やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

発行にあたって

 3年前の2000年3月に日本検査血液学会が設立されたが,その学会活動の最重要使命の一つが血液検査専門技師の育成である.また,学会設立の経緯の中でも日本臨床衛生検査技師会からも本学会が血液学の専門性を持った技師の研鑽の場となることを強く要請された.
 日本検査血液学会ではこの点を重要視し,学会内に認定血液検査技師制度協議会(委員長:渡辺清明),認定血液検査技師制度準備委員会(委員長:奈良信雄)および認定血液検査技師試験委員会(委員長:宮地勇人)を設置し,制度の早期確立を目標に努力してきた.ここ3年,特に準備委員会と試験委員会で積極的に具体的な試験制度実行案が検討されて,その骨子が確立された.その後詳細を詰めて,2003年2月16日に第1回の認定血液検査技師の認定試験が東京大学でまず評議員を対象に施行された.そして今秋11月には第2回の認定試験が予定されている.
 このように認定試験が実際に施行される段階となると,認定血液検査技師を希望する方々にとってはその情報(試験応募要領や実施方法など)や試験用のテキストが必要となってきた.そこで今回認定血液検査技師試験用のテキストを作成する運びになった.
 本書を勉強すれば試験が合格できるように,各専門の医師,技師の方々にその思いをもって執筆していただいた.したがって,可能なかぎり分かりやすく記載していただいたので,理解しやすいと自負している.テキストの内容であるが,血液検査の基礎知識,専門知識,検査方法,検査結果の判定法,検査業務などにつき,認定血液検査技師が知っておくべき知識と検査技術について記載されている.
 また,できるだけ安価にするように努力した結果,執筆者の方々には少しご無理を願った面もあるが,事情を理解して快く執筆していただいた点もある.このように本書はご執筆の先生方の認定血液検査技師制度に対する熱い気持ちが込められたテキストである.したがって,受験をされる方は本書を是非熟読されて試験に臨むことをお勧めする.本書に記載のあることを理解して試験に臨めば,大部分の事はクリアーできると思われる.もちろん,試験問題が本テキスト内のものですべてカバーされるとは限らない.これは試験につきものであるが,その辺は受験者の常識に任せたい.
 本書が認定血液検査技師を目指す技師の方に至福を与える書となることを大いに期待する.また,本書は検査技師養成施設で血液検査学を学ぶ際の副読本としても十分使用可能であり,学生の皆さんにもぜひお奨めしたい.最後に,本テキストの編纂にご努力いただいたカリキュラム委員の先生方,および執筆していただいた諸先生方に日本検査血液学会会員を代表して心から感謝する次第である.
 2003年4月
 日本検査血液学会 理事長
 渡辺 清明
 発刊にあたって
 執筆者一覧
 カラー口絵
 本書で使用しているおもな略語

第I章 血液検査の基礎知識
 1 血液医学総論
  A.血液医学の歴史
 2 血液検査の基礎知識
  A.血液の成分
   1.有形成分
   2.無形成分
  B.血液の性状・物性
   1.血液量
   2.比重
   3.粘度
  C.血液の機能
   1.血液の生化学
   2.物質の運搬
   3.造血の調節
   4.生体防御
  D.血球の生成と崩壊
   1.造血因子
   2.胎生期造血
   3.造血器官
   4.髄外造血
   5.鉄代謝
第II章 血液検査に必要な専門的知識
 1 血球
  A.赤血球
   1.産生と崩壊
   2.形態と機能
   3.赤血球膜の構造・機能
   4.ヘモグロビンの構造・機能
   5.エネルギー代謝
   6.赤血球数の基準範囲
  B.白血球
   1.産生と崩壊
   2.形態と機能
   3.成熟に伴う形態変化
   4.白血球数の基準範囲
  C.血小板
   1.産生と崩壊
   2.代謝
   3.形態と機能
   4.血小板の膜糖蛋白
   5.血小板数の基準値
  D.血液細胞抗原検査
   1.フローサイトメトリー
 2 止血機構
  A.血管
   1.血管内皮の機能
   2.細胞接着と止血血栓形成
   3.トロンボモジュリン
  B.血小板
   1.粘着
   2.凝集
   3.放出
  C.止血
