やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序にかえて
 月日の経つのは実に早いもので,2009年に「カラー版 診察基本手技マニュアル」を出版させていただいてから11年の歳月が流れました.その当時,順天堂大学医学部長として学内の新進気鋭の仲間たちにご執筆いただき,まとめさせていただきました.これまで多くの医学生が本書をBed Side Learning(BSL)の教本として活用し,診察の基本手技をマスターしていただきました.現在,医師として臨床の場で大活躍されている姿に接することができ,たいへん嬉しく思っています.
 初版の「はじめに」のなかに,「医学がどのように進歩し,検査がいかに便利になろうとも,臨床の第一歩は患者さんや家族との面談や診察であることに変わりはない」と記載しています.最近は,AI(人工知能)が問診や鑑別診断に活かされ始めています.さらに,患者さんの“心(悲しみ・苦悩)”をも理解しうるAIロボットも研究されていると聞いています.今後は,これまでの基本的診察手技にAIを取り入れて一層充実していくものと思われます.どのように展開されていくのか興味深いところです.
 さて,今回「診察基本手技マニュアル 第2版」を上梓することになりました.これまでの経緯から私が監修させていただき,順天堂大学医学部医学教育研究室 岡田隆夫先生のご指導を得て同研究室の3名の先生にご編集いただきました.各専門分野の先生に執筆をお願いいたしましたが,ご多忙にもかかわらずご協力いただき感謝しております.本書の特長は,初版を基本構成とし新規に整形外科的所見をSessionに加え,最近の疾患トピックス「メタボリックシンドローム」,「歯科疾患と全身への影響」,「認知症の診察」をコラムとして取り上げたことです.本書は,医学生のみならず看護学生,臨床研修医や看護師,また指導する教員にもご活用いただけると自負しています.しかし,内容の不備な点や過不足があろうかと思われますので,忌憚のないご意見をいただければ幸いです.
 末筆ながら,本書の刊行にご尽力いただきました医歯薬出版の白井聡一郎氏ならびに関係各位に厚く御礼申し上げます.
 2020年 夏 都庁舎を眺めつつ
 富野康日己
 序にかえて
 編者・執筆者一覧
Section1 医療面接と病歴
 医療面接をはじめるにあたって
 医療面接の実際
  医療面接の目的
  医療面接のステップ
 診療の記録(診療録),病歴の記載(入力)
  診療録の意義
  診療録の記載方法と手順
  診療録の実際
Section2 全身的所見
 準備と全身状態の把握
  医療安全
  身長・体重・栄養状態
  体位・姿勢
  皮膚・体毛
  体温
 各身体部位の観察
  頭部
  顔
  眼
  耳
  鼻・鼻腔
  口唇・口腔・咽頭
  頸部
  四肢
 Column 「メタボリックシンドローム」
 Column 「歯科疾患と全身への影響」
Section3 胸部所見
 胸部の視診(呼吸器・循環器系)
  体位・姿勢の観察
  呼吸状態の観察
  頸部の観察
  胸郭の観察
 肺の診察
  肺の触診
  肺の打診
  肺の聴診の基本
  呼吸音の聴取
  副雑音
 心臓の診察
  心臓の触診
  心臓の聴診の基本
  心臓の聴診で聞かれる音
 乳房の診察
  診察手技
  正常な乳房
  乳房診察の意義
  乳房の診察で鑑別すべき腫瘤を触れる疾患
 脈拍
  診察手技
 血圧
  定義
  血圧の測定法
  血圧測定の意義
 Column 「パルスオキシメータ」
 Column 「聴診器の膜型とベル型」
Section4 腹部所見
 腹部区分
 視診
  腹部膨隆の視診
  皮膚の視診
  腹壁静脈の拡張・怒張
  腸蠕動の異常
  腹部の拍動
 聴診
  聴取される音
 腹部打診
  肝濁音界
  鼓腸(消化管内にガス貯留の判断)
  腹水の診断
  叩打痛
 触診
  触診前の注意事項
  手技
  診るべき所見
 臓器別の触診方法
  肝臓
  胆嚢
  脾臓
  腎臓
  膵臓
  膀胱
  ヘルニア
  肛門
  鼠径部リンパ節
Section5 神経系所見
 精神状態
  意識
  思考・態度・認知など
  知能
 高次脳機能
  失語
  失行
  失認
 脳神経
  嗅神経
  視神経
  動眼神経・滑車神経・外転神経
  三叉神経
  顔面神経
  蝸牛神経・前庭神経
  舌咽神経・迷走神経
  副神経
  舌下神経
 運動機能
  起立・歩行
  筋萎縮
  筋力
  筋緊張
  運動失調
  不随意運動
 反射
  腱反射
  表在反射
  病的反射
 感覚
  表在感覚
  深部感覚
 髄膜刺激徴候
  項部硬直
  Kernig(ケルニッヒ)徴候
 自律神経系(ANS)
 Column 「認知症の診察」
Section6 整形外科的所見
 整形外科診察の準備
 脊柱(彎曲,疼痛)の診察
  頸椎
  胸腰椎
 四肢と関節(可動域,腫脹,疼痛,変形)の診察
  上肢の診察
  下肢の診察
 フレイル,サルコペニア,ロコモティブ・シンドローム
  概念
  診断法
Section7 小児の診察
 病歴聴取の注意点
  全身症状
  臓器症状
 身体所見の注意点
  胸部聴診の仕方と疾患
  腹部の見方
  口腔内と耳の見方と疾患
Section8 生殖器の診察
 女性性器の診察
  全身の診察
  一般婦人の診察法
  外陰部の診察
  腟鏡診
  内診(双手診)
  直腸診・腟直腸双手診
  経腟超音波検査
 妊婦の診察
  外診(Leopold触診法)
  内診(双手診)
 男性性器の診察
  前立腺・精嚢の診察
  陰茎の診察
  陰嚢および陰嚢内容の診察
  精索の診察
Section9 各種基本手技
 1.採血
  静脈採血
  中心静脈確保
  動脈採血
 2.気管挿管
 3.気管切開術
  外科的気管切開術
  経皮的気管切開術
 4.注射法
  共通の方法(準備と説明)
  皮内注射
  皮下注射
  筋肉注射
  静脈注射
 5.穿刺・ドレナージ法
  胸腔穿刺・ドレナージ
  心嚢(心膜腔)穿刺・ドレナージ
  腹腔穿刺・ドレナージ
  腰椎穿刺
  関節穿刺
 6.輸血・輸液
  輸血
  輸液
 7.胃洗浄
  胃管の挿入
  胃洗浄
 8.導尿─男性患者の導尿の方法─
  陰茎の把持の仕方(医師が右ききの場合)
  導尿の実際
  うまく導尿ができなかった場合の処置
Section10 基本手技BASIC
 1.手袋装着
 2.縫合
 3.器械縫合
 4.糸結び(結紮)
 5.包帯法・関節固定
 6.末梢静脈確保
 7.尿カテーテル(バルーン)挿入
 8.肛門診察
 9.心肺蘇生:CPR法
 10.心肺蘇生:AEDの使用

 付表 内科診断学チェック表
 索引