やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第2版の序

 歴史の浅い本書が改訂の必要に迫られた.理由は脳神経外科が含まれていなかったためである.PT,OTの教育を担当してきた者として勇んで執筆を始めたが2〜3のことに嫌でも気付かざるを得なかった.
 まず1959年に医学部を卒業した私は脳神経外科の洗礼を受けていない.確かに外科学で脳疾患の講義を受けたが,脳の解剖,生理はそれ程詳しく勉強したわけではない.次に当時のインターンで脳の手術を見学したことはない.次に新しい診断法,特にMRIの威力を知るにおよび,態度を改め,何も知らぬ一医学生として脳神経外科学の教科書を読み,さらに別の教科書を通読し,一般医学書の脳外科疾患を勉強するに従い,一昔前に還ったような気分で,学習ができた.したがってこの部分は,臨床の熟練者とは異なり,一初学者の視点で述べてある.
 初版と比較し,新しい部分が加わったので,少し分厚くなり,勉強する所が少なからず増加したが,優れたセラピストとしての基礎知識にはこの程度は必要である.諸君の研鑽を祈ると共に,後に続く者を信じる.
 2002年12月
 明 石 謙

第1版の序

 18世紀前半に活躍したイギリスの作家ヘンリイ・フィールディングはその名著で映画にもなった「捨て子トム・ジョウンズの人生」の中で「本を書くものは,さしずめ金さえ出すなら誰でも歓迎する食堂の経営者のようなものだ」と述べている.客(読者)は目的を持って金を払って料理を注文(本を買う)する.気に入らねば料理人や食堂の経営者(本の著者や編者)をボロクソに罵倒するであろう.
 さてこの本である.料理にたとえるならば表題に記したようにPTやOTの学生達はこの本から医学一般に関する学識(栄養)を得ようとするであろう.美味しいか? リハビリテーション医学・神経内科学・整形外科学・精神医学をサーロインステーキやフィレステーキにたとえるならば,一般臨床医学は料理の味の基本として重要でしかもある程度栄養もあるもの,例えばイタリア料理のトマトやニンニク,ラーメンならばスープの味の大元となる豚骨や鳥ガラではないかと思う.PT・OTには前述の4つの臨床科が大切なあまり「医学はこれら4科で成り立っている」と思われては困る.多くの臨床科がありそれぞれが独自の機能を果たしながら同時に互いに助け合って医学や医療が成り立っているのである.
 しかし“一般臨床医学”の国家試験出題率はいたって低い.それでは何ゆえにこの本を企画したか? まず臨床医学についてこの程度のことは常識として学生諸君が知っていなければならない.次に厚生省の示したPT・OT卒前教育カリキュラムに「一般臨床医学」がありその中で「コレコレしかじかを教えなさい」と指示されているからで,その内容は臨床医学各科にまたがり,それぞれの専門家の先生方に講義をお願いするには時間が短か過ぎることで数々の困難が生じていた.そこでPT・OTの養成校で教えたことのある方々有志が集まりこれらの諸科を一冊の教科書としてまとめた.ほとんどの原稿は揃っていたが,編者の都合で出版が遅れてしまったことをこの場を借りて御詫びする.
 この本を企画するにあたり,川崎医療福祉大学の渡辺 進教授にはセラピストの立場から度々有益な御意見を戴いた.末尾ながら深謝する.
 1997年11月24日
 倉敷にて
 明 石 謙
 第2版の序(明石 謙)
 第1版の序(明石 謙)

1 救命救急医療(岡島康友)
  1. 心肺蘇生法
  2. ショック
  3. 呼吸管理
  4. 中心静脈栄養
  5. 輸血法
  6. 救急処置
  7. ICUの役割
2 外科総論(岡島康友)
  1. 機械的損傷
  2. 非機械的損傷
  3. 感染性疾患
  4. 末梢血行障害
  5. 腫瘍
  6. 臓器移植
3 脳神経外科概論(明石 謙)
  1. 解  剖
  2. 脳の主な病態生理
  3. 補助検査法
  4. 主な疾患
4 皮膚疾患(椿原彰夫)
  1. 解剖・生理
  2. 症状・病態生理
  3. 湿疹・皮膚炎
  4. 蕁麻疹・皮膚掻痒症
  5. 皮膚感染症
  6. 動物寄生による疾患
  7. 物理的皮膚障害
  8. 紅斑類
  9. 紫斑症
  10. 色素異常症
  11. 角化症
  12. 水疱症・膿疱性疾患
  13. 母斑・母斑症
  14. 皮膚腫瘍
  15. 紅皮症
  16. 中毒疹・薬疹
  17. 皮膚付属器の疾患
  18. 内科的疾患に伴う皮膚病変
5 泌尿器・生殖器疾患(椿原彰夫)
  1. 解剖・生理
  2. 診断・検査法
  3. びまん性の腎実質性疾患
  4. 腎・尿路の先天異常と通過障害
  5. 尿路感染症
  6. 尿路結石症
  7. 腎・尿路の腫瘍
  8. 尿路の外傷
  9. 神経因性膀胱
  10. 急性腎不全
  11. 慢性腎不全
  12. 生殖器の先天異常
  13. 生殖器の感染症
  14. 生殖器の結石症
  15. 生殖器の腫瘍
  16. 男子性機能障害
  17. 副腎疾患
6 婦人科・産科疾患(伊勢眞樹)
  1. 女性生殖器の解剖
  2. 性機能の生理
  3. 一般的な婦人科の問題
  4. 無月経と異常性器出血
  5. 子宮内膜症
  6. 女性性器系の腫瘍
  7. 受胎,着床,胎盤形成,胎生学
  8. 正常の妊娠,分娩,出産
  9. 妊娠の異常と合併症
  10. ハイリスク妊娠
  11. 合併症をもつ患者の妊娠
  12. 分娩・出産時の異常と合併症
7 眼疾患(明石 謙)
  1. 解剖・生理
  2. 臨床検査法
  3. 眼の症状と徴候
  4. 感染症
  5. ぶどう膜炎
  6. 白内障
  7. 緑内障
  8. 網膜剥離
  9. 斜視と色覚異常
  10. 角膜移植
  11. 眼外傷
  12. 眼腫瘍
8 耳鼻咽喉科疾患(明石 謙)
 A. 耳疾患
  1. 耳の構造と生理
  2. 症状・病態生理
  3. 聴力検査
  4. 外耳疾患
  5. 中耳疾患
  6. 内耳・後迷路疾患
 B. 鼻疾患
  1. 鼻の構造と機能
  2. 病態生理・症状
  3. 鼻の検査
  4. 外鼻疾患
  5. 鼻腔疾患
  6. 副鼻腔疾患
 C. 咽頭・喉頭の疾患
  1. 口腔・咽頭・喉頭の解剖
  2. 口腔・咽頭・喉頭の症状と病態生理
  3. 咽頭・喉頭の検査
  4. 咽頭の疾患
  5. 喉頭の疾患
 D. 気道・食道の疾患と音声・言語障害
  1. 気道・食道疾患
  2. 音声言語障害
9 特殊な問題(出江紳一)
  1. 老年医学
  2. 結晶誘発性関節炎
10 プライマリ・ケア(出江紳一)
  全  身
  血  液
  心 血 管
  呼 吸 器
  神  経
  筋 骨 格
  消 化 器
  泌尿生殖器
  皮  膚
  基礎医学

 索 引