やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文

 「装具治療マニュアル」の初版が刊行されてから20年近くの歳月が経過したが,幸いにも読者の方々のご好意により版を重ねることができた.しかし,装具療法を含めた最近の医療における進歩には目覚ましいものがある.したがって,常に新しい視点をもって本書を見直し続けていくことが,読者に対する編者,出版社に課せられた責務であるといっても言い過ぎではない.
 そこで今回は,特に下記の事項に留意し,新たな項目,著者も加え“新編”として出発することにした.
 (1) 本書の特徴である装具療法の適応と限界,他の治療法(手術療法,理学・薬物療法など)との関連に意を用い,患者の形態・機能障害に合わせた装具の処方,チェックアウト,装着訓練,フォローアップを記することを最大の目標とした.
 (2) 医師,セラピスト,義肢装具士などチームメンバーの便になるように,装具のバイオメカニクス,熱傷,血管原性足部潰瘍を新たに加えた.
 (3) 用語は福祉関連機器用語[義肢・装具部門](JIS T 0101・1997),リハビリテーション医学用語集(1997),整形外科学用語集(5版,1999)に準拠した.
 (4) 読者の便を図るべく,写真やイラストをできるだけ多く取り入れた.
 21世紀突入を目前に控え,装具療法の対象となる疾患も大きく変化している.本書が,日頃,日常診療に携わる多くの医師,理学療法士,作業療法士,義肢装具士などの方々の座右の書として活用されることを期待したい.
 2000年7月 編者
 序文

第1章 総論(加倉井周一・山本澄子)
 1.装具の分類
  1)国内の動向
  2)海外の動向
  3)装具分類比較
 2.装具の使用目的
 3.装具の処方とチェック
  1)チームアプローチの必要性
  2)処方の内容と統一処方箋
  3)採寸・採型
  4)仮合せ・適合判定
  5)患者に対する装具の説明
 4.装具と日常生活活動
 5.装具のバイオメカニクス
  1)矯正用装具のバイオメカニクス
  2)歩行用装具のバイオメカニクス
 6.装具の評価と金属製下肢装具部品の標準化
  1)装具の評価の問題点
  2)破損装具部品の分析
  3)わが国の標準化の経緯
  4)金属製下肢装具部品の標準化
 7.今後の展望
  1 金属製足継手の機能と適応
  2 プラスチック製足継手
  3 膝継手の機能と適応
  4 股継手の機能と適応
  5 下肢装具のアライメント(矢状面)
  6 短下肢装具のチェック項目
  7 長下肢装具のチェック項目
  8 装具のチェックアウト(下肢装具で例示)
  9 靴の基本的事項
  10 靴型装具の処方から適合までのフローチャート
  11 体幹装具の部品と名称
  12 体幹装具の種類とコントロール作用
  13 頸椎装具の種類とコントロール作用
  14 intrinsic minus handとintrinsic plus hand
  15 手の装具におけるアウトリガーの牽引方向と位置
  16 対立装具の部品,付属品
  17 対立装具のチェック項目
  18 対立装具の適応
  19 把持装具の形式と適応
  20 把持装具のチェック項目
  21 上肢装具の機能
  22 手動車いすの各部の名称
  23 車いすの計測姿勢と計測項目

