践を目指します.そのヒューマニスティックな行為には,科学性や論理性が求められることは言うまでもありません.期待する看護の結果が論理性をもって予測でき,学問に支えられた自信ある行動がとれれば,どんなにかいいでしょう.しかし,科学性や論理性という側面では,臨床看護研究の困難さも影響してか,特定の看護ケアの根拠が示されるケースは決して十分ではありません.
これまで,看護学に関連する医学的知識や看護研究による実証,さらには経験に基づく知識などを基盤として,看護教育では看護技術の原理が教えられてきました.また,現状では,学んだ基本をどのように応用すればよいかについては,実習体験からの学びや卒後教育に委ねられている部分が大きいと言えます.基本だけを覚えてきた学生にとっては,臨床の場で,柔軟に考え,技術を変容させて応用することができず,戸惑うこともあります.
そこでこの本では,基本技術の応用や発展のさせ方に重点をおき,臨床への適応の助けとなること,今後の臨床看護実践と看護研究の発展に役立つことを目指した内容にしました.この本をもとに“学び”“試し”そして“調べる”という学習が,EBNの実践に必要な,根拠を“探し出すこと”や“つくり出すこと”そして“使うこと”という態度の習得にもつながるのではないかという期待もあります.
この本の章立ては,「看護基礎教育における技術教育のあり方に関する検討会報告 看護基本技術」の項目を考慮して決定しました.各章の内容は,(1)看護援助の必要性,それを判断するためのミニマムデータとアセスメントの概念図,(2)基本技術/一般的な技術(安全・安楽・動作経済の面で効果的な方法,臨床における禁忌事項)とは何か,(3)応用技術(基本技術のままでは何が不足なのか,守っているポイントと応用しているポイント,実証報告はあるがさらに追加検証が必要なケースの検証方法,経験知の場合どのような観点で検証するとよいか)とは,どのようなものかを取り上げています.
「学ぶ・試す・調べる 看護ケアの根拠と技術」という本書のタイトルは,根拠がわかることで技術の応用力・発展力が身につき,「臨床では個別的で創造的なケアをすることができる」「看護技術は発展する」という考え方に根ざしています.そのため,本書についても,理論と実践を注意深く見つめ,さらなる検討を重ね,発展させていきたいと思います.
2005年7月
編者ら
本書「看護ケアの根拠と技術」では,初版および第2版のサブタイトルを「学ぶ・試す・調べる」としていました.そこには,学ぶ・試す・調べることにより根拠を理解し,技術の応用力・発展力が身につき,「臨床において個別的で創造的なケアをすることができる」,「看護技術は発展する」という考えが基盤にありました.この考えは今も変わりません.
本書の読者の方々からは,根拠を列挙するのみならず,根拠に基づいてケアを行ううえでのポイントや禁忌が示されており実践的であること,また,多角的な見地で根拠を示したうえで看護現場での現実的な対応や工夫が提案されているところに価値を認めていただいております.また,追加検討が必要な事項や今後の課題を示した「さらに検証」が自身の研究テーマの検討に役立ったという声もいただきました.
このような声から,本書がねらいとした「臨床において個別的で創造的なケアをすることができる」「看護技術は発展する」という思考が進んでいるという感覚がありました.そこで,第3版では本書の意義を再検討し,サブタイトルも「学ぶ・活かす・共有する」へと変更しています.
このサブタイトルは以下のような本書の活用意義を表しています.
1)看護者は,ケアの方法にはどのようなものがあるのか,あるいは自分が考えたケアの妥当性について,まず調べる(学ぶ).
2)そこから得られた知識を対象者に適用できるかを考え,工夫する(活かす).
3)実施したケアの効果を公表する(共有する).
この3)に該当する研究発表が活性化し,それが,さらに本書にも反映し,「看護技術は発展する」というサイクルを促進することを期待しています.
第3版では,実践現場の変化をとらえて,新たなエビデンスの追加検討と基本技術項目・根拠の見直しを行い,内容の刷新を図りました.多職種連携やチーム医療が重要となる今,他職種の技術を応用できる部分も取り入れて看護技術を発展させたり,連携・協働するための共通の技術をつくり出す視点も取り入れました.また,「図表やイラストを多く盛り込んでほしい」とのご要望にこたえ,ビジュアル化を図りました.
今後もこれまでと同様に,看護技術に関連する理論と実践を注意深く見つめ,さらなる検討を重ね,本書を発展させていきたいと思います.
改訂にあたり,本書を活用していただいている読者の皆さま,そして医歯薬出版編集部の皆さまのご支援に深く感謝申し上げます.
2018年12月
編者ら
第2版 改訂の序
本書は,初版の発行から既に7年が経過しました.この間に,看護技術に関する研究は積み重ねられ,また初版で掲載していたガイドラインの刷新等もあり,改訂の必要性に迫られました.そこで,初版発行後に新たなエビデンスが出てきたものを検討し,全面的に基本技術項目・根拠の見直しを行い,内容の差し替えを行いました.
なお,本書では,ひとつひとつの看護技術のケアの根拠を多角的に捉え,それらを丁寧に解説することに努めています.なぜなら,看護職は根拠をふまえた基本技術を修得しているだけでは,ユニークな存在である対象者に適した看護を実践することは困難だからです.看護の現場では,基本的知識を踏まえて,対象に応じた看護技術の応用・発展のさせ方を考えることが必要になります.したがって本書は,対象者に適した看護援助を創意工夫していくことができるように,臨床での技術のポイント,実証報告,さらに検証,と思考を深めていけるように構成しています.また,禁忌事項の項目は,医療安全教育にも役立てられると考えます.
看護職が目指す,個別的で質の高い看護,説明できる看護実践のためには,ホリスティックな観点でのアセスメント能力,コミュニケーション能力,看護技術力,そして科学的思考が求められます.本書がその一助になれば幸いです.「看護技術は発展する」という考えのもと,今後も看護技術に関連する理論と実践を注意深く見つめ,さらなる検討を重ね,本書を発展させていきたいと思っています.
改訂にあたり,これまで本書を活用していただいている読者の皆様,そして医歯薬出版編集部の皆様のご支援に深く感謝申し上げます.
