やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文
 超高齢社会であるわが国では,リハビリテーション治療のニーズが年々高まっており,診療現場では,急性期・回復期・生活期と幅広いフェーズで,多様かつ複合的な疾患・外傷に対するリハビリテーション治療が求められています.その専門職である療法士は医師の指示の下,評価に基づき目標設定し,リハビリテーション治療,いわゆる「訓練」を実施します.訓練は時間限定であり,治療効果を上げるため,個々に合った自主トレーニングを指導するのが通常です.
 一方,一般の方は「リハビリテーション」という治療を,どのようにとらえているのでしょうか.「療法士にやってもらうもの」と,とても受動的に考えている方も見受けられます.手術や点滴と同じく,「訓練を受ける」という表現も誤りではありません.しかし,少しでも早くより高い機能回復を目指すなら,安静臥床が免れない場合を除き,自力での活動が必須です.自主トレーニング指導はリハビリテーション治療への受動的参加から主体的参加へと変える方策の一つといえます.
 医療法人豊田会のリハビリテーション科では従来から現場の課題であった自主トレーニング指導法の改善に取り組み,2017年,患者の自主トレーニング指導書作成ツール「パットレ!」を開発しました.これを2018年10月〜2020年3月『Journal ofCLINICAL REHABILITATION』誌上で紹介,連載させていただきました.本書はその内容をブラッシュアップしたものです.2020年コロナ禍の中,書籍化ワーキンググループを立ち上げ,項目の見直しから用語の整理までリハビリテーション科全職員が総力を上げて取り組みました.多彩な病態に対する療法士の指導実践ノウハウや留意点について,症例を通して解説する内容に仕上げています.
 感染対策にも有用な遠隔リハビリテーションツールの開発が進むなか,自主トレーニング指導法は今後ますます多彩に,魅力的に進化していくことでしょう.低コストの紙媒体,かつ普及率の高いMicrosoft Excel(R)を用いた「パットレ!」の最大のアドバンテージは,時短作成と配布の手軽さです.指導内容のカスタマイズが可能ですので,ぜひ皆さま方の施設のオリジナリティを加え,ご活用いただければ幸いです.
 「パットレ!」を活用することで,患者・利用者の方が主体的にリハビリテーション治療に参加し,より高いレベルの活動の獲得につながることを心から願っています.
 2021年8月
 医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院リハビリテーション科
 小口和代
 序文(小口和代)
イントロダクション
 自主トレ指導とパットレ!(田中元規)
 次章以降の読み方
脳血管疾患
 麻痺手の自主トレ(清水雅裕)
 下肢・体幹の自主トレ(星野高志)
 体幹の自主トレ(小川 真)
 構音障害(Dysarthria)の自主トレ(中野美知子)
 失語症の自主トレ(森 真実也)
 記憶障害の自主トレ(小木曽涼介)
 末梢性顔面神経麻痺の自主トレ(仲村我花奈)
 音声障害の自主トレ(内山かおる)
運動器疾患
 変形性頸椎症術後の自主トレ(寺澤享洋)
 腰椎変性すべり症術後の自主トレ(池内 健)
 上腕骨近位端骨折術後の自主トレ(植松大喜)
 肘頭骨折術後の自主トレ(後藤進一郎)
 橈骨遠位端骨折術後の自主トレ(今田貴子)
 手指屈筋腱断裂術後の自主トレ(今田貴子)
 人工股関節全置換術後の自主トレ(浅井 崇)
 人工膝関節全置換術後の自主トレ(植松大喜)
 前十字靱帯再建術後の自主トレ(能城裕哉)
内部疾患
 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の自主トレ(河野純子)
 肺がん周術期の自主トレ(春日井万穂)
 開心術後の自主トレ(大角 奏)
 心筋梗塞後の自主トレ(西脇一誠)
 糖尿病の自主トレ(山口裕一)
 慢性腎臓病(CKD)の自主トレ(浅井なぎさ)
 廃用症候群の自主トレ(津志歩)
 ADL維持向上等体制加算病棟での自主トレ(小沢将臣)
摂食嚥下
 摂食嚥下障害の自主トレ:脳血管疾患後(保田祥代)
 摂食嚥下障害の自主トレ:誤嚥性肺炎後(近藤知子)
 摂食嚥下障害の自主トレ:神経筋疾患(保田祥代)
生活期
 小児の機能性構音障害の自主トレ(近藤知子)
 訪問リハビリテーションでの自主トレ(杉戸 真)
 療養病床での自主トレ(稲垣貴義)
 介護老人保健施設での自主トレ(相馬孝広)
 介護予防・日常生活支援総合事業での自主トレ(宗像沙千子)
 通所リハビリテーションでの自主トレ(早川淳子)
 家屋評価後の環境調整案の指導書(野原 聡)

 おわりに(酒井元生)

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