はじめに
馬場嘉信
量子科学技術研究開発機構(QST)量子生命科学研究所,名古屋大学未来社会創造機構量子化学イノベーション研究所
量子科学技術は20世紀初頭に生まれ,現在は量子コンピュータ,量子通信,量子センサーなどへ発展し,第二次量子革命とよばれるほど研究開発が急速に進展している.2025年には,量子科学技術誕生100周年を祝う国際量子科学技術年が予定されている.一方,生命科学は20世紀にDNAの二重らせん構造が解明され,21世紀初頭にはヒトゲノムが解読されるなど,20世紀から21世紀にかけて,巨大な進歩を遂げた.
2016年に発足した量子科学技術研究開発機構(National Institutes for Quantum Science and Technology:QST)の平野俊夫初代理事長は,新たな研究分野として量子科学技術と生命科学を融合させた量子生命科学を創成し,量子科学技術および生命科学・医学の大きな発展に結びつけることを目指し,2019年にQST量子生命科学領域を設立,2021年には量子生命科学研究所へと発展させるとともに,2022年には同研究所の新しい建物を建設するなど,量子生命科学の発展を強力に推進してきた.
量子生命科学は,2020年に制定された内閣府の“量子技術イノベーション戦略“において,量子融合イノベーション領域として強化することが決定され,QST量子生命科学研究所が量子生命拠点に指定された.さらに,文部科学省委託事業“光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)量子生命”が2020年に開始され,国内外のアカデミア・企業が26機関集結し,生体ナノ量子センサー,量子技術を用いた超高感度MRI/NMR,量子論的生命現象の解明・模倣における研究開発を加速するとともに,医学への応用展開を推進している.また,2024年度から開始された厚生労働省の“がん研究10か年戦略(第5次)“において,今後推進すべきがん研究・開発に“量子センサー等の量子技術を活用した新規診断技術の開発に資する研究”が明記されるなど,医学分野においても量子科学技術への期待が高まっている.
本特集は,Q-LEAP量子生命において量子生命科学の医学領域への展開を進められている最先端の研究者の方々に,それぞれの分野における最新の研究成果をご執筆いただいている.本特集が契機となり,量子生命科学が医学領域にますます拡大・発展していくことを期待している.
馬場嘉信
量子科学技術研究開発機構(QST)量子生命科学研究所,名古屋大学未来社会創造機構量子化学イノベーション研究所
量子科学技術は20世紀初頭に生まれ,現在は量子コンピュータ,量子通信,量子センサーなどへ発展し,第二次量子革命とよばれるほど研究開発が急速に進展している.2025年には,量子科学技術誕生100周年を祝う国際量子科学技術年が予定されている.一方,生命科学は20世紀にDNAの二重らせん構造が解明され,21世紀初頭にはヒトゲノムが解読されるなど,20世紀から21世紀にかけて,巨大な進歩を遂げた.
2016年に発足した量子科学技術研究開発機構(National Institutes for Quantum Science and Technology:QST)の平野俊夫初代理事長は,新たな研究分野として量子科学技術と生命科学を融合させた量子生命科学を創成し,量子科学技術および生命科学・医学の大きな発展に結びつけることを目指し,2019年にQST量子生命科学領域を設立,2021年には量子生命科学研究所へと発展させるとともに,2022年には同研究所の新しい建物を建設するなど,量子生命科学の発展を強力に推進してきた.
量子生命科学は,2020年に制定された内閣府の“量子技術イノベーション戦略“において,量子融合イノベーション領域として強化することが決定され,QST量子生命科学研究所が量子生命拠点に指定された.さらに,文部科学省委託事業“光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)量子生命”が2020年に開始され,国内外のアカデミア・企業が26機関集結し,生体ナノ量子センサー,量子技術を用いた超高感度MRI/NMR,量子論的生命現象の解明・模倣における研究開発を加速するとともに,医学への応用展開を推進している.また,2024年度から開始された厚生労働省の“がん研究10か年戦略(第5次)“において,今後推進すべきがん研究・開発に“量子センサー等の量子技術を活用した新規診断技術の開発に資する研究”が明記されるなど,医学分野においても量子科学技術への期待が高まっている.