2013年1月
編者ら
はじめに
看護専門職は,看護の専門的知識と技術を活用して,対象者に最適な個別的で創造的な看護ケアの実践を目指します.そのヒューマニスティックな行為には,科学性や論理性が求められることは言うまでもありません.期待する看護の結果が論理性をもって予測でき,学問に支えられた自信ある行動がとれれば,どんなにかいいでしょう.しかし,科学性や論理性という側面では,臨床看護研究の困難さも影響してか,特定の看護ケアの根拠が示されるケースは決して十分ではありません.
これまで,看護学に関連する医学的知識や看護研究による実証,さらには経験に基づく知識などを基盤として,看護教育では看護技術の原理が教えられてきました.また,現状では,学んだ基本をどのように応用すればよいかについては,実習体験からの学びや卒後教育に委ねられている部分が大きいと言えます.基本だけを覚えてきた学生にとっては,臨床の場で,柔軟に考え,技術を変容させて応用することができず,戸惑うこともあります.
そこでこの本では,基本技術の応用や発展のさせ方に重点をおき,臨床への適応の助けとなること,今後の臨床看護実践と看護研究の発展に役立つことを目指した内容にしました.この本をもとに“学び”“試し”そして“調べる”という学習が,EBNの実践に必要な,根拠を“探し出すこと”や“つくり出すこと”そして“使うこと”という態度の習得にもつながるのではないかという期待もあります.
この本の章立ては,「看護基礎教育における技術教育のあり方に関する検討会報告 看護基本技術」の項目を考慮して決定しました.各章の内容は,(1)看護援助の必要性,それを判断するためのミニマムデータとアセスメントの概念図,(2)基本技術/一般的な技術(安全・安楽・動作経済の面で効果的な方法,臨床における禁忌事項)とは何か,(3)応用技術(基本技術のままでは何が不足なのか,守っているポイントと応用しているポイント,実証報告はあるがさらに追加検証が必要なケースの検証方法,経験知の場合どのような観点で検証するとよいか)とは,どのようなものかを取り上げています.
「学ぶ・試す・調べる 看護ケアの根拠と技術」という本書のタイトルは,根拠がわかることで技術の応用力・発展力が身につき,「臨床では個別的で創造的なケアをすることができる」「看護技術は発展する」という考え方に根ざしています.そのため,本書についても,理論と実践を注意深く見つめ,さらなる検討を重ね,発展させていきたいと思います.
2005年7月
編者ら
Chapter 1 環境調整
(小池啓子・本多和子)
病床環境の調整
寝床内の温度・湿度を調節し快適にする
リネン類の塵埃を除去し,清潔で湿潤がない状態に保つ
寝床内の菌の増殖を防止する
枕の内部の温度・湿度を調節する
ベッドの高さやベッド柵,および点滴ラインやドレーンの位置を調整する
ベッド周囲の物品を整え,快適な室内環境となるよう調整する
病室内やベッド周囲の清掃により感染を予防する
Chapter 2 食行動の援助技術
(菅谷洋子)
1 経口摂取ができる人の食事援助
食事をおいしく・楽しく摂取できる環境を整える
食事をおいしく摂取できる食形態を選択する
摂食嚥下障害がある場合,嚥下機能の評価を行い,状況に応じた間接的嚥下訓練をプログラムする
摂食嚥下障害がある場合,嚥下機能の評価を行い,状態に応じた直接的嚥下訓練をプログラムする
認知症患者の食欲が高まり,おいしく食事摂取できるよう援助する
2 経腸栄養時の援助
経口摂取を併用する際には,経鼻経管栄養チューブの口径の大きさや食形態を適切に選択する
カテーテルの先端が消化管内に正しく留置できていることを必ず確認する
経管栄養施行中は上半身を30〜45°程度挙上し,30分から1時間は頭部を挙上した状態にする
経腸栄養の感染予防のため,栄養剤開封後の使用時間を厳守し,経腸栄養剤投与容器・経腸栄養剤ライン(原則単回使用)の洗浄・消毒を行う
フラッシュにより経腸栄養カテーテルの閉塞を予防する
Chapter 3 排泄援助技術
(登喜和江)
1 排便促進のための援助
十分な水分を摂取し,食物繊維や発酵食品・オリゴ糖などを含む食事内容とする
上行結腸から横行結腸,下行結腸に向かって,両手指で腹壁に3〜5kgの圧(腹壁が3cmへこむ程度)を加える腹部マッサージを行う
温罨法により腹部または腰背部(第4,第5腰椎を中心に)を温める
温水洗浄便座(ウォシュレット)による肛門刺激で排便を誘発する
2 摘便
挿入する示指全体に十分に潤滑剤をつける
摘便時の体位は,側臥位または仰臥位とする
痔疾患のある患者への摘便は慎重に行う
3 浣腸
注入時の体位は,直腸内に保留しやすい側臥位とする
浣腸時のカテーテル挿入の長さは5cm程度とする
浣腸液の温度は,直腸温よりやや低めでもよい
浣腸液は40〜60mLを15秒程度かけて注入する
グリセリン浣腸液注入後に排便を我慢させる必要はない
4 導尿
一時的導尿
尿道の長さを考慮して,カテーテルの清潔部位を確保する
消毒液や潤滑剤の適用範囲を確認する
カテーテル挿入の長さを確認し,抵抗がある場合は無理に挿入しない
持続的導尿
膀胱留置カテーテル挿入時には無菌操作を徹底して行う
膀胱留置カテーテルは適切な部位に固定する
カテーテルの留置部位を清潔にする
閉鎖式尿回路システムの使用により感染を防止する
膀胱訓練は実施しない
5 失禁への援助
局所のかぶれや感染を防止する
失禁のタイプに応じたケアを行う
ADLや介入の状況に応じてオムツの種類を選択する
貯留尿の適切な把握を行う
排泄時の室内環境を調整する
Chapter 4 活動の援助技術
(三宮有里)
1 寝たきりの予防
フレイルを予防する
臥床の不動から可及的速やかに安静をとく
生活機能を復する,維持する
深部静脈血栓症を予防する
