はじめに
大内憲明
東北大学大学院医学系研究科
わが国では1981年に悪性腫瘍が死亡原因の第1位となり,1983年に老人保健法が施行された.胃がん・子宮頸がん検診が開始され,その後,大腸がん,乳がん,肺がんへと対象が拡大され,現在,健康増進法に基づく市町村の事業(対策型検診)として行われている.2006年にはがん対策基本法が成立し,翌年,第1期がん対策推進基本計画が策定され,現在,第4期がん対策推進基本計画が進行中である.
国として科学的根拠に基づくがん検診の実施について検討すべく,2003年12月に“がん検診に関する検討会“が設置されたが,2012年5月からは“がん検診のあり方に関する検討会”と改め,時代の変遷に即応すべく検討が重ねられている.
第3期がん対策推進基本計画では,がん死亡率減少を目的として“科学的根拠に基づくがん検診の充実“が全体目標に掲げられ,精度管理体制の整備などについて検討会で議論された.一方,職域検診については,2018年に「職域におけるがん検診に関するマニュアル」が策定され,2022年には「がん検診事業のあり方について」報告書において,地域・職域によらずすべてのがん検診が適切に行われることを目指した“組織型検診”が提唱され,関係者が必要とする情報が体系的に盛り込まれた.
2023年度からの第4期がん対策推進基本計画には,“組織型検診の構築”が盛り込まれている.組織型検診とは,統一されたプログラムの下,適格な対象集団を特定し,対象者を個別に勧奨する検診で,全行程が組織化されることにより,検診の利益の最大化,不利益の最小化が期待できる.
本特集では,第4期がん対策推進基本計画全6年間の中間年である今年(2025年)から来年にかけて中間評価の実施が想定されることから,「科学的根拠に基づくがん検診UPDATE 2025」を主題として,がん検診のエキスパートにご参画いただき,各種がん検診の現状に加えて,ガイドライン策定の根拠となる利益と不利益の考え方,精度管理のあり方,受診率向上への取り組みなどについて,最新の知見について解説をいただいた.
本特集が,わが国でがん検診に携わる方々の知見と理解の一助となれば幸いである.
大内憲明
東北大学大学院医学系研究科
わが国では1981年に悪性腫瘍が死亡原因の第1位となり,1983年に老人保健法が施行された.胃がん・子宮頸がん検診が開始され,その後,大腸がん,乳がん,肺がんへと対象が拡大され,現在,健康増進法に基づく市町村の事業(対策型検診)として行われている.2006年にはがん対策基本法が成立し,翌年,第1期がん対策推進基本計画が策定され,現在,第4期がん対策推進基本計画が進行中である.
国として科学的根拠に基づくがん検診の実施について検討すべく,2003年12月に“がん検診に関する検討会“が設置されたが,2012年5月からは“がん検診のあり方に関する検討会”と改め,時代の変遷に即応すべく検討が重ねられている.
第3期がん対策推進基本計画では,がん死亡率減少を目的として“科学的根拠に基づくがん検診の充実“が全体目標に掲げられ,精度管理体制の整備などについて検討会で議論された.一方,職域検診については,2018年に「職域におけるがん検診に関するマニュアル」が策定され,2022年には「がん検診事業のあり方について」報告書において,地域・職域によらずすべてのがん検診が適切に行われることを目指した“組織型検診”が提唱され,関係者が必要とする情報が体系的に盛り込まれた.
2023年度からの第4期がん対策推進基本計画には,“組織型検診の構築”が盛り込まれている.組織型検診とは,統一されたプログラムの下,適格な対象集団を特定し,対象者を個別に勧奨する検診で,全行程が組織化されることにより,検診の利益の最大化,不利益の最小化が期待できる.
