やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文
 理学療法の疾患分野には,筋骨格障害系理学療法学分野,内部障害系理学療法学分野,神経障害系理学療法学分野の3大分野がある.このうち神経障害系理学療法学の分野は,多くの理学療法士が治療対象とする代表的な疾患が多く,重要な分野である.その代表的な疾患としては,脳血管障害,パーキンソン病,運動失調症,脳性麻痺,変性疾患などがあげられる.
 神経障害系理学療法学の対象となっている疾患は,他の疾患も同様,病態,診断法,治療法などが最近,非常に進歩してきている.同時に,理学療法の考え方および治療技術も進歩してきている.疾患の特徴も変化を示し,脳血管障害では以前では脳出血が多く見られたが,最近は脳梗塞および脳血栓が多くなり,脳性麻痺では典型例は少なく,知的障害を合併した重症な症例が多くなっている.また,高齢者の増加に伴い,複雑化,重複化,重症化してきている疾患も多くなっている状況である.
 本書のねらいは,疾患ごとに,最新の知識および技術を紹介し,理学療法を実施するうえで必要な,病態メカニズム,理学療法評価,治療,リスクなどについて解説するとともに,新しい手技も含めて手技別の理学療法を整理することにより,神経障害系理学療法学に対してより深く理解していただくことにある.内容は,疾患別編として,脳血管障害の急性期・回復期・維持期,脳性麻痺,パーキンソン病などの変性疾患,脱髄疾患,小脳疾患,末梢神経疾患,筋疾患,神経筋接合部疾患,脊髄疾患などを取り上げ,手技別編として,ボバースアプローチ(神経発達学的治療),ボイタ法(発達運動学的アプローチ),ブルンストロームアプローチ,生態心理学に基づくアプローチ,認知運動療法などを取り上げた.いずれも,経験のある理学療法士を対象として執筆されている.今後の理学療法学の発展に寄与できれば幸いである.
 最後に,本書の企画・出版するにあたりご協力いただいた方々に深謝する.
 2005年3月
 丸山仁司
 ・執筆者一覧
 ・序文
総論
 神経系の障害と理学療法アプローチ(下井俊典・丸山仁司)
  I.神経細胞と神経系
   1.神経細胞の構造
   2.神経細胞の特徴
  II.神経細胞,神経系の機能回復過程
   1.神経細胞の機能回復
   2.神経系の可塑性
    1)ミクロ的な神経系の可塑性
    2)マクロ的な神経系の可塑性
  III.近代科学の限界と理学療法における2つの思考過程
   1.近代科学と要素還元論
   2.要素還元論の限界と複雑系としての医療
   3.理学療法の2つの思考過程
  IV.2つのモデルによる神経系疾患に対する理学療法アプローチの概略
   1.評価過程
   2.問題点の抽出
   3.短期的・長期的目標の設定
  おわりに―今後の神経研究と理学療法
I.疾患別理学療法
 1.脳血管障害―急性期理学療法―(潮見泰藏)
  I.脳血管障害とは
  II.脳血管障害の症状
   1.頭蓋内出血
    1)脳出血
    2)くも膜下出血
    3)慢性硬膜下血腫
    4)脳動静脈奇形
    5)モヤモヤ病
   2.脳梗塞
    1)脳血栓
    2)脳塞栓
  III.脳血管障害の病理学的異常の検討
  IV.脳血管障害の治療
   1.急性期の治療の重要性
    1)急性期治療の主な目的
    2)全身状態の管理
   2.廃用症候群
    1)呼吸循環器系
    2)筋骨格系
    3)皮膚
    4)精神機能
  V.機能回復のメカニズム
  VI.リスク管理・二次的合併症の予防
  VII.急性期における理学療法評価
  VIII.急性期における理学療法介入
   1.急性期における理学療法の方針
   2.急性期における理学療法の目的と具体的介入のポイント
   3.関節可動域運動の実施方法(実施の原則)
   4.ベッドサイドにおける関節可動域運動の目的(意義)と実施上の注意点
   5.急性期における実施上の留意点
   6.良肢位保持の具体的方法
   7.早期座位の実施
    1)座位の開始基準
    2)座位練習の進め方
