やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第2版の序
 技術は日進月歩が常である.1990年の「関節運動学的アプローチ(AKA)第1版」,および「AKA−博田法」と改称したDVD版(2003年)の後にも技術は著しい進歩を遂げ,最新のものは「関節運動学的アプローチ(AKA)−博田法 第2版」(2007年)にその詳細が記載されている.第2版執筆時にはDVD版はもはや不要と考えていたが,各方面からの要望が強く,DVD版の第2版の作製を決意した.
 「AKA−博田法」の技術には副運動を利用した副運動技術と,構成運動を利用した構成運動技術がある.その特徴はすべてが関節運動学に基づき,関節神経学を考慮することである.関節神経学では,関節受容器の反応すなわち関節静的反射(arthrostatic reflex)と,関節運動反射(arthrokinetic reflex)が重要視される.この関節神経学を考慮した技術は国内外に類を見ない.
 DVD版の撮影は「AKA−博田法 第2版」に記載されている技術を網羅した.DVD版第2版の特徴として,術者の全身とくに下半身の使い方を見ることができるように工夫した.テキストにおいても,各技術の骨と手の位置関係を,骨格模型を用いた静止画像で示した.これにより,身体の位置,足の開き,手および上肢の位置,関節を動かす方向はほぼ示し得たと考えている.しかし,手に加わる力,患者の骨と術者の手の密着度,関節を動かす「強」,「中」,「弱」の力などを表現することは,画像では不可能である.したがって,DVD版の初版で述べたように,この力に関しては指導者について直接学ぶほかはない.なお,技術の詳細は「関節運動学的アプローチ(AKA)−博田法 第2版」(2007年)に述べられているので,テキストには記載していない.
 「AKA−博田法」は徒手を用いた医療技術のなかでも最も難しいものの一つである.その理由は,関節受容器の反応が非常に繊細であることであろう.したがって,技術を習得するには,一般的に5年以上を要すると考えられる.医療技術に限らず,他の分野,たとえばスポーツ,芸術などにおいても,専門家といわれる人たちが,その技術を習得し,維持するためには長期にわたる努力が要求される.本DVD版のみで「AKA−博田法」をマスターすることは困難ではあるが,技術習得の補助としての価値は大きいと考えられる.とくに技術研修後の復習には最適であろう.
 最後に,DVD撮影において長きにわたり,宇部リハビリテーション病院理学療法士,作業療法士諸氏のご助力をいただきました.ここに感謝の意を表します.また,1回の撮影時間が短く,全技術の撮影に長期を要し,医歯薬出版の方々に多大のご迷惑をおかけしたことを深謝いたします.
 2010年8月
 博田節夫

第1版監修者の序
 博田編『関節運動学的アプローチ(AKA)』が上梓されたのは1990年であるが,その後無菌性仙腸関節炎の治療を安全かつ効果的にするため,技術の改良が急速に進み,現在でもなおいくらかの修正が加えられている.この新しい技術のDVDが,木檜晃先生と医歯薬出版の方々のご努力により完成し,AKAの歴史に新たなページが加えられた.
 本来,関節運動学的アプローチ(arthrokinematic approach:AKA)は関節包内運動の治療技術の一般名であり,海外では特にjoint mobilizationと同一視される.したがって,他の技術と区別するため,関節運動学的アプローチ−博田法(arthrokinematic approach−Hakata method),または略してAKA−博田法(AKA−Hakata method)と呼ぶこととした.
 AKA−博田法は関節運動学に基づき,関節神経学を考慮して,関節の遊び,関節面の滑り,回転,回旋などの関節包内運動の異常を治療する方法,および関節面の運動を誘導する方法であると定義される.博田法の最大の技術的特徴は,関節運動学に基づき滑膜関節のみを個別に治療することと,関節神経学を考慮することである.特に関節神経学に注目した技術はAKA−博田法以外にない.具体的には,副運動技術では関節の機械受容器を刺激しないことが重要で,構成運動技術では機械受容器を刺激する方法と,刺激しない方法を目的に応じて選択することが要求される.これにより,AKA−博田法は徒手的治療法の中でもっとも有効な技術となっている反面,もっとも難しい技術ともなっている.
 徒手的技術を画像で表現するにはおのずから限界がある.AKA−博田法では手および足の位置,力の方向,加える力を最小限にする操作方法は動画で表すことができるが,強さや動きの感触は研修会でしか得られない.それゆえ,画像は技術研修会で学んだことを復習するときや,中級者以上の自己学習時に利用価値が大きいと思われる.
