やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

監訳の序
 本書,『姿勢コントロール(Postural Correction)』は,既刊翻訳済み『姿勢アセスメント(PosturalAssessment)』の姉妹編であり,姿勢治療に重点をおき,姿勢を改善させる特別な治療テクニックを紹介している.姿勢の治療に際しては,正確で信頼性のある評価に基づいて行われる必要がある.
 本書における評価と治療に関しては,1)特徴的な30 の姿勢の知識と不良アライメントへの対処方法により,姿勢を改善させる治療テクニックが用いられている.2)脊椎における10 の姿勢は,(1)過度な頚椎前弯,(2)頚部側屈,(3)頭部の前方突出,(4)頭頚部の回旋,(5)胸椎後弯,(6)胸椎の平背,(7)胸郭の回旋,(8)過度な腰椎前弯,(9)過少な腰椎前弯,(10)脊椎側弯症によるものである.3)骨盤でよくみられる4の姿勢は,(1)骨盤前傾,(2)骨盤後傾,(3)骨盤回旋,(4)骨盤側方傾斜によるものである.4)下肢でよくみられる10 の姿勢は,(1)股関節の内旋,(2)反張膝(膝関節の過伸展),(3)屈曲膝,(4)内反膝(O脚),(5)外反膝(X脚),(6)脛骨捻転,(7)扁平足,(8)凹足,(9)外反足(足部の回内),(10)内反足(足部の回外)によるものである.5)肩と上肢でよくみられる6 の姿勢は,(1)肩甲骨の前方突出,(2)上腕骨の内旋,(3)翼状肩甲,(4)肩の挙上,(5)肘関節屈曲,(6)肘関節過伸展によるものである.
 以上の特徴的な姿勢については,初心者でも理解できるように図・表・写真と解説を加え,各姿勢における着眼点をリストに示した.さらに,セラピストができることと,クライエントができることを箇条書きにし,ポイントは写真にて解説している.
 治療テクニックに関しては,それぞれの姿勢を調整するために用いる主なテクニックとして,(1)深部組織マッサージ,(2)基本的な他動的ストレッチ,(3)軟部組織リリース,(4)トリガーポイントの不活性化,(5)軽い下肢の牽引などに加えて,クライエントと円滑な治療を進めるために,クライエントに対して安静時姿勢やポジショニング,自動的ストレッチを例示し,治療する際の促通テクニックの助言なども記載している.
 また,クライエントとのコミュニケーションを深め,「信頼性を得ることや関係性を強めること」は,クライエントの姿勢に対して円滑な治療を行う助けとなり,助言にも役に立つ.
 最後に『姿勢コントロール(Postural Correction)』の出版に当たり訳者諸氏の並々ならぬご苦労と医歯薬出版編集部の惜しみないご協力に感謝申しあげます.
 セラピストがクライエントの姿勢を正しく調整できるよう,本書が治療のさらなる発展に寄与できることを願うものである.
 2017 年6 月
 武田 功


シリーズ序文
 マッサージは,現在使われているもっとも古い治療法の一つである.現在,多くのセラピストは,以前にも増して絶えずマッサージ・テクニックを広める活動をしている.これらのテクニックの多くは,マッサージ師養成校の課程内で教えられている.現在必要なのは,クライエントにマッサージ治療を行うために必要なテクニックを教えること,臨床的・教育的なより良い教材を提供することである.Human Kinetics社はこれを考慮し,セラピストのためのハンズ・オンガイドを出版した.
 セラピストのためのハンズ・オンガイドシリーズは,マッサージセラピストの領域において,評価や治療の特別な手法を提供している.例えば,オステオパシー(Osteopath)やフィットネスインストラクターなどのボディワーカーにとって有用となるかもしれない.シリーズの各書籍は,クライエントに対するテクニックを伝えるための段階的なガイドである.各書籍はあらゆるテクニックをフルカラーの写真にて例示している 注).助言の個所では,テクニックが正確に実施される助けとなる有用なアドバイスを提示している.
 既知のテクニックに磨きをかける時や,必要なテクニックを習得し,養成課程に合格しようとする時に,セラピストのためのハンズ・オンガイドシリーズを活用することができる.また,読者はより良いマッサージ治療を学生とともに探している指導教員であるかもしれない.本シリーズは,理論から実践への移行を容易にできるよう,学習しやすいように段階的に書かれている.セラピストのためのハンズ・オンガイドシリーズには,マッサージ治療を真剣に考えているすべての人が必要とする非常に重要な情報を掲載している.
 注)日本語版は2 色刷である.