本特集は,Q-LEAP量子生命において量子生命科学の医学領域への展開を進められている最先端の研究者の方々に,それぞれの分野における最新の研究成果をご執筆いただいている.本特集が契機となり,量子生命科学が医学領域にますます拡大・発展していくことを期待している.
特集 量子生命科学の医学領域への展開
はじめに(馬場嘉信)
量子計測技術としての超偏極MRI/MRSの開発と脳エネルギー代謝評価による精神神経疾患の病態研究への応用(草木洋一・高堂裕平)
量子コンピューティング技術の医学応用の可能性(八幡憲明・間島 慶)
脳内炎症に対する量子診断プラットフォームの構築(北條慎太郎・他)
ナノ量子センサーイメージング計測技術の再生医療応用(湯川 博)
分子動力学シミュレーションによるメチル化酵素の機能異常メカニズム解析(河野秀俊・クマール アマラジート)
量子センサーと分光学を用いた相分離液滴の構造ダイナミクス研究(加藤昌人)
量子構造生物学の医学応用への期待(平野 優・玉田太郎)
TOPICS
医療行政 世界最大の保健医療制度・政策の国際会議 2024年11月18〜22日に長崎で開催 第8回 Global Symposium on Health Systems Research(相賀裕嗣・吉野 純)
麻酔科学 麻酔薬は小児の脳に影響を与えるか(金澤伴幸)
連載
臨床医のための微生物学講座(19)
緑膿菌(佐々木雅一)
緩和医療のアップデート(14)
AYA世代がん患者の療養支援の課題(石木寛人)
自己指向性免疫学の新展開─生体防御における自己認識の功罪(6)
MAIT細胞による共生細菌由来代謝産物の認識とその生理的意義(柴田健輔)
FORUM
死を看取る─死因究明の場にて(20) 死因究明の実践(3)(大澤資樹)
日本型セルフケアへのあゆみ(24) 進行がんのセカンドオピニオン(児玉龍彦)
次号の特集予告
はじめに(馬場嘉信)
量子計測技術としての超偏極MRI/MRSの開発と脳エネルギー代謝評価による精神神経疾患の病態研究への応用(草木洋一・高堂裕平)
量子コンピューティング技術の医学応用の可能性(八幡憲明・間島 慶)
脳内炎症に対する量子診断プラットフォームの構築(北條慎太郎・他)
ナノ量子センサーイメージング計測技術の再生医療応用(湯川 博)
分子動力学シミュレーションによるメチル化酵素の機能異常メカニズム解析(河野秀俊・クマール アマラジート)
量子センサーと分光学を用いた相分離液滴の構造ダイナミクス研究(加藤昌人)
量子構造生物学の医学応用への期待(平野 優・玉田太郎)
TOPICS
医療行政 世界最大の保健医療制度・政策の国際会議 2024年11月18〜22日に長崎で開催 第8回 Global Symposium on Health Systems Research(相賀裕嗣・吉野 純)
麻酔科学 麻酔薬は小児の脳に影響を与えるか(金澤伴幸)
連載
臨床医のための微生物学講座(19)
緑膿菌(佐々木雅一)
緩和医療のアップデート(14)
AYA世代がん患者の療養支援の課題(石木寛人)
自己指向性免疫学の新展開─生体防御における自己認識の功罪(6)
MAIT細胞による共生細菌由来代謝産物の認識とその生理的意義(柴田健輔)
FORUM
死を看取る─死因究明の場にて(20) 死因究明の実践(3)(大澤資樹)
日本型セルフケアへのあゆみ(24) 進行がんのセカンドオピニオン(児玉龍彦)
次号の特集予告