第2章 麻痺性疾患・神経筋疾患
 1  脳卒中(栢森良二)
  1.脳卒中における装具療法の意義
  2.脳卒中の障害学
   1)機能障害
   2)能力低下
   3)社会的不利
  3.脳卒中の機能予後
   1)予後を決める因子
   2)廃用症候群
   3)関節拘縮
   4)下肢装具の適応
   5)運動訓練の禁忌
   6)車いすの適応
  4.脳卒中リハビリテーションの流れ
   1)リハビリテーションの流れ
   2)早期歩行訓練の効果
   3)装具処方の要件
   4)装具による弊害
  5.片麻痺の歩行分析
   1)歩行周期と歩行能力の決定因子
   2)正常歩行の評価
   3)片麻痺の歩行
   4)歩行障害とその対処法
  6.脳卒中片麻痺の下肢装具
   1)下肢装具処方の原則
   2)下肢装具の種類
   3)短下肢装具の生体力学
   4)足部装具の生体力学
   5)下肢装具の処方
   6)内反尖足変形に対する外科的アプローチ
   7)適合判定
  7.杖
   1)杖の目的
   2)杖の種類
   3)杖の長さ
   4)杖歩行訓練
  8.車いす
   1)車いすの処方内容
   2)片麻痺患者用車いす
  9.上肢装具
   1)肩関節亜脱臼と痛み
   2)肩亜脱臼のメカニズム
   3)肩装具の目的
   4)アームスリングの生体力学
   5)アームスリングの種類
   6)手・手指の装具
  10.自助具
 2  脳性麻痺(江口壽榮夫)
  1.脳性麻痺に対する装具適応
  2.脳性麻痺の装具と訓練および整形外科手術
  3.装具処方の実際と限界
   1)痙直型
   2)不随意運動型(アテトーゼ型)
   3)強剛型
   4)失調型
  4.その他の装具・器具
   1)抗重力筋を支える装具
   2)移動動作に使われる器具
  5.チェックアウト
  6.装着訓練
 3  運動失調・不随意運動(中村隆一)
  1.運動失調と不随意運動の現象学
   1)随意運動の運動学的特徴
   2)運動失調
   3)不随意運動
   4)装具の適応
  2.訓練用装具
  3.代償的装具
   1)重り負荷と弾性緊縛帯
   2)頸椎カラーと垂直懸垂
  4.歩行・移動補助具
 4  脊髄性疾患
  A 脊髄損傷(初山泰弘)
  1.発生原因と受傷時年齢
  2.治療経過
   1)急性期
   2)亜急性期
   3)慢性期
  3.損傷レベルと予後
   1)頸髄損傷
   2)上位胸髄損傷
   3)下位胸髄損傷
   4)腰・仙髄損傷
  4.装具の適応
   1)上肢の機能障害
   2)下肢の機能障害
  5.自動車
  B 二分脊椎(岩谷 力)
  1.疾病概念
  2.発生頻度
  3.発生原因
  4.病理学的変化
   1)神経系
   2)骨関節系
   3)膀胱直腸障害
  5.症状と障害
   1)症状
   2)障害
  6.診断と検査
   1)運動機能
   2)感覚低下
   3)神経因性膀胱
   4)発育,発達
   5)運動発達
   6)知的能力
  7.医学的管理の原則
   1)新生児期 乳児期 幼児期 学童期
   5)思春期
  8.機能的状態の現況
   1)歩行機能
   2)社会生活能力
   3)就学,就職
  9.整形外科治療
   1)変形治療の原則
   2)手術療法
   3)装具療法
  C 脊髄性小児麻痺(急性灰白髄炎)(初山泰弘)
  1.ポリオによる麻痺肢の特色
  2.ポストポリオ症候群
  3.ポリオ麻痺肢に対する装具療法
   1)装具療法の目的
   2)経過と装具の適応
   3)上肢
   4)体幹筋麻痺
   5)下肢
 5  末梢神経損傷
  A 上肢(長野 昭)
  1.腕神経叢損傷
   1)腕神経叢展開術の適応
   2)腕神経叢展開術
   3)治療の実際
   4)装具療法
  2.分娩麻痺
   1)神経修復術の適応
   2)遺残麻痺・拘縮に対する手術
   3)装具療法
  3.橈骨神経麻痺
   1)上腕骨骨折に随伴する橈骨神経麻痺
   2)後骨間神経麻痺の治療
   3)機能再建術
   4)装具療法
  4.正中神経麻痺
   1)手根管症候群の治療と装具療法
   2)神経縫合例に対する治療と術後装具
   3)機能再建法
   4)装具
  5.尺骨神経麻痺
   1)肘部管症候群
   2)機能再建法
   3)装具療法
  6.重複末梢神経損傷
  B 下肢(廣島和夫)
  1.解剖学的基礎知識と臨床との関係
  2.神経障害レベル別からみた主要症状と臨床上の問題点
   1)腰部神経叢・閉鎖神経・大腿神経レベルでの障害
   2)腰仙神経叢-梨状筋部までの障害
   3)坐骨神経レベルの障害
   4)総腓骨神経レベルの障害
   5)脛骨神経麻痺レベルの障害
  3.代表的装具とその処方
   1)骨盤帯または腰仙椎コルセット付股関節装具(外転防止)
   2)脊椎-骨盤帯装具を付け加えた長下肢装具
   3)膝装具・KAFO
   4)shoe-horn type AFO
   5)両側支柱付短下肢装具
   6)短下肢装具逆クレンザック足継手付
  4.治療法の選択と装具治療の限界
   1)変形矯正と装具効果
   2)支持性を目的とした装具の使用とその限界
   3)装具の適合が得られない場合の対応
 6  筋ジストロフィー(里宇明元)
  1.デュシェンヌ型進行性筋ジストロフィー症(DMD)における障害の進み方
   1)筋障害
   2)拘縮・変形
   3)ADL
  2.DMDにおけるマネージメントのポイント
   1)歩行期(I〜IV度)
   2)装具歩行-車いす期(V〜VI度)
   3)電動車いす期(VI〜VIII度)
   4)末期(VIII度)
  3.DMDにおける下肢の装具療法
   1)病態力学
   2)立位・歩行の意義
   3)装具歩行の適応
   4)歩行用装具
   5)装具療法中のケア
   6)手術療法
   7)起立用装具
  4.DMDにおける座位保持
   1)座位保持の問題点
   2)座位保持のアプローチ
  5.DMDにおける上肢の装具療法
   1)障害の進み方
   2)代償動作
   3)装具療法の実際
  6.DMDにおけるその他の装具
  7.その他の病型
   1)Becker型
   2)福山型先天性筋ジストロフィー
   3)肢帯型
   4)顔面肩甲上腕型
   5)筋緊張性ジストロフィー
   6)遠位型ミオパチー

