やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文
 今回の臨床栄養臨時増刊号は,栄養指導をテーマに企画をさせていただいた.栄養指導全般を取り扱う特集は,2013年9月に発刊された「スキルアップ外来栄養食事指導」(臨時増刊号第123巻第4号)以来となる.この10余年の間には,栄養食事指導料の点数や指導時間の見直し,対象疾患の拡大,外来化学療法室や病棟への管理栄養士の配置,情報通信機器の活用など,栄養指導を取り巻く環境は大きく変化した.
 栄養指導のスキルは,多くの場合において,経験と学習を重ねることでスキルアップしていくものであるが,実際には経験が少ない若手管理栄養士や,栄養指導業務にブランクがある場合においても,すぐに栄養指導業務に従事する事態が発生し得る.特に若手管理栄養士などで臨床経験が少なく,各施設で十分に教育時間を設けることが困難な場合や,たとえベテランであっても,過去に得た知識と経験に頼る慣例的な指導となっている場合など,すべてに質の高い栄養指導を提供することが難しいのが現実である.
 栄養指導は,可能な限り管理栄養士の資質と能力を備えて臨むことが必要であるため,実践ですぐに役立ち,最新のガイドラインに沿った疾患別のテキストが求められる.本書は,臨床現場で働く管理栄養士が執筆の中心となり,自らが栄養指導の際に必要と考える知識や症例が盛り込まれた内容となっている.
 栄養指導は知識のみを得ているだけでは,実践に生かすことはできない.本書を用いた実践的な栄養指導のスキルアップと並行して,コミュニケーションスキルを習得することによって,よりプロフェッショナルの向上を目指していただければ幸いである.
 本書が,多くの臨床現場で活躍する管理栄養士に広く活用され,明日からの栄養指導業務の一助となることを願っています.
 最後に,ご多忙な時間を割いてご協力を賜りました執筆者の先生方に,心より感謝を申し上げます.
 2024年5月
 榎本真理(順天堂大学医学部附属順天堂医院栄養部)
 大木いづみ(慶應義塾大学病院食養管理室)
 序文(榎本真理・大木いづみ)
疾患・病態に応じた栄養指導のポイント
 1 糖尿病の栄養指導
  1 1型糖尿病の栄養指導(西村一弘)
  2 2型糖尿病の栄養指導(野井香梨)
  3 糖尿病性腎症の栄養指導(人見麻美子)
  4 糖代謝異常妊娠の栄養指導(澤田実佳)
  5 高齢者糖尿病の栄養指導(山本恭子)
  6 カーボカウント(CGMを含む)のポイント(橋徳江)
 2 慢性腎臓病の栄養指導
  1 CKDの栄養指導 保存期(1) 軽症(射場裕美子)
  2 CKDの栄養指導 保存期(2) 重症(五十嵐桂子)
  3 血液透析の栄養指導(北林 紘)
  4 腹膜透析の栄養指導(山尾尚子)
  5 腎移植後の栄養指導(吉田朋子)
 3 高度肥満症の栄養指導(宇夫方直子)
 4 高血圧症の栄養指導(増田圭子)
 5 心不全の栄養指導(島田晶子)
 6 肝膵疾患の栄養指導
  1 NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)の栄養指導(榎本真理)
  2 肝硬変の栄養指導(大木いづみ)
  3 膵炎の栄養指導(石井有理,清水京子)
 7 炎症性腸疾患の栄養指導(太田裕子)
 8 癌の栄養指導
  1 頭頸部癌の栄養指導(北久保佳織)
  2 食道癌の栄養指導(園井みか)
  3 胃癌の栄養指導(松岡美緒,飯島正平)
  4 大腸癌の栄養指導(斎野容子,古田桃子)
  5 肝・胆・膵癌の栄養指導(山梨紗緒里,稲野利美)
  6 癌薬物療法中の栄養指導(荒井文乃,菊池夏希,石橋裕子,前田恵理,大竹慶尭,辻村秀樹,鍋谷圭宏)
 9 摂食嚥下障害の栄養指導―自宅療養の場合(伊藤美穂子)
 10 高齢者低栄養の栄養指導(中原さおり)
 11 統合失調症の栄養指導(石岡拓得,加藤 望,葛西亜紀,吹田沙彩)
 12 うつ病の栄養指導(阿部裕二)
 13 摂食障害の栄養指導(荒木朋美)
 14 小児食物アレルギーの栄養指導(朴 善美)
 15 てんかん患者へのてんかん食療法の栄養指導(田中雄太郎)
栄養指導に関する最新TOPICS
 1 電話・オンライン栄養指導(大谷弥里)
 2 外国人患者に対する栄養指導(平中久美子)
 3 食事管理アプリの活用(関根里恵)
 4 ウエアラブル機器を活用した運動支援(勝俣良紀)
 5 在宅・施設での栄養指導につなげる栄養情報提供書記載のポイント(安齋ゆかり)
 6 プレハビリテーションと術前栄養介入(南村智史)
 7 スティグマの概念と栄養指導における注意点(茂山翔太,真壁 昇)
 8 緩和ケアと栄養サポート(森 茂雄)
 9 認知症を有する患者への栄養指導(佐藤三奈子)
 10 マインドフルイーティング(野崎剛弘)