序文
現在30万人近い患者が血液透析を受けているが,糖尿病や高齢者,長期透析患者の増加に伴い,バスキュラーアクセス(VA)のトラブルが大きな問題となっている.VAトラブルに対しては,主に外科手術が行われてきたが,近年インターベンション治療が飛躍的に普及してきている.インターベンション治療を行うには,VAの形態と機能を正確に把握して,治療のタイミングを決定する必要がある.VAの診断には従来,血管造影が行われており,現在でも血管造影は主流となっているが,他の分野と同様,VAの領域でも超音波検査が行われるようになってきている.
無侵襲でリアルタイムに形態と機能を観察できる超音波検査は,VAの検査法として理想的であり,VAの作製・維持管理・合併症の診断のいずれの点においても,超音波検査は有用と考える.しかしVAの領域では,超音波検査をどのように適用していくかに関するテキストはなく,医師や技師がそれぞれのバックグラウンドの知識を活用して検査を行っているのが現状である.
通常,超音波検査は正常の解剖や機能からどれだけ逸脱しているかを診断するが,VAはもともと身体にはない非生理的な血行動態を有している.そのため比較する正常な対象がなく,血管エコーを多く手がけている技師の方でも戸惑うことが多い.それぞれの施設で異なったルーティーン検査を行っており,機能評価法も定まっていない.VA診療にかかわる医師や検査技師から「VAエコーのテキストはないのか」といった声が多く聞かれるようになってきた.VAエコーに関するデータも集積されつつあり,今まさにテキストを発刊すべき時期と考え,本テキストの編集にふみきった.
本テキストは,医師のみならず,臨床検査技師,看護師,臨床工学技士にも読んで活用してもらいたいと思っている.読者層としては,(1)末梢血管エコーは行っているが,VAの知識が足りない方,(2)透析やVAの知識はあるが,血管エコーそのものをあまり行っていない方,の両者を想定した.そのためVAに対する超音波検査の技術的な側面だけではなく,VAと血管エコーのそれぞれの基礎知識を盛り込んだ内容となった.
また,他のモダリティーとの比較,超音波検査前に行っておくべき理学的検査,さまざまな合併症の病態など,超音波検査を行ううえで最低限必要な知識を網羅するように工夫した.さらには,近年少しずつ広まってきた超音波ガイド下のPTA治療の実際についても取り入れた.そのため,かなり欲張ったテキストになっているが,VAエコーに少しでも興味がある方は,自分の技量や知識に基づいて必要な項目を読んでいただければ幸いである.
VA専門の超音波テキストは国内外を含めても最初のものであり,今後このテキストがスタンダードとなって,さらにこの分野が進歩し,多くの透析患者の福音になることを望んでいる.
2011年2月
編者 春口洋昭
現在30万人近い患者が血液透析を受けているが,糖尿病や高齢者,長期透析患者の増加に伴い,バスキュラーアクセス(VA)のトラブルが大きな問題となっている.VAトラブルに対しては,主に外科手術が行われてきたが,近年インターベンション治療が飛躍的に普及してきている.インターベンション治療を行うには,VAの形態と機能を正確に把握して,治療のタイミングを決定する必要がある.VAの診断には従来,血管造影が行われており,現在でも血管造影は主流となっているが,他の分野と同様,VAの領域でも超音波検査が行われるようになってきている.
無侵襲でリアルタイムに形態と機能を観察できる超音波検査は,VAの検査法として理想的であり,VAの作製・維持管理・合併症の診断のいずれの点においても,超音波検査は有用と考える.しかしVAの領域では,超音波検査をどのように適用していくかに関するテキストはなく,医師や技師がそれぞれのバックグラウンドの知識を活用して検査を行っているのが現状である.
通常,超音波検査は正常の解剖や機能からどれだけ逸脱しているかを診断するが,VAはもともと身体にはない非生理的な血行動態を有している.そのため比較する正常な対象がなく,血管エコーを多く手がけている技師の方でも戸惑うことが多い.それぞれの施設で異なったルーティーン検査を行っており,機能評価法も定まっていない.VA診療にかかわる医師や検査技師から「VAエコーのテキストはないのか」といった声が多く聞かれるようになってきた.VAエコーに関するデータも集積されつつあり,今まさにテキストを発刊すべき時期と考え,本テキストの編集にふみきった.
本テキストは,医師のみならず,臨床検査技師,看護師,臨床工学技士にも読んで活用してもらいたいと思っている.読者層としては,(1)末梢血管エコーは行っているが,VAの知識が足りない方,(2)透析やVAの知識はあるが,血管エコーそのものをあまり行っていない方,の両者を想定した.そのためVAに対する超音波検査の技術的な側面だけではなく,VAと血管エコーのそれぞれの基礎知識を盛り込んだ内容となった.
