やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社



 超音波医学の進歩は目覚しいものであった.学問の進歩発展は必然的に専門分化を推進するものである.しかしながら,専門分化の行きつく先は,バランスが悪くなり,ヒトという生き物の健康を保持しようとする医学の本来の目標を見失いないがちになるものである.森全体を見ていかなければならないのに,木を見て森を見失うとはよく言い尽された言葉である.われわれが推進してきた「超音波医学」という学問大系においても,このことを忘れないようにしなければならないのである.
 『超音波医学TEXT』シリーズにおいては,これまでに『基礎超音波医学』『循環器超音波医学』『消化器超音波医学』を発刊してきた.今回は,『呼吸器・体表超音波医学』を発刊することになった.
 今回の内容は,呼吸器領域と体表領域(乳房,甲状腺,上皮小体),脳と神経,眼科,耳鼻咽喉科,歯科・口腔外科,整形外科(運動器)などである.このことを見ていただければ,超音波医学という学問分野が,ヒトの全身をくまなく網羅し,役に立つことのできる学問体系をなしていることを理解していただけるものと考えるのである.
 今後さらに,「血管・血流」そして「産婦人科」「泌尿器科」についても出す予定である.真に患者の役に立つことのできる超音波医学の推進には,これら全てを網羅し,基礎と臨床全体のバランスがとれなければならないと考える.ようやく半ばを過ぎたところであるが,もうひとがんばりして,一つの大きな学問大系の成立に貢献したいものである.
 本シリーズが,これからも学生,研修医,検査技師など多くの若い人達の勉学・研修の為に役立つことを願う.なお,巻末に日本超音波医学会において用いられている基本的な表示法,診断基準,用語などについて付記し読者の便利に供した.
 平成13年7月 著者ら


I 呼吸器(名取・五十嵐,檀原)
  1.はじめに……(名取・五十嵐)
  2.検査手技……(名取・五十嵐)
   [1]体表からのアプローチ
   [2]経食道超音波内視鏡
   [3]気管支腔内超音波断層法(EBUS)
   [4]血管内超音波診断
   [5]超音波像の走査断面
   [6]画像の表示
   [7]超音波像の記録
   [8]装置の条件と観察上の注意
   [9]穿刺,生検のガイド
  3.超音波解剖……(名取・五十嵐)
   [1]胸壁,胸膜
   [2]気管支壁
   [3]縦隔
   [4]血管
  4.血流情報の計測……(名取・五十嵐)
  5.疾患
   A 胸壁病変(五十嵐・名取)
   B 胸膜疾患(五十嵐・名取)
   [1]気胸
   [2]胸水
   [3]胸膜腫瘍
   C 肺内病変(五十嵐・名取)
   [1]無気肺とコンソリデーション
   [2]肺化膿症
   [3]間質性肺炎,肺線維症
   [4]肺腫瘍
   [5]肺塞栓,肺梗塞
   [6]肺動静脈瘻
   D 縦隔病変(檀原)
   [1]縦隔腫瘍の超音波像
   [2]超音波ガイド下穿刺術
   [3]腫瘍による周囲臓器への浸潤
   E 経食道超音波内視鏡による病変の診断(檀原)
   [1]観察可能な構造
   [2]原発性肺癌における転移リンパ節の検出,評価
   [3]腫瘍による心大血管浸潤の評価

II 体表(伊東,平田)
 II-A 乳房
  1.解剖……(伊東)
  2.生理……(伊東)
  3.手技
   [1]走査法(伊東)
   [2]インターベンショナルUS(平田)
  4.疾患……(伊東)
   [1]副乳腺
   [2]乳腺炎(膿瘍)
   [3]乳腺症(マストパチー)
   [4]線維腺腫
   [5]管内性(嚢胞性)乳頭腫
   [6]葉状腫瘍
   [7]乳癌
   [8]脂肪壊死
   [9]女性化乳房
   [10]乳房内異物
   [11]Mondor病
  5.集団検診……(平田)
   [1]各種検査方法の得失
   [2]日本対ガン協会の標準方式
   [3]選択的超音波検査併用方式
   [4]全例超音波検査併用方式
   [5]検診成績
   [6]検診の今後の課題
 II-B 甲状腺……(平田)
  1.解剖
  2.生理
  3.手技
   [1]検査体位と走査法
   [2]検査の手順
   [3]プローブ操作
   [4]甲状腺計測と基準値
   [5]甲状腺・上皮小体疾患の超音波ガイド下穿刺細胞診・組織診
   [6]甲状腺の嚢胞病変の排液
  4.疾患
   [1]急性化膿性甲状腺炎
   [2]亜急性甲状腺炎
   [3]慢性甲状腺炎(橋本病)
   [4]腺腫様甲状腺腫
   [5]良性腫瘤
   [6]甲状腺癌
    (1) 乳頭癌
    (2) 濾胞癌
    (3) 髄様癌
    (4) 未分化癌
   [7]悪性リンパ腫
   [8]甲状腺機能亢進症
   [9]甲状腺機能低下症
   [10]異所性甲状腺
  5.集団検診
 II-C 上皮小体……(平田)
  1.解剖
  2.生理
  3.検査手技
   上皮小体腫瘤に体する超音波ガイド下エタノール注入
  4.疾患
   [1]非機能性上皮小体嚢胞
   [2]原発性上皮小体機能亢進症
   [3]2次性上皮小体機能亢進症

