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まえがき いまなぜ褥瘡ケアなのか

褥瘡ケアは第4ステージに突入した
 第1ステージは,褥瘡をつくることが看護の恥といわれ続けてきた今から15年前までである.褥瘡は予防できるといわれながらも,医師は褥瘡に興味がなく看護者の経験と勘に頼ってきた時代である.
 第2ステージは創傷治療の革命ともいわれた創の湿潤環境理論が日本に導入されたときである.乾燥から湿潤へ,消毒から洗浄へと180度異なるコンセプトで難治性の褥瘡がおもしろいほど治癒していった.そして治らない褥瘡から治せる褥瘡へと医師の関心も深まっていった.
 第3ステージは医師と看護師による褥瘡予防・管理技術の発展にある.リスクアセスメント,体圧分散方法,スキンケア,そして創部管理はEBM思考により大きな発展を遂げ,褥瘡発生は激減していった.しかしそれでも発生する褥瘡,そして難治になる褥瘡で悩み続けた医師と看護師は,栄養管理やリハビリテーション技術の必要性を強く認識するようになってきた.褥瘡はチーム医療に支えられ,このコラボレーションこそがまさに第4ステージだといえる.
栄養管理は褥瘡予防・管理を大きく支える
 折しも平成14年10月から診療報酬改定には褥瘡対策評価が組み込まれ,褥瘡管理は日本初の医療費減算対策の対象となった.さらに平成15年4月からは介護保険においても特定診療費として褥瘡対策指導管理が加算された.これら保険の改正が大きな引き金となり,褥瘡は今もっともホットな医療者の関心ごととなった.
 その内容には医師と看護師からなる褥瘡対策チームを立ち上げることが含まれている.しかし,筆者は褥瘡対策には医師と看護師だけでは不十分であり,栄養士の関与が必須であると考えている.それは過去に管理できなかった症例のほとんどは,栄養状態に問題があったことを医師と看護師は十分に経験してきたからである.
 確かに栄養管理はスキンケアや体圧分散管理と異なりダイレクトに創部に反映するものではない.しかし栄養士の介入を目の当たりにしたとき,医師と看護師は自分たちにはできないきめ細かな専門性を理解するとともに,1カ月後には驚くほど創が改善していることを実感する.
 栄養士の皆様にぜひ,医師,看護師とともに臨床にでて褥瘡を見ていただきたい.創部は必ず専門家としてのアイデンティティーを確認させてくれ,そして動機づけてくれる.
真田弘美
金沢大学医学部保健学科 成人・老人看護学
褥瘡治癒のメカニズム(カラーグラビア) 立花隆夫,宮地良樹
まえがき−いまなぜ褥瘡ケアなのか 真田弘美

褥瘡の基礎知識
 褥瘡発生の機序と合併症 立花隆夫,宮地良樹
 褥瘡の診断と創部のアセスメントの方法(DESIGN含む) 森口隆彦
 褥瘡発生の予測とリスクアセスメント 小玉光子

褥瘡ケアの実際
 褥瘡の予防・管理 真田弘美
 褥瘡の治療法 塚田邦夫
 褥瘡管理とスキンケア 徳永惠子
 褥瘡ケアに使用される器具・機材 大桑麻由美
 施設における褥瘡管理のポイント 美濃良夫
 褥瘡ケアにおける栄養療法 東口高志・他
 褥瘡ケアと栄養アセスメント 足立香代子
 褥瘡管理で栄養士はなにをすべきか 田村佳奈美
 褥瘡ケアにおける栄養サポートチーム 岡田晋吾,目黒英二,貝塚広史
 褥瘡管理と微量元素 湧上 聖
 在宅褥瘡管理とPEGの有効性 小川滋彦
 褥瘡管理と医療経済 岡本泰岳

事例編
 NST褥瘡チームの活動と栄養士の役割 西村恵美子・他
 後期高齢者における褥瘡管理 巴 美樹
 褥瘡チーム医療の取り組み−浜松労災病院の場合− 松浦明子
 当院のチームケアと栄養士の役割 武部久美子
 褥瘡に対する栄養介入 井塚ふみ子
 院内における褥瘡と栄養管理について 河合直子
 舟山病院におけるNST−褥瘡対策委員会と栄養士の役割− 三原法子,鬼満圭一