やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文
 今回,「めざせ!リハビリテーション栄養のNST48―CAREガイドラインに基づく症例報告」のCASE No.25〜48を,書籍として出版させていただくことになりました.2017年に出版したCASE No.1〜24の後編となります.この症例報告は,日本リハビリテーション(リハ)栄養学会の管理栄養士部会(NST48)に所属する管理栄養士によるリレー連載でした.48人の管理栄養士が,症例報告のガイドラインであるCAREに基づいて質の高い症例報告を執筆したのは,前代未聞だと思います.
 質の高い症例報告となった要因は,CAREガイドラインの遵守,徹底した査読,執筆支援体制です.ランダム化比較試験ならCONSORT,観察研究ならSTROBE,症例報告ならCAREなど,研究デザインごとに質の高い臨床研究を行うためのガイドラインがあります.症例報告に限りませんが,研究デザインに合ったガイドラインの遵守が,質の高い臨床研究にきわめて重要です.
 徹底した査読も,質の高い症例報告の一因です.本書籍の24症例の査読は,小蔵要司さんと私で行いました.症候新規性やアイデア新規性に乏しいものや,内容的にリハ栄養とはいえない症例報告は,不採択にしました.そのため,執筆を諦めた管理栄養士も,何人かいます.また5〜6回,査読を行った症例報告もあります.管理栄養士と医師の目で徹底的に査読したことで,掲載価値のある,つまり読者の参考になる症例報告になったと考えています.
 執筆支援体制も,48人のリレー連載の継続に必要でした.後半のCASEでは,吉村由梨さんや鈴木達郎さんが共著となっている症例報告がいくつかあります.論文執筆や学会発表の経験がない管理栄養士の方にも執筆依頼を行ったため,吉村さんや鈴木さんの懇切丁寧な執筆支援が,執筆者には心強かったと思います.この場を借りて御礼申し上げます.
 症例報告を論文化することは,臨床でのスキルを高めるためにとても有用です.多くの管理栄養士に症例報告を執筆して,『臨床栄養』に投稿してほしいです.その際,本書と前編のCASE No.1〜24は,質の高い症例報告を執筆するための手本として活用していただければと思います.CAREガイドラインに基づいて,症候新規性やアイデア新規性のある症例報告を執筆すれば,不採択となる確率はかなり少なくなるはずです.
 日本リハ栄養学会では,2019年からリハ栄養指導士制度を開始しました.申請の際,リハ栄養に関する論文もしくはリハ栄養ケアプロセスを使用した症例レポートの提出を求めています.症例レポートを執筆する際にも,本書が参考になります.多くの管理栄養士にリハ栄養指導士をめざしてほしいです.
 2019年8月
 若林秀隆
CASE No.25 リハビリテーション栄養介入により骨格筋量と日常生活活動が改善した重症頭部外傷患者:症例報告
 (上野砂織)
CASE No.26 リハビリテーション栄養管理により炎症反応高値でも機能改善したサルコペニアを有する慢性閉塞性肺疾患患者:症例報告
 (武澤明子)
CASE No.27 リハビリテーション栄養サポートにより3カ月で10kgの体重増加と身体機能改善を認めたパーキンソン病患者:症例報告
 (井村沙織)
CASE No.28 るい痩をともなう脳出血および糖尿病の高齢患者に対するリハビリテーション栄養ケアプロセス:症例報告
 (澤田亜紀)
CASE No.29 急性間質性肺炎をきたした骨髄異形成症候群(5q-症候群)に対するリハビリテーション栄養ケアプロセス:症例報告
 (松本史織)
CASE No.30 集中治療後症候群を認めた有毛細胞白血病患者に対するリハビリテーション栄養管理:症例報告
 (垣谷知佐)
CASE No.31 サルコペニアを認める血管性認知症に対する長期リハビリテーション栄養管理:症例報告
 (山内杏奈)
CASE No.32 慢性膵炎を併発した脳梗塞患者の回復期リハビリテーション病棟におけるリハビリテーション栄養管理:症例報告
 (川村七瀬)
CASE No.33 長期リハビリテーション栄養アプローチを行い体重減量とADL改善を認めた脳梗塞後片麻痺入居者:症例報告
 (橋本ちひろ)
CASE No.34 慢性閉塞性肺疾患を有する肺癌術後の大腿骨近位部骨折患者に対するリハビリテーション栄養ケアプロセス:症例報告
 (西山 愛)
CASE No.35 大腸癌術後に大腿骨頸部骨折を受傷した超高齢低栄養患者へのリハビリテーション栄養アプローチ:症例報告
 (渡辺香緒里)
CASE No.36 感染性心内膜炎術後にサルコペニア・悪液質を認めた心不全患者に対するリハビリテーション栄養ケアプロセス:症例報告
 (中原さおり)
CASE No.37 運動完全麻痺の頸髄損傷患者に対するリハビリテーション栄養ケアプロセス:症例報告
