やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
JCNセレクト「ワンステップアップ栄養アセスメント」の発刊にあたって
 なにゆえに栄養アセスメントという行為が生まれ,どのような成長を遂げてきたのだろうか.栄養アセスメントという概念が誕生したのは,臨床栄養の一方の雄であるハーバード・グループのパイオニアのひとりGeorge Blackburn氏が,渾身の力を込めて世に問うた1970年代であったと理解している.
 彼とそのグループの熱い想いは,その後太平洋を渡り,わが国の臨床栄養開闢の時期とピタリと時期を一致させ,彼らの想いはわが国のすべての臨床栄養関連の学会に脈々と受け継がれ,まさに今を迎えている.
 さてこの栄養アセスメントという行為,その結果が医療の質を向上させうる潜在能力を秘めている以上,間違いなく医療行為の一環を担っているに違いない.いい換えれば,われわれは栄養アセスメントの医療のアウトカム予想指標としての意義を忘れてはならない.
 疾患の早期発見,早期治療の一大ドクトリン(原理)は,同じく医療である栄養療法にも通じるに違いない.このドクトリンのなかでもとくに,早期発見こそが早期治療の出発点であり,さまざまな症状で現れてくる過栄養をも含めた『低栄養症候群』を,いかに早く発見し栄養診断できるかに,医療の質の高低はかかっている気がしてならない.
 もし栄養診断の重要性が正しいとするならば,明らかな症状をもたらす前に,近未来に低栄養症候群を発症するAt risk症例をいかに正確に予測できるかが,栄養療法の質を左右するにちがいない.がんや生活習慣病に“検診”があるのと同様に,低栄養症候群にも検診があってよい.すなわち,入院してくる,あるいは施設に入所する人たちを含め,世界のすべての人々は栄養検診を必要としている.栄養検診,栄養診断が世界の医療の質の舵を大きく切って,未来という海図を書き換えるに違いない.
 本書『ワンステップアップ栄養アセスメント応用編』では,栄養アセスメントを一歩掘り下げて,疾患別・ライフステージ別の栄養アセスメントのポイントを的確に解説していただいた.
 ここまでに内容を高めてくださったすべての執筆者の方々に厚くお礼申し上げます.
 2010年8月 猛暑の甲子園にて
 雨海照祥
 まえがき(雨海照祥)
各論
疾患別栄養アセスメント
 がん(消化器を中心に)(井上善文)
 がん(外来化学療法)(田井真弓・江尻 豊)
 重症病態(ICU)(寺島秀夫)
 肝硬変(NASHを含む)(松浦文三・恩地森一)
 CKD(松永智仁)
  COLUMN 心血管疾患(CVD)と慢性腎臓病(CKD)(伊藤貞嘉)
 COPD(野村浩一郎)
 心不全(小児)(厚美直孝)
 心不全(成人)(外山昌弘・渡邉重行)
 炎症性腸疾患(佐々木雅也)
 短腸症候群(千葉正博・他)
 神経性食思不振症(青沼架佐賜)
 認知症患者の栄養障害とそのアセスメント(吉田貞夫)
 褥瘡(黒川一郎)
 肥満・メタボリックシンドローム(岩田加嘉子)
ライフステージ別栄養アセスメント
 新生児(板橋家頭夫)
 小児(山内 健)
 小児のアウトカム指標としての身長体重比(W/H)Zスコア―WHO基準(雨海照祥・他)
 妊産婦(上田康夫)
 高齢者(葛谷雅文)