はじめに
竹島多賀夫
富永病院脳神経内科・頭痛センター
頭痛をまったく経験したことがない人はほとんどおられないと思う.さまざまな身体的あるいは精神的ストレスや,環境要因などにより頭痛を感じた経験がある人は多い.頭痛はあまりにもありふれた症状であるため,片頭痛,緊張型頭痛に代表される一次性頭痛は医学的にはあまり重視されない傾向があったことも否定できない.しかし,わが国の頭痛研究の歴史は案外古く,1973年に頭痛懇話会が発足し,頭痛研究会を経て日本頭痛学会は現在3,400名余りの会員と1,044名の専門医を擁するまでになっている.また,日本神経学会ではコモンな神経疾患として,脳卒中,てんかん,認知症とともに頭痛を重要な領域として取り上げている.日本脳神経外科学会でも二次性頭痛ばかりでなく,一次性頭痛も学会のトピックスとして取り上げるようになってきている.
1990年代後半から2000年代初頭に,わが国ではトリプタンが次々と上市され,頭痛診療が大きく変化した.さらに,2021年からはカルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide:CGRP)関連抗体薬やラスミジタンが上市され,また経口CGRP拮抗薬(ゲパント)の開発治験も進み,上市がカウントダウンの状況である.
このような状況のなか,『医学のあゆみ』で頭痛の特集を組めたことはタイムリーかつ大変喜ばしいことと思う.テーマは「頭痛診療の新潮流―神経科学の進歩がもたらす治療戦略」とさせていただいた.頭痛の疫学,片頭痛の病態・診断・治療,緊張型頭痛,三叉神経・自律神経性頭痛の他,二次性頭痛といった定番のテーマに加え,頭痛医療のトピックスとして痛覚変調性疼痛をはじめ,最近の話題を取り上げた.
執筆陣には頭痛領域で活躍されている若手から中堅を中心に,各トピックスのトップエキスパート,オピニオンリーダーの先生方にお願いした.いずれの論文も読み応えのある内容に仕上げていただいており,頭痛診療の初学者から頭痛専門医まで幅広く頭痛に関わる先生方の知識のupdateにお役に立つものと確信している.
竹島多賀夫
富永病院脳神経内科・頭痛センター
頭痛をまったく経験したことがない人はほとんどおられないと思う.さまざまな身体的あるいは精神的ストレスや,環境要因などにより頭痛を感じた経験がある人は多い.頭痛はあまりにもありふれた症状であるため,片頭痛,緊張型頭痛に代表される一次性頭痛は医学的にはあまり重視されない傾向があったことも否定できない.しかし,わが国の頭痛研究の歴史は案外古く,1973年に頭痛懇話会が発足し,頭痛研究会を経て日本頭痛学会は現在3,400名余りの会員と1,044名の専門医を擁するまでになっている.また,日本神経学会ではコモンな神経疾患として,脳卒中,てんかん,認知症とともに頭痛を重要な領域として取り上げている.日本脳神経外科学会でも二次性頭痛ばかりでなく,一次性頭痛も学会のトピックスとして取り上げるようになってきている.
1990年代後半から2000年代初頭に,わが国ではトリプタンが次々と上市され,頭痛診療が大きく変化した.さらに,2021年からはカルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide:CGRP)関連抗体薬やラスミジタンが上市され,また経口CGRP拮抗薬(ゲパント)の開発治験も進み,上市がカウントダウンの状況である.
このような状況のなか,『医学のあゆみ』で頭痛の特集を組めたことはタイムリーかつ大変喜ばしいことと思う.テーマは「頭痛診療の新潮流―神経科学の進歩がもたらす治療戦略」とさせていただいた.頭痛の疫学,片頭痛の病態・診断・治療,緊張型頭痛,三叉神経・自律神経性頭痛の他,二次性頭痛といった定番のテーマに加え,頭痛医療のトピックスとして痛覚変調性疼痛をはじめ,最近の話題を取り上げた.
執筆陣には頭痛領域で活躍されている若手から中堅を中心に,各トピックスのトップエキスパート,オピニオンリーダーの先生方にお願いした.いずれの論文も読み応えのある内容に仕上げていただいており,頭痛診療の初学者から頭痛専門医まで幅広く頭痛に関わる先生方の知識のupdateにお役に立つものと確信している.