    3)座位練習時の注意点
   8.ベッド上動作練習および早期座位・立位およびADLの獲得
   9.健側上下肢,体幹の筋力の維持・強化
   10.麻痺肢の運動(随意運動の促通と異常要素の抑制)
 1.脳血管障害―回復期理学療法―(高橋輝雄)
  I.回復期とは
  II.評価
  III.治療の取り組み方
  IV.治療の実際
   1.寝返り
   2.患者さんはもう一生うつ伏せ(腹臥位)にはなれないのだろうか
   3.四つ這い位も困難な肢位である
   4.起き上がり
   5.横座り位
   6.膝立ち位
   7.膝立ち位から片膝立ち位へ
   8.片膝立ち位
   9.座位
   10.座位からの立ち上がり
   11.立位
   12.歩行
   13.異常歩行の修正
    1)反張膝
    2)分回し
   14.歩行前練習
  V.合併症とリスク管理
  VI.回復期病棟の役割
   1.病棟練習と訓練室練習
   2.初台リハビリテーション病院のPT・OT・ST業務体制
  まとめ
 1.脳血管障害―維持期理学療法―(牧田光代)
  I.維持期の理学療法(評価・治療)
   1.維持期の評価
    1)全身状態の評価
    2)認知症(痴呆)状態
    3)機能障害
    4)関節可動域
    5)筋力
    6)高次脳機能障害
    7)嚥下障害
    8)疼痛
    9)体力(活動能力)
    10)能力障害・能力低下(しているADL,できるADL)
    11)生活の質
    12)ケアアセスメント
   2.維持期の治療
    1)生活支援方針
    2)運動療法
   3.機能維持・改善のための運動療法
    1)体力
    2)筋力トレーニング
    3)全身持久力トレーニング
    4)バランストレーニング
    5)柔軟性のトレーニング
    6)包括的運動プログラム(パワーリハビリテーション)
    7)廃用症候群からの回復―機能低下が顕著でモチベーションが低い場合の運動療法
    8)認知症を伴った場合の運動療法
   4.運動療法以外のアプローチ
    1)住環境整備・住宅改修
    2)社会参加と家庭での過ごし方
   5.病態生理
    1)廃用症候群(続発性合併症)
    2)関節拘縮
    3)筋萎縮
    4)褥瘡
    5)起立性低血圧
    6)静脈血栓症
  II.合併症とリスク管理
   1.合併症
    1)認知症(痴呆)
    2)睡眠障害
    3)意識障害(せん妄)
    4)心不全
    5)嚥下困難
    6)心理的荒廃・閉じこもり
    7)脳血管性うつ病
    8)肩手症候群    2.リスク管理
    1)転 倒
    2)誤 嚥
    3)誤飲,異食
  III.介護保険制度のなかでの理学療法
   1.介護保険制度の概要
    1)保険者
    2)被保険者
    3)申請から認定まで
    4)介護サービス計画(ケアプラン)
    5)保険給付の種類
   2.介護老人保健施設でのリハビリテーション
    1)施設の利用
    2)理学療法(リハビリテーション)の内容―要介護高齢者の特質とケア方針
    3)利用者および障害への取り組み方
    4)他職種との協調および共同的役割
   3.通所リハビリテーション(デイケア)での理学療法
    1)通所リハビリテーションとは
    2)通所リハビリテーションでの利用者の過ごし方と特性
    3)通所リハビリテーションでの理学療法
    4)要支援・要介護Iの利用者への予防的取り組みの重視
   4.在宅での理学療法(訪問リハビリテーション)
    1)訪問リハビリテーションとは
    2)訪問リハビリテーションの留意点
    3)在宅での評価と理学療法
    4)生活評価
    5)在宅でのリスク管理
 2.変性疾患―筋萎縮性側索硬化症―(笠原良雄)
  I.病態生理
  II.症状
  III.検査・診断・治療
    1)検査
    2)診断
    3)治療
  IV.理学療法