 医療においては高度な徒手的技術は,敬遠される傾向がある.しかし,芸術,スポーツはもちろん,あらゆる技術でプロとアマチュアの差は歴然としており,専門家といわれるまでには長期にわたる絶えざる努力が必要である.AKA−博田法においても専門家への道は平坦ではない.このDVDが技術の習得に資することを願って止まない.
 2003年11月
 博田節夫
 第2版の序
 第1版監修者の序
I AKA−博田法の技術
 1.副運動技術
 2.構成運動技術
  1)他動構成運動−伸張
  2)その他の技術
  3)構成運動技術の適応
   (1)他動構成運動−伸張なし
   (2)他動構成運動−伸張
   (3)抵抗構成運動−骨運動介助
   (4)抵抗構成運動−骨運動抵抗
II 各関節の技術−副運動技術
 1.体幹
  1)仙腸関節
   (1)左仙腸関節上部離開法 (2)左仙腸関節下部離開法 (3)左仙腸関節上方滑り法 (4)左仙腸関節下方滑り法 (5)右仙腸関節上方滑り法 (6)右仙腸関節下方滑り法 (7)仙腸関節技術の組み合わせ
  2)椎間関節
   (1)T5/6椎間関節滑り法 (2)C7/T1〜L5/S1椎間関節滑り法
  3)肋椎関節
   (1)第7肋椎関節滑り法 (2)第3肋椎関節滑り法 (3)第1肋椎関節滑り法
  4)右胸鎖関節
   (1)滑り法 (2)滑り法別法
  5)右第2胸肋関節
   (1)滑り法 (2)滑り法別法
 2.上肢
  1)肩鎖関節
   (1)滑り法
  2)肩甲上腕関節(肩関節)
   (1)下方滑り法 (2)前後滑り法 (3)離開法
  3)腕尺関節
   (1)滑り法
  4)腕橈関節
   (1)離開法
  5)橈尺関節
   (1)滑り法
  6)橈舟関節
   (1)滑り法
  7)橈月関節
   (1)滑り法
  8)舟大菱形関節
   (1)滑り法
  9)舟小菱形関節
   (1)滑り法
  10)第2手根中手(CM)関節
   (1)滑り法
  11)第2中手指節(MCP)関節
   (1)軸回旋法・滑り法
  12)第2近位指節間(PIP)関節
   (1)軸回旋法・滑り法
  13)第2遠位指節間(DIP)関節
   (1)軸回旋法・滑り法
 3.下肢
  1)股関節
   (1)離開法
  2)膝関節
   (1)滑り法 (2)軸回旋法
  3)距腿関節
   (1)滑り法
  4)距舟関節
   (1)滑り法 (2)滑り法別法
  5)距骨下関節
   (1)滑り法
  6)踵立方関節
   (1)滑り法
  7)第2足根中足(TM)関節
   (1)滑り法
  8)第1中足指節(MTP)関節
   (1)軸回旋法・滑り法
  9)第2中足指節(MTP)関節
   (1)軸回旋法・滑り法
  10)第1指節間(IP)関節
   (1)軸回旋法・滑り法
III 各関節の技術−他動構成運動
 1.上肢
  1)肩関節
   (1)屈曲・伸展 (2)外転・内転 (3)外旋・内旋
  2)肘関節
   (1)屈曲・伸展
  3)前腕
   (1)回内・回外
  4)手関節
   (1)背屈・掌屈
  5)第2中手指節(MCP)関節
   (1)屈曲・伸展
  6)第2近位指節間(PIP)関節
   (1)屈曲・伸展
 2.下肢
  1)股関節
   (1)屈曲・伸展 (2)外転・内転 (3)外旋・内旋
  2)膝関節
   (1)屈曲・伸展 (2)右膝関節軽度屈曲位拘縮伸張 (3)右膝関節伸展位拘縮伸張
  3)足関節
   (1)背屈・底屈
  4)第1中足指節(MTP)関節
   (1)屈曲・伸展
  5)第1指節間(IP)関節
   (1)屈曲・伸展
IV 各関節の技術−抵抗構成運動
 1.上肢
  1)肩関節
   (1)屈曲・伸展 (2)外転・内転 (3)外旋・内旋
  2)肘関節
   (1)屈曲・伸展
  3)手関節
   (1)背屈・掌屈
  4)第2中手指節(MCP)関節
   (1)屈曲・伸展
  5)第2近位指節間(PIP)関節
   (1)屈曲・伸展
 2.下肢
  1)股関節
   (1)屈曲・伸展 (2)外転・内転 (3)外旋・内旋
  2)膝関節
   (1)屈曲・伸展
  3)足関節
   (1)背屈・底屈
  4)第1中足指節(MTP)関節
   (1)屈曲・伸展

 DVDの使い方
 再生時間確認表