やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第2 版の発刊にあたって
 計量細胞学の分野において,今日に至るまでフローサイトメトリーは多大な貢献を果たしてきました.当初は,リンパ球の表面マーカーの測定や,DNAに関連した細胞周期の解析が中心でしたが,近年その応用範囲は目覚ましい発展を遂げて,医学や生物学の学術分野を中心として,多くの研究者がその技術を利用するようになってきております.また,研究のみならず,病院をはじめとするルーチン検査業務においても数多く利用されています.そのような背景のなかで,適正な測定技術を習得し,かつ測定されたデータの正確な評価ならびに標準化の重要性が求められるようになってきました.
 日本サイトメトリー技術者認定協議会の認定制度は,サイトメトリーに関する正しい知識と的確な操作技術により,医学・生物学の向上に寄与することのできる技術者の育成を目的として,6 学会(日本サイトメトリー学会,日本臨床衛生検査技師会,日本臨床細胞学会,日本臨床検査医学会,日本臨床検査同学院,日本検査血液学会)と協力し,2000 年に「日本サイトメトリー技術者認定協議会」を発足し,日本サイトメトリー技術者認定制度を設立いたしました.この制度のもとに,日本サイトメトリー技術者認定協議会では,技術講習会を定期的に開催しております.
 本テキストはこの技術講習会で,初心者にも簡単に理解することができ,加えて実践に応用できることも念頭に入れて,2009 年に第1 版が刊行されました.その後,数年が経過し,最新の知識や研究に関する技術進歩に対応すべく,今回あらためて改訂版を刊行することとなりました.日本サイトメトリー技術者認定協議会および審議会に属する多くの委員の方々を中心にご協力をいただいた結果,充実した内容の改訂版になったと自負しております.本書がフローサイトメトリーに関わる多くの方々のお役にたつことができれば誠に幸いであります.
 2017 年5 月 日本サイトメトリー技術者認定協議会
 会長 野村昌作


第1 版の発刊にあたって
 日本サイトメトリー学会は,東京を中心としたFCM-Cell Biology研究会と,関西を中心とした関西フローサイトメトリー研究会を合併し,1990 年(平成2 年)に発足しました.
 本学会は学術学会ですが,技術者を養成するために1991 年よりサイトメトリー技術講習会が年1 回開催されてきました.そして他の関係学会を含む6 学会(日本サイトメトリー学会,日本臨床衛生検査技師会,日本臨床細胞学会,日本臨床検査医学会,日本臨床検査同学院,日本検査血液学会)と協力し,2000 年に「日本サイトメトリー技術者認定協議会」を発足しました.
 この技術講習会には基礎コースと応用コースの2 つがあり,同時期に開催していましたが,基礎コースは日本サイトメトリー技術者認定協議会が主催し,応用コースは日本サイトメトリー学会が主催することになりました.基礎コースは毎年ほぼ同じ内容であり,毎年技術講習会会長が新しいテキストを作成していましたが,このたび日本サイトメトリー技術者認定協議会の編集で書籍として発行することになりました.
 従来からフローサイトメトリーに関する多くの成書が発行されていますが,初心者にはなかなかハードルが高く敬遠されがちでした.現在,臨床検査の現場では客観的で科学的な検査データが要求されるようになっています.そのような意味では,造血器悪性腫瘍をはじめ種々の分野でフローサイトメトリー検査は非常に重要で必須の検査となっています.フローサイトメトリー検査に関する機器の進歩は目覚ましく,誰でも気軽に測定できるのはよいことですが,原理・運用など十分な教育がなされなければ解析結果を保証できない状況になりかねません.また,結果をもとに臨床的判断をする医師や,検査を外部委託している施設の検査技師にとっても,フローサイトメトリーの基本を知らなければ誤った解釈をするおそれがあります.そこで初心者にも簡単に理解でき,実践に応用できるテキストの必要性を感じました.
 日本サイトメトリー技術者認定協議会の運営および講習会は長年,村上知之審議会委員長,米山彰子審議会副委員長,東 克巳カリキュラム委員長を中心として運営されていましたので,3 名を編集委員として,サイトメトリー技術者講習会用の標準となるテキストを作成することになりました.東先生には,この本の趣旨に沿って企画し,出版社の選定と交渉をして頂きました.
 本書がフローサイトメトリーにかかわる多くの方にとって技術的・実務的に役立つ本になるよう,また認定サイトメトリー技術者の資格に挑戦していただく方が増えるように願っています.