   1.評価
    1)患者・家族からの情報
    2)他部門からの情報
    3)評価表(スケール)
    4)身体の評価
    5)生活の評価
   2.治療
    1)筋力低下に対して
    2)不動に対して
    3)呼吸障害に対して
    4)日常生活困難に対して
    5)指導
   3.理学療法での留意点
  おわりに
 2.変性疾患―パーキンソン病―(長谷川 武)
  はじめに
  I.疾患の概要
   1.疫学
   2.病態生理
   3.症状
    1)運動症状
    2)精神症状
    3)自律神経症状
   4.経過と予後
   5.治療
    1)薬物療法
    2)リハビリテーション
    3)その他の治療法
   6.類似疾患とその分類
  II.理学療法
   1.軽度障害レベル(初期)
    1)障害の程度
    2)障害像と基本方針
    3)評価
    4)運動療法
    5)生活指導
    6)家族指導
   2.中等度障害レベル(中期)
    1)障害の程度
    2)障害像および基本方針
    3)評価
    4)リスク管理
    5)運動療法
    6)生活指導および環境調整
    7)家族指導
   3.重度障害レベル(後期)
    1)障害の程度
    2)障害像および基本方針
    3)評価
    4)リスク管理
    5)運動療法
    6)生活指導および環境調整
    7)家族指導
  おわりに
 3.脱髄疾患(星 文彦)
  はじめに
  I.疫学
  II.病理
  III.症状と経過
  IV.熱非耐性と易疲労性
   1.熱非耐性
   2.易疲労性
  V.経過と介入のポイント
   1.評価
   2.理学療法と指導
    1)臨床状態が特に明確な障害を示さない良好な状態
    2)急性再発の状態
    3)病状が安定し障害が残存している状態
    4)臨床症状や障害が進行性にある状態
    5)臨床症状や障害が変動している状態
  VI.包括的ケアシステムの必要性
 4.小脳疾患(望月 久)
  はじめに
  I.小脳の構造と機能
    1)小脳の構造と主な機能
    2)小脳と運動学習
  II.小脳症状
    1)小脳性運動失調
    2)筋緊張の低下
    3)筋力低下
    4)小脳性企図振戦
    5)眼振
    6)構音障害
    7)姿勢保持・歩行の障害
    8)運動学習の障害
  III.小脳障害の原因となる疾患とその見方
  IV.巧緻性とバランス
    1)巧緻性と運動の自由度
    2)バランス
  V.評価
    1)疾患の予後
    2)一般的身体機能検査
    3)協調性
    4)バランス
    5)重症度および運動失調のステージ
    6)基本動作の観察および分析
    7)日常生活活動
    8)生活環境
  VI.運動失調に対する理学療法アプローチ
    1)運動失調に対する運動療法
    2)バランス改善の理学療法を考える際の視点
  VII.運動失調に対する理学療法の実際
    1)フレンケル体操
    2)固有受容性神経筋促通法
    3)重り負荷法
    4)弾性緊迫帯法
    5)装具・自助具の使用
    6)運動療法
    7)補装具の使用
    8)家族指導・環境整備
 5.末梢神経疾患(甲斐健児)
  はじめに
  I.末梢神経の構造と病態
   1.末梢神経障害の分類
    1)原因による分類
    2)分布による分類
    3)一次的障害部位による分類
   2.末梢神経の基本的構造と局所病変
    1)末梢神経の基本的構造
    2)末梢神経障害の局所病変:軸索変性と節性脱髄
   3.末梢神経障害における電気生理学的検査の意義
    1)神経伝導検査における正常波形と各パラメーター
    2)神経伝導検査おける節性脱髄と軸索変性の所見
    3)実際の神経伝導検査所見
    4)その他の電気生理学的検査法
  II.疾患各論
   1.ギラン・バレー症候群