III 脳と神経(伊東,平田)

  1.解剖……(伊東)
   A 脳
   B 頚動脈
  2.手技(走査法)……(伊東)
  3.術後応用,胎内診断……(伊東)
  4.インターベンショナルUS……(平田)
  5.疾患……(伊東)
   A 出血
   [1]脳室上衣下出血
   [2]脳室内出血
   [3]脳実質内出血
   [4]くも膜下出血
   [5]硬膜下血腫
   [6]硬膜外血腫
   [7]小脳出血
   B 奇形
   [1]水頭症
   [2]くも膜嚢胞
   [3]全前脳胞症
   [4]脳梁欠損
   [5]二分脊椎
   C 感染症
   [1]脳炎
   [2]髄膜炎
   [3]脳膿瘍
   D 脳腫瘍
   [1]星状膠細胞腫
   [2]膠芽細胞腫
   [3]希突起膠細胞腫
   [4]上衣腫
   [5]脈絡叢乳頭腫
   [6]松果体腫
   [7]神経鞘腫
   [8]神経細胞腫
   [9]髄芽細胞腫
   [10]髄膜腫
   [11]転移性脳腫瘍
   E 脳梗塞
   F 透明中隔腔とベルガ腔
   G 定位脳手術
   H 頚動脈疾患

IV 眼科(伊東)

  1.解剖
  2.生理
  3.手技(走査法)
  4.疾患
   [1]白内障
   [2]緑内障
   [3]ぶどう膜炎
   [4]硝子体出血
   [5]網膜剥離
   [6]硝子体剥離
   [7]網膜芽細胞腫
   [8]ぶどう膜腫瘍
   [9]眼球突出
   [10]眼窩腫瘍
   [11]眼窩蜂巣炎
   [12]外傷
   [13]血管病変
   [14]眼筋病変
   [15]水晶体脱臼

V 耳鼻咽喉科(平田)

  1.解剖
   A 耳下腺
   B 顎下腺
   C 頚部大血管
   D 頚部リンパ節
  2.検査手技
   A 耳下腺
   [1]体位
   [2]プローブ操作と画像の表示
   B 顎下腺
   [1]体位
   [2]プローブ操作と画像の表示
   C 頚部大血管と頚部リンパ節
   [1]体位
   [2]プローブ操作と画像の表示
  3.疾患
   [1]耳下腺炎
   [2]顎下腺炎
   [3]唾石症
   [4]唾液腺良性腫瘍
   [5]唾液腺悪性腫瘍
   [6]正中頚嚢胞
   [7]側頚嚢胞
   [8]頚部リンパ管腫
   [9]頚部腫瘍
   [10]頚部リンパ節炎
   [11]頚部悪性リンパ腫
   [12]転移性頚部リンパ節腫大
   [13]動脈硬化

VI 歯科・口腔外科(平田)

  1.解剖
  2.疾患
   [1]舌腫瘍
   [2]ガマ腫
   [3]口腔底膿瘍
   [4]オトガイ下部腫瘤

VII 整形外科(伊東)

  1.解剖
   A 四肢軟部組織
   [1]関節
  2.手技(走査法)
  3.疾患
   A 運動器疾患
   [1]先天性股関節脱臼
   [2]アキレス腱断裂
   B 四肢軟部の血管性病変
   [1]深部静脈血栓症
   [2]閉塞性動脈硬化症
   C 四肢皮膚軟部組織の腫瘍性病変
   [1]皮下脂肪腫
   [2]横紋筋肉腫
   [3]神経鞘腫
   [4]血管腫
   [5]肉腫
   [6]動脈瘤
   [7]ガングリオン(結節腫)
   [8]線維腫症
   [9]神経線維腫
  4.新生児股関節検診

(付1)肺癌胸膜浸潤の超音波診断基準
(付2)乳房の超音波診断基準
(付3)甲状腺結節(腫瘤)の超音波診断基準
(付4)超音波断層像(乳腺・甲状腺)の表示方法
(付5)超音波断層法(頭部・眼科)の表示方法
(付6)超音波断層像(頚部血管・体表血管)の表示方法
(付7)超音波断層法(運動器官)の表示方法
(付8)基礎および乳腺・甲状腺,頭部・脳関係,整形外科領域超音波用語一覧