2 姿勢保持・変換のための援助
安全で安楽な臥位に変換する
安全に不快なく起き上がり,座位になれるよう援助する
転倒することなく立位になれるよう援助する
急激な立位を回避する
3 歩行の介助
適切な歩行補助具を選択する
転倒することがないように歩行を介助する
4 移動動作の介助
端座位の状態から車椅子に安全に移乗する
移送時は速度や振動に留意する
Chapter 5 睡眠・リラクセーションの援助
(寺岡三左子)
1 入眠の援助
規則正しい生活をする
睡眠に適した安楽な環境にする
寝具・寝衣の調整をする
就寝の儀式を援助する
2 リラクセーションの援助
効果的な呼吸法の実践を促す
指圧・マッサージを行う
アロマセラピーを取り入れる
Chapter 6 苦痛の緩和
(太田亜紀子・蒲生澄美子・宮ア素子)
「痛み」の基礎知識
1 痛みのアセスメントとケア
客観的データと患者の訴えを把握し,継続的に痛みの評価を行う
痛みが最小限となるように,体動時の援助や体位を工夫する
気分転換(注意転換法)を促す
2 氷枕の貼用
氷枕には容量の約〜の氷と,コップ1〜2杯の水を入れる
氷枕内の空気を抜く
氷枕表面に付着した水滴は拭き取る.カバーが乾燥した状態を維持する
3 電気毛布の使用
寝具を温める
4 湯たんぽ
安全性の高い湯たんぽを選び,その製品の使用方法を守る
身体に直接貼用する場合,湯たんぽの表面温度は38〜40℃程度にする
間接的に使用する場合は,臥床直前に湯たんぽを除去するか,身体に接触しない位置に貼用する,または湯たんぽの表面温度を40±2℃とする
Chapter 7 清潔・衣生活援助技術
(岡田淳子)
1 全身清拭
室温は23℃以上に設定する
清拭用タオルは単回使用か対象者専用のものを使用し,タオルの表面温度は42℃に維持できるようにすすぎの湯を準備する
体温が低下しないように,バスタオルや綿毛布を効果的に使う
洗浄剤には薬用石けんを使用せず,患者の皮膚の状態に応じて刺激の少ないものを選択する
石けん分は拭き取り用タオルで十分に拭き取る
循環促進を期待する場合は熱布清拭を併用する
2 陰部洗浄
外尿道口は毎日洗浄する
陰部洗浄にはよく泡立てた石けんを使用し,十分な量の微温湯で洗い流す
尿道カテーテルが留置されている場合は,挿入部,カテーテルともに洗浄する
陰部洗浄後は十分乾燥させて,肌着(紙オムツ)を新しいものに交換する
3 洗髪
洗髪は最低3日に1度の頻度で実施することが望ましい
洗髪は短時間(10分程度)で実施する
シャンプーを泡立てて汚れを除去し,十分なすすぎで洗浄剤を洗い流す
洗髪中は患者の病状や好みに合わせて苦痛を伴わない体位の工夫をする
4 寝衣交換
療養に適した寝衣を選択する
直接肌に接している寝衣(肌着)は毎日交換する
着脱は身体の障害部位に合わせて行う
5 部分浴
部分浴の湯温は40±2℃の範囲とし,浸水時間は10分程度とする
不眠がある場合,睡眠を促すために部分浴を実施する
褥瘡ケアや慢性疼痛の緩和ケアとして部分浴を実施する
手浴は感染予防のケアとして実施する
6 入浴介助
脱衣室と浴室の室温は26〜28℃に温めておく
湯の温度は37〜39℃の微温浴にする
入浴後は乾燥防止のためにスキンケアを行う
7 シャワー浴介助
シャワー浴に伴う一連の行為が安全に行えるよう準備する
シャワー浴中に身体が冷えないように,身体の一部を温めながら行う
手術前や手術後創部があっても,感染予防のためにシャワーを行い,皮膚を清潔にする
カテーテル挿入中の患者の場合,挿入部位を被覆材で保護してシャワー浴を実施する
Chapter 8 口腔ケア
(鈴木小百合・岡田葉子)
経口摂取の有無にかかわらず,口腔ケアは必ず行う
誤嚥を防ぎ,かつ疲労しにくい体位に整える
口腔清掃は,効果的な方法(洗口・ブラッシング・清拭)を必要に応じて組み合わせて選択する
粘膜を保湿することで,口腔内乾燥を予防・改善する
意識障害や気管挿管患者では,誤嚥に留意して安全に口腔ケアを実施する
義歯は各食後に外し,ブラッシングと義歯洗浄剤により歯垢を除去する.口腔内残渣は含嗽および清拭により除去する
口腔リハビリテーション(機能的口腔ケア)によって筋肉や脳が刺激され,口腔機能が回復することがある
Chapter 9 バイタルサイン
(永田文子)
1 体温測定
体温に影響を与える因子を理解し,特に日内差を考慮して測定する
測定部位により温度差があることを理解して測定する
37℃=発熱ではない.患者各々の平熱を把握してアセスメントする
鼓膜温の測定では必ず外耳道をまっすぐにして測定する
鼓膜温測定前には耳垢を除去しておく
腋窩温はあくまで深部温度に相関する指標であることを理解する
腋窩温測定では感温部を腋窩動脈が走行する腋窩中央のくぼみに正確にあてる
腋窩温測定では上腕と体幹を密着させて腋窩を閉ざした状態を維持し,基本的に汗は拭かなくてもよい
片麻痺のある患者の腋窩温測定では,麻痺側で測定してもよい
口腔温測定では舌下中央部付近に体温計を挿入し,口を軽く閉じてもらう
温かい,または冷たい飲み物を飲んだ後は,口腔温測定まで15〜20分あける
2 呼吸測定
呼吸回数は重要なバイタルサインであることを理解する
呼吸回数測定前に患者が活動をしていた場合は,しばらく安静にしてから測定する
呼吸回数を測定されていることを患者が意識しないように工夫する
呼吸回数は必ず1分間測定する
敗血症が疑われる場合は必ず呼吸回数を測定する
院内救急対応システム(RRS)の起動対象となりうる重症化が予測される患者に対しては必ず呼吸回数を測定する
肺炎が疑われる場合には必ず呼吸回数を測定する
出血が予想される場合は必ず呼吸回数を測定する
呼吸の観察では,胸郭,腹部の動きだけではなく,胸鎖乳突筋や鎖骨上窩,下顎の動き,患者の表情も観察する
