やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文
 日本リウマチ財団では,財団設立当初からリウマチ財団の登録医を対象に,リウマチ教育研修会を行ってきましたが,リウマチ患者に対するトータルケアが極めて重要であると考え,日本リウマチ財団の登録医だけでなく,看護師,薬剤師,理学療法士,作業療法士を始めとするコメディカルを対象にした「リウマチの治療とケア研修会」を,平成12年より全国6地区で行ってきました,この研修会は極めて好評で毎年1,OOO人前後の参加者を得,最近では,日本リウマチ財団登録ケア看護師制度が発足したことも有り,参加者数の急激な増加をみています.この「リウマチの治療とケア研修会」は,日本リウマチ財団の「リウマチのケア研究委員会」が中心となって企画運営を行ってきましたがこの度「リウマチの治療とケア研修会」等のためのテキストを,日本リウマチ財団の企画の下に刊行することとなりました.当然のことながら,従来から「リウマチの治療とケア研修会」に講師として参加して来ていただいた先生方が執筆の中心となっておられます.書では,関節リウマチの症状