   1.血小板因子
   2.凝固因子
   3.一次止血,二次止血
 3 凝固・線溶系
  A.血液凝固とその制御機構
   1.血液凝固機序
   2.血液凝固反応の制御系
  B.線溶と制御機構
   1.線溶機序
   2.線溶因子の産生
   3.線溶因子の構造と機能
   4.線溶の制御機構
  C.凝固・線溶系の分子マーカー
   1.凝固系分子マーカー
     a.SFMC
     b.TAT
     c.PF1+2
     d.FPA
   2.線溶系分子マーカー
     a.FDPおよびDダイマー
     b.PIC
     c.PAI-1
     d.組織型プラスミノゲンアクチベータ(t-PA)
     e.ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータ(u-PA)
     f.t-PA・PAI-1複合体
     g.Bβフラグメント
第III章 検体の採取と保存
 1 採血法と保存法
  A.採血法
   1.毛細血管採血法
   2.静脈血採血法
   3.抗凝固剤の種類と使い方
   4.検体処理
  B.検体管理
   1.保存法
  C.事故の防止対策
   1.感染予防
   2.検体の取り扱い
第IV章 血液検査法
 1 血球に関する検査
  A.血球計数法
   1.用手法における血球計数
     a.赤血球数
     b.白血球数
     c.血小板数
     d.ヘモグロビン濃度
     e.ヘマトクリット値
     f.赤血球指数
     g.網赤血球数
     h.好酸球数
    .好塩基球数
   2.自動血球測定法
     a.目的と方法
     b.赤血球系
     c.白血球系
     d.血小板系
     e.網赤血球系
  B.赤血球沈降速度
  C.溶血の検査
     a.赤血球抵抗試験
     b.PNHに関する検査
     c.血球酵素活性
     d.異常ヘモグロビンに関する検査
     e.赤血球寿命
     f.血清ハプトグロビン濃度
  D.鉄代謝
     a.血清鉄と鉄結合能
     b.フェロカイネティクス
 2 形態に関する検査
  A.末梢血液標本の作製法
   1.薄層塗抹標本
   2.厚層塗抹(濃塗)標本
  B.骨髄標本の作製法
   1.薄層塗抹標本
   2.圧挫伸展標本
   3.組織切片標本
   4.骨髄生検
   5.捺印標本
  C.リンパ節標本の作製法
   1.捺印標本
  D.染色法
   1.普通染色
   2.特殊染色
     a.ペルオキシダーゼ染色
     b.アルカリホスファターゼ染色
     c.エステラーゼ染色
     d.PAS染色
     e.鉄染色
     f.脂肪染色(ズダン黒B染色)
     g.β-グルクロニダーゼ染色
     h.ハインツ小体染色
     i.酸ホスファターゼ染色
     j.免疫組織化学染色
  E.末梢血液像の観察
 @ 1.観察・判定法
   2.血球自動分類
   3.LE細胞検査
  F.骨髄像の観察
   1.観察・判定法
   2.FAB分類
   3.WHO分類
  G.リンパ節標本の観察
  H.白血球機能検査
   1.顆粒球機能検査
   2.リンパ球幼若化試験
 3 止血検査
  A.止血機能検査装置
   1.血液凝固・線溶検査装置
   2.血小板機能検査装置
  B.凝固・線溶の検査
   1.凝固の検査
     a.出血時間
     b.毛細血管抵抗試験
     c.プロトロンビン時間
     d.活性化部分トロンボプラスチン時間
     e.トロンビン時間
     f.フィブリノゲン量
     g.複合凝固因子の検査
     h.凝固因子活性定量
   2.線溶の検査
     a.プラスミノゲン
     b.FDP
     c.ユーグロブリン溶解時間
  C.凝固・線溶阻止物質の検査
   1.凝固阻止物質の検査
     a.アンチトロンビン
     b.プロテインC
     c.プロテインS
     d.ヘパリン
     e.ヘパリンコファクターII
     f.抗第VIII因子抗体
     g.ループスアンチコアグラント
