やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 リハ栄養の3冊目の書籍を医歯薬出版株式会社から出版させていただくことになりました.前書「PT・OT・STのためのリハビリテーション栄養─栄養ケアがリハを変える」と「リハビリテーション栄養ハンドブック」のリハ栄養の考え方に共感してくださる方が少なからずいることを,とてもうれしく思います.リハと臨床栄養の学会誌や雑誌でもリハ栄養に関する特集や連載が,この2年間で増えたと感じています.
 今回はリハ栄養のHowを意識した書籍としました.リハ栄養に関心をもってくださる方は増えましたが,臨床現場でどのように実践すればよいのかわからないという疑問をいただきました.そこで,臨床現場でリハ栄養に取り組んでいるPT・OT・ST・DHを中心に,ケースの執筆を依頼しました.また,リハ栄養の先駆的な活動をしている近森病院と北海道済生会小樽病院の取り組みの紹介も依頼しました.
 日本静脈経腸栄養学会が認定するNST専門療法士を取得しているPT・OT・ST・DHは,書籍企画時にそれぞれ3人,1人,6人,1人と合計11人しかいませんでした.そのうち10人のPT・OT・ST・DHのNST専門療法士に執筆を依頼しました.リハ栄養を臨床現場で実践して広めていくのはPT・OT・ST・DHのNST専門療法士だと,私は確信しています.多くのPT・OT・ST・DHにNST専門療法士を目指してほしいです.
 他にPT・OT・DH・歯科医師とNST専門療法士の管理栄養士・薬剤師・看護師にも執筆を依頼しました.快く引き受けてくださった執筆者の皆様に深謝いたします.管理栄養士・薬剤師・看護師・臨床検査技師のNST専門療法士と歯科医師・医師も,リハ栄養のチーム医療には重要な職種です.より多くの職種がチーム医療に参画することで,より質の高いリハ栄養を実践できます.
 今回の執筆者を中心にリハ栄養を多職種で考え,学び,実践していく研究会として,日本リハビリテーション栄養研究会を立ち上げました(https://sites.google.com/site/rehabnutrition/).2011年9月23.24日に第1回リハビリテーション栄養合宿を行い,2011年12月3日に第1回日本リハビリテーション栄養研究会を開催します.来年には全国でリハ栄養セミナーを開催予定です.入会費・年会費は無料で,合宿やセミナーなどの参加のみ有料としています.Facebookの日本リハビリテーション栄養研究会のグループへの参加をもって入会としています.現時点での会員数は370人ですが,多くの方に入会していただければと思います.入会方法は同研究会のホームページを参照してください.
 2年前と比べると,サルコペニアや悪液質の概念や診断基準がより明確になりました.しかし,臨床現場にはサルコペニアや悪液質と判断されずに,適切なリハ栄養管理を行われていない方が少なからずいます.この書籍が臨床現場におけるリハ栄養の実践の推進となれば幸いです.
 最後に医歯薬出版株式会社の小口真司さんには,前書以上に企画,執筆,編集などで大変お世話になりました.心よりお礼申し上げます.
 2011年11月 若林秀隆
第1章 リハビリテーション栄養の実践
 1)リハビリテーション栄養総論(若林秀隆)
 2)近森病院におけるリハビリテーションと栄養サポートの取り組み(真壁 昇)
 3)北海道済生会小樽病院におけるリハビリテーション直後のプロテイン摂取の取り組み(澤田篤史)
第2章 リハビリテーション栄養のケーススタディ
(1)脳疾患・神経筋疾患のリハビリテーション栄養
 症例1 急性期に栄養障害が生じ食べるためのPEGを行った脳外傷の症例(助金 淳)
 症例2 急性期からの口腔リハビリテーションが摂食・嚥下機能改善につながった脳卒中の症例(山本伸子)
 症例3 訓練室移行後と退院後に体重減少をきたした頸髄損傷の症例(伊藤淳子)
 症例4 ハローベスト装着により摂食・嚥下障害の悪化を認めた脳性麻痺の症例(日野原 晃)
 症例5 急激な体重減少を認めたパーキンソン病の症例(高橋浩平)
 症例6 比較的早期の胃瘻造設で一時的に栄養状態が好転し外食が可能になったALSの症例(森 隆志)
 症例7 生活リズムと食行動に合わせた食事提供により,経口摂取維持が可能になった認知症の症例(近藤知子)
(2)骨関節疾患・膠原病のリハビリテーション栄養
 症例8 誤嚥性肺炎による長期の呼吸障害を併発した大腿骨頸部骨折の症例(原澤陽二)
 症例9 パーキンソン病を有し人工骨頭置換術後に脱臼を繰り返した症例(松野映梨子)
 症例10 体重変化への対応に苦慮した下肢切断の症例(溝部恵美)
 症例11 膠原病による悪液質と栄養吸収障害により機能改善が困難であった症例(久保多喜子)
 症例12 栄養改善に難渋しADL・歩行の改善が遅延したSLEの症例(鴻井建三)
 症例13 疾患の活動性を考慮しリハビリテーション栄養管理を行った多発性筋炎の症例(山岸 誠)
 症例14 悪液質を合併し,栄養と筋力の改善に長期間要したアレルギー性肉芽腫性血管炎の症例(石田直子)
(3)内部疾患のリハビリテーション栄養
 症例15 悪液質と摂食・嚥下障害を認めた慢性閉塞性肺疾患の症例(園田明子)
 症例16 肺塞栓術後の著明な筋力低下に対して,治療段階に応じたリハ栄養管理を実施した症例(石渡規子)
 症例17 栄養管理も含めた包括的な肝臓リハビリテーションが有効であった肝硬変の症例(漆畑春香・林 和子)
 症例18 抑うつ状態の早期発見・介入でADLが改善した腹部大動脈瘤破裂術後の症例(若林秀隆)
 症例19 喘息重積発作とCO2ナルコーシスによる長期人工呼吸器管理から離脱した症例(建宮実和)
(4)がんのリハビリテーション栄養
 症例20 悪液質と摂食・嚥下障害を認めた食道がんの症例(後藤田政子)
 症例21 リハビリテーション栄養管理も含めて緩和ケアを行った終末期がんの症例(望月英樹)
 症例22 減量と複合的理学療法が浮腫改善に有効であったリンパ浮腫の症例(若林秀隆)
(5)摂食・嚥下障害のリハビリテーション栄養
 症例23 PEG依存から経口摂取へ移行中の口蓋裂を伴った知的障害児の症例(山川 治)
 症例24 義歯使用により栄養状態の改善を認めた口腔機能障害の症例(金久弥生・山根次美)
 症例25 薬剤師からみた在宅経腸栄養患者のリハビリテーション栄養(長谷川 聰)
 症例26 舌の一部欠損を伴う摂食・嚥下機能障害患者に対する取り組み−歯科衛生士の立場から(高坂陽子・伊東七奈子・他)
(6)その他の疾患のリハビリテーション栄養
 症例27 半固形化栄養が褥瘡とADLの改善に有効であった脳幹出血の症例(熊谷直子)
 症例28 深在性真菌症で治療・リハビリテーションに難渋した重症熱傷の症例(鈴木裕也・海塚安郎)
 症例29 サルコペニアに対するリハビリテーション栄養管理を行った後期高齢者の症例(西谷 淳)
 症例30 栄養状態に合わせた機能訓練を行った神経性食思不振症の症例(下田隼人)