やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 近年,診療報酬改定においてはデジタル関連の話題が多い中,アナログ技工の要素が強い純チタン鋳造による大臼歯全部金属冠の保険適用から4年,さらに前歯部前装冠の保険適用から2年が経過している.2020年に大臼歯で適用となった時は,金銀パラジウム合金の高騰を受けて大きな反響があった.筆者のラボでもチタン鋳造機『シンビオンキャスト』(アイキャスト)を導入し,チタン冠の受注を開始した.
 これまでの金銀パラジウム合金,銀合金に比べて,高い機械的性質・耐食性があり,組織親和性・生体親和性に優れている純チタンであるが,鋳造は難しいところもあった.研磨に関しては取り扱いの楽な純チタン2種ではあるが,他の材料と同じように高速回転のままだと研磨効率が落ち,火花が出て熱を持つ特性があるため,ハンドピースの回転数を中速回転に落としながら手順を踏むと,比較的簡単に研磨できる.このように,これほど体に優しい金属であるにもかかわらず,筆者が考えているよりも使用が広まらない現状を踏まえ,チタン鋳造の勘所を読者のみなさまに伝えるべく,満を持して今回の執筆に至った.
 本稿は「無調整で適合するチタン鋳造の勘所」と題したが,いったいどれほどの読者に猜疑心なく読み始めていただけるだろうか.それほどチタン鋳造に関しては,メーカーですら的確な答えを持っていない状況にある.それらを払拭するために執筆しているので,ぜひ最後まで目を通していただきたい.筆者はこれまでに数々のオリジナルマニュアルを構築しており,アナログの分野も得意と自負している.
 鋳造マニュアルを構築するにあたり,最初はチタン鋳造の歴史を調べながら,1つひとつ工程や鋳造システムに伴う機器,埋没材を含めた材料などを整理し,難しいとされているチタン鋳造に関するオリジナルマニュアルの構築に着手していった.メーカーの指示とは別の方法を試したり,過去のセオリーにとらわれずにトライ&エラーを繰り返したりしながら作り上げたデータを,機器・器具・材料・工程などに分けてお伝えする.
Special Article
Clinical Advice 無調整で適合するチタン鋳造の勘所
 ─クラウン・前装冠から3〜4本ブリッジまで
 (木村義明)

Complete Articles
特別講座 モノリシックジルコニアクラウン
 Clinical & Technical Keys
 ─効率的で適切な咬合調整について
 (近藤尚知)

Clinical Case 骨格的に歪みが生じている症例に対する機能と調和した3Dプリント義歯の臨床
 ─歯科医師と歯科技工士のデジタルコンビネーションの重要性
 (宝崎岳彦,鈴木裕也)

Serial Articles
補綴物の再製を減らす!表面ステインテクニック実践講座
 第10回 モノリシック材の選択基準「どれを選んだらいいのか?」
 (横田浩史)

歯科技工士立ち会いハンドブック
 第7回 立ち会い時のマナー
 (平野哲也/松田謙一(監修))

サステナブルデンタルラボラトリー 小規模100年ラボ発 次世代につなぐ・次世代を創る歯科技工
 第4回 小規模ラボにおけるデジタル技工システムの導入(2)
 (小松弘幸,小松邦幸,小松幸太,小宮一浩,播磨裕道)

患者満足度が得られる「失敗しない」補綴装置を求めて
 第35回 上顎前歯部歯列の多様なバリエーション
 (2)専門家としての歯・歯列の観方と前歯部人工歯排列におけるその表現(Main Body)
 (堤 嵩詞)

ほのぼの技工LIFE
 (Vol.31 藤弘和正)

簡単! ラボ・ヨガ教室
 112th lesson 睡魔撃退のポーズ
 (楠原史子)

Record
 「第25回PSD(一般社団法人 日本補綴構造設計士協会)学術大会オープンセミナー」開催される
 (編集部)

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