やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文
 医学の進歩により,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,看護師等のリハビリテーション(以下リハ)関連職に求められる医学知識は,日々新しくなっている.特に生命に関わる問題,あるいは障害につながりうる問題については,「知らなかった」ではすまされないものがある.リハが離床や運動というリスクを伴う以上,そのような問題にはアンテナを高くして対応しなければならない.それがリハの臨床である.
 「リハは急性期が過ぎて安定してから」という時代は終わり,「発症後あるいは術後,可及的早期から」という時代に確実に入っている.単に長期入院による医療費の問題からだけでなく,早期介入のほうがリハの結果も良いからである.当然のことながら,リハ関連職には急性期の医学的診断,治療,あるいは手術に関する知識も必要になる.もちろん,それは医師や医学生に求められる水準と比べれば広く浅くというスタンスで問題はないが,リハに伴うリスクあるいはリハの帰結に影響する内容では,むしろより深くなければならない.脳疾患学と題しているにもかかわらず,本書がリハ医師によって書かれているのもその点にある.
 本書では,急性期からリハが介入しなければならない代表的な脳の外傷・疾患の病態について,ケースエピソードを通してわかりやすく解説したつもりである.読者の皆さんが各病態をいきいきとしたイメージをもって理解していただくことを目標とした.脳疾患の理解を深め,その知識を臨床現場でも大いに役立てていただければ幸いである.
 2017年8月吉日
 岡島 康友
「脳の解剖と機能」の話
 脳解剖の知識が大切なわけ
 脳の基本的構造
 脳の横断面
 脳の動脈
 MRIの種類
本書で取り上げる脳疾患のフローチャート
01 くも膜下出血
 導入エピソード
 くも膜下出血とは?
 どんな人がなりやすいですか
 どんな病態ですか
 どのように診断されますか
 治療はどう進められますか
 予後はどうですか
 渡辺さんのその後
 Another Case
02 視床出血【脳内出血】
 導入エピソード
 視床出血とは?
 どんな人がなりやすいですか
 どんな病態ですか
 どのように診断されますか
 治療はどう進められますか
 予後はどうですか
 鈴木さんのその後
 Another Case
03 橋出血 若年性海綿状血管腫【脳内出血】
 導入エピソード
 橋出血とは?
 どんな人がなりやすいですか
 どんな病態ですか
 どのように診断されますか
 治療はどう進められますか
 予後はどうですか
 内田さんのその後
 Another Case
04 アミロイド血管炎性皮質下出血【脳内出血】
 導入エピソード
 アミロイド血管炎性皮質下出血とは?
 どんな人がなりやすいですか
 どんな病態ですか
 どのように診断されますか
 治療はどう進められますか
 予後はどうですか
 小林さんのその後
05 心原性脳塞栓症【脳梗塞】
 導入エピソード
 心原性脳塞栓症とは?
 どんな人がなりやすいですか
 どんな病態ですか
 どのように診断されますか
 治療はどう進められますか
 予後はどうですか
 橋本さんのその後
 Another Case
06 ラクナ梗塞【脳梗塞】
 導入エピソード
 ラクナ梗塞とは?
 どんな人がなりやすいですか
 どんな病態ですか
 どのように診断されますか
 治療はどう進められますか
 予後はどうですか
 小沢さんのその後
 Another Case
07 アテローム血栓性脳梗塞【脳梗塞】
 導入エピソード
 アテローム血栓性脳梗塞とは?
 どんな人がなりやすいですか
 どんな病態ですか
 どのように診断されますか
 治療はどう進められますか
 予後はどうですか
 田中さんのその後
 Another Case
08 慢性硬膜下血腫
 導入エピソード
 慢性硬膜下血腫とは?
 どんな人がなりやすいですか
 どんな病態ですか
 どのように診断されますか
 治療はどう進められますか
 予後はどうですか
 西島さんのその後
09 脳腫瘍
 導入エピソード
 脳腫瘍とは?
 どんな人がなりやすいですか
 どんな病態ですか
 どのように診断されますか
 治療はどう進められますか
 予後はどうですか
 島田さんのその後
10 外傷性脳損傷
 導入エピソード
 外傷性脳損傷とは?
 どんな人がなりやすいですか
 どんな病態ですか
 どのように診断されますか
 治療はどう進められますか
 予後はどうですか
 高橋さんのその後
11 もやもや病
 導入エピソード
 もやもや病とは?
 どんな人がなりやすいですか
 どんな病態ですか
 どのように診断されますか
 治療はどう進められますか
 予後はどうですか
 杉本さんのその後
 Another Case
12 特発性正常圧水頭症
 導入エピソード
 特発性正常圧水頭症とは?
 どんな人がなりやすいですか
 どんな病態ですか
 どのように診断されますか
 治療はどう進められますか
 予後はどうですか
 佐藤さんのその後

コラム目次
 01 くも膜下出血
  (1)未破裂動脈瘤
 02 視床出血
  (1)脳ヘルニアの症候
  (2)視床痛
  (3)運動学習とCI療法
  (4)片麻痺の評価
 03 橋出血 若年性海綿状血管腫
  (1)身体障害者手帳
  (2)リハビリテーション工学
 04 アミロイド血管炎性皮質化出血
  (1)半側空間無視
  (2)地域包括ケア
 05 心原性塞栓症
  (1)失語症
  (2)血栓溶解療法
  (3)機能的自立度評価法(FIM)とは
 06 ラクナ梗塞
  (1)椎骨動脈解離のリスクとリハビリテーション
  (2)不顕性誤嚥
 07 アテローム血栓性脳梗塞
  (1)脳梗塞の前兆としての一過性脳虚血発作
  (2)抗血小板剤二剤併用療法
  (3)Trousseau(トルーソー)症候群
 08 慢性硬膜下血腫
  (1)治療可能な認知症
  (2)易転倒の評価
 09 脳腫瘍
  (1)症候性てんかん
  (2)がんリハビリテーション
 10 外傷性脳損傷
  (1)高次脳機能障害リハビリテーション
  (2)高次脳機能障害患者友の会
 11 もやもや病
  (1)若年性脳梗塞
 12 特発性正常圧水頭症
  (1)認知症の治療

 索引