やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

 現代医療においてもっとも重要なことは,EBM(evidence based medicine),すなわち根拠にもとづいた医療を実践するという点にある.
 医療の目的は,病める患者に対し,適切な治療を行って健康な状態に戻すことにある.この目的を達成するには,患者の病態を客観的,かつ正確に把握し,そのうえで最善の治療を施すことが大切である.治療には,薬物療法,栄養療法,手術療法など,多数のアプローチがある.そのそれぞれが,明確な根拠にもとづいて実行されなければ,治療効果が得られない.そればかりか,かえって治癒を遅らせたり,副作用を起こしたりしかねない.栄養指導についても,患者の病態を正確に把握したうえで指導を行うことが重要である.
 ところで,患者の病態を把握するのは,患者の自覚症状を聴取したり,身体所見を診察することでもある程度は可能である.しかし,客観的かつ正確で,しかも精密な判断ともなれば,臨床検査なくしては実行できない.それほど検査所見のもつ意義は大きい.
 本特集では,治療において栄養指導が重要な役割を果たす疾患を中心に,診断や病態の把握に重要な検査をまず解説した.そして,個々の症例を取り上げて,実際の栄養指導の現場における臨床検査の応用を提示することにした.栄養指導を行う際の参考にしていただけるものと確信する.
 2000年9月 東京医科歯科大学 奈良信雄
座談会 栄養指導に臨床検査をどう生かすか 358

疾患別 臨床検査と栄養指導

消化器疾患
胃切除後症候群  柏木秀幸 374
         柏木秀幸・柴田聡子 379
クローン病    栃原正博・須賀俊博 384
         山岸直子・後町有香 386
潰瘍性大腸炎   栃原正博・須賀俊博 391
         栃原正博・須賀俊博・三岩富美恵 393

肝・胆・膵疾患
肝硬変      三輪佳行・森脇久隆 397
         渡辺明治・沖田美佐子 402
脂肪肝      三輪佳行・森脇久隆 407
         三輪佳行・森脇久隆・森奥登志江 409
慢性膵炎     馬場忠雄・新谷 寛 413
         新谷 寛・馬場忠雄・福井富穂 420

心臓・循環器疾患
高血圧      栗山 哲 425
         栗山 哲・中村 康 428
うっ血性心不全  都島健介・都島基夫 432
         義井 譲・志波郁子 438
虚血性心疾患   都島健介・都島基夫 442
         都島健介・都島基夫・峯松正敏 444
脳血管障害    森脇 博・成冨博章   449
         森脇 博・成冨博章  ・馬場耕造 456

代謝障害
肥満症      深川光司・坂田利家 461
         坂田利家・石橋幸子 470
高脂血症     三國洋子・寺本民生 474
         寺本民生・丸山千寿子 480
糖尿病      菅原史明・清野 裕 485
  1型糖尿病(小児) 横田行史・松浦信夫・太田裕子 493
  1型糖尿病(成人) 丸山太郎・遠藤さゆり 499
  2型糖尿病  柏木厚典・岩川裕美 505
糖尿病性腎症   中尾俊之・岡田知也 509
         中尾俊之・金澤良枝 514
高尿酸血症    佐藤和人 520
         佐藤和人・加藤千晶 524

腎疾患
腎臓病      中尾俊之 530
慢性腎不全    守尾一昭・松崎健三・最上美女江・菅野丈夫 537
ネフローゼ症候群 出浦照國・樋口久美子 542
人工透析     佐々木環・柏原直樹・市川和子 549

血液疾患
鉄欠乏性貧血   奈良信雄 557
         奈良信雄・大野邦子 560