やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 紆余曲折を経て,日本専門医機構による新専門医制度がいよいよスタートする.2017年後半には研修プログラムが公開され専攻医の募集が始まり,2018年度から新専門医制度に基づく研修プログラムが運営される運びである.したがって,新専門医制度初回の専門医試験は2021年に行われることになる.
 新専門医制度において,リハビリテーション科専門医が19の基幹領域専門医のひとつとして認められたことの重みを改めて感じるとともに,早期の専門医制度確立,リハビリテーション科の標榜科認定,学会の公益法人化など,わが国のリハビリテーション医学の発展に尽力されてきた諸先輩方に感謝の気持ちを伝えたい.
 さて,新専門医制度発足によりリハビリテーション科専門研修の専攻医が増え,専門医受験者が増えることは間違いない.これまでリハビリテーション科専門医試験は,十分な臨床経験を証明する症例報告と,専門知識を問う筆記試験,そして,臨床実地能力を確認する口頭試問の組合せで行われてきた.新専門医制度の専門医試験がどのような形式で行われるかは現時点では不明だが,受験者が増加すれば,筆記試験の比重が増すことは予想できる.
 1977年に『リハビリテーション知識の整理』という書籍が医歯薬出版より出版されている.この書籍は理学療法士,作業療法士国家試験に出題された問題を解説したもので,PT・OT国家試験受験者を対象とした試験対策本であるが,大変よくまとまったリハビリテーション医学の参考書となっており,専門医試験の前にこの書籍が役立ったことを覚えている.
 2002年には,Journal of CLINICAL REHABILITATION(臨床リハ)別冊『リハビリテーション医学Q&A―知識の整理』が出版された.この冊子は548ページの大著で教科書のような体裁であるが,臨床リハ10周年記念企画のひとつとして,1992年4月(創刊号)から2001年7月(10巻7号)まで連載されたリハビリテーション医学会専門医試験問題,認定臨床医試験問題とその解説を内容ごとに分類し,一部解説に加筆をしたものであった.同書は好評を博し,専門医試験,認定臨床医試験受験者だけでなく,リハビリテーション医学教育担当者に幅広く利用され,問い合わせが絶えなかったということだが,残念ながら改訂版が出版されることはなかった.
 本書は15年ぶりの同書の改訂版と受け止められるかもしれないが,『新版』としたのには理由がある.本書では8名の編集者に推薦していただいた,ベテラン・中堅専門医から比較的最近専門医試験を受験した若手専門医までリハビリテーション科診療の最前線で活躍中の93名に,専門医試験を想定した試験問題の作成を依頼し,その解説をお願いしたものである.結果として似通った問題は排除され厳選された問題が残り,詳細な解説に加えて出典を含めたことで,関連した領域のさらなる学習に役立つよう工夫されている.
 また,出題の領域分類は,リハビリテーション科専門医がかかわる広い領域を網羅すべく,基礎医学,疾患,生活機能,社会制度,生命倫理や医療安全など多面的な切り口によって整理し,他の基本領域専門医とは異なるリハビリテーション科専門医の疾患横断的,社会医学的特徴を強調したつもりである.
 新専門医制度で研修をスタートさせる若手医師が常に持ち歩いて,リハビリテーション医学の基本的な事項を確認するとともに知識の整理と試験対策に利用されることを祈る.また,日頃試験問題作成に頭を悩ませているリハビリテーション医学,リハビリテーション関連医科学の教育に携わる教員の方々にも参考としていただければ望外の喜びである.
 2017年6月
 編集代表 水落和也
I章 基礎医学
 1.解剖学
 2.生理学
 3.生化学
 4.運動学
 5.臨床心理学
 6.リハビリテーション
II章 臨床:診療行為別
 1.診断学
 2.治療学
III章 臨床:疾患別
 1.脳血管障害
 2.脳外傷
 3.脊髄・脊椎疾患
 4.骨・関節疾患
 5.神経・筋疾患
 6.小児疾患
 7.循環器疾患
 8.呼吸器疾患
 9.その他の内部障害
 10.皮膚軟部組織疾患
IV章 臨床:特殊領域別
 1.四肢切断
 2.摂食嚥下障害
 3.排泄機能障害・自律神経障害
 4.運動障害
 5.高次脳機能障害
 6.がん
 7.老年・介護保険
 8.地域リハビリテーション
 9.社会リハビリテーション
V章 生命倫理・関連法規・医療管理
 1.生命倫理・医学研究
 2.医療・介護関連法規
 3.福祉制度
 4.安全管理

 資料