3 経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)測定
パルスオキシメータのしくみを理解する
貧血の有無を確認する
SpO2の測定部位によって時差があることを理解する
手指で測定する場合はプローブを心臓と同じ高さにする
パルスオキシメータを装着しても値や脈波が表示されない場合は,測定値に影響を及ぼす各種因子を確認する
プローブは数種類準備する
SpO2が90%以上でも低酸素の可能性があるため,値を過信しない
酸素療法中はSpO2の値のみでアセスメントしてはいけない
プローブ装着部位を定期的に観察する
複数患者に使用するタイプのプローブは使用後に消毒を行う
4 脈拍測定
脈拍測定に影響する因子を除外する
脈拍数は手指を用いて測定し,リズムや強さも確認する
脈拍は示指,中指,薬指の3指の指腹部分を血管の走行に平行にあてて触知し,初回測定時は,まず橈骨動脈で脈拍の左右差を確認する
脈拍は1分間の測定を基本とし,特に初回測定時は必ず1分間測定する
心房細動がある場合は,聴診器を使用して測定する
末梢循環のアセスメントとして,橈骨動脈のみではなく足背動脈や後脛骨動脈も触知する
脈が触れる部位で血圧を推測する
5 血圧測定
測定前の安静時間を対象者に確認し,毎回の測定値を比較してその対象者にとって必要な安静時間を確認する
事前に血圧計の正確性の確認をしておく
マンシェット(カフ)は対象者に合ったサイズを選択する
マンシェット(カフ)は消毒・洗浄できる素材が望ましい
マンシェット(カフ)を巻く部位を心臓と同じ高さにする
原則として,マンシェット(カフ)を巻く部位の衣類は脱ぐ,あるいは薄手にする
マンシェット(カフ)は,ゴム嚢の中心が上腕動脈の真上になるようにし,指が2本入る程度のきつさで巻く
上腕での血圧測定では内シャントがある側,乳がん術後の患側で測らない
聴診法による血圧測定において,聴診器はベル面,膜面どちらも使用できる
速やかに加圧し,1心拍あたりもしくは1秒あたり2mmHgを目安に減圧する
降圧管理目標を理解してアセスメントする
Chapter 10 呼吸を整える技術
(山下裕紀)
1 酸素吸入
さまざまな酸素吸入の方法や特徴,注意点を理解し,適切な方法を選択する
酸素吸入の際は加湿を行う
中央配管式アウトレットでは酸素用に接続する
酸素使用時は5m以内で火気を使用しない
ボンベは直射日光を受けない場所に置く
酸素ボンベは専用のスタンドに立てて保管する
2 気道内加湿法
治療目的に適した器具を選択する
吸入時の体位は座位または半座位(ファウラー位)とする
食事の直前や食後の吸入は避ける
一度セットした薬液は使いきるか,廃棄する
超音波式ネブライザーは患者間で使い回しをせず,使用のつど消毒するなど,安全に配慮して使用する
吸入器の操作やマウスピースのくわえ方,呼吸については,目的に合わせて介助・指導する
吸入液は嚥下させない
吸入後は効果的な咳嗽をさせる
3 気管内吸引
気管内吸引は,聴診により貯痰の位置を確認し,他の指標からも必要と判断した場合のみ行う
低酸素血症が予測される場合は,気管内吸引前後に酸素を投与するなどして予防する
吸引カテーテルはカテーテルの外径が気管内チューブの内径の半分以下で,多孔式のものを選択する
吸引カテーテルは気管内挿管チューブの先端から数cmまでの挿入で十分である
気管内吸引は無菌操作で行う
気管内吸引は口腔,鼻腔の吸引後に行う
設定吸引圧は,成人の場合10.7〜20kPa(80〜150mmHg)程度とする
吸引は10〜15秒以内で行う
滅菌手袋を用いてカテーテルをつまみ,こよりを作るような操作を行うことで,気管内チューブ内のカテーテルが回転する
気管内洗浄は一般的には行うべきでない
気管チューブのカフ圧は,カフ圧計にて通常15〜25cmH2O以下に設定する
Chapter 11 感染予防の技術
(石井真理子)
1 手指衛生
石けんと流水による手洗いと擦式消毒アルコール製剤を用いた手指消毒を状況に応じて選択する
適切な手指衛生ができるように準備をする
正しい手指衛生方法を実施する
環境への伝播を防ぐ
2 個人防護具(PPE)の使用
(1)手袋
手袋が必要な場面を判断する
手袋装着前後の手指汚染に注意する
サイズ,素材が自分に適しているかを確認する
(2)保護着衣(ガウン・エプロン)
曝露面を確実に保護する
使用後は病原菌を伝播させないように脱衣・廃棄する
(3)マスク・ゴーグル・フェイスシールド
着用時は目・口・鼻を十分に覆う
サージカルマスクの早期使用で感染拡大を制御する
用途に合ったマスクを選択する
ゴーグル・フェイスシールドの着用により眼粘膜からの感染を予防する
Chapter 12 創傷管理技術
(片山 恵・岩井裕美)
1 ドレッシング
創傷の治癒形式・治癒過程を理解し,急性創傷を慢性創傷に移行させないようにケアする
ドレッシング材の特徴を理解し,創傷に合ったものを正しく使用する
創傷が治癒しやすい環境を整える
出血や感染の徴候を早期に発見するため,治癒するまで創を定期的に観察する
ドレッシング材交換時は粘着状態に合わせて適切に,愛護的に除去する
2 褥瘡のケア
褥瘡管理の基礎知識
褥瘡発生リスクの高い患者には体圧分散マットレスを使用する
「体位変換の時間間隔は必ず2時間ごと」と考えなくてもよい
褥瘡の深達度,創面の色調,感染の有無などを観察する
適度な湿潤環境を保つ
滲出液をコントロールする
創部は生理食塩水,水道水などを用いて十分に洗浄し,異物や壊死組織を除去する
シャワーや入浴は積極的に行う
3 スキンテアのケア
スキンテア(皮膚裂傷)の基礎知識
1日2回,皮膚を保湿する
ベッド周りの環境を整え,患者の皮膚露出部分を保護する