序文
 本書,『姿勢コントロール(Postural Correction)』は,セラピストのためのハンズ・オンガイドの一冊として,実践的な治療テクニックを用いるセラピストのために発行された.読者が軟部組織やエクササイズの専門家であるなら,本書はクライエントを正しい姿勢に調整するという治療を目的とした基本的なエクササイズ,マッサージやストレッチテクニックのために役立つだろう.理学療法士,オステオパス,スポーツセラピストやカイロプラクティックについて学んでいる学生であるなら,姿勢の問題を克服するためのテクニックがより向上する手助けとなるだろう.また,本書に記載されているやさしい解説が筋骨格系を理解する手助けとなるかもしれない.読者がヨガやピラティスの指導者であるなら,生徒の身体の部位や動きが姿勢にどのような影響を与えているかを理解するために役立つかもしれない.本書を読んだことにより,特定の姿勢の問題点に対して,治療プログラムを考える一助となるだろう.読者はすでに本書に掲載しているようなテクニックのいくつかを行うことができるかもしれないが,どの方法が姿勢を変化させるのに一番効果的であるかは,まだ理解していないかもしれない.本書は,正しい姿勢における関節のような身体の局所的な部分,または全体的なさまざまなことに気づき,それを理解し,ひらめきを与える手助けとなるだろう.
 本書では,読者が観察したい脊椎,骨盤,上肢,下肢のもっとも一般的な30 の姿勢やそれぞれの姿勢を調整するためにセラピストとしてするべきことを掲載している.それはクライエントの姿勢調整を行うにあたって,きわめて重要な要素である.いくつかの姿勢の変化は,習慣的な活動や不活動の影響によるものであり,クライエントの行動に関する情報は,クライエントの姿勢を管理したり,変化させるのに役立つだろう.
 本書に掲載した脊椎における10 の姿勢は,過度な頚椎前弯,頚部側屈,頭部の前方突出,頭頚部の回旋,胸椎後弯,胸椎の平背,胸郭の回旋,過度な腰椎前弯,過少な腰椎前弯,脊椎側弯症によるものである.骨盤でよくみられる4 つの動きは,骨盤前傾,骨盤後傾,骨盤回旋,骨盤側方傾斜である.
 下肢でよくみられる10 の姿勢は,股関節の内旋,反張膝(膝関節の過伸展),屈曲膝,内反膝(O脚),外反膝(X脚),脛骨捻転,扁平足,凹足,外反足(足部の回内),内反足(足部の回外)である.
 肩と上肢でよくみられる6 つの姿勢は,肩甲骨の前方突出,上腕骨の内旋,翼状肩甲,肩の挙上,肘関節屈曲,肘関節過伸展である.
 特徴的な30 の姿勢については,ほぼすべてに写真と解説をつけ,どの筋が短縮しているか,伸張されているかについて記載している.また,各姿勢における着眼点をリストにしている.見出しの下には,クライエントができること,セラピストができることを箇条書きにして,着眼点の多くは写真にて解説している.
 セラピストのためのハンズ・オンガイドシリーズとして,本書に掲載したテクニックは,ほとんどのセラピストが利用可能であり,特にマッサージセラピストに焦点を当てているため,主に身体部位を再構成させるための短縮した組織の伸張について記載している.それぞれの姿勢を調整するためのテクニックは,深部組織マッサージ,基本的な他動的ストレッチ,軟部組織リリース,トリガーポイントの不活性化,軽い下肢の牽引など,さまざまである.クライエントの自動的ストレッチや安静時姿勢について例示している.クライエントのポジショニングを治療する時の促通テクニックは,助言に記載した.また,「信頼を得ることや関係性を強めること」に記載した情報は,姿勢調整についてクライエントと話し合う時の助けとなる.本書で述べられたテクニックは,理学療法士やオステオパス,カイロプラクティックの治療者が関節マニピュレーション・テクニックを行う時に役に立つ情報である.
 本書には,マッサージセラピストが使うテクニックで調整することが難しい姿勢についての情報も含まれている.そのような姿勢の良い例は,脊柱側弯症,外反膝(X脚),内反膝(O脚)であり,これらについては,軟部組織のストレッチや機能低下を起こしている部位の強化だけでは根本的な解剖学的構造を変化させることはできない.しかしながら,セラピストとして,これらの姿勢のどの部分が制限されているかを知ることは重要であるため,治療についての着眼点や提案を記載した.セラピストは,人体は相互に連結しているので一つの筋骨格系を取り出して考えることが難しいことを知っている.例えば,頚部は腰椎に影響を与えるかもしれないし,足部は骨盤に影響を与えるかもしれない.また,肩甲帯は手関節と手部に影響を与えるかもしれない.正しいアライメントを得るために全体的に治療を行うことが理想ではあるが,実際に行う時や時間が限られている時には,一度に治療できるのは身体の一部となるのが一般的である.したがって,本書でも身体を区分して説明をしていることを認めてほしいが,この形式をとることによって,特定のクライエントを治療する時に,もっとも有用な項目を本書から素早くみつけることができる.