本特集では,第4期がん対策推進基本計画全6年間の中間年である今年(2025年)から来年にかけて中間評価の実施が想定されることから,「科学的根拠に基づくがん検診UPDATE 2025」を主題として,がん検診のエキスパートにご参画いただき,各種がん検診の現状に加えて,ガイドライン策定の根拠となる利益と不利益の考え方,精度管理のあり方,受診率向上への取り組みなどについて,最新の知見について解説をいただいた.
本特集が,わが国でがん検診に携わる方々の知見と理解の一助となれば幸いである.
特集 科学的根拠に基づくがん検診 UPDATE 2025
はじめに(大内憲明)
がん検診の利益と不利益─ガイドライン策定の根拠(中山富雄)
精度管理─がん検診事業のあり方(高橋宏和)
がん検診の推進に向けた取り組み(中川恵一・福吉 潤)
胃がん検診の課題─対策型検診を中心に(加藤勝章・他)
日本における大腸がん検診の問題点─日本の大腸がん死亡率を他の先進諸国並みに減少させるには(松田一夫)
肺がん検診(佐川元保)
日本の乳がん検診の問題点と解決策(植松孝悦)
子宮頸がん検診─子宮頸部細胞診単独法とHPV検査単独法(森定 徹・青木大輔)
TOPICS
血液内科学 造血幹細胞・前駆細胞の分化方向性をつかさどるmRNA分解を介した新たな制御相(植畑拓也)
生化学・分子生物学 遺伝子操作を伴わず生体内でタンパク質の機能解析が可能に(王 萌初・他)
連載
自己指向性免疫学の新展開─生体防御における自己認識の功罪(28)
T細胞が認識する肥満特有の自己指向性免疫の解明(遠藤裕介)
細胞を用いた再生医療の現状と今後の展望─臨床への展開(14)
表在性十二指腸腫瘍に対する新規術式の開発─内視鏡+腹腔鏡手術+細胞シート医療=?(金高賢悟・他)
ケースから学ぶ臨床倫理推論(5)
身体拘束(松村由美)
FORUM
戦争と医学・医療(16) アウシュヴィッツ強制収容所の“医療”(大野義一朗・下 正宗)
戦争と医学・医療(17)(最終回) 金田光雄はなぜアウシュヴィッツ報告を翻訳出版したのか(大野義一朗)
次号の特集予告
はじめに(大内憲明)
がん検診の利益と不利益─ガイドライン策定の根拠(中山富雄)
精度管理─がん検診事業のあり方(高橋宏和)
がん検診の推進に向けた取り組み(中川恵一・福吉 潤)
胃がん検診の課題─対策型検診を中心に(加藤勝章・他)
日本における大腸がん検診の問題点─日本の大腸がん死亡率を他の先進諸国並みに減少させるには(松田一夫)
肺がん検診(佐川元保)
日本の乳がん検診の問題点と解決策(植松孝悦)
子宮頸がん検診─子宮頸部細胞診単独法とHPV検査単独法(森定 徹・青木大輔)
TOPICS
血液内科学 造血幹細胞・前駆細胞の分化方向性をつかさどるmRNA分解を介した新たな制御相(植畑拓也)
生化学・分子生物学 遺伝子操作を伴わず生体内でタンパク質の機能解析が可能に(王 萌初・他)
連載
自己指向性免疫学の新展開─生体防御における自己認識の功罪(28)
T細胞が認識する肥満特有の自己指向性免疫の解明(遠藤裕介)
細胞を用いた再生医療の現状と今後の展望─臨床への展開(14)
表在性十二指腸腫瘍に対する新規術式の開発─内視鏡+腹腔鏡手術+細胞シート医療=?(金高賢悟・他)
ケースから学ぶ臨床倫理推論(5)
身体拘束(松村由美)
FORUM
戦争と医学・医療(16) アウシュヴィッツ強制収容所の“医療”(大野義一朗・下 正宗)
戦争と医学・医療(17)(最終回) 金田光雄はなぜアウシュヴィッツ報告を翻訳出版したのか(大野義一朗)
次号の特集予告