援助時に「つかむ」「引っ張る」「引きずる」ような動作を行わない
Chapter 13 与薬の技術
(脇坂豊美・川西千恵美)
与薬に関する基本的知識
1 経口・外用薬の与薬
内服薬は対象者の生活習慣,セルフケア能力,アドヒアランスを把握し,自己管理の可能な程度を判断して指導する
内服薬は患者の嚥下状態に合わせて適正な剤形を選択するとともに,十分な量の水で服用するよう指導する
皮膚に用いられる外用薬は清潔な皮膚に塗る(貼る)
坐薬を直腸内に挿入する時は,肛門より3cm以上奥に挿入する
全身への影響が強い点眼薬を使用する際は,点眼後に約1分間目頭付近(涙嚢部)を軽く圧迫する
2種類以上の点眼薬を使用する場合は,5分以上間隔をあける
2 皮下・皮内・筋肉内注射
注射の準備
アルコールベースの速乾性手指消毒剤を用いて手洗いを行う
処方せんを確認し,注射方法・薬液の量・薬液の質・穿刺部位に適した注射器,注射針を準備する
注射器に必要量の薬液を無菌的に吸い上げる
注射器の中の空気を抜く
注射の実施
患者の体位や姿勢を整え,安全な注射部位を選択する
注射部位は拭き残しがないように確実に消毒する
注射部位の皮膚消毒にはディスポーザブルの単包パックのアルコール綿を用いる
選択した部位に薬液を確実に注入できるように針を刺入する
注射時の痛みを軽減させる方法を活用する
注射実施後
注射実施後のマッサージ(注射部位を揉むこと)は薬剤の添付文書を確認したうえで実施の要否を判断し,患者にも説明・指導する
注射後の効果と副作用を観察し,アナフィラキシー発症の危険性が高い薬剤を静脈内注射で使用する際は,少なくとも薬剤投与開始時より5分間は注意深く観察する
使用した針は,針刺し事故を防ぐためにリキャップはせず廃棄ボックスに捨てる
3 静脈内注射
アルコールベースの速乾性手指消毒剤を用いて手洗いを行い,手袋(清潔な未滅菌手袋)を装着する
駆血帯もアルコール綿で消毒する,もしくはディスポーザブルのものを使用する
駆血帯を締め,血管の走行,太さ,弾力性を確かめて穿刺部位を選択する
静脈内注射の際の穿刺時にも「痛みや痺れがないか」を患者に確認し,訴えがある時はすぐに針を抜く
4 点滴静脈内注射・中心静脈カテーテルの管理
血管内留置カテーテルの挿入
組織損傷を起こす可能性のある薬剤に注意する
カテーテルの挿入に伴う合併症を防ぐ
点滴静脈内注射では,患者の活動性を妨げないことを考慮し確実に固定をする
血管内留置カテーテルの管理
輸液ラインはクローズドシステム(閉鎖式)を使用する
輸液ラインは96時間(4日)をこえない頻度で交換する
末梢静脈カテーテルのキープには生食ロックを行い,ルートの開存を維持する
カテーテル留置に伴う合併症を防ぐ
5 輸血
輸血の際に必要な確認を確実に行う
血液製剤の融解あるいは加温時の手順を守り,取り扱いに注意する
Chapter 14 救命救急処置技術
(齋藤雪絵)
成人心停止のアルゴリズム
救命の連鎖
1 意識レベルの確認
周囲の安全を確認する
対象者の反応を確認し,反応がなければ速やかに応援要請・救急通報を行う
意識レベルを評価する
2 心肺蘇生法
呼吸の確認と心停止の判断を行う
胸骨圧迫を行う
胸骨圧迫は100〜120回/分のテンポで行う
胸骨圧迫は5cmの深さで行い,6cmをこえる圧迫は避ける
気道を確保する
口対口,口対マスクなど,適切な人工呼吸法を選択する
AEDが使用可能な場合はできるだけ迅速に使用し,AEDを準備する間も胸骨圧迫を続ける
BLSを継続する
3 家族支援
対象者の状況を迅速に,わかりやすく家族に説明する
家族の代理意思決定を支援する
Chapter 15 死後のケア
(松ア和代・川西千恵美)
医師の死亡確認後,外観的にも痛ましい医療器具を除去し,目や口を閉じて寝衣や掛け物を整える
家族がお別れをできる「時間」と「場」をもてるよう調整する
死後のケアにおいても,スタンダードプリコーション(標準予防策)を遵守する
死後の変化(死後硬直,漏液)を考慮して死後のケアを行う
これまでに行われてきた死後のケア方法を再考する
医療器具抜去後の処置を適切に行う
死化粧をし,生前の姿に近づける
死後のケアを通して,看護師の死生観を育む
索引
(小池啓子・本多和子)
病床環境の調整
寝床内の温度・湿度を調節し快適にする
リネン類の塵埃を除去し,清潔で湿潤がない状態に保つ
寝床内の菌の増殖を防止する
枕の内部の温度・湿度を調節する
ベッドの高さやベッド柵,および点滴ラインやドレーンの位置を調整する
ベッド周囲の物品を整え,快適な室内環境となるよう調整する
病室内やベッド周囲の清掃により感染を予防する
Chapter 2 食行動の援助技術
(菅谷洋子)
1 経口摂取ができる人の食事援助
食事をおいしく・楽しく摂取できる環境を整える
食事をおいしく摂取できる食形態を選択する
摂食嚥下障害がある場合,嚥下機能の評価を行い,状況に応じた間接的嚥下訓練をプログラムする
摂食嚥下障害がある場合,嚥下機能の評価を行い,状態に応じた直接的嚥下訓練をプログラムする
認知症患者の食欲が高まり,おいしく食事摂取できるよう援助する
2 経腸栄養時の援助
経口摂取を併用する際には,経鼻経管栄養チューブの口径の大きさや食形態を適切に選択する
カテーテルの先端が消化管内に正しく留置できていることを必ず確認する
経管栄養施行中は上半身を30〜45°程度挙上し,30分から1時間は頭部を挙上した状態にする
経腸栄養の感染予防のため,栄養剤開封後の使用時間を厳守し,経腸栄養剤投与容器・経腸栄養剤ライン(原則単回使用)の洗浄・消毒を行う
フラッシュにより経腸栄養カテーテルの閉塞を予防する
Chapter 3 排泄援助技術
(登喜和江)
1 排便促進のための援助
十分な水分を摂取し,食物繊維や発酵食品・オリゴ糖などを含む食事内容とする