はじめに(竹島多賀夫)
頭痛の疫学,疾病負担および労働生産性への影響(清水利彦)
片頭痛の病態・診断・治療
片頭痛の病態生理(小林聡朗・辰元宗人)
片頭痛の分類と診断基準(中野俊也)
片頭痛の急性期治療戦略(松森保彦)
片頭痛の予防療法(工藤雅子)
片頭痛の新規治療薬─CGRP関連抗体薬,CGRP受容体拮抗薬(gepant),PACAP関連薬剤(滝沢 翼・井原慶子)
緊張型頭痛,三叉神経・自律神経性頭痛,その他の一次性頭痛疾患
緊張型頭痛の診断と治療(秋山久尚)
反復性群発頭痛,慢性群発頭痛の病態・診断・治療(北村英二)
群発頭痛以外の三叉神経・自律神経性頭痛(菊井祥二)
その他の一次性頭痛疾患─睡眠時頭痛を中心に(須佐葉子)
二次性頭痛
危険な二次性頭痛の誤診を避け適切な治療へつなげるために─レッドフラッグとグリーンフラッグを用いた頭痛患者の初期評価(貞本泰孝)
頭部外傷および開頭術による頭痛の最新知見(石川栄一)
可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)と脳静脈洞血栓症(CVT)の診断・治療戦略(加納裕也・山田健太郎)
頭痛医療のトピックス
神経調節療法(neuromodulation)の現状と展望(今井 昇)
片頭痛と痛覚変調性疼痛(加藤総夫)
片頭痛等価症と不思議の国のアリス症候群(島 淳)
頭痛医療におけるDX,ICTとAI活用(伊藤康男)
日本頭痛学会の歴史と役割─日本頭痛協会,JPAC,GPACHおよび国際学会の動向(團野大介)
「頭痛専門医への道」プロジェクト─専門医資格の意義とキャリアパス(稲垣美恵子)
小児の頭痛─基礎知識と最近のトピックス(山中 岳)
高齢者頭痛─健康寿命・幸福寿命の延伸に向けて(織田雅也・他)
次号の特集予告
サイドメモ
閃輝暗点(fortification spectrum)
頭痛ダイアリー
CGRP
PACAP
用語解説〔末梢性疼痛機序(末梢性感作),中枢性疼痛機序(中枢性感作),風池,天柱〕
オレキシン(orexin)
SUNHAとTNの異同
インドメタシン反応性頭痛
斜台後方硬膜外/下血腫
もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)
雷鳴頭痛(TCH)と画像検査
皮質拡延抑制(CSD)
安静時機能的MRI(rsfMRI)
ICHD-3では認められていない起立性調節障害(OD)に伴う頭痛
ポリファーマシー
高齢者総合機能評価(CGA)
頭痛の疫学,疾病負担および労働生産性への影響(清水利彦)
片頭痛の病態・診断・治療
片頭痛の病態生理(小林聡朗・辰元宗人)
片頭痛の分類と診断基準(中野俊也)
片頭痛の急性期治療戦略(松森保彦)
片頭痛の予防療法(工藤雅子)
片頭痛の新規治療薬─CGRP関連抗体薬,CGRP受容体拮抗薬(gepant),PACAP関連薬剤(滝沢 翼・井原慶子)
緊張型頭痛,三叉神経・自律神経性頭痛,その他の一次性頭痛疾患
緊張型頭痛の診断と治療(秋山久尚)
反復性群発頭痛,慢性群発頭痛の病態・診断・治療(北村英二)
群発頭痛以外の三叉神経・自律神経性頭痛(菊井祥二)
その他の一次性頭痛疾患─睡眠時頭痛を中心に(須佐葉子)
二次性頭痛
危険な二次性頭痛の誤診を避け適切な治療へつなげるために─レッドフラッグとグリーンフラッグを用いた頭痛患者の初期評価(貞本泰孝)
頭部外傷および開頭術による頭痛の最新知見(石川栄一)
可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)と脳静脈洞血栓症(CVT)の診断・治療戦略(加納裕也・山田健太郎)
頭痛医療のトピックス
神経調節療法(neuromodulation)の現状と展望(今井 昇)
片頭痛と痛覚変調性疼痛(加藤総夫)
片頭痛等価症と不思議の国のアリス症候群(島 淳)
頭痛医療におけるDX,ICTとAI活用(伊藤康男)
日本頭痛学会の歴史と役割─日本頭痛協会,JPAC,GPACHおよび国際学会の動向(團野大介)
「頭痛専門医への道」プロジェクト─専門医資格の意義とキャリアパス(稲垣美恵子)
小児の頭痛─基礎知識と最近のトピックス(山中 岳)
高齢者頭痛─健康寿命・幸福寿命の延伸に向けて(織田雅也・他)
次号の特集予告
サイドメモ
閃輝暗点(fortification spectrum)
頭痛ダイアリー
CGRP
PACAP
用語解説〔末梢性疼痛機序(末梢性感作),中枢性疼痛機序(中枢性感作),風池,天柱〕
オレキシン(orexin)
SUNHAとTNの異同
インドメタシン反応性頭痛
斜台後方硬膜外/下血腫
もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)
雷鳴頭痛(TCH)と画像検査
皮質拡延抑制(CSD)
安静時機能的MRI(rsfMRI)
ICHD-3では認められていない起立性調節障害(OD)に伴う頭痛
ポリファーマシー
高齢者総合機能評価(CGA)














