やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

推薦のことば
 心筋梗塞や心不全などの心臓病は,心臓機能に合わせた適切な運動・リハビリテーションを継続することにより身体の活動性向上や心臓機能の回復が可能であり,再発の予防(二次予防)や寿命が延長されることはすでに臨床医学的に実証されています.また,運動療法は動脈硬化や心筋梗塞の進展・発症の予防(一次予防)も可能にします.本書は,心血管疾患の解説から始まり,各受診者の体調や心臓機能の測定法,心臓機能に合わせた運動量の決定方法,また,心臓リハビリテーション(心リハ)をどのように行うか等について栄養学的,精神医学的な面も加えて基本的な幅広い視野に立って理解しやすく記されています.すなわち,心血管疾患の解剖学的,病理学的理解から始まり,心肺負荷試験など各種の運動負荷方法,運動量や運動時間の決定方法とエネルギー代謝,さらにこれらを能率よく行うチーム医療の方法などがわかりやすく記されています.
 心筋梗塞のリハが診療報酬に取り入れられてから30 年以上が経過し,現在では心大血管疾患リハとして心不全,狭心症,心臓手術後や大動脈疾患,さらには末梢動脈疾患等の血管疾患にも適応が拡大されています.心リハを施行する医療機関は全国的に増加し,日本心臓リハビリテーション学会の会員数は12,000 名以上となり,心臓リハビリテーション指導士の認定数も3,800 名を超えました.本書は,心リハに従事している医師,理学療法士,看護師,臨床検査技師の方々や,将来,心リハに従事することを希望している多くの方々に適切な知識と理解をもたらし,臨床で非常に役立つであろうことを確信しています.これまで心リハに関して簡潔にまとめられた書籍は少なく,心リハを行っていくための基本的な一冊になるであろうと考えます.
 2016 年7 月
 昭和大学名誉学長
 片桐 敬

