やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 昨今,リハビリテーション(以下リハ)コメディカルスタッフ数の増加に伴い,医師ばかりでなく,コメディカルスタッフによるリハ研究,研究発表が盛んになっています.一方で,研究の基本的な方法や進め方を学ぶ場や機会が少ないという現状があるのも事実です.リハコメディカルスタッフ向けのリハ研究の入門書はあまりなく,本書は研究の進め方の基本を学ぶ書籍となることを目指しました.これからリハ医学研究を始める研修医,大学院生,さらに,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士等のコメディカルスタッフも対象となるように,リハ研究の立案から論文作成までを想定し,基礎的な内容を網羅しました.
 また,研究を指導する立場となると,日々の多忙な臨床業務の中で,研究の実施にあたって基本的な内容について確認しようとしても,なかなか周囲に聞けないことがあることも事実です.本書は,このような方たちのリマインダーとしても利用できる内容を目指しました.さらに,リハ関連職種のみならず,医療現場で働くすべてのコメディカルスタッフの方たちに広くご活用いただけるものと考えています.
 I章は,「計画と実施─研究計画の立案から研究費獲得,実施まで」として,文献検索等情報収集の具体的な内容を含めて解説しました.II章は,「倫理と利益相反─倫理審査委員会への書類提出と研究承認まで」として,研究の実施にあたって不可欠となった倫理と利益相反について解説しています.III章は,「研究成果の発表─限られた時間でわかりやすいプレゼンテーションをするために」として,学会等での発表における留意点について述べるとともに,効果的なプレゼンテーション方法について解説しています.IV章は,「研究論文の作成と投稿─論文執筆の基本と投稿先の選択」として,投稿する雑誌の選択から,実際の論文作成,投稿,採択までを解説しています.さらに巻末付録では,「先輩に聞く!リハ研究の進め方Q&A」として,読者の方たちが,研究本来の楽しさを知り,やりがいを持っていただけるように,執筆者が実際に行った研究の工夫や苦労した点について,Q&A,およびフローチャート形式で紹介し,実際の研究事例を通じて理解していただけるように提示しています.
 本書が,リハ医療に携わっている,また,これから携わる多くの方たちに広くご活用いただき,研究や発表の一助となれば幸いです.
 2017 年5 月
 志波直人
I章 計画と実施─研究計画の立案から研究費獲得,実施まで
 1 疑問を“研究”にしよう─研究の立案(新小田幸一)
 2 情報を収集しよう─文献検索(野吉朗)
 3 研究のアイデア・成果を守ろう─特許の申請・取得(井上 薫)
 4 研究のロードマップを立てよう─研究計画と予算作成(松瀬博夫)
 5 バイオ統計学を活用しよう(角間辰之)
 6 研究費を獲得しよう─研究費の申請・獲得(松瀬博夫)
 7 産学連携って?─企業との共同研究(井上 薫)
 8 いざ研究を進めよう─研究実施(志波直人)
II章 倫理と利益相反─倫理審査委員会への書類提出と研究承認まで
 1 倫理とは何か─人を対象とした医学研究倫理について(神田芳郎)
 2 研究倫理を効果的に学ぼう─倫理講習(稲岡斉彦)
 3 研究の倫理的裏付けを得よう─倫理審査(村上郁磨 西 昭徳)
 4 研究の公正性,信頼性を確保するために─利益相反について(神田芳郎)
III章 研究成果の発表─限られた時間でわかりやすいプレゼンテーションをするために
 1 研究成果を発表しよう─発表する学会の選択から演題採否通知まで(越智光宏 佐伯 覚)
 2 魅力的な発表,プレゼンテーションをしよう─プレゼン作成から学会発表・質疑応答まで(越智光宏 佐伯 覚)
IV章 研究論文の作成と投稿─論文執筆の基本と投稿先の選択
 1 論文の投稿先を選択しよう(松元秀次 下堂薗 恵)
 2 論文を執筆して投稿しよう(松元秀次 下堂薗 恵)
巻末付録 先輩に聞く! リハ研究の進め方 Q&A
 1 医師編(松元秀次)
 2 理学療法士編(野吉朗)
 3 作業療法士編(北島栄二)

 コラム
  専門用語を正しく理解し,言葉を大切に使うことの重要性(新小田幸一)
  インターネット上の情報の信頼性(志波直人)
  特許取得は研究のオリジナリティーの証明(志波直人)
  産学連携を推進する際に医療者(アカデミア)側に求められる姿勢(井上 薫)
  他診療科との共同研究(志波直人)
  私が被験者だったら(村上郁磨)
  プレゼンの常識・マナー(志波直人)
  なぜ論文を書くのか?いつ論文を書くのか?(松元秀次)
  理系の人が論文を書くということ(松元秀次)

 研究用語一覧
 索引