   2.線溶阻止物質の検査
     a.プラスミンインヒビターおよびプラスミノゲンアクチベータ・インヒビター
  D.血小板に関する検査
   1.血小板機能検査
     a.血小板粘着能
     b.血小板凝集能
     c.血餅収縮能
     d.血小板第3因子能
     e.血小板放出能
 4 フローサイトメトリ-(細胞表面マーカー)
  A.CD分類
  B.リンパ球サブセット検査
  C.造血幹細胞同定
 5 遺伝子・染色体検査
  A.染色体検査
   1.染色体の構造と機能
   2.細胞培養法
   3.標本作製法
   4.分染法
     a.Q分染法
     b.G分染法
     c.R分染法
     d.NOR分染法
     e.C分染法
     f.高精度染色体分染法
   5.核型分析
   6.蛍光in situハイブリダイゼーション法(FISH法)
  B.遺伝子検査
   1.赤血球系
   2.白血球系
   3.血小板,血液凝固線溶系
第V章 結果の評価
 1 血液検査結果の評価
  A.赤血球系疾患
     a.貧血
     b.赤血球形態異常
     c.赤血球崩壊異常
     d.赤血球増加症
     e.ヘモグロビン(Hb)異常
  B.白血球系疾患
     a.白血球増加症
     b.白血球減少症
     c.白血病
     d.造血器悪性腫瘍のimmunophenotyping
     e.悪性リンパ腫
     f.白血球形態異常
     g.M蛋白血症
     h.多発性骨髄腫
    .リンパ球の異常
  C.造血臓器の疾患
     a.骨髄増殖性疾患
     b.骨髄異形成症候群(MDS)
     c.再生不良性貧血
     d.脾機能亢進症
  D.血小板の異常
     a.血小板減少症
     b.血小板増加症
     c.血小板機能異常症
  E.凝固・線溶因子の異常
     a.先天性凝固障害
     b.後天性凝固障害
  F.血管の異常
     a.アレルギー性血管性紫斑病
     b.単純性紫斑病
     c.老人性紫斑病
     d.自己赤血球感作症
     e.自己DNA感作症
     f.後天性結合織異常症
     g.感染症に伴うもの
     h.薬剤投与に伴うもの
     i.血漿蛋白異常に伴うもの
     j.先天異常
     k.血管炎
  G.染色体異常
     a.常染色体異常
     b.性染色体異常
 2 臨床医への報告と対応
   1.パニック値
   2.オンラインによる報告
   3.報告書による報告
   4.画像の報告
   5.臨床医とのコミュニケーション
第VI章 血液検査業務
 1 業務管理
  A.管理の概念と原則
   1.管理の定義
   2.管理サイクルと臨床検査のサイクル
   3.管理組織
   4.人事管理
  B.チーム医療の概念
  C.血液部門内業務管理
   1.伝票,台帳,予算,コンピュータの管理
   2.検体の保存管理
   3.安全管理
   4.試薬管理
   5.機器管理
   6.情報管理
   7.内部精度管理
   8.外部精度管理
 2 コンサルテーション
  A.施設内におけるコンサルテーション
  B.施設外におけるコンサルテーション
 3 教育とトレーニング
  A.対応・説明のための話術・手技(communication skill)の向上
  B.部内スタッフ
   1.血液検査教育の理論と実際
   2.業務トレーニング
   3.研究活動(学会発表,プロジェクトの推進,学術論文の読解)
  C.部外関係(医師,看護師,薬剤師,学生など)
第VII章 その他の血液検査
 1 造血幹細胞移植・臓器移植の血液検査
  A.HLAの検査
   1.HLAの定義と臨床的意義
   2.HLA抗原座測定方法
  B.移植に対する一般的知識
   1.造血幹細胞移植
   2.各種造血幹細胞移植の特徴
 2 輸血検査
  A.血液型検査
   1.ABO血液型
   2.Rh血液型
   3.その他の血液型
  B.交差適合試験
  C.不規則抗体
  D.輸血に関する一般的知識
   1.輸血検査の選択と手順
   2.輸血療法

 索引