    1)疾患概念
    2)症状と経過
    3)疫学
    4)予後
    5)内科的治療
    6)理学療法および家族指導
   2.慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー
    1)疾患概念
    2)診断基準
    3)症状と経過
    4)疫学
    5)原因
    6)予後
    7)治療
    8)リスク管理・理学療法・患者家族指導
   3.糖尿病性神経障害(DN)
    1)糖尿病性神経障害の臨床症状
    2)検査
    3)DNの診断基準
    4)DNのリスク対策
    5)理学療法と患者・家族指導
 6.筋疾患(熊井初穂)
  I.筋疾患の理学療法概論
   1.筋原性疾患と神経原性筋疾患
   2.炎症性筋疾患の理学療法の留意点
   3.非炎症性筋疾患の理学療法の留意点
  II.筋疾患の疾患別理学療法の実際
   1.多発性筋炎(PM)・皮膚筋炎(DM)
    1)PM・DMの理学療法
    2)病態生理
    3)リスク管理
    4)家族指導・環境調整
   2.デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)
    1)DMDの理学療法
    2)病態生理
    3)リスク管理
    4)家族指導・環境調整
   3.筋強直性筋ジストロフィー(MyD)
    1)MyDの理学療法
    2)病態生理
    3)リスク管理
    4)家族指導・環境調整
 7.神経筋接合部疾患(道山典功・浅野陽一・尾花正義)
  はじめに
  I.病態生理
  II.理学療法の評価
  III.理学療法の具体的な方法
  IV.リスクとその管理
  V.家族指導
  VI.環境調整
  VII.症例報告
  VIII.MG以外の筋無力症候群としてのLEMSの特徴
  おわりに
 8.脊髄疾患(濱田哲郎)
  はじめに
  I.脊髄の機能解剖
   1.髄節性支配
   2.神経伝導路
    1)灰白質
    2)白質
   3.血液供給路
  II.脊髄障害の症状
   1.髄節症状(神経根症状)
    1)下位運動ニューロン徴候
    2)根性疼痛
    3)髄節性感覚障害
   2.脊髄症状
    1)上位運動ニューロン徴候
    2)感覚障害
    3)膀胱直腸障害
   3.障害部位と症状
    1)脊髄横断障害
    2)脊髄半側障害(Brown―Sォequard症候群)
    3)脊髄中心性障害
    4)脊髄前部障害
    5)その他
  III.理学療法
   1.評価
    1)疼痛および感覚検査
    2)筋力
    3)ADL
    4)神経学的検査
    5)関節可動域
    6)呼吸機能
   2.治療
    1)筋力維持・増強
    2)床上動作,移動能力の獲得
    3)呼吸理学療法
    4)関節可動域の維持・改善
    5)排尿・排便の管理・指導
   3.リスク管理
    1)肺合併症
    2)褥瘡
    3)皮膚損傷
    4)起立性低血圧
   4.家族指導
   5.環境調整
  IV.各論
   1.横断性脊髄炎
    1)病因
    2)症状
    3)治療
    4)理学療法のポイント
   2.脊髄空洞症
    1)病態
    2)症状
    3)治療
    4)理学療法のポイント
   3.脊髄血管障害
    1)脊髄血管奇形
    2)脊髄梗塞(主に前脊髄動脈症候群)
 9.脳性麻痺(新田 收)
  I.脳性麻痺概説
   1.脳性麻痺の定義
   2.脳性麻痺の発症原因
   3.脳性麻痺の障害構造
   4.脳性麻痺の経年的変化
  II.評価
   1.日常生活活動評価
    1)日常生活活動評価
    2)評価方法
   2.運動発達
    1)運動発達評価
    2)評価方法
   3.姿勢反射
    1)姿勢反射評価
    2)評価方法
   4.知的状態
    1)知的状態の評価
