やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文
 糖尿病の日常診療や療養指導にあたって,患者にとって身近な食事療法に関する疑問や質問に根拠をもって簡潔に答える,というコンセプトで,W栄養指導・管理のためのスキルアップシリーズvol.1W として,「糖尿病の最新食事療法のなぜに答える 基礎編」を2014 年4 月刊行した.そしてこのたび,Wvol.1W を再整理・再編成し,全面的にアップデートした改訂新版Wvol.7W の刊行に至った.
 Wvol.1W は3年半にわたり,糖尿病の日常診療や療養指導に携わる医療関係者より,「エビデンスがどう実践につながるのかわかった」「個々の患者に応じた説明が,根拠をもってできるようになった」と幅広く支持されてきた.再整理・再編成にあたっては,2017 年に日本糖尿病学会から公表された「高齢者糖尿病診療ガイドライン」やカーボカウントの指導用テキストなど,ダイナミックに変化しつつある糖尿病を取り巻く状況を捉え,かつ,多様な選択肢が求められる食事療法に対応した.さらに新たなテーマに,時間栄養学,持続血糖モニター(CGM),腸内細菌,認知症などを盛り込み,いっそうの内容の充実を図った.また,全面的なアップデートにより,高齢化をベースとした,メタボ対策とフレイル対策,エネルギー過剰摂取の予防と低栄養の予防,他疾患の治療と糖尿病の食事療法など,一見相反する問題を浮き彫りにし,諸刃の剣がごとき事態への対応を本書に課した.
 2017年9月,内閣府は「人生100年時代構想」への政策の検討に入った.そこでは,日本の活力ある維持・発展のためには,人生100 年のなかで人々が意欲をもって挑戦し,活躍できる社会をつくっていかなければならない,という方向性を示した.100 年という長い人生に,食と栄養による健康への寄与は大いに期待されるものとなろう.
 現時点の食事療法のエビデンスを集約した本書の刊行は,人生100 年時代の栄養指導・管理を見据えた,日常診療や療養指導に役立つものと確信している.
 幸いにも,糖尿病診療の第一線の医師,各領域で高い専門性をもつ療養指導士の諸先生により,ご多忙ななかでの執筆が叶い,本書の刊行に至った.ここに改めて,深甚の謝意を表する次第である.
 最後に,刊行まで多くの協力をいただいた医歯薬出版編集部の各位に心より御礼申し上げたい.
 2017 年 秋の訪れを感じながら
 編者を代表して 本田佳子
 序文
知っておきたい糖尿病情報
 Q-1 糖尿病患者数が頭打ちになっているというのは本当ですか?(石澤正博,曽根博仁)
 Q-2 糖尿病の診断は何を目的として,どのような基準で行うのでしょうか?(岩永みどり,曽根博仁)
 Q-3 血糖コントロールにより,境界型からの糖尿病発症や,糖尿病からの併症発症をどのくらい予防できるのでしょうか?(鈴木裕美,曽根博仁)
 Q-4 新しく「高齢者糖尿病診療ガイドライン2017」が公表されました.それはどのようなものでしょうか?(荒木 厚)
 Q-5 成人の1 型糖尿病と2 型糖尿病の食事療法にはどのような違いがあるのでしょうか?(金子正儀,曽根博仁)
 Q-6 時間栄養学を糖尿病の食事療法に取り入れることはできますか?体内時計や摂食時刻を考慮した効果的な食事療法のポイントを教えてください.(柴田重信)
 Q-7 持続血糖モニター(CGM)を用いると,食事と血糖の関係についてどのようなことがわかりますか? また,血糖変動を抑える食事療法のポイントについて教えてください.(西村理明)
 Q-8 腸内細菌と糖代謝にはどのような関係があるのでしょうか? また,糖代謝を改善する食事療法のポイントについて教えてください.(金澤昭雄)
食事療法の基本
 Q-9 糖尿病の食事療法はエネルギー摂取量の適正化が基本ですが,患者ごとの適正エネルギー量をどのように設定するのでしょうか?(八幡和明)
 Q-10 食事療法の基本であるエネルギー摂取量の適正化が図れれば,食事療法は完結でしょうか?(八幡和明)
 Q-11 「糖尿病食事療法のための食品交換表 第7 版」では,炭水化物エネルギー比率によりいくつかの単位配分が示されましたが,それはどのようなものですか?(本田佳子)
 Q-12 新しくカーボカウントの指導用テキストが公表されました.それはどのようなものでしょうか?(西川直子,川村智行)
 Q-13 カーボカウント導入の実際やポイントについて教えてください.(西川直子,川村智行)
 Q-14 グリセミックインデックス(GI)とグリセミックロード(GL)の考え方について教えてください.なぜ,その活用がすすめられるのでしょうか?(本田佳子)
 Q-15 たんぱく質の割合と質について教えてください.また,割合と質はなぜ重要なのでしょうか?(北田宗弘,古家大祐)
 Q-16 脂質の割合と質について教えてください.また,割合と質はなぜ重要なのでしょうか?(安田大二郎,森 保道)
 Q-17 エネルギーや三大栄養素以外で,考慮すべき栄養素はどのようなものですか?(細川雅也,田中 仁,津田謹輔)
 Q-18 なぜ,食物繊維の重要性が注目されているのでしょうか? 毎日,無理なく上手に摂取できる方法を教えてください.(佐野喜子)
腎症への対応
 Q-19 糖尿病性腎症の進行度はどのように判定するのでしょうか?(森 克仁,絵本正憲)
 Q-20 重症度別に食事療法はどのように変わるのでしょうか? 糖尿病食から糖尿病性腎症食への切り替えは本当に必要ですか?(安孫子亜津子,羽田勝計)
 Q-21 糖尿病性腎症は治ることはあるのでしょうか? 患者にどのように説明すればよいでしょうか?(安孫子亜津子,羽田勝計)
 Q-22 維持透析の糖尿病患者では,食事療法はどのような点に注意すればよいでしょうか? また,血糖変動にはどのように対応すればよいでしょうか?(山下滋雄)
その他の合併症への対応
 Q-23 肥満・メタボをともなう糖尿病では,何を食事療法の評価指標とし,どのような指導・管理をすればよいでしょうか?(松下真弥,植木浩二郎)
 Q-24 脂質異常症をともなう糖尿病では,何を食事療法の評価指標とし,どのような指導・管理をすればよいでしょうか?(安田大二郎,森 保道)
 Q-25 高血圧をともなう糖尿病では,何を食事療法の評価指標とし,どのような指導・管理をすればよいでしょうか?(星出 聡)
 Q-26 肝疾患をともなう糖尿病では,何を食事療法の評価指標とし,どのような指導・管理をすればよいでしょうか?(村山賢一郎,江口有一郎)
 Q-27 妊娠糖尿病や糖尿病合併妊娠では,何を食事療法の評価指標とし,どのような指導・管理をすればよいでしょうか?(谷内洋子,曽根博仁)
 Q-28 認知症をともなう糖尿病では,何を食事療法の評価指標とし,どのような指導・管理をすればよいのでしょうか?(荒木 厚)
 Q-29 精神障害をともなう糖尿病では,何を食事療法の評価指標とし,どのような指導・管理をすればよいでしょうか?(三島修一)
 Q-30 がんをともなう糖尿病では,何を食事療法の評価指標とし,どのような指導・管理をすればよいでしょうか?(大橋 健)

 索引