まえがき
 このたび,NPO法人ジャパンハートクラブの主要メンバーによる4 冊目の医学書が刊行されることとなりました.本書の企画は数年前に立ち上がり,多少時間はかかりましたが,その分,実践的で立派なマニュアルに仕上がりました.ご覧いただければわかるように,ポケットサイズでありながら,他の大判の書籍に勝るとも劣らない内容の濃いものになっています.
 心臓リハビリテーション(以下,心リハ)とは,言うまでもなく多職種による包括的かつ継続的な介入であり,そのためには循環器系をはじめ運動器,神経調節系,呼吸器系,代謝系を中心とする運動生理学や,看護学,薬理学,栄養学,心理学などに関する基本的知識と介入技術が必要とされます.本書では,臨床現場で必要な知識や技術が具体的に網羅されており,心リハにかかわる多くの職種の方の参考になると同時に,チームの他職種の仕事に対する理解を深め,スキルミックスを向上するうえできわめて有用な情報が得られます.心リハに関する最新のエビデンスや方法論,さらに今後の研究の方向を示唆する興味深い内容も含まれており,スタッフの皆さんが常に携行され,熟読されることを期待します.
 最後に,ジャパンハートクラブの学術活動にご理解いただき,ボランティア精神でご執筆いただきました先生方に心より感謝いたします.
 2016 年7 月
 伊東春樹
 推薦のことば(片桐 敬)
 まえがき(伊東春樹)
1 循環器疾患の理解
 (大宮一人)
 1―心臓の働き
 2―心臓リハビリテーションの適応疾患
  1.虚血性心疾患 / 2.弁膜症 / 3.心不全 .大血管疾患 / 5.下肢閉塞性動脈硬化症
2 心臓リハビリテーションの骨子
 1―心臓リハビリテーションで目指すこと(伊東春樹)
  1.心臓リハビリテーションの歴史と定義 / 2.関連する臨床医学分野 / 3.心臓リハビリテーションの本質と今後の課題
 2―リハビリテーション概念の基本理解(牧田 茂)
  1.心臓リハビリテーションの概念 / 2.日本における歴史的変遷
 3―リハビリテーション医療者の役割―チームアプローチ(牧田 茂)
  1.心臓リハビリテーションチームスタッフ / 2.心臓リハビリテーション指導士 / 3.心臓リハビリテーションに携わるスタッフの育成 / 4.チーム内での看護師の役割
 4―心臓リハビリテーションの適応と禁忌(牧田 茂)
  1.適応と禁忌・リスクの層別化 / 2.保険診療における適応拡大とガイドライン
 5―心臓リハビリテーションの効果とエビデンス(長山雅俊)
  1.運動療法の身体効果 / 2.運動耐容能の増加 .冠循環への効果 / 4.血管内皮機能の改善 .包括的介入による冠動脈狭窄病変の進行の抑制および退縮
 6―主な疾患の再発予防に対する効果(木庭新治)
  1.冠動脈疾患(CAD) / 2.慢性心不全 / 3.末梢動脈疾患(PAD)
 7―求められる体制(長山雅俊)
  1.心大血管疾患リハビリテーション料(I)に関する施設基準 / 2.心大血管疾患リハビリテーション料(II)に関する施設基準 / 3.必要なスタッフと人材の育成
 8―リハビリテーションプログラム(長山雅俊)
  1.入院中リハビリテーションプログラム / 2.生活指導の要点 / 3.退院後リハビリテーションプログラム
 9―長期予後改善効果(長山雅俊)
  1.虚血性心疾患 / 2.慢性心不全
 10―抑うつへのスクリーニングと介入(石原俊一)
  1.心臓リハビリテーション患者における心理学症状 .抑うつに対する認知行動療法による治療的介入
3 心臓リハビリテーションにおける検査・評価
 1―運動負荷試験(前田知子)
  1.運動様式 / 2.負荷装置を用いた方法 / 3.運動負荷プロトコール / 4.運動負荷試験の中止基準 .運動負荷試験の判定 / 6.運動負荷試験中の事故
 2―心肺運動負荷試験(前田知子)
  1.Ramp負荷試験中の生理学的応答 / 2.心肺運動負荷試験で得られる指標と心機能
 3―心エコー検査(前田知子)
  1.心エコー検査の必要知識 / 2.心エコー検査の方法・注意点 / 3.心機能の診断・評価 / 4.負荷心エコー
 4―核医学検査(牧田 茂)
  1.心臓核医学検査 / 2.診断情報 / 3.代表的なトレーサーと検査法
 5―心臓カテーテル検査(牧田 茂)
  1.心臓カテーテルの目的と適応 / 2.心臓カテーテルの禁忌 / 3.検査前後の患者ケア / 4.カテーテルのアプローチ / 5.圧測法 / 6.心血管造影法の特徴と合併症 / 7.左室造影法 / 8.大動脈造影法 / 9.冠動脈造影検査
 6―機器の管理(田嶋明彦)
  1.負荷装置 / 2.呼気ガス分析装置
4 心臓リハビリテーションの実践
 1―運動処方
  1.有酸素トレーニングの処方(大宮一人)
  2.レジスタンストレーニングの処方(高橋哲也)
  3.インターバルトレーニング(安達 仁)
  4.末梢動脈疾患の運動療法(浅田宏史,安 隆則)
  5.運動処方における医学管理(リスク,合併症)(木村 穣)
 2―心臓リハビリテーションの実際の手法
  1.持久力トレーニング(安達裕一,齊藤正和)
  2.レジスタンストレーニング(齊藤正和,安達裕一)
  3.冠危険因子の管理(及川惠子)
  4.肥満への対応(木村 穣)
  5.栄養・食事指導(折口秀樹)
  6.生活指導(池亀俊美)
  7.禁煙指導(木庭新治)
  8.復職指導(長谷川恵美子)
 3―心理的サポート(長谷川恵美子)
  1.心血管疾患と心理的サポートの必要性 / 2.心理面でのサポートの実際
 4―急変時の対応(安達 仁)
  1.心臓リハビリテーションの危険性 / 2.心停止 / 3.救急蘇生実施法 / 4.心筋虚血 .心不全増悪 / 6.意識レベル低下・ショック
5 社会福祉制度の利用
 (角口亜希子)
  1.社会福祉制度とは / 2.障害者福祉制度の仕組み / 3.心機能障害の障害支援区分の認定 / 4.心疾患患者の利用できる社会福祉サービス

 コラム
  診療報酬改定状況(上月正博)
  心臓リハビリテーション指導士(RICR)(安達 仁)
  心臓リハビリテーションガイドライン(野原隆司)
  抑うつとうつ(石原俊一)
  ブリーフセラピーと支持的心理療法(石原俊一)
  認知行動療法とは(石原俊一)
  患者さんに伝えたい5 カ条(石原俊一)
  適度な運動とは(木村 穣)
  栄養指標(折口秀樹)
  家族への指導のポイント(池亀俊美)
  タイプA行動パターンとタイプDパーソナリティ(長谷川恵美子)

 索引