やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

監修者の序

 わが国では高齢化の進行に伴って,疾病や障害をもちながら生涯を送る方々が増えてまいりました.その人数が,統計的には70歳を超えると,完全に良好状態の方々と略同数になるとされます.現在,質の良い人生を送るために,すべての年齢を通じて機能障害に対するリハビリテーション医療の必要性が高まっております.そして今も進行中の教育改革は,高等教育のあり方を根底から変えつつあります.卒前の医学教育では,従来に増して臨床実習が重視され,卒後教育でも,実践的な前期・後期研修の充実がはかられ,そして認定医・専門医の制度が定着してまいりました.本書『最新リハビリテーション医学』の企画はそのような時代の要請に答え,21世紀を迎へる我が国の医学教育への貢献を目指しました.
 第一回の企画会議を開いてから3年の月日が経ちましたが,お手元に見る4章・47項目におよぶ充実した内容の書として丹生したことは大きな喜びであります.
 振り返ってみますと,私がリハ医学講座の教育の責任者を務めました間,複数の書物を参考にしつつ毎回毎回レジュメを作って学生に手渡したのを覚えています.多くの医科大学の先生方が同じようにして教育しておられると聞きました.そこで本書の目的をはっきりと,(1)卒前・卒後のリハ医学教育,(2)リハ医療の実践に資する,こととして,編纂いたしました.従って全国の大学を中心とするリハ医学の研修施設で卒前・卒後の教育に携わっておられ,そして現役で指導的立場の先生方にご執筆を分担していただきました.快くお引き受けくださり,ご執筆に当たっては編集委員会側の注文に応じて,しばしはご加筆いただいたことを感謝いたしております.
 本書の企画,編集に当たっては,医師,看護婦,理学療法士,作業療法士のほか,義肢装具士や言語聴覚士(平成9年12月法制定)が,それぞれの資格取得に必要なリハ医学の知識を十分に盛り込むように計りました.従って,4年毎に改定される医師国家試験出題基準中のリハの項目に関する内容は含まれております.
 稿を終わるに当たり,編集や執筆にご努力いただいた先生方,そして医歯薬出版(株)の皆様に心からの謝意を表します.
 1999年(平成11年)3月 米本恭三
第1章 リハビリテーション医学・医療の概要
 1.リハビリテーション医学・医療の成り立ちと発展
 2.リハビリテーション治療の目的と障害
 3.リハビリテーション医療のあらまし
 4.急性期リハとその展開
 5.保健・医療・福祉の連携
第2章 リハ診療の手順と繁用される診断法
 1.リハビリテーション診療の手順
 2.画像診断
 3.神経筋の電気診断
第3章 障害の病態生理と治療
 1.廃用による障害(廃用症候群)
 2.運動障害
 3.歩行障害
 4.循環機能障害
 5.呼吸の生理
 6.摂食・嚥下障害
 7.排尿障害
 8.褥創
 9.痙縮・固縮
 10.失行・失認
 11.言語障害(構音障害・失語症)
 12.痴呆
 13.加齢による障害
 14.発達障害
 15.性機能障害(インポテンス)
 16.障害受容と心理
第4章 疾患とリハビリテーション
 1.脳血管障害
 2.頭部外傷
 3.脊髄損傷
 4.中枢神経変性疾患
 5.慢性関節リウマチ
 6.末梢神経・筋疾患
 7.末梢血行障害と下肢切断
 8.上肢切断と義手
 9.呼吸器疾患
 10.循環器疾患(狭心症,心筋梗塞,心不全)
 11.内部障害
 12.骨・関節疾患と骨折
 13.骨粗鬆症
 14.頸肩腕痛・腰痛・膝痛
 15.スポーツ外傷・障害
 16.慢性疼痛(RSDを含む)
 17.熱傷
 18.脳性麻痺・二分脊椎
 19.精神疾患
 20.視覚障害
 21.平衡障害・聴覚障害
 22.悪性腫瘍
 23.HIV感染/AIDS