    2)評価方法
   5.分類
    1)生理的分類(脳性麻痺のタイプ)
    2)部位的分類
   6.その他の評価項目
   7.評価の解釈
  III.理学療法プログラム
   1.プログラム立案の考え方
   2.機能障害へのアプローチ
   3.活動制限・参加制約へのアプローチ
    1)アプローチの考え方
    2)動作様式の類型
   4.環境整備
   5.理学療法プログラムのまとめ
 10.精神疾患(仙波浩幸)
  はじめに
  I.精神障害とは何か
   1.精神障害の定義
   2.精神障害の理解を難しくしている要因
   3.精神障害の特徴と臨床上の配慮
  II.精神障害の分類
   1.成因別分類
   2.機能性・器質性分類
   3.精神運動障害の分類
   4.国際診断分類
  III.精神症状
   1.意識障害
   2.注意障害
   3.記憶障害
   4.知能障害
   5.思考障害
   6.自我意識障害(させられ現象(体験))
   7.知覚障害
   8.気分(感情)障害
   9.欲動,意志と行動障害
   10.巣症状(局在徴候)
   11.病識
  IV.精神症状の評価
   1.精神症状評価の基本的視点
   2.精神科医による診察と面接
   3.実施上の留意点
   4.理学療法士の役割
   5.評価の実際
    1)外観
    2)会話
    3)情動表出
    4)思考と知覚
    5)認知
    6)問題行動
    7)精神症状評価尺度
  V.理学療法の実際
   1.総論
   2.理学療法の目標設定
   3.不安とストレス
   4.患者との距離について
   5.チーム内コミュニケーションの大切さ
   6.リスク管理
   7.家族への援助
   8.各論
    1)統合失調症
    2)認知症(痴呆)
    3)脳血管障害患者の精神症状
    4)うつ状態
II.手技別理学療法
 1.ボバースアプローチ―神経発達学的治療―(古澤正道)
  I.ボバースアプローチの概念
  II.ボバース夫妻の略歴
  III.中枢神経の姿勢コントロールメカニズム
   1.姿勢運動コントロールのシステムとしての経路
   2.姿勢緊張
   3.姿勢緊張の要素
   4.相反神経支配
   5.多様な姿勢運動パターン
  IV.正常運動発達とヒューマンムーブメントから何を学ぶか
   1.協調した運動パターンの獲得過程
   2.運動の構成要素の組み合わせ方
  V.異常な姿勢緊張による分類
   1.過緊張
   2.弛緩
   3.アテトーゼ型脳性麻痺
    1)攣縮(スパズム)の程度とパターンでの分類
    2)アテトーゼ児の治療原則
   4.運動失調症
    1)姿勢緊張の特徴
    2)運動発達の遅れ
    3)治療の原則
  VI.姿勢緊張調整パターンとキー・ポイント・オブ・コントロール
   1.姿勢緊張調整パターン
   2.キー・ポイント・オブ・コントロール
    1)体幹中央部のキー・ポイント・オブ・コントロール
    2)近位部のキー・ポイント・オブ・コントロール
    3)遠位部のキー・ポイント・オブ・コントロール
    4)参照点
  VII.促通
   1.機能的な運動パターンの促通
   2.背景としてのバランス反応の促通
   3.感覚運動(再)経験
  VIII.治療効果の継続のために
  IX.脳性麻痺児の治療の実際
  X.成人中枢神経疾患患者の治療の実際
 2.ボイタ法―発達運動学的アプローチ―(渡邉 隆)
  はじめに
  I.ボイタ法による発達運動学的治療の概念
   1.反射性移動運動の概念
    1)反射性移動運動の概念に至る経緯
    2)反射性移動運動の要素
    3)反射性移動運動の移動形態
  II.ボイタ法の発達運動学的観察
   1.観察の規範
    1)正常運動発達と自発運動
    2)姿勢反応
    3)障害の質と量
    4)周囲への接触と社会性
    5)生命活力
    6)形態徴候
    7)疼痛
    8)自発運動