第3章 骨関節疾患
 1  骨折(猪田邦雄・松本芳樹)
  1.総論
   1)骨折治療の原則
   2)骨折の治療方法と歴史的変遷に伴う装具の意義の変化
  2.装具の目的と機能的骨折治療装具の適応
  3.下腿骨骨折
   1)PTBギプスの巻き方
   2)PTB装具による治療
  4.大腿骨骨折
   1)ギプスの巻き方
   2)機能的骨折治療装具による治療
  5.上腕骨骨折
   1)ギプスの巻き方
   2)機能的骨折治療装具による治療
   3)症例
  6.関節周辺骨折
   1)下肢
   2)上肢
 2  脊椎疾患(南 昌平)
  1.頸椎疾患
   1)上位頸椎・頭蓋頸椎移行部先天奇形
   2)リウマチ性脊椎炎
   3)外傷性頸椎損傷
   4)頸椎椎間板ヘルニア,頸部脊椎症
   5)頸椎症性筋萎縮症,解離性筋萎縮症
   6)頸椎後縦靭帯骨化症
   7)頸椎疾患の診断
   8)治療
  2.胸椎疾患
   1)外傷性脊椎損傷
   2)胸椎靭帯骨化症
   3)炎症疾患(脊椎カリエス,化膿性脊椎炎)
   4)脊椎・脊髄腫瘍
   5)胸椎疾患の診断
   6)治療
  3.腰椎・腰仙椎疾患
   1)腰椎椎間板ヘルニア
   2)脊椎分離すべり症
   3)変性腰椎すべり症
   4)腰部脊柱管狭窄症
   5)急性腰痛症
   6)腰椎疾患の診断
   7)治療
  4.脊椎疾患に対する装具療法
   1)脊椎装具の種類
   2)脊椎装具の作製
 3  関節リウマチ(久我芳昭)
  1.頸椎装具
  2.上肢装具
   1)肘
   2)手関節
   3)MP関節
   4)指
  3.下肢装具
   1)膝
   2)足関節
   3)足底装具
   4)靴型装具
   5)靴底の補正
   6)着脱を容易にする工夫
 4  成人股関節疾患(渡辺英夫)
  1.装具の種類と適応
   1)股関節の安静保持,固定の装具
   2)股関節の運動を制御する装具
   3)股関節部を免荷する装具
   4)股関節周囲筋の筋力を補助する装具
  2.主な成人股関節疾患と装具
   1)変形性股関節症
   2)大腿骨頸部骨折
   3)特発性大腿骨頭壊死
   4)その他の成人股関節疾患
 5  成人膝関節疾患(栢森良二)
  1.膝関節の運動学
   1)膝関節の安定性と靭帯
   2)ころがり・すべり運動と多軸関節
   3)ねじ込み運動と前十字靭帯
   4)膝蓋大腿関節とQ-角
  2.膝装具の特性と原理
   1)固定と運動性
   2)静的装具と動的装具
   3)膝装具のメカニズム
   4)膝装具の目的
  3.膝装具の種類
   1)硬性膝装具
   2)プラスチック膝装具
   3)軟性膝装具
  4.疾患別の装具治療
   1)変形性膝関節症
   2)慢性関節リウマチ
   3)スポーツによる膝の障害
   4)膝蓋骨脱臼
   5)膝関節部骨折
 6  足部疾患(川村次郎)
  1.先天性扁平足
  2.扁平足
  3.開張足
  4.外反母趾
  5.凹足
  6.槌趾
  7.踵骨棘
  8.フライバーグ病
  9.ケーラー病
  10.うちわ歩行
  11.先天性腓骨欠損
  12.先天性および後天性の足部(部分)切断
  13.脚長差(軽・中等度)
  14.リウマチ足
   1)リウマチ性扁平足
   2)開張足
   3)外反母趾
   4)槌趾
   5)尖足
  15.足部潰瘍
 7  手の疾患・外傷・拘縮(佐久間雅之・木野義武)
  1.総論
   1)手のスプリントの必要性
   2)手のスプリントの特徴
   3)スプリントの種類
   4)スプリント作製上の留意点
   5)装着後のチェックポイント
  2.疾患別の装具療法
   1)外傷性拘縮に対するスプリント
   2)屈筋腱損傷に対するスプリント
   3)伸筋腱損傷に対するスプリント

