やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 帖佐悦男
 宮崎大学医学部感覚運動医学講座整形外科学分野
 今回のテーマを「スポーツ外傷・障害の予防と治療――TOKYO 2020が終了して」とした.TOKYO 2020の開催にあたっては,さまざまな意見があったが,十分な感染対策をとり無観客で行われたこともあり,クラスターの発生もなく,コロナ禍での開催としては個人的には国民に大きな感動を与え終了したと思っている.
 その国際大会で活躍するアスリートの誕生には,運動器を中心とした健全な発育・発達,基礎体力の向上,パフォーマンスを発揮させるためのコンディショニングやスポーツ傷害(外傷・障害)の予防,そしてスポーツ傷害発生時の早期発見・早期治療が重要と考えている.
 そこで,これまでスポーツ傷害の予防・治療を取り上げた書籍はあるが,本特集「スポーツ外傷・障害の予防と治療――TOKYO 2020が終了して」では,トップアスリートになるための成長期の対応やアスリートならびに健康スポーツのマネジメントを中心に,スポーツ現場や日常診療で役立つ書となるよう編集した.項目として,成長期の特徴と成長期のスポーツ傷害予防や治療,アスリートのマネジメントや女性とパラアスリートに特有のマネジメント,そして生涯スポーツとしての健康スポーツのマネジメント,ならびに特にトップアスリートで話題になるアンチ・ドーピングと栄養を取り上げた.
 執筆は,現在スポーツ現場や臨床の最前線で活躍されている方々に依頼し,スポーツ実践に直結する内容にしていただいた.ただし紙幅の制約上,取り上げることのできなかった分野があることをご容赦いただきたい.
 本書はスポーツ医科学・医療に携わる医師のみならず,スポーツ医学に興味のある学生やメディカルスタッフを含めた医療関係者すべてにも役立つものと考えている.
 最後に本書にご執筆いただいた方々にあらためて深謝するとともに,本書が常にスポーツ医科学・医療の傍らに置かれ,読者の皆様方に役立つことを祈念し序文のあいさつとする.
特集 スポーツ外傷・障害の予防と治療−TOKYO 2020が終了して
 はじめに
  帖佐悦男
 成長期の身体特性とスポーツ傷害との関連性
  舟ア裕記
 成長期におけるスポーツ外傷の予防−原点回帰
  島 洋祐
 成長期のスポーツ障害の予防と早期発見のポイント
  田島卓也・帖佐悦男
 アスリートのマネジメント
  橋本祐介・他
 女性アスリートの外傷・障害をサポートするうえでの課題
  半谷美夏
 パラアスリートの現場における外傷・障害とその他の疾患のマネジメントと予防−パラ陸上競技を中心に
  山田睦雄
 健康スポーツのマネジメント−青壮年期
  中川 匠
 健康スポーツのマネジメント(中高年者)−中高年者に対する関節温存手術の成績
  近藤英司・門間太輔
 アンチ・ドーピングの世界的な取り組み−糖質コルチコイドの変更
  鈴木智弓・赤間高雄
 スポーツ栄養マネジメントに準じたアスリートの栄養管理
  木村典代

連載
COVID-19診療の最前線から−現場の医師による報告(19)
 COVID-19後遺症:ウイルス感染後疲労症候群および筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の基礎と臨床−COVID-19との関連
  山村 隆

バイオインフォマティクスの世界(8)
 疾患ゲノム解析I:NGS解析
  重水大智

TOPICS
 遺伝・ゲノム学 遺伝カウンセリングとはどんな医療か?
  櫻井晃洋
 皮膚科学 皮膚拡張時における増殖能の高い表皮幹細胞の出現には血管が重要である
  一條 遼・豊島文子
 呼吸器内科学 気道疾患モデルへの応用可能な多細胞間の平面内細胞極性を制御した気道チップの開発
  曽根尚之・後藤慎平

FORUM
 中毒にご用心−身近にある危険植物・動物(12) アサリ(麻痺性貝毒,下痢性貝毒)−潮干狩りで採取して食べたら
  世良俊樹
 病院建築への誘い−医療者と病院建築のかかわりを考える 特別編−感染症対策と建築(6)
  亀谷佳保里

 次号の特集予告