   2.病態生理の分析
    1)比較運動学的観察
    2)主問題の鑑別
    3)臨床推論と試し治療
  III.ボイタによる発達運動学的治療
   1.反射性移動運動
    1)反射性腹這い
    2)反射性寝返り
    3)反射性移動運動と協調性複合運動
  IV.ボイタによる発達運動学的治療の適応と効果
   1.適応
    1)中枢神経疾患
    2)整形外科疾患
    3)呼吸・嚥下障害
   2.治療効果
    1)幼少児運動発達障害の運動発達促進
    2)成人中枢神経疾患のADL拡大
    3)整形外科疾患
    4)老人性円背の改善
  おわりに
 3.ブルンストロームアプローチ(吉元洋一)
  I.治療概念
  II.評価
   1.運動機能検査
    1)上肢のステージ(座位)
    2)手指のステージ
    3)下肢のステージ
   2.感覚機能検査
    1)他動運動感覚
    2)指先認知
    3)足底感覚
  III.治療技術
   1.ポジショニング
   2.ステージ別運動療法
    1)ステージI
    2)ステージII
    3)ステージIII
    4)ステージIV
    5)ステージV
    6)ステージVI
   3.その他
  おわりに
 4. 生態心理学的な概念を応用した運動療法(冨田昌夫)
  I.概略
  II.基礎的な定位のシステムとダイナミックタッチ
   1.基礎的な定位のシステム
   2.ダイナミックタッチ
  III.空間的な定位のシステムと光学的流動
   1.空間的な定位のシステム
   2.光学的流動
  IV.身体の正中軸の成立
   1.前庭器官と固有感覚
   2.筋緊張調整
  V.問題だらけの呼吸筋
  VI.実際の治療への応用
   1.パーキングファンクション
   2.端座位や車いす座位で骨盤や胸郭を揺する
   3.さまざまな姿勢で全身を見て,触って,揺らす
    1)胡座
    2)体育座り,横座り
    3)正座
    4)つま先を立ててしゃがむ
  VII.急性期ベッドサイドでの理学療法
  おわりに
 5.認知運動療法(宮本省三)
  はじめに
  I.認知理論
   1.認知理論とは何か?
   2.認知理論の基本概念と仮説
   3.従来の運動療法理論との違い
  II.認知運動療法の基本的な考え方
   1.身体と環境との相互作用
   2.脳の可塑性
   3.情報の受容表面としての身体
   4.外部観察から内部観察へ
   5.運動学習
   6.認知問題-知覚仮説-解答
   7.認知過程の活性化
  III.認知運動療法の治療方略と組織化
   1.認知運動療法の規範
    1)注意の集中
    2)閉眼での訓練
    3)物体とのかかわり
    4)動作や行為を強要しない
    5)意識経験への問いかけ
   2.認知運動療法の組織化
    1)身体部位
    2)運動の異常要素
    3)感覚モダリティ
    4)認知問題
  IV.認知運動療法の実際
    1)手関節の運動方向の識別
    2)手関節の複合運動の識別
    3)上肢での運動軌道の識別
    4)下肢での運動軌道の識別
    5)手の位置の識別
    6)足の位置の識別
    7)下肢の位置の識別
    8)手指での高さの識別
    9)下肢での高さの識別
    10)上肢での図形の識別
    11)手指での物体表面の識別
    12)足底での物体表面の識別
    13)体幹でのスポンジの硬さの識別
    14)足底でのスポンジの硬さの識別
    15)前腕での重錘の識別
    16)手指での重錘の識別
    17)下肢での重錘の識別
    18)座位での床反力と水平性の識別
    19)立位での床反力と水平性の識別(1)
    20)立位での床反力と水平性の識別(2)
    21)上肢での運動軌道の追跡
    22)下肢での運動軌道の追跡
    23)視覚と体性感覚の情報変換(1)
    24)視覚と体性感覚の情報変換(2)
 おわりに

・索引