はじめに
福原淳範 下村伊一郎
大阪大学大学院医学系研究科肥満脂肪病態学寄附講座
Goldsteinテキサス大学教授およびBrown同教授(1985年ノーベル医学・生理学賞受賞者)によって,1993年に脂質制御因子SREBP(sterol regulatory element-binding protein)が発見されてから30年が経過した.PubMedで検索すると,総計では6,000報,近年は毎年400報の論文が発表されており,ますます注目される因子である.
SREBPはSREBP1a,SREBP1c,SREBP2の3つのアイソフォームで構成されており,SREBP1cは脂肪酸産生を,SREBP2はコレステロール産生と取り込みに関する遺伝子発現を誘導する.コレステロールは細胞膜の構成成分であるとともに,ステロイドホルモンや胆汁酸の原料である.脂肪酸はそれ自身の作用に加えて,トリアシルグリセロールや複合脂質であるグリセロリン脂質,スフィンゴ脂質,エイコサノイドなどに変換されることで,さまざまな作用を発揮する.脂質の重要な機能は,細胞膜の形成と機能維持,エネルギー貯蔵と産生だけでなく,生理活性脂質としてシグナル伝達作用も行っている.このように脂質は細胞機能の維持に必須であり,その制御異常によってさまざまな疾患が発症する.すわなち,SREBPは直接的,間接的に,ありとあらゆる細胞機能に関与していると言っても過言ではない.
古典的なSREBPの活性化経路は,インスリンシグナルやコレステロール量に応じたSCAP(SREBP cleavage-activating protein)を介した小胞体からゴルジ体への輸送,S1P(site-1 protease)/S2P(site-2 protease)による切断,核内移行,SRE(sterol regulatory element)への結合による転写活性化である.SREBP研究にはわが国の研究者が大きく貢献しており,新たな制御機構や活性化機構が次々と発見されている.本稿では,SREBPの制御機構,活性化機構について,最新の研究内容を解説いただいた.皆様の学術活動に資することを期待している.
福原淳範 下村伊一郎
大阪大学大学院医学系研究科肥満脂肪病態学寄附講座
Goldsteinテキサス大学教授およびBrown同教授(1985年ノーベル医学・生理学賞受賞者)によって,1993年に脂質制御因子SREBP(sterol regulatory element-binding protein)が発見されてから30年が経過した.PubMedで検索すると,総計では6,000報,近年は毎年400報の論文が発表されており,ますます注目される因子である.
SREBPはSREBP1a,SREBP1c,SREBP2の3つのアイソフォームで構成されており,SREBP1cは脂肪酸産生を,SREBP2はコレステロール産生と取り込みに関する遺伝子発現を誘導する.コレステロールは細胞膜の構成成分であるとともに,ステロイドホルモンや胆汁酸の原料である.脂肪酸はそれ自身の作用に加えて,トリアシルグリセロールや複合脂質であるグリセロリン脂質,スフィンゴ脂質,エイコサノイドなどに変換されることで,さまざまな作用を発揮する.脂質の重要な機能は,細胞膜の形成と機能維持,エネルギー貯蔵と産生だけでなく,生理活性脂質としてシグナル伝達作用も行っている.このように脂質は細胞機能の維持に必須であり,その制御異常によってさまざまな疾患が発症する.すわなち,SREBPは直接的,間接的に,ありとあらゆる細胞機能に関与していると言っても過言ではない.
古典的なSREBPの活性化経路は,インスリンシグナルやコレステロール量に応じたSCAP(SREBP cleavage-activating protein)を介した小胞体からゴルジ体への輸送,S1P(site-1 protease)/S2P(site-2 protease)による切断,核内移行,SRE(sterol regulatory element)への結合による転写活性化である.SREBP研究にはわが国の研究者が大きく貢献しており,新たな制御機構や活性化機構が次々と発見されている.本稿では,SREBPの制御機構,活性化機構について,最新の研究内容を解説いただいた.皆様の学術活動に資することを期待している.
特集 脂質制御因子SREBPの新展開
はじめに(福原淳範・下村伊一郎)
ブロッコリー由来成分スルフォラファンによるSREBPタンパク質分解制御(井上 順)
全長型SREBPを標的とするユビキチンリガーゼARMC5の同定(奥野陽亮)
カロリー制限下におけるSREBP-1cの発現制御機構と白色脂肪組織の代謝リプログラミング(野崎優香・他)
ビタミンD誘導体による選択的SREBP-SCAP阻害作用(橘高敦史)
SCAPのポリユビキチン化によるSREBP活性化(佐藤隆一郎)
SREBP-1cの新たな切断活性化機構と脂肪酸による切断制御(韓 松伊・他)
連載
自己指向性免疫学の新展開─生体防御における自己認識の功罪(18)
Tリンパ球の恒常性維持における自己反応性の新たな役割(河部剛史)
細胞を用いた再生医療の現状と今後の展望─臨床への展開(4)
脂肪幹細胞を用いた末梢動脈閉塞症に対する治療効果(清水優樹・室原豊明)
特報
第61回(2024年度)ベルツ賞受賞論文1等賞 福山型筋ジストロフィーを含めた糖鎖合成異常症の系統的な解明・治療に関する研究(戸田達史)
第61回(2024年度)ベルツ賞受賞論文2等賞 がんゲノム医学を基盤とした個別化医療(柴田龍弘)
次号の特集予告
はじめに(福原淳範・下村伊一郎)
ブロッコリー由来成分スルフォラファンによるSREBPタンパク質分解制御(井上 順)
全長型SREBPを標的とするユビキチンリガーゼARMC5の同定(奥野陽亮)
カロリー制限下におけるSREBP-1cの発現制御機構と白色脂肪組織の代謝リプログラミング(野崎優香・他)
ビタミンD誘導体による選択的SREBP-SCAP阻害作用(橘高敦史)
SCAPのポリユビキチン化によるSREBP活性化(佐藤隆一郎)
SREBP-1cの新たな切断活性化機構と脂肪酸による切断制御(韓 松伊・他)
連載
自己指向性免疫学の新展開─生体防御における自己認識の功罪(18)
Tリンパ球の恒常性維持における自己反応性の新たな役割(河部剛史)
細胞を用いた再生医療の現状と今後の展望─臨床への展開(4)
脂肪幹細胞を用いた末梢動脈閉塞症に対する治療効果(清水優樹・室原豊明)
特報
第61回(2024年度)ベルツ賞受賞論文1等賞 福山型筋ジストロフィーを含めた糖鎖合成異常症の系統的な解明・治療に関する研究(戸田達史)
第61回(2024年度)ベルツ賞受賞論文2等賞 がんゲノム医学を基盤とした個別化医療(柴田龍弘)
次号の特集予告