上行結腸から横行結腸,下行結腸に向かって,両手指で腹壁に3〜5kgの圧(腹壁が3cmへこむ程度)を加える腹部マッサージを行う
温罨法により腹部または腰背部(第4,第5腰椎を中心に)を温める
温水洗浄便座(ウォシュレット)による肛門刺激で排便を誘発する
2 摘便
挿入する示指全体に十分に潤滑剤をつける
摘便時の体位は,側臥位または仰臥位とする
痔疾患のある患者への摘便は慎重に行う
3 浣腸
注入時の体位は,直腸内に保留しやすい側臥位とする
浣腸時のカテーテル挿入の長さは5cm程度とする
浣腸液の温度は,直腸温よりやや低めでもよい
浣腸液は40〜60mLを15秒程度かけて注入する
グリセリン浣腸液注入後に排便を我慢させる必要はない
4 導尿
一時的導尿
尿道の長さを考慮して,カテーテルの清潔部位を確保する
消毒液や潤滑剤の適用範囲を確認する
カテーテル挿入の長さを確認し,抵抗がある場合は無理に挿入しない
持続的導尿
膀胱留置カテーテル挿入時には無菌操作を徹底して行う
膀胱留置カテーテルは適切な部位に固定する
カテーテルの留置部位を清潔にする
閉鎖式尿回路システムの使用により感染を防止する
膀胱訓練は実施しない
5 失禁への援助
局所のかぶれや感染を防止する
失禁のタイプに応じたケアを行う
ADLや介入の状況に応じてオムツの種類を選択する
貯留尿の適切な把握を行う
排泄時の室内環境を調整する
Chapter 4 活動の援助技術
(三宮有里)
1 寝たきりの予防
フレイルを予防する
臥床の不動から可及的速やかに安静をとく
生活機能を復する,維持する
深部静脈血栓症を予防する
2 姿勢保持・変換のための援助
安全で安楽な臥位に変換する
安全に不快なく起き上がり,座位になれるよう援助する
転倒することなく立位になれるよう援助する
急激な立位を回避する
3 歩行の介助
適切な歩行補助具を選択する
転倒することがないように歩行を介助する
4 移動動作の介助
端座位の状態から車椅子に安全に移乗する
移送時は速度や振動に留意する
Chapter 5 睡眠・リラクセーションの援助
(寺岡三左子)
1 入眠の援助
規則正しい生活をする
睡眠に適した安楽な環境にする
寝具・寝衣の調整をする
就寝の儀式を援助する
2 リラクセーションの援助
効果的な呼吸法の実践を促す
指圧・マッサージを行う
アロマセラピーを取り入れる
Chapter 6 苦痛の緩和
(太田亜紀子・蒲生澄美子・宮ア素子)
「痛み」の基礎知識
1 痛みのアセスメントとケア
客観的データと患者の訴えを把握し,継続的に痛みの評価を行う
痛みが最小限となるように,体動時の援助や体位を工夫する
気分転換(注意転換法)を促す
2 氷枕の貼用
氷枕には容量の約〜の氷と,コップ1〜2杯の水を入れる
氷枕内の空気を抜く
氷枕表面に付着した水滴は拭き取る.カバーが乾燥した状態を維持する
3 電気毛布の使用
寝具を温める
4 湯たんぽ
安全性の高い湯たんぽを選び,その製品の使用方法を守る
身体に直接貼用する場合,湯たんぽの表面温度は38〜40℃程度にする
間接的に使用する場合は,臥床直前に湯たんぽを除去するか,身体に接触しない位置に貼用する,または湯たんぽの表面温度を40±2℃とする
Chapter 7 清潔・衣生活援助技術
(岡田淳子)
1 全身清拭
室温は23℃以上に設定する
清拭用タオルは単回使用か対象者専用のものを使用し,タオルの表面温度は42℃に維持できるようにすすぎの湯を準備する
体温が低下しないように,バスタオルや綿毛布を効果的に使う
洗浄剤には薬用石けんを使用せず,患者の皮膚の状態に応じて刺激の少ないものを選択する
石けん分は拭き取り用タオルで十分に拭き取る
循環促進を期待する場合は熱布清拭を併用する
2 陰部洗浄
外尿道口は毎日洗浄する
陰部洗浄にはよく泡立てた石けんを使用し,十分な量の微温湯で洗い流す
尿道カテーテルが留置されている場合は,挿入部,カテーテルともに洗浄する
陰部洗浄後は十分乾燥させて,肌着(紙オムツ)を新しいものに交換する
3 洗髪
洗髪は最低3日に1度の頻度で実施することが望ましい
洗髪は短時間(10分程度)で実施する
シャンプーを泡立てて汚れを除去し,十分なすすぎで洗浄剤を洗い流す
洗髪中は患者の病状や好みに合わせて苦痛を伴わない体位の工夫をする
4 寝衣交換
療養に適した寝衣を選択する
直接肌に接している寝衣(肌着)は毎日交換する
着脱は身体の障害部位に合わせて行う
5 部分浴
部分浴の湯温は40±2℃の範囲とし,浸水時間は10分程度とする
不眠がある場合,睡眠を促すために部分浴を実施する
褥瘡ケアや慢性疼痛の緩和ケアとして部分浴を実施する
手浴は感染予防のケアとして実施する
6 入浴介助
脱衣室と浴室の室温は26〜28℃に温めておく
湯の温度は37〜39℃の微温浴にする
入浴後は乾燥防止のためにスキンケアを行う
7 シャワー浴介助
シャワー浴に伴う一連の行為が安全に行えるよう準備する
シャワー浴中に身体が冷えないように,身体の一部を温めながら行う
手術前や手術後創部があっても,感染予防のためにシャワーを行い,皮膚を清潔にする
カテーテル挿入中の患者の場合,挿入部位を被覆材で保護してシャワー浴を実施する
Chapter 8 口腔ケア
(鈴木小百合・岡田葉子)
経口摂取の有無にかかわらず,口腔ケアは必ず行う
誤嚥を防ぎ,かつ疲労しにくい体位に整える
口腔清掃は,効果的な方法(洗口・ブラッシング・清拭)を必要に応じて組み合わせて選択する
粘膜を保湿することで,口腔内乾燥を予防・改善する
意識障害や気管挿管患者では,誤嚥に留意して安全に口腔ケアを実施する
義歯は各食後に外し,ブラッシングと義歯洗浄剤により歯垢を除去する.口腔内残渣は含嗽および清拭により除去する