 2009 年8 月 日本サイトメトリー技術者認定協議会
 会長 河本圭司
 第2 版の発刊にあたって
 第1 版の発刊にあたって
I章 血液の基礎知識
 1 造血のメカニズム
  1)造血の概念
  2)造血幹細胞の特性と機能
 2 血球の分類と機能
  1)赤血球・赤芽球
  2)白血球
  3)血小板
 3 その他の血液成分
  1)凝固関連成分
  2)線溶関連成分
II章 フローサイトメトリー検査の基礎知識
 1 フローサイトメトリーの歴史と応用
 2 フローサイトメトリーの基本概念
  1)フローサイトメトリーの概念
  2)フローサイトメーターの概要
 3 フローサイトメーターの基本的な構造と機能
  1)流路系
  2)光学系
  3)電気パルス処理および情報(データ)処理系
  4)データ表示
  5)ソーティング
III章 検体の採取と保存
 1 抗凝固剤の種類と使い方
  1)抗凝固剤の種類
  2)抗凝固剤の使い方
  3)リンパ球サブセット解析
  4)赤血球膜抗原
  5)血小板
  6)体腔液
  7)新鮮固形組織
 2 検体管理
  1)保存法
 3 事故の防止対策
  1)感染防御
  2)検体の取り扱い
IV章 フローサイトメトリーの検査法
 1 サンプル調製
  1)血液(末梢血)
  2)骨髄液
  3)体腔液
  4)組織(新鮮固形組織)
  5)培養細胞(単層培養細胞)
 2 染色および測定手技
  1)蛍光色素と抗体
  2)機器のセットアップ
  3)細胞表面抗原
  4)細胞内抗原
  5)細胞核DNA量
  6)抗原と細胞核DNAとの二重染色
V章 データ解析と結果の評価
 1 細胞表面抗原
  1)末梢血リンパ球解析
  2)造血器悪性腫瘍のimmunophenotyping
  3)微小病変の検出
  4)造血幹細胞移植
 2 細胞核DNA量
  1)細胞周期(基本)
  2)DNA aneuploidy
  3)細胞周期(応用)
VI章 フローサイトメトリーの応用
 1 網血小板比率の測定
  1)網血小板(reticulated platelets)とは
  2)フローサイトメトリーによる網血小板比率測定法の例
 2 細胞内pH測定
  1)フローサイトメトリーによる細胞内pH測定法
 3 細胞内カルシウム測定
  1)カルシウム蛍光指示薬とサンプル調製
  2)使用する光学フィルターの設定
  3)測定と解析
 4 血小板由来マイクロパーティクル
  1)検体採取と検体の調製
  2)計測の実際と結果
  3)考察
 5 cytometric beads array(CBA)法
  1)原理
  2)試薬の調製
  3)反応
  4)機器セッティング
  5)測定および解析
 6 細胞内サイトカイン
  1)細胞の活性化とサイトカインの蓄積
  2)細胞表面抗原の染色
  3)細胞の固定と膜浸透化
  4)細胞内サイトカインの染色
  5)解析例
 7 活性化好塩基球検出によるアレルギー検査
  1)フローサイトメトリーによる好塩基球活性化試験の例
 8 フローサイトメトリーを用いたMRD測定(多発性骨髄腫を例として)
  1)フローサイトメトリーによる多発性骨髄腫測定例
 9 制御性T細胞の検出
 10 MHC-ペプチド マルチマーを用いた特異的T細胞の検出
VII章 保守管理
 1 トラブル対策
  1)測定システムのトラブル
  2)レーザー,光学系のトラブル
 2 メンテナンス
  1)毎日(測定日ごと)のメンテナンス
  2)2 カ月ごとのメンテナンス
  3)その他(適宜,必要に応じたメンテナンス)
VIII章 業務管理
 1 精度管理
  1)内部精度管理
  2)外部精度管理
IX章 フローサイトメトリーの具体的測定例
 1 ベックマン・コールター社
  1)測定原理と機器設定
  2)サンプル調製と試薬
  3)解析作業
 2 BD社
  1)BD FACSCaliburTMによる具体的測定例
  2)BD FACSCantoTM IIによる具体的測定例
X章 認定サイトメトリー技術者制度
 1 “日本サイトメトリー学会”の歴史
 2 “日本サイトメトリー技術者認定協議会”の歴史
 3 国際サイトメトリー学会
 4 ISACパイオニア
 5 コンサルテーション
  1)施設内コンサルテーション
  2)施設外コンサルテーション
 6 教育とトレーニング
  1)教育の場と指導者,カリキュラム
  2)教育効果の評価
XI章 フローサイトメトリー検査の各種ガイドライン
 1 FCM検査の国際的標準化
 2 ICCSとCLSIを中心としたアメリカでのFCM検査の標準化ガイドライン
 3 ヨーロッパにおけるEuroFlowのガイドライン
 4 日本におけるFCM検査ガイドライン

 索引