やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文
 平成18年の診療報酬改定で入院時栄養管理加算が算定されたことに後押しされ,栄養ケアが広く一般に知られるようになりました.平成22年には,栄養サポートチーム(NST)による栄養ケアに加算が認められ,疾病治療に対する栄養ケアの役割にますます期待が高まっています.とくに管理栄養士は中心的に栄養ケアを推進していかなければなりませんが,現段階では形は整ってきたものの管理栄養士の定数などの問題もあり,必ずしも十分に周囲の期待に応えられているという状況にはないように思います.この状況を打破するためには,管理栄養士自身が多忙な日々の中でも患者さんと向き合い,栄養ケアの実践を重ねて自信と信頼を得るしかありません.
 栄養ケアの実践力を効果的に高めるには何が必要かということを考え企画したのが,栄養ケアマネジメントファーストトレーニングシリーズ(NCMシリーズ)です.平成23年12月に「1.代謝・内分泌疾患」が発刊されたのに続いて,今回は循環器疾患と腎疾患を取り上げました.
 循環器疾患の治療は薬剤や冠動脈形成術などが優先され,栄養食事療法が軽視された時期もありましたが,予後の見地から再びその重要性が認識されつつあります.一方,腎疾患に関する栄養ケアの重要性は糖尿病の栄養ケアに並ぶものであり,管理栄養士の治療への関わりがもっとも求められている分野でもあります.
 おりしも平成24年4月の診療報酬改定では,糖尿病透析予防指導に対しチームでの取り組みが評価されることになりました.これまでのチームでの取り組みが評価されたと同時に,今後の管理栄養士の力量を試され,チーム医療における管理栄養士の将来を占う重要な加算といっても過言ではありません.このような時期に本書が刊行されたことは,誠に意義深く,責任を感じております.
 本書は,臨床で各疾患の栄養ケアを十分に積まれた経験豊富な管理栄養士の先生方にご執筆いただいております.形式が統一されているため記載内容が酷似しているところもありますが,各疾患の栄養ケアの独自性を示せる内容とし,実際に携わった事例の栄養ケアの思考プロセスを明示してありますので,実践のトレーニングには最適であると確信しております.
 最後になりましたが,編集・企画から刊行まで多くのご助言をいただいた医歯薬出版編集部の皆様に心より感謝申し上げます.
 平成24年3月
 編者を代表して 河原和枝

企画の序
 疾患ごとに治療が異なるように,治療の一つとして位置する栄養ケアも,また異なります.そして,同一の疾患であっても病態や病期,合併症,重複する疾患や,対象となる患者の栄養状態や身体状況,社会経済などの生活環境に対応し,栄養ケアは行われます.
 このような様々な患者への栄養ケアの実践にあたり,症例経験の少ない管理栄養士は,「必要な情報を得るためにカルテから何を読むのか」「栄養評価の手順はどのように進めるのか」「各疾患に特化した治療目標をどのように設定するのか」「栄養ケアのアウトカムは何をめざすのか,さらには「アウトカムをモニタリングするための留意点」などについて戸惑い,かつ困惑します.
 今回の「栄養ケアマネジメントファーストトレーニングシリーズ」は,様々な患者への栄養ケアの第一歩を踏み出すための実践力を養うべく企画されたシリーズです.
 「1.代謝・内分泌疾患」から始まり,今回の「2.循環器・腎疾患」,そして「3.摂食・嚥下障害,褥瘡,その他」「4.消化管・消化器疾患」と続く全4冊で構成されます.栄養ケアが求められ,また期待されている多くの疾患を網羅し,各疾患の治療についての基礎知識,栄養管理上の問題,そして栄養ケアマネジメントの実際について解説しています.
 さらに,各疾患のケースレポートでは,[STEP1]栄養アセスメント,[STEP2]栄養診断,[STEP3]栄養ケア計画と実践,[STEP4]栄養ケアの評価,をフローチャートで示し,疾患への栄養ケアの特性をクローズアップさせ,栄養ケアマネジメントへの思考プロセスのトレーニングとなることを狙いました.
 本書を読み進むと,症例への栄養ケアマネジメントのイメージトレーニングから始まり,緊急性や重要性の優先順位,薬物・運動療法,あるいは外科・化学療法など,集学的治療へとセカンドトレーニングに助走していることに気づかれることでしょう.
 平成24年3月
 シリーズの編者を代表して 本田佳子
1 虚血性心疾患の栄養ケアマネジメント(河原和枝)
 カルテを読む
 栄養評価
 治療目標の設定
 治療アウトカムの設定
 モニタリング
 栄養ケアマネジメントの実際
  Case Report 症例1 急性心筋梗塞
  Case Report 症例2 不安定狭心症
2 うっ血性心不全の栄養ケアマネジメント(中川明彦・河原和枝)
 カルテを読む
 栄養評価
 治療目標・治療アウトカムの設定
 モニタリング
 栄養ケアマネジメントの実際
  Case Report 症例3 肥満・高血圧をともなう慢性心不全
3 高血圧の栄養ケアマネジメント(山本卓也)
 カルテを読む
 栄養評価
 治療目標の設定
 治療アウトカムの設定
 モニタリング
 栄養ケアマネジメントの実際
  Case Report 症例4 合併症をもつ高齢者の高血圧
4 妊娠高血圧症候群の栄養ケアマネジメント(今 寿賀子)
 カルテを読む
 栄養評価
 治療目標の設定
 治療アウトカムの設定
 モニタリング
 栄養ケアマネジメントの実際
  Case Report 症例5 妊娠高血圧症候群
5 脳卒中の栄養ケアマネジメント(土井悦子)
 カルテを読む
 栄養評価
 治療目標の設定
 治療アウトカムの設定
 モニタリング
 栄養ケアマネジメントの実際
  Case Report 症例6 脳出血
  Case Report 症例7 脳梗塞
6 慢性糸球体腎炎の栄養ケアマネジメント(田村智子)
 カルテを読む
 栄養評価
 治療目標の設定
 治療アウトカムの設定
 モニタリング
 栄養ケアマネジメントの実際
  Case Report 症例8 慢性糸球体腎炎
7 ネフローゼ症候群の栄養ケアマネジメント(広畑順子)
 カルテを読む
 栄養評価
 治療目標の設定
 治療アウトカムの設定
 モニタリング
 栄養ケアマネジメントの実際
  Case Report 症例9 ネフローゼ症候群
8 末期腎不全の栄養ケアマネジメント(市川和子)
 カルテを読む
 栄養評価
 治療目標の設定
 治療アウトカムの設定
 モニタリング
 栄養ケアマネジメントの実際
  Case Report 症例10 腎不全保存期(多発性嚢胞腎)(三輪 恵)
  Case Report 症例11 血液透析期(CKDステージ5D)(武政睦子)
  Case Report 症例12 腹膜透析期(市川和子)
9 膠原病の栄養ケアマネジメント(藤竹樹美)
 カルテを読む
 栄養評価
 治療目標・治療アウトカムの設定
 栄養ケアマネジメントの実際
  Case Report 症例13 Amyopathic DM(筋症状を欠く皮膚筋炎)