第4章 小児骨関節疾患
 1  血友病(芳賀信彦)
  1.血友病の疾患概念
  2.関節内出血と血友病性関節症
   1)関節内出血の症状と関節症発生のメカニズム
   2)出血時の治療
   3)繰り返す出血への対応と関節症の予防
   4)進行した関節症への対応
  3.筋肉内出血への対応
   1)症状
   2)治療の実際
  4.麻痺合併例への対応
  5.HIV感染合併例への対応
 2  ペルテス病(渡辺英夫)
  1.ペルテス病の治療
   1)治療の目標
   2)手術療法
   3)保存的療法
  2.ペルテス病の装具療法
   1)免荷するタイプの装具
   2)免荷しないタイプの装具
   3)ペルテス病の装具療法の特徴
   4)筆者らの用いているペルテス病装具
   5)装具のチェックアウトと装具除去の時期
   6)治療効果の判定法
 3  先天性股関節脱臼(先天股脱)(岩谷 力)
  1.先天股脱とは
  2.病理学的形態変化
  3.発生率
  4.臨床症状と診断
   1)子供を泣かせずに診察するには
   2)視診所見
   3)触診所見
   4)開排制限
   5)新生児
   6)年長児
   7)画像診断
  5.治療
   1)治療の概要
   2)装具療法
 4  先天性内反足(君塚 葵)
  1.歩行の獲得および足部の運動
   1)歩行の獲得
   2)足部の運動
  2.先天性内反足
   1)内反足の変形要素
   2)病態
   3)X線所見
  3.治療
   1)治療原則
   2)矯正ギプス
   3)残存変形
   4)手術
  4.装具療法
   1)Denis-Browne装具
   2)靴型装具
   3)短下肢装具
   4)スリングによる機能的装具療法
  5.機能的予後・美容上の問題点と成績評価
   1)機能と美容
   2)うちわ歩行
   3)爪先歩行における歩行分析
   4)flat-top-talus
   5)成長終了時の治療成績
   6)評価法
 5  脊柱側彎症(南 昌平)
  1.脊柱側彎症の分類
   1)特発性側彎症
   2)先天性側彎症
   3)神経原性側彎症
   4)マルファン症候群
   5)神経線維腫症(レックリングハウゼン病)
  2.脊柱側彎症の診断
  3.脊柱側彎症の治療方針
  4.脊柱側彎症に対する手術療法
  5.脊柱側彎症に対する装具療法
   1)装具の種類
   2)装具の適応と選択
   3)装具の採型
   4)装具の作製
   5)装具の装着法
   6)装具療法の問題点
   7)装具療法の治療成績

第5章 その他の疾患
 1  熱傷(西村誠次・生田宗博)
  1.熱傷の原因と受傷部位
  2.熱傷の重傷度と臨床所見
  3.瘢痕
  4.肥厚性瘢痕とケロイド
  5.熱傷に対する装具療法
   1)急性期の装具療法
   2)回復期の装具療法
 2  血管原性足部潰瘍(新城孝道)
  1.下腿潰瘍の分類
   1)動脈性潰瘍
   2)静脈性循環障害
  2.潰瘍対策
   1)原因別潰瘍対策
   2)ステージ別潰瘍対策
  3.虚血性足部潰瘍の治療
   1)創部の無菌化
   2)血流改善療法
   3)創部の肉芽形成・上皮形成促進
   4)その他の治療法
   5)足部潰瘍の安静と免荷・保護
   6)疼痛対策
  4.高位切断に至るリスクファクターなど
  5.足切断後のリハビリテーションの注意点
   1)対側の健足の足壊疽
   2)膝下切断例の関節拘縮での潰瘍形成
   3)転倒事故の注意
  6.定期的なフットケア

第6章 補装具の支給体系(加倉井周一)
  1.補装具の定義
  2.医療保険における手続き(医療費払い)
  3.年金保険(厚生年金等)における手続き
  4.労災保険による災害補償給付の手続き
  5.社会福祉制度(身体障害者福祉法・児童福祉法)の手続き
  6.介護保険と福祉用具
  7.地方分権一括法の施行に伴う身体障害者(児)の補装具給付事務の変更
  8.補装具の給付体系

 索引