口腔リハビリテーション(機能的口腔ケア)によって筋肉や脳が刺激され,口腔機能が回復することがある
Chapter 9 バイタルサイン
(永田文子)
1 体温測定
体温に影響を与える因子を理解し,特に日内差を考慮して測定する
測定部位により温度差があることを理解して測定する
37℃=発熱ではない.患者各々の平熱を把握してアセスメントする
鼓膜温の測定では必ず外耳道をまっすぐにして測定する
鼓膜温測定前には耳垢を除去しておく
腋窩温はあくまで深部温度に相関する指標であることを理解する
腋窩温測定では感温部を腋窩動脈が走行する腋窩中央のくぼみに正確にあてる
腋窩温測定では上腕と体幹を密着させて腋窩を閉ざした状態を維持し,基本的に汗は拭かなくてもよい
片麻痺のある患者の腋窩温測定では,麻痺側で測定してもよい
口腔温測定では舌下中央部付近に体温計を挿入し,口を軽く閉じてもらう
温かい,または冷たい飲み物を飲んだ後は,口腔温測定まで15〜20分あける
2 呼吸測定
呼吸回数は重要なバイタルサインであることを理解する
呼吸回数測定前に患者が活動をしていた場合は,しばらく安静にしてから測定する
呼吸回数を測定されていることを患者が意識しないように工夫する
呼吸回数は必ず1分間測定する
敗血症が疑われる場合は必ず呼吸回数を測定する
院内救急対応システム(RRS)の起動対象となりうる重症化が予測される患者に対しては必ず呼吸回数を測定する
肺炎が疑われる場合には必ず呼吸回数を測定する
出血が予想される場合は必ず呼吸回数を測定する
呼吸の観察では,胸郭,腹部の動きだけではなく,胸鎖乳突筋や鎖骨上窩,下顎の動き,患者の表情も観察する
3 経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)測定
パルスオキシメータのしくみを理解する
貧血の有無を確認する
SpO2の測定部位によって時差があることを理解する
手指で測定する場合はプローブを心臓と同じ高さにする
パルスオキシメータを装着しても値や脈波が表示されない場合は,測定値に影響を及ぼす各種因子を確認する
プローブは数種類準備する
SpO2が90%以上でも低酸素の可能性があるため,値を過信しない
酸素療法中はSpO2の値のみでアセスメントしてはいけない
プローブ装着部位を定期的に観察する
複数患者に使用するタイプのプローブは使用後に消毒を行う
4 脈拍測定
脈拍測定に影響する因子を除外する
脈拍数は手指を用いて測定し,リズムや強さも確認する
脈拍は示指,中指,薬指の3指の指腹部分を血管の走行に平行にあてて触知し,初回測定時は,まず橈骨動脈で脈拍の左右差を確認する
脈拍は1分間の測定を基本とし,特に初回測定時は必ず1分間測定する
心房細動がある場合は,聴診器を使用して測定する
末梢循環のアセスメントとして,橈骨動脈のみではなく足背動脈や後脛骨動脈も触知する
脈が触れる部位で血圧を推測する
5 血圧測定
測定前の安静時間を対象者に確認し,毎回の測定値を比較してその対象者にとって必要な安静時間を確認する
事前に血圧計の正確性の確認をしておく
マンシェット(カフ)は対象者に合ったサイズを選択する
マンシェット(カフ)は消毒・洗浄できる素材が望ましい
マンシェット(カフ)を巻く部位を心臓と同じ高さにする
原則として,マンシェット(カフ)を巻く部位の衣類は脱ぐ,あるいは薄手にする
マンシェット(カフ)は,ゴム嚢の中心が上腕動脈の真上になるようにし,指が2本入る程度のきつさで巻く
上腕での血圧測定では内シャントがある側,乳がん術後の患側で測らない
聴診法による血圧測定において,聴診器はベル面,膜面どちらも使用できる
速やかに加圧し,1心拍あたりもしくは1秒あたり2mmHgを目安に減圧する
降圧管理目標を理解してアセスメントする
Chapter 10 呼吸を整える技術
(山下裕紀)
1 酸素吸入
さまざまな酸素吸入の方法や特徴,注意点を理解し,適切な方法を選択する
酸素吸入の際は加湿を行う
中央配管式アウトレットでは酸素用に接続する
酸素使用時は5m以内で火気を使用しない
ボンベは直射日光を受けない場所に置く
酸素ボンベは専用のスタンドに立てて保管する
2 気道内加湿法
治療目的に適した器具を選択する
吸入時の体位は座位または半座位(ファウラー位)とする
食事の直前や食後の吸入は避ける
一度セットした薬液は使いきるか,廃棄する
超音波式ネブライザーは患者間で使い回しをせず,使用のつど消毒するなど,安全に配慮して使用する
吸入器の操作やマウスピースのくわえ方,呼吸については,目的に合わせて介助・指導する
吸入液は嚥下させない
吸入後は効果的な咳嗽をさせる
3 気管内吸引
気管内吸引は,聴診により貯痰の位置を確認し,他の指標からも必要と判断した場合のみ行う
低酸素血症が予測される場合は,気管内吸引前後に酸素を投与するなどして予防する
吸引カテーテルはカテーテルの外径が気管内チューブの内径の半分以下で,多孔式のものを選択する
吸引カテーテルは気管内挿管チューブの先端から数cmまでの挿入で十分である
気管内吸引は無菌操作で行う
気管内吸引は口腔,鼻腔の吸引後に行う
設定吸引圧は,成人の場合10.7〜20kPa(80〜150mmHg)程度とする
吸引は10〜15秒以内で行う
滅菌手袋を用いてカテーテルをつまみ,こよりを作るような操作を行うことで,気管内チューブ内のカテーテルが回転する
気管内洗浄は一般的には行うべきでない
気管チューブのカフ圧は,カフ圧計にて通常15〜25cmH2O以下に設定する
Chapter 11 感染予防の技術
(石井真理子)
1 手指衛生
石けんと流水による手洗いと擦式消毒アルコール製剤を用いた手指消毒を状況に応じて選択する
適切な手指衛生ができるように準備をする
正しい手指衛生方法を実施する
環境への伝播を防ぐ
