やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

編集後記

 今回の特集テーマは,これまでの臨時増刊号のように単一テーマではなく,『臨床栄養』がかかわる各領域から話題・キーワードを集めてみました.取り上げた内容は教育養成から分子栄養学まで広範多岐にわたりますが,もし10年後に取り上げた内容を読み返してみると,その時代には主流となっている考え方や治療法の萌芽がこの時代にあったのだということが,必ずあるのではないかと思います.
 発想を変えて,逆に10年前の小誌臨時増刊号で取り上げたテーマをみると,食行動の変化,現代調理学の最前線,行動療法的アプローチなどで,「臨床栄養学」のコアの部分が見あたりません.このことからも,栄養士・管理栄養士の置かれている環境と,『臨床栄養』に対して読者が求めるものが,当時といまとでは大きく変化してきていることが読みとれます.
 新カリキュラムに基づく管理栄養士養成がスタートし,病院の栄養部門で中心となって活躍されていた方が教員となって養成校に移るというケースを多数見聞きします.最近の栄養関係の学会でも討論されていましたが,教育は教育のみ,臨床は臨床のみと棲み分けるのではなく,医師教育のように,臨床-研究-教育のトライアングルが有機的に連携していけるかどうかが,今後の重要な課題ではないでしょうか.
◎教育・医療・資格制度
 新カリキュラムと栄養士養成の今後 田中平三
 栄養パスとDRG時代の栄養マネジメント 武藤正樹
 米国のマネジドケアからなにを学ぶか 西田在賢
 「病態栄養専門士」とその認定制度 渡辺明治・他
 NCMリーダー養成に向けて 杉山みち子
 栄養療法士(NST専門栄養士)制度とNSTプロジェクト 小野 香・他
 食品保健指導者アドバイザリースタッフ養成講習会 若狭千之
 「サプリメント・アドバイザー」制度 山崎大治・他
 A.S.P.E.N.の栄養士のための新教育コアカリキュラム 雨海照祥
 栄養版サイバーペーシェントの意義と可能性 雨海照祥
◎栄養調査・研究手法・診断基準
 EBNに対する誤解を解く 佐々木 敏
 新しい乳幼児身体発育調査結果と乳幼児栄養の現状 加藤則子
 新しい日本人の身体計測基準値“JARD2001”とその意義 三輪佳行・他
 新しい炎症性腸疾患の治療指針の概要-クローン病の栄養療法を中心に 守田則一
 消費エネルギーの新測定法-DLW法 井川正治・他
 新しいCOPDガイドラインと栄養療法-GOLDガイドライン 野村浩一郎
 栄養サポートのためのガイドライン 長谷部正晴
◎分子栄養学
 摂食行動と覚醒・睡眠を制御する物質オレキシン 桜井 武
 肥満とアディポサイエンス 山内敏正・他
 インスリン抵抗性への栄養学的戦略 吉田俊秀・他
 SNPsと生活習慣病-オーダーメイド疾病予防の可能性 吉川敏一・他
 情報伝達物質としての脂溶性ビタミンA/D 加藤茂明
◎栄養素材
 メディカルフード(Medical Food) 中村丁次
 PrebioticsとProbiotics 森下芳行
 大豆イソフラボンとその生理作用 石見佳子
◎臨床栄養学
 Immunonutrition 齋藤英昭
 n-3系多価不飽和脂肪酸と生活習慣病 磯 博康
 肝硬変とLES療法 石塚義之・他
 小腸の消化吸収能の修飾因子(腸上皮増殖因子) 千葉正博・他
 GI(Glycemic Index)と食事療法における有用性 中村丁次
◎その他
 環境汚染と食の安全 塚崎 匡・他
 国立スポーツ科学センターとスポーツ栄養の新しい取り組み 田口素子・他
 患者ケアにおけるITの利用 鈴木吉彦