やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第2版の序
 本書「医学略語コンパクト」は,略語が正しく理解されなかったためにインシデントやアクシデントにつながった事例が少なくなかったことや,同じ略語であっても担当する分野によってはまったく異なった意味をもつことなどから略語の正しい理解を目指し上梓されました.初版の序には,「略語を医学系のあらゆる分野から抽出し,おのおの略語に対応する欧文とその日本語表記を記載することで,略語の意味するところを簡潔に引けるようにしたいと考えたからです.また,略語逆引き用の用語一覧を設け,逆引きを可能にした点も本書の特徴のひとつです」と述べました.
 本書は,これまで医療に携わる多くの医療関連職従事者や学生に広く活用されてきたばかりか,医療事故の捜査等にかかわっている刑事や弁護士の方々にも利用されていることを知り,監修者として大変嬉しく思っています.しかし,初版の発行からすでに12年が経過しました.この間の基礎・臨床医学の進歩は目覚ましく,iPS(induced pluripotent stem cell)やAI(artificial intelligence)の発見・発明に代表されるように大きな発展を遂げています.また,臨床工学や電子工学などの分野でも新たな略語が数多く登場してきています.そのような新しい略語を収載するとともに,初版の趣旨を活かしながら内容を再検討し,ここに第2版として刊行することになりました.
 本書(第2版)も医学関連分野の学生・研究者や医療スタッフの皆さんの勉学や日常診療・業務に生かしていただければ,望外の喜びです.しかし,まだまだ内容の不備な点や過不足もあろうかと思いますので,忌憚のないご意見をお寄せいただければ幸いです.
 最後に,初版の作成にご協力いただきました順天堂大学医学部腎臓内科学講座の仲間たちを中心とする編集委員会スタッフに,また第2版刊行にあたり,ご尽力いただきました遠山邦男氏をはじめとする医歯薬出版の関係各位に厚く御礼申し上げます.
 2018年 中秋 東京都庁を眺めつつ
 富野康日己



 最近,日常会話のなかでも自分勝手に作ったと思われる用語や略語が氾濫し,とまどうことが少なくありません.このことは医療の現場であっても例外ではなく,よくみられる現象といえます.近年,大きな社会問題となっている医療事故のなかに,あるいは大きな事故までにはいたらないまでも「ヒヤリ・ハット」事項のなかには,記載が不十分であったり,略語が正しく理解されなかったために起こった事例も少なくないと思われます.
 用語の正しい理解は,医学関係の学生のみならず,医師,歯科医師,看護師,薬剤師,臨床検査技師,放射線技師,臨床工学技士,介護福祉士など,医療に携わる多くの医療関連職従事者にとっても必須と思われます.また製薬会社の医療情報担当者(MR)にも資格試験が実施されており,医学用語や略語を学習する必要性に迫られています.
 そこで今回,私が浅学非才の身をかえりみず「医学略語コンパクト」を監修した意図は,略語を医学系のあらゆる分野から抽出し,おのおの略語に対応する欧文とその日本語表記を記載することで,略語の意味するところを簡潔に引けるようにしたいと考えたからです.また,略語逆引き用の用語一覧を設け,「逆引き」を可能にした点も本書の特徴のひとつです.さらに判型も類書に比べてコンパクトにすることで,いつも手元においてすぐに確認できるようにと考えました.編集方針は後述されていますのでご一読ください.
 本書を学生諸君や医療関連職従事者の皆さんの勉学や日常診療に生かしていただければ,監修者として望外の喜びです.しかし,まだまだ内容の不備な点や過不足があろうかと思われますので,忌憚のないご意見をお寄せいただければ幸いです.
 最後に,本書の編集に協力していただいた順天堂大学医学部腎臓内科学講座の仲間たちと医歯薬出版の関係各位に厚く御礼申し上げます.
 2006年 盛春 神田川のほとりにて
 富野康日己