また,他のモダリティーとの比較,超音波検査前に行っておくべき理学的検査,さまざまな合併症の病態など,超音波検査を行ううえで最低限必要な知識を網羅するように工夫した.さらには,近年少しずつ広まってきた超音波ガイド下のPTA治療の実際についても取り入れた.そのため,かなり欲張ったテキストになっているが,VAエコーに少しでも興味がある方は,自分の技量や知識に基づいて必要な項目を読んでいただければ幸いである.
VA専門の超音波テキストは国内外を含めても最初のものであり,今後このテキストがスタンダードとなって,さらにこの分野が進歩し,多くの透析患者の福音になることを望んでいる.
2011年2月
編者 春口洋昭
序文
略語一覧
1 バスキュラーアクセスにおける超音波検査の位置づけ
2 バスキュラーアクセスの特徴および種類と血行動態
3 血管超音波とバスキュラーアクセス
1 血管エコーの基礎
(1)末梢血管エコーの基本
(2)超音波装置の設定とプローブの選択
2 バスキュラーアクセスエコーの基礎
(1)バスキュラーアクセスエコーのための装置設定
(2)バスキュラーアクセスエコーのための基本走査法
(3)検査の進め方
(4)血流,RI
3 レポートの記載方法
総論
主訴別のポイント
報告書作成のポイント
4 他の画像診断との比較
1 血管造影との比較
2 3D-CTAとの比較
5 術前の血管評価
1 上肢の動静脈の解剖
2 理学的検査
3 術前の超音波検査による血管評価
6 日常管理における超音波検査
総論
各論
1 AVF
(1)理学的検査
(2)超音波検査
2 AVG
(1)理学的検査
(2)超音波検査
3 表在化動脈
(1)理学的検査
(2)超音波検査
7 透析針穿刺とカテーテル挿入における超音波
1 透析針穿刺における超音波
2 透析カテーテル挿入における超音波
8 合併症の診断における超音波検査
1 狭窄・閉塞
(1)病態と症状
(2)超音波検査
2 静脈高血圧症
(1)病態と症状
(2)超音波検査
3 瘤
(1)病態と症状
(2)超音波検査
4 穿刺困難
(1)病態と症状
(2)超音波検査
5 スチール症候群
(1)病態と症状
(2)超音波検査
6 感染
(1)病態と症状・治療
(2)超音波検査
9 超音波ガイド下PTA
1 超音波ガイド下PTAの基礎
装置と配置,利点と欠点
2 超音波ガイド下PTAの実際
(1)治療の進め方
(2)超音波補助下の透視下PTA
(3)超音波のみ使用PTA
(4)閉塞病変に対するPTA
索引
略語一覧
1 バスキュラーアクセスにおける超音波検査の位置づけ
2 バスキュラーアクセスの特徴および種類と血行動態
3 血管超音波とバスキュラーアクセス
1 血管エコーの基礎
(1)末梢血管エコーの基本
(2)超音波装置の設定とプローブの選択
2 バスキュラーアクセスエコーの基礎
(1)バスキュラーアクセスエコーのための装置設定
(2)バスキュラーアクセスエコーのための基本走査法
(3)検査の進め方
(4)血流,RI
3 レポートの記載方法
総論
主訴別のポイント
報告書作成のポイント
4 他の画像診断との比較
1 血管造影との比較
2 3D-CTAとの比較
5 術前の血管評価
1 上肢の動静脈の解剖
2 理学的検査
3 術前の超音波検査による血管評価
6 日常管理における超音波検査
総論
各論
1 AVF
(1)理学的検査
(2)超音波検査
2 AVG
(1)理学的検査
(2)超音波検査
3 表在化動脈
(1)理学的検査
(2)超音波検査
7 透析針穿刺とカテーテル挿入における超音波
1 透析針穿刺における超音波
2 透析カテーテル挿入における超音波
8 合併症の診断における超音波検査
1 狭窄・閉塞
(1)病態と症状
(2)超音波検査
2 静脈高血圧症
(1)病態と症状
(2)超音波検査
3 瘤
(1)病態と症状
(2)超音波検査
4 穿刺困難
(1)病態と症状
(2)超音波検査
5 スチール症候群
(1)病態と症状
(2)超音波検査
6 感染
(1)病態と症状・治療
(2)超音波検査
9 超音波ガイド下PTA
1 超音波ガイド下PTAの基礎
装置と配置,利点と欠点
2 超音波ガイド下PTAの実際
(1)治療の進め方
(2)超音波補助下の透視下PTA
(3)超音波のみ使用PTA
(4)閉塞病変に対するPTA
索引