2 個人防護具(PPE)の使用
(1)手袋
手袋が必要な場面を判断する
手袋装着前後の手指汚染に注意する
サイズ,素材が自分に適しているかを確認する
(2)保護着衣(ガウン・エプロン)
曝露面を確実に保護する
使用後は病原菌を伝播させないように脱衣・廃棄する
(3)マスク・ゴーグル・フェイスシールド
着用時は目・口・鼻を十分に覆う
サージカルマスクの早期使用で感染拡大を制御する
用途に合ったマスクを選択する
ゴーグル・フェイスシールドの着用により眼粘膜からの感染を予防する
Chapter 12 創傷管理技術
(片山 恵・岩井裕美)
1 ドレッシング
創傷の治癒形式・治癒過程を理解し,急性創傷を慢性創傷に移行させないようにケアする
ドレッシング材の特徴を理解し,創傷に合ったものを正しく使用する
創傷が治癒しやすい環境を整える
出血や感染の徴候を早期に発見するため,治癒するまで創を定期的に観察する
ドレッシング材交換時は粘着状態に合わせて適切に,愛護的に除去する
2 褥瘡のケア
褥瘡管理の基礎知識
褥瘡発生リスクの高い患者には体圧分散マットレスを使用する
「体位変換の時間間隔は必ず2時間ごと」と考えなくてもよい
褥瘡の深達度,創面の色調,感染の有無などを観察する
適度な湿潤環境を保つ
滲出液をコントロールする
創部は生理食塩水,水道水などを用いて十分に洗浄し,異物や壊死組織を除去する
シャワーや入浴は積極的に行う
3 スキンテアのケア
スキンテア(皮膚裂傷)の基礎知識
1日2回,皮膚を保湿する
ベッド周りの環境を整え,患者の皮膚露出部分を保護する
援助時に「つかむ」「引っ張る」「引きずる」ような動作を行わない
Chapter 13 与薬の技術
(脇坂豊美・川西千恵美)
与薬に関する基本的知識
1 経口・外用薬の与薬
内服薬は対象者の生活習慣,セルフケア能力,アドヒアランスを把握し,自己管理の可能な程度を判断して指導する
内服薬は患者の嚥下状態に合わせて適正な剤形を選択するとともに,十分な量の水で服用するよう指導する
皮膚に用いられる外用薬は清潔な皮膚に塗る(貼る)
坐薬を直腸内に挿入する時は,肛門より3cm以上奥に挿入する
全身への影響が強い点眼薬を使用する際は,点眼後に約1分間目頭付近(涙嚢部)を軽く圧迫する
2種類以上の点眼薬を使用する場合は,5分以上間隔をあける
2 皮下・皮内・筋肉内注射
注射の準備
アルコールベースの速乾性手指消毒剤を用いて手洗いを行う
処方せんを確認し,注射方法・薬液の量・薬液の質・穿刺部位に適した注射器,注射針を準備する
注射器に必要量の薬液を無菌的に吸い上げる
注射器の中の空気を抜く
注射の実施
患者の体位や姿勢を整え,安全な注射部位を選択する
注射部位は拭き残しがないように確実に消毒する
注射部位の皮膚消毒にはディスポーザブルの単包パックのアルコール綿を用いる
選択した部位に薬液を確実に注入できるように針を刺入する
注射時の痛みを軽減させる方法を活用する
注射実施後
注射実施後のマッサージ(注射部位を揉むこと)は薬剤の添付文書を確認したうえで実施の要否を判断し,患者にも説明・指導する
注射後の効果と副作用を観察し,アナフィラキシー発症の危険性が高い薬剤を静脈内注射で使用する際は,少なくとも薬剤投与開始時より5分間は注意深く観察する
使用した針は,針刺し事故を防ぐためにリキャップはせず廃棄ボックスに捨てる
3 静脈内注射
アルコールベースの速乾性手指消毒剤を用いて手洗いを行い,手袋(清潔な未滅菌手袋)を装着する
駆血帯もアルコール綿で消毒する,もしくはディスポーザブルのものを使用する
駆血帯を締め,血管の走行,太さ,弾力性を確かめて穿刺部位を選択する
静脈内注射の際の穿刺時にも「痛みや痺れがないか」を患者に確認し,訴えがある時はすぐに針を抜く
4 点滴静脈内注射・中心静脈カテーテルの管理
血管内留置カテーテルの挿入
組織損傷を起こす可能性のある薬剤に注意する
カテーテルの挿入に伴う合併症を防ぐ
点滴静脈内注射では,患者の活動性を妨げないことを考慮し確実に固定をする
血管内留置カテーテルの管理
輸液ラインはクローズドシステム(閉鎖式)を使用する
輸液ラインは96時間(4日)をこえない頻度で交換する
末梢静脈カテーテルのキープには生食ロックを行い,ルートの開存を維持する
カテーテル留置に伴う合併症を防ぐ
5 輸血
輸血の際に必要な確認を確実に行う
血液製剤の融解あるいは加温時の手順を守り,取り扱いに注意する
Chapter 14 救命救急処置技術
(齋藤雪絵)
成人心停止のアルゴリズム
救命の連鎖
1 意識レベルの確認
周囲の安全を確認する
対象者の反応を確認し,反応がなければ速やかに応援要請・救急通報を行う
意識レベルを評価する
2 心肺蘇生法
呼吸の確認と心停止の判断を行う
胸骨圧迫を行う
胸骨圧迫は100〜120回/分のテンポで行う
胸骨圧迫は5cmの深さで行い,6cmをこえる圧迫は避ける
気道を確保する
口対口,口対マスクなど,適切な人工呼吸法を選択する
AEDが使用可能な場合はできるだけ迅速に使用し,AEDを準備する間も胸骨圧迫を続ける
BLSを継続する
3 家族支援
対象者の状況を迅速に,わかりやすく家族に説明する
家族の代理意思決定を支援する
Chapter 15 死後のケア
(松ア和代・川西千恵美)
医師の死亡確認後,外観的にも痛ましい医療器具を除去し,目や口を閉じて寝衣や掛け物を整える
家族がお別れをできる「時間」と「場」をもてるよう調整する
死後のケアにおいても,スタンダードプリコーション(標準予防策)を遵守する
死後の変化(死後硬直,漏液)を考慮して死後のケアを行う
これまでに行われてきた死後のケア方法を再考する
医療器具抜去後の処置を適切に行う
死化粧をし,生前の姿に近づける
死後のケアを通して,看護師の死生観を育む
索引