 本書は大きく4 つに分かれている.第I部「姿勢調整をはじめるために」は2 つの章より構成されており,クライエントの姿勢調整を行う際に助けとなる論理的根拠や,提案した治療方法についての概要を第2 章に記載した.第II部「脊椎を調整する」は4 つの章より構成されており,姿勢に影響を与える脊椎の特定部分を調整することに焦点を当てて解説している.第III部「骨盤と下肢を調整する」は2 つの章より構成されており,骨盤,股関節,膝関節,足関節,足部について解説している.最後の第IV部「肩と上肢を調整する」は2 つの章より構成されている.
 本書は既刊済みの『姿勢アセスメント(Postural Assessment)』と併読するのに理想的な分量であり,ハンズ・オンガイドシリーズの『Deep Tissue Massage』『 Stretching and Soft Tissue Release』で述べられているテクニックの分析についても記載している.本書がクライエントの姿勢を変化させるような治療の助けとなれば幸いである.
 監訳の序
 シリーズ序文
 序文
第I部 姿勢調整をはじめるために
 第1章 姿勢調整の序論
   治療テクニックの有効性に関するメモ
  1. 不良アライメントの原因
  2. 不良アライメントの結果
   1 骨
   2 筋
   3 関節
   4 靭帯
   5 他の軟部組織
  3. 姿勢調整が有益なのはどのような人か?
  4. 姿勢調整に対する禁忌と注意事項
   禁忌
  5. おわりに
 第2章 姿勢を変える
  1. 姿勢調整開始の決定
  2. 姿勢調整のための5 つのステップ
  3. 姿勢調整のテクニック
   姿勢調整の一般的なガイドライン
   1 原因となっている習慣の認識と回避
   2 ストレッチ
   (1)軟部組織リリース
   (2)筋エネルギーテクニック
   3 マッサージ
   4 トリガーポイントの不活性化
   5 筋の強化
   6 テーピング
   7 筋膜リリース
  4. アフターケア
  5. 信頼を得ることや関係性を強めること
  6. 他の専門家への紹介
  7. クライエントに合わせた治療
   脊椎後弯についてのケーススタディ
  8. おわりに
第II部 脊椎を調整する
 第3章 頚椎
  1. 過度な頚椎前弯
   過度な頚椎前弯による影響
  2. 頚部側屈
   頚部側屈による影響
  3. 頭部の前方突出
   頭部の前方突出による影響
  4. 頭頚部の回旋
   頭頚部の回旋による影響
  5. おわりに
 第4章 胸椎
  1. 胸椎後弯
   過度な胸椎後弯による影響
   Lewisのテーピングテクニック
   ダーツ・エクササイズ
  2. 胸椎の平背
   胸椎の平背による影響
  3. 胸郭の回旋
  4. おわりに
 第5章 腰椎
  1. 過度な腰椎前弯
   過度な腰椎前弯による影響
  2. 過少な腰椎前弯
   過少な腰椎前弯による影響
  3. おわりに
 第6章 脊柱側弯症
  1. 脊柱側弯症の種類
   脊柱側弯症による影響
   1 脊柱側弯症
  2. おわりに
第III部 骨盤と下肢を調整する
 第7章 骨盤
  1. 骨盤前傾
   骨盤前傾による影響
  2. 骨盤後傾
   骨盤後傾による影響
  3. 骨盤回旋
   骨盤回旋による影響
  4. 骨盤側方傾斜
   骨盤側方傾斜による影響
  5. おわりに
 第8章 下肢
  1. 股関節の内旋
   股関節の内旋による影響
  2. 反張膝
   反張膝による影響
  3. 屈曲膝
   屈曲膝による影響
  4. 内反膝(О脚)
   内反膝による影響
  5. 外反膝(X脚)
   外反膝による影響
  6. 脛骨捻転
   脛骨の内方捻転による影響
  7. 扁平足
   扁平足による影響
  8. 凹足
   凹足による影響
  9. 外反足
   外反足による影響
  10. 内反足
   内反足による影響
  11. おわりに
第IV部 肩と上肢を調整する
 第9章 肩関節
  1. 肩甲骨の前方突出
   肩甲骨の前方突出による影響
  2. 上腕骨の内旋
   上腕骨の内旋による影響
  3. 翼状肩甲
   翼状肩甲による影響
  4. 肩の挙上
   肩の挙上による影響
  5. おわりに
 第10章 肘関節
  1. 肘関節屈曲
   肘関節屈曲による影響
  2. 肘関節過伸展
   肘関節過伸展による影響
  3. おわりに

 付録
 参考文献
 著者について