やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 本書,医学のあゆみBOOKS「ペインクリニック診療 38のエッセンス」には,痛みに興味を持ち,痛み治療の重要性に気づき,これからもっと深く痛みのこと,その治療のことを学びたい内科医や整形外科医,緩和ケア医やメディカルスタッフ,そして痛みを治療・ケアする専門医であるペインクリニシャンをめざす若い医療者のために必要な最低限の知識が盛り込まれている.執筆者は,痛み研究,治療,教育の最前線で活躍する高名な多くの専門家であり,その豊富な臨床経験と研究実績を基盤とし,力作に仕上げていただいた.
 その内容は,まず急性痛,慢性疼痛の概念からはじまり,慢性疼痛の基本的な考え方とその治療,そしてアメリカ合衆国を筆頭に欧米の多くの患者を地獄の苦しみに陥らせたオピオイド鎮痛薬の安易な使用の危険性とその問題点に加え,その轍を踏まないためのオピオイド鎮痛薬による正しい慢性疼痛治療法,そして難治性疼痛の代表格である神経障害性疼痛の診断と治療,さまざまな痛みを生じる疾患の個別の概念とその最新治療法,オピオイド鎮痛薬を含めた鎮痛薬と鎮痛補助薬による薬物療法のノウハウ,さらに漢方薬,そしておもな神経ブロックの実際とその適応,埋め込み式脊髄療法などの低侵襲な痛み治療法,さらに心理療法とリハビリテーション,今後普及することが期待される集学的治療,臨床に携わる多くの医療者がかかわっている“がん疼痛”の治療のupdateと新規オピオイド鎮痛薬の実践的使用法,さらに“がん疼痛”の神経ブロックや放射線による最新インターベンション療法,さらに,がんサバイバーの増加に伴うがん患者の非がん性慢性疼痛に関する最新知見などであり,十分,読者を満足させうるものと自負している.
 本書が,さまざまな疾患・原因による痛みで苦しむ多くの患者とその家族の苦しみを和らげる一助になることを祈願し,序文とさせていただきます.
 2018年7月
 細川豊史(医療法人社団洛和会 洛和会丸太町病院)
 序(細川豊史)
急性痛と慢性疼痛
 1.急性痛と慢性疼痛―亜急性期をどうとらえるか(飯田宏樹)
 2.慢性疼痛治療の基本的考え方(伊達 久)
 3.慢性疼痛治療に対するオピオイド鎮痛薬使用の問題点と正しい使用法(山口重樹・Donald R.Taylor)
神経障害性疼痛
 4.神経障害性疼痛の診断(佐伯 茂)
 5.神経障害性疼痛の治療(濱岡早枝子・井関雅子)
疾患別
 6.頭痛(竹島多賀夫・菊井祥二)
 7.三叉神経痛(千葉知史)
 8.頸椎由来の頸部痛・上肢痛(新堀博展)
 9.帯状疱疹関連痛(帯状疱疹急性期の痛みと帯状疱疹後神経痛)の診療(西山隆久・大瀬戸清茂)
 10.急性腰痛と慢性腰痛(渡邉恵介)
 11.腰椎由来の腰下肢痛(中川雅之)
 12.肩の痛みを診る(朴 基彦)
 13.内側型変形性膝関節症に対する全身管理(臼井要介)
薬物療法
 14.抗てんかん薬(小杉志都子)
 15.抗うつ薬(上野博司)
 16.オピオイド(山口重樹・Donald R.Taylor)
 17.漢方(濱口眞輔)
神経ブロック療法
 18.神経ブロック療法の意義(安部洋一郎)
 19.星状神経節ブロック(平川奈緒美)
 20.硬膜外ブロック(大西佳子・細川豊史)
 21.脊髄神経根ブロック(橋爪圭司)
 22.トリガーポイント注射(森本昌宏)
 23.エコーガイド下Fasciaハイドロリリース―生理食塩水が痛みに効く!(白石吉彦)
 24.超音波ガイド下腕神経叢ブロック(深澤圭太)
 25.パルス高周波治療の基礎と臨床update(植松弘進)
 26.脊髄刺激療法update(森山萬秀)
 27.椎間板内治療update(福井 聖・佐田蓉子)
リハビリテーション
 28.ペインクリニックに必要なリハビリテーションの知識(松原貴子)
 29.今日からはじめる!腰・頸肩・膝の痛みに対する運動療法のABC(松原貴子)
心理療法
 30.ペインクリニックに必要な心理療法の知識(水野泰行)
 31.ペインクリニック+α:心理療法のエッセンス(水野泰行)
集学的治療
 32.慢性疼痛に対する集学的診療の実際(西須大徳・牛田享宏)
がん疼痛
 33.がん疼痛治療の長期化とその問題点(山代亜紀子・細川豊史)
 34.がん疼痛の薬物療法update(塚原嘉子・間宮敬子)
 35.タペンタドール,ヒドロモルフォン,メサドン(橋本龍也・齊藤洋司)
 36.がん疼痛に対する神経ブロック療法(波多野貴彦)
 37.がん疼痛に対する放射線療法(坪倉卓司)
 38.がん患者の非がん性慢性疼痛(細川豊史)