 (森山大介・鈴木達郎)
CASE No.38 慢性心不全増悪期にサルコペニアを呈した入院高齢患者に対するリハビリテーション栄養アプローチ:症例報告
 (大森彩子)
CASE No.39 腰椎圧迫骨折と心臓悪液質の長期ケア入所高齢者に対するリハビリテーション栄養管理:症例報告
 (苅部康子)
CASE No.40 糖尿病と低栄養を合併した脳梗塞患者へのリハビリテーション栄養チームアプローチ:症例報告
 (畑中聡子)
CASE No.41 中枢神経系原発悪性リンパ腫患者に対するリハビリテーション栄養ケアプロセス:症例報告
 (稲葉久子・吉村由梨)
CASE No.42 サルコペニアと低栄養を合併した大腿骨転子部骨折に対する介護老人保健施設でのリハビリテーション栄養ケアプロセス:症例報告
 (西田有里・吉村由梨)
CASE No.43 急性呼吸窮迫症候群を発症した血液維持透析症例に対するリハビリテーション栄養管理:症例報告
 (若野知恵・鈴木達郎)
CASE No.44 人工膝関節全置換術後に発症した深部感染症に対するリハビリテーション栄養ケアプロセス:症例報告
 (野ア彰子・鈴木達郎)
CASE No.45 陳旧性脳梗塞による左片麻痺に左大腿切断を合併した患者に対するリハビリテーション栄養管理:症例報告
 (伊藤恵美子・吉村由梨)
CASE No.46 低栄養とサルコペニアを合併した廃用症候群患者に対する通所でのリハビリテーション栄養アプローチ:症例報告
 (山本知子)
CASE No.47 胸部大動脈瘤術後ステントグラフト感染による食道縦隔瘻患者のリハビリテーション栄養管理:症例報告
 (辻 祐子・吉村由梨)
CASE No.48 サルコペニアと多発褥瘡を有する慢性閉塞性肺疾患症例に対するリハビリテーション栄養管理:症例報告
 (桂 真理・塩濱奈保子・鈴木達郎)
座談会:症例報告執筆のすすめ―症例報告の執筆・査読・サポートから学んだこと
 (若林秀隆・西岡心大・小蔵要司・吉村由梨・鈴木達郎)

 疾患別index
  脳卒中・神経筋疾患
   リハビリテーション栄養介入により骨格筋量と日常生活活動が改善した重症頭部外傷患者
   リハビリテーション栄養サポートにより3カ月で10kgの体重増加と身体機能改善を認めたパーキンソン病患者
   るい痩をともなう脳出血および糖尿病の高齢患者に対するリハビリテーション栄養ケアプロセス
   サルコペニアを認める血管性認知症に対する長期リハビリテーション栄養管理
   慢性膵炎を併発した脳梗塞患者の回復期リハビリテーション病棟におけるリハビリテーション栄養管理
   長期リハビリテーション栄養アプローチを行い体重減量とADL改善を認めた脳梗塞後片麻痺入居者
   糖尿病と低栄養を合併した脳梗塞患者へのリハビリテーション栄養チームアプローチ
  運動器疾患
   慢性閉塞性肺疾患を有する肺癌術後の大腿骨近位部骨折患者に対するリハビリテーション栄養ケアプロセス
   大腸癌術後に大腿骨頸部骨折を受傷した超高齢低栄養患者へのリハビリテーション栄養アプローチ
   運動完全麻痺の頸髄損傷患者に対するリハビリテーション栄養ケアプロセス
   サルコペニアと低栄養を合併した大腿骨転子部骨折に対する介護老人保健施設でのリハビリテーション栄養ケアプロセス
   人工膝関節全置換術後に発症した深部感染症に対するリハビリテーション栄養ケアプロセス
   陳旧性脳梗塞による左片麻痺に左大腿切断を合併した患者に対するリハビリテーション栄養管理
  呼吸器疾患
   リハビリテーション栄養管理により炎症反応高値でも機能改善したサルコペニアを有する慢性閉塞性肺疾患患者
   急性間質性肺炎をきたした骨髄異形成症候群(5q-症候群)に対するリハビリテーション栄養ケアプロセス
   急性呼吸窮迫症候群を発症した血液維持透析症例に対するリハビリテーション栄養管理
   サルコペニアと多発褥瘡を有する慢性閉塞性肺疾患症例に対するリハビリテーション栄養管理
  循環器疾患
   感染性心内膜炎術後にサルコペニア・悪液質を認めた心不全患者に対するリハビリテーション栄養ケアプロセス
   慢性心不全増悪期にサルコペニアを呈した入院高齢患者に対するリハビリテーション栄養アプローチ
   腰椎圧迫骨折と心臓悪液質の長期ケア入所高齢者に対するリハビリテーション栄養管理
  がん
   集中治療後症候群を認めた有毛細胞白血病患者に対するリハビリテーション栄養管理
   中枢神経系原発悪性リンパ腫患者に対するリハビリテーション栄養ケアプロセス
  その他
   低栄養とサルコペニアを合併した廃用症候群患者に対する通所でのリハビリテーション栄養アプローチ
   胸部大動脈瘤術後ステントグラフト感染による食道縦隔瘻患者のリハビリテーション栄養管理