やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

『働き方の処方箋―人生を肯定的に生きる』 推薦のことば
 書店に行けば,人間の生き方を説く書籍は様々なジャンルのものが多数ありますが,臨床検査技師を目指す学生や卒後の若い技師を念頭に入れて執筆されたものは見たことがなく,本邦初ではないでしょうか.
 著者の山藤賢先生は医師ですが,経営者であり,教育者でもあり,数多の経験から深い洞察力を持ちえた医療人です.本書の中でも豊富な知識と経験に裏打ちされた,心に響く言葉が出てきます.
 10年ほど前,私が日本臨床衛生検査技師会の会長に就任し,日本臨床検査学教育協議会の学会に出席した際,声をかけていただいたのが私と山藤先生との出会いです.それ以来度々意見交換を行うなど交流が続き,山藤先生は大切な仲間であり,親しい友人です.
 本書を開いてみると,著者とカトリーヌとの対話形式で物語が進んでおり,気取らないユニークな体裁となっています.それゆえ,本書は若い読者が持つ素朴な疑問や悩みに,同じ目線で優しく語りかけているような配慮が窺われ,読者にとってもより身近に,且つ共感を得るものとなるはずです.
 戦後,わが国の臨床検査は米国医学から大きな影響を受けながら,医学や医療ともに専門分化や高度技術化する中で進歩し,国民皆保険制度の下で発展してきました.その過程では,科学技術の進歩で次々と優れた検査法が開発され,大量の迅速処理を可能としました.そのような現場で仕事をする臨床検査技師は専門性を追求することを理想像としてきましたが,近年,チーム医療の中で臨床検査技師に求められる役割は大きく変化しています.「検査の向こうには患者がいる」と学んだ時代は昔話と言われるでしょう.今や仕事の範囲は,医師からの検査指示に始まり,血液などの検体採取や測定・分析,結果の評価,所見の記録,伝達など一連の検査工程に及ぶものであり,とりわけ,病棟や外来に出向き,医師や看護師などと協働して,患者と向き合う機会が増えています.その際に必要となる大切なツールは本書で最初に取り上げられているコミュニケーションであり,まさに,時代が求めるものです.
 学び得た専門の知識や技術を実装し,社会に還元していく使命を担い,患者の立場に立って考えられる医療人であり,人間性豊かな社会人が私たち臨床検査技師の未来像ではないでしょうか.
 2020年新型コロナウイルス感染症が中国で発生し,瞬く間に世界中に拡散し,パンデミックが起きました.この教訓を基に,新たな生活様式も取り入れた社会が形成されつつあります.さらに,ITやAI,ロボットを駆使した第四次産業革命の実現が加速され,社会全体は「物からヒトに」,「集合から分散に」の視点へと大きく変化していくことでしょう.
 その時に,一人の人間としてどのように,どこに向かって生きていくか,自問することになります.
 気取りがなく執筆されている「人生を肯定的に生きる」と題した本書は,奥深い人間学に基づいた人生における行動学の指南書とも言えるでしょう.
 本書は,困難を乗り越える知恵や輝く人生を説くもので,臨床検査技師を目指す学生や未来を担う若い臨床検査技師の皆さんに,ぜひ一読願います.
 一般社団法人日本臨床衛生検査技師会 代表理事 会長
 参議院議員
 宮島喜文


『働き方の処方箋―人生を肯定的に生きる』 推薦のことば
 この度,医歯薬出版株式会社より山藤賢先生著『働き方の処方箋―人生を肯定的に生きる』が出版されました.
 書籍を紹介する前に著者である山藤先生をご紹介させていただきます.山藤賢先生は,私の尊敬するそして敬愛する人物であります.私より大分(20歳近く)若い年下ではありますが,尊敬できる人物は年上とは限らないという典型であります.山藤先生は,臨床検査技師学校の学校長,医療法人の理事長,そして整形外科医として,さらに東京都サッカー協会医学委員長と医療者,教育者,経営者そして社会貢献とマルチな才能を活かし,活躍されています.最初にお会いしてからかれこれ15年以上になりますが,その時から変わらないことがあります.それはヒトの心をつかむ力,ヒトを魅了する力を持たれていることであります.山藤先生のそれらの力は普通の人にはない,天性のもので,一度話をすると皆が魅了され,心を引き付けられる人柄であります.このことは私だけでなくお会いした人は誰もが感じることと思います.まさに人を動かす力をもったリーダーとしての資質を兼ね備えた人といえます.
 さて,本書は2020年の4月からMedical Technologyの連載として計12回,1年間掲載されたものをまとめたものです.『人生を肯定的に生きる』という表題の通り,仕事に悩んだとき,壁にあたったとき,人間関係に困ったときなど読むことで解決策が自然に浮かんでくるヒントがふんだんに盛り込まれています.文章はカトリーヌ(一部卒業生のタカコが登場します)と著者の対談形式になっており,難解な問題に対してもわかりやすく,隣で対談を聞いているような錯覚を起こす程です.さらにカトリーヌの質問が的を射た絶妙なもので読者が聞きたいこと,疑問に思うことを代弁してくれています.
 今後の社会は,より多様にそして急速に変化していくと思います.それに対応するためには,未知の課題に対して創造性を発揮して科学的に解決する能力が求められます.また同時に社会人としてそして医療人としての品位と人格を兼ね備えた人材が必要とされます.そのような複雑な社会背景の中,本書はそれを実現させるための大切な示唆を与えてくれるものであります.
 最後になりますが,臨床検査技師を始め看護師,診療放射線技師,理学療法士,臨床工学技士などの医療従事者ばかりでなく,学生やすでに活躍されている一般の社会人の方々にもビジネス教養書として是非お読みいただくことを推薦致します.きっと自らの人生が豊かで実り多いものになることが期待できます.
 千葉科学大学 大学院 教授
 元・日本臨床検査学教育協議会理事長
 三村邦裕
 推薦のことば(宮島喜文)
 推薦のことば(三村邦裕)
episode01 連載を始めるにあたって
episode02 「コミュニケーション」に悩んでいるあなたへ(前編)
episode03 「コミュニケーション」に悩んでいるあなたへ(後編)
episode04 〈緊急特別テーマ〉COVID-19感染拡大状況下における,それでも肯定的な生き方
episode05 変化すること・変化しないこと
episode06 縁と運
episode07 個人と組織のあり方
episode08 人生の転機
episode09 許す力
episode10 自分に正しく生きる
episode11 仕事における「愛」の交換
episode12 初心忘るべからず〈最終回〉

 連載「働き方の処方箋 人生を肯定的に生きる」を振り返って 総括対談

 謝辞