はじめに
高橋正也
労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所過労死等防止調査研究センター
働くことは,労働者本人,家族,地域,そして国全体が豊かになり,成長するための重要な活動である.その過程が思ったとおりに展開するのはあいにく少ない.事業場の中には上下関係があり,異質な人間が多数働いている.事業場の外には顧客などがいて,上手な連携が求められる.場合によっては,海外の競争相手と戦わなければならないこともある.1945年を起点にすると,この80年間にわれわれの働き方,暮らし方,考え方は大きく変貌した.そればかりではなく,これからの将来をどう見据える(見据えられる)かも難しい課題になっている.
こうした難題はあれども,長時間労働や低質な労働環境のせいで病気になって,命を失ったり,休職したりすることは,なんとしても防がなければならない.そのために,2014年11月から「過労死等防止対策推進法」が施行され,運用されている.この法律の定める4つの対策の第一は“調査研究”である.その主体は独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所過労死等防止調査研究センター(以下,過労死等センター)が担っている.2015年度より,「過労死等の実態解明と防止対策に関する総合的な労働安全衛生研究」を,1期3年間として,これまで3期を実施してきた.現在,第4期の1年目である2024年度の調査研究が終わりつつある.
過労死等センターによる調査研究が10年間になろうとしている今,本特集では,過労死等労災事案の経年的動向,脳・心臓疾患事案の特徴,精神障害・自殺事案の特徴,過労死等センターの現場介入チーム・実験研究チーム・対策実装研究チームの成果,地方公務員における過労死等の現状と課題(総務省受託),そして産業医科大学ストレス関連疾患予防センターの成果と課題について,それぞれの主担当者が解説する.これらの知見を踏まえたうえで,過労死等研究の今後の方向性を提示したい.
高橋正也
労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所過労死等防止調査研究センター
働くことは,労働者本人,家族,地域,そして国全体が豊かになり,成長するための重要な活動である.その過程が思ったとおりに展開するのはあいにく少ない.事業場の中には上下関係があり,異質な人間が多数働いている.事業場の外には顧客などがいて,上手な連携が求められる.場合によっては,海外の競争相手と戦わなければならないこともある.1945年を起点にすると,この80年間にわれわれの働き方,暮らし方,考え方は大きく変貌した.そればかりではなく,これからの将来をどう見据える(見据えられる)かも難しい課題になっている.
こうした難題はあれども,長時間労働や低質な労働環境のせいで病気になって,命を失ったり,休職したりすることは,なんとしても防がなければならない.そのために,2014年11月から「過労死等防止対策推進法」が施行され,運用されている.この法律の定める4つの対策の第一は“調査研究”である.その主体は独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所過労死等防止調査研究センター(以下,過労死等センター)が担っている.2015年度より,「過労死等の実態解明と防止対策に関する総合的な労働安全衛生研究」を,1期3年間として,これまで3期を実施してきた.現在,第4期の1年目である2024年度の調査研究が終わりつつある.
過労死等センターによる調査研究が10年間になろうとしている今,本特集では,過労死等労災事案の経年的動向,脳・心臓疾患事案の特徴,精神障害・自殺事案の特徴,過労死等センターの現場介入チーム・実験研究チーム・対策実装研究チームの成果,地方公務員における過労死等の現状と課題(総務省受託),そして産業医科大学ストレス関連疾患予防センターの成果と課題について,それぞれの主担当者が解説する.これらの知見を踏まえたうえで,過労死等研究の今後の方向性を提示したい.
特集 過労死等研究の現在地─10年間の成果と今後の方向性
はじめに(高橋正也)
過労死等労災事案の経年的特徴(佐々木 毅・吉川 徹)
過労死等としての脳・心臓疾患の実態とその発症メカニズム(守田祐作)
過労死等としての精神障害・自殺の特徴(高橋有記・山本賢司)
職場の特性に応じたテーラーメイドの疲労対策の重要性─職場の疲労カウンセリング(久保智英)
過労死等防止調査研究センター実験研究の成果(劉 欣欣・他)
過労死等防止調査研究センター対策実装研究チームの成果(石井賢治・他)
地方公務員における過労死等の現状と課題(茂木伸之・吉川 徹)
産業医科大学ストレス関連疾患予防センターの取り組み(船田 碧・他)
過労死等研究の今後の方向性(高橋正也・吉川 徹)
TOPICS
整形外科学 Tric-b遺伝子欠損による非典型的な成長板軟骨細胞死と低身長(市村敦彦・竹島 浩)
呼吸器内科学 抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎に伴う間質性肺疾患における新たな予後予測マーカーの開発─血清インターフェロン-λ3(藤澤朋幸)
連載
自己指向性免疫学の新展開─生体防御における自己認識の功罪(24)
免疫受容体が認識する代謝物リガンドの網羅的探索に向けた解析システムの開発(富安範行・和泉自泰)
細胞を用いた再生医療の現状と今後の展望─臨床への展開(10)
間葉系幹細胞の免疫調整能を応用した難治性腎疾患治療(田中章仁・他)
ケースから学ぶ臨床倫理推論(1)
応招義務(勝碕静香)
FORUM
数理で理解する発がん(20)(最終回) 発がんは体細胞の進化のプロセス(中林 潤)
戦争と医学・医療(12) 藤田嗣章と日本の植民地医学(崔 圭鎮)
次号の特集予告
はじめに(高橋正也)
過労死等労災事案の経年的特徴(佐々木 毅・吉川 徹)
過労死等としての脳・心臓疾患の実態とその発症メカニズム(守田祐作)
過労死等としての精神障害・自殺の特徴(高橋有記・山本賢司)
職場の特性に応じたテーラーメイドの疲労対策の重要性─職場の疲労カウンセリング(久保智英)
過労死等防止調査研究センター実験研究の成果(劉 欣欣・他)
過労死等防止調査研究センター対策実装研究チームの成果(石井賢治・他)
地方公務員における過労死等の現状と課題(茂木伸之・吉川 徹)
産業医科大学ストレス関連疾患予防センターの取り組み(船田 碧・他)
過労死等研究の今後の方向性(高橋正也・吉川 徹)
TOPICS
整形外科学 Tric-b遺伝子欠損による非典型的な成長板軟骨細胞死と低身長(市村敦彦・竹島 浩)
呼吸器内科学 抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎に伴う間質性肺疾患における新たな予後予測マーカーの開発─血清インターフェロン-λ3(藤澤朋幸)
連載
自己指向性免疫学の新展開─生体防御における自己認識の功罪(24)
免疫受容体が認識する代謝物リガンドの網羅的探索に向けた解析システムの開発(富安範行・和泉自泰)
細胞を用いた再生医療の現状と今後の展望─臨床への展開(10)
間葉系幹細胞の免疫調整能を応用した難治性腎疾患治療(田中章仁・他)
ケースから学ぶ臨床倫理推論(1)
応招義務(勝碕静香)
FORUM
数理で理解する発がん(20)(最終回) 発がんは体細胞の進化のプロセス(中林 潤)
戦争と医学・医療(12) 藤田嗣章と日本の植民地医学(崔 圭鎮)
次号の特集予告














