はじめに
堤 治
順和会山王病院リプロダクション・婦人科内視鏡治療センター,国際医療福祉大学大学院生殖補助医療胚培養分野
少子化の進む国内の出生数は70万人を割り込み,生殖医療(体外受精など)で生まれる子どもは7万7千人を超え,その割合は9人に1人となった.年代別の出生数をみると,45歳以上では増加が続き1,700人を超えている.高年齢者の成績は1%程度と低下するなか,効率的とはいえない生殖医療が実施されているのが現状であり,妊孕性温存療法は少子化時代の大事な処方箋と考え,本特集を企画した.
がん生殖医療は若年がん患者を対象とした妊孕性温存療法で,精子凍結,卵巣・卵子凍結,胚凍結が行われる.また,卵巣機能温存の試みもなされる.がん生殖医療はすでにその成果として多くの子どもの誕生が報告されている.女性の社会での活躍が進むなかで結婚年齢の上昇に伴い高年齢者の不妊治療の実施数が増加し,また,将来の妊娠に備える社会的卵子凍結への関心も高まり,企業や自治体の助成も開始されている.
子宮内膜症や多嚢胞性卵巣といった女性の疾患は不妊の原因になるのみならず,それぞれ卵巣がんや子宮内膜がんの発生リスクを上げることも明らかになっている.適切な妊孕性温存療法の実施が,生命予後に関係すると言うこともできる.日本の生殖医療の特徴は高年齢者が多いことであり,それに伴って難治性不妊も増加している.難治性不妊に対する多血小板血漿(platelet-rich plasma:PRP)を中心とした再生医療の応用がどのようになされているかも本特集で取り上げた.
生殖医療の現場から,少子化時代の妊孕性温存療法の意義を再考すると,日本における性や生殖に対する教育の遅れが背景にあることを痛感する.妊孕性温存療法は予防医学的意義を持つが,妊孕性への理解を深めるプレコンセプションケアによって裏打ちされることにより普及や成果の広がりを期待できる.少子化は時代の流れではあるが,子を持ちたいという人の心は永遠であり,妊孕性温存を社会で理解,対応することが少子化対策にも通じると思われる.
堤 治
順和会山王病院リプロダクション・婦人科内視鏡治療センター,国際医療福祉大学大学院生殖補助医療胚培養分野
少子化の進む国内の出生数は70万人を割り込み,生殖医療(体外受精など)で生まれる子どもは7万7千人を超え,その割合は9人に1人となった.年代別の出生数をみると,45歳以上では増加が続き1,700人を超えている.高年齢者の成績は1%程度と低下するなか,効率的とはいえない生殖医療が実施されているのが現状であり,妊孕性温存療法は少子化時代の大事な処方箋と考え,本特集を企画した.
がん生殖医療は若年がん患者を対象とした妊孕性温存療法で,精子凍結,卵巣・卵子凍結,胚凍結が行われる.また,卵巣機能温存の試みもなされる.がん生殖医療はすでにその成果として多くの子どもの誕生が報告されている.女性の社会での活躍が進むなかで結婚年齢の上昇に伴い高年齢者の不妊治療の実施数が増加し,また,将来の妊娠に備える社会的卵子凍結への関心も高まり,企業や自治体の助成も開始されている.
子宮内膜症や多嚢胞性卵巣といった女性の疾患は不妊の原因になるのみならず,それぞれ卵巣がんや子宮内膜がんの発生リスクを上げることも明らかになっている.適切な妊孕性温存療法の実施が,生命予後に関係すると言うこともできる.日本の生殖医療の特徴は高年齢者が多いことであり,それに伴って難治性不妊も増加している.難治性不妊に対する多血小板血漿(platelet-rich plasma:PRP)を中心とした再生医療の応用がどのようになされているかも本特集で取り上げた.
生殖医療の現場から,少子化時代の妊孕性温存療法の意義を再考すると,日本における性や生殖に対する教育の遅れが背景にあることを痛感する.妊孕性温存療法は予防医学的意義を持つが,妊孕性への理解を深めるプレコンセプションケアによって裏打ちされることにより普及や成果の広がりを期待できる.少子化は時代の流れではあるが,子を持ちたいという人の心は永遠であり,妊孕性温存を社会で理解,対応することが少子化対策にも通じると思われる.
特集 少子化時代の妊孕性温存療法
はじめに(堤 治)
『小児・AYA世代がん患者等の妊孕性温存に関する診療ガイドライン 2024年12月改訂 第2版』の解説(鈴木 直)
男性がん患者における妊孕性温存療法(小林秀行・永尾光一)
医学的卵子凍結・胚凍結(井 泰)
卵巣組織凍結(京野廣一・他)
薬物療法による卵巣機能温存─GnRHアゴニストとその他の薬剤の知見(北島道夫)
社会的(リプロダクティブ)卵子凍結(久須美真紀・他)
良性疾患に対する妊孕性温存(原田美由紀)
不妊診療におけるPRP治療─PRP子宮腔内投与/卵巣投与(見澤 聡・他)
TOPICS
癌・腫瘍学 胃がん腹膜播種を促進する中皮細胞(米村敦子・石本崇胤)
神経精神医学 摂食障害におけるケトン体の役割(大山覚照)
連載
自己指向性免疫学の新展開─生体防御における自己認識の功罪(31)(最終回)
皮膚バリア機能とアシルセラミド代謝─表皮バリア脂質の代謝異常を免疫システムは認識するか?(平林哲也)
細胞を用いた再生医療の現状と今後の展望─臨床への展開(17)
尿素サイクル異常症に対する胚性幹細胞製品の臨床試験(梅澤明弘)
ケースから学ぶ臨床倫理推論(8)
リスクの高い治療の要求(勝碕静香)
FORUM
司法精神医学への招待─精神医学と法律の接点(3) 精神鑑定の基礎知識(大澤達哉)
次号の特集予告
はじめに(堤 治)
『小児・AYA世代がん患者等の妊孕性温存に関する診療ガイドライン 2024年12月改訂 第2版』の解説(鈴木 直)
男性がん患者における妊孕性温存療法(小林秀行・永尾光一)
医学的卵子凍結・胚凍結(井 泰)
卵巣組織凍結(京野廣一・他)
薬物療法による卵巣機能温存─GnRHアゴニストとその他の薬剤の知見(北島道夫)
社会的(リプロダクティブ)卵子凍結(久須美真紀・他)
良性疾患に対する妊孕性温存(原田美由紀)
不妊診療におけるPRP治療─PRP子宮腔内投与/卵巣投与(見澤 聡・他)
TOPICS
癌・腫瘍学 胃がん腹膜播種を促進する中皮細胞(米村敦子・石本崇胤)
神経精神医学 摂食障害におけるケトン体の役割(大山覚照)
連載
自己指向性免疫学の新展開─生体防御における自己認識の功罪(31)(最終回)
皮膚バリア機能とアシルセラミド代謝─表皮バリア脂質の代謝異常を免疫システムは認識するか?(平林哲也)
細胞を用いた再生医療の現状と今後の展望─臨床への展開(17)
尿素サイクル異常症に対する胚性幹細胞製品の臨床試験(梅澤明弘)
ケースから学ぶ臨床倫理推論(8)
リスクの高い治療の要求(勝碕静香)
FORUM
司法精神医学への招待─精神医学と法律の接点(3) 精神鑑定の基礎知識(大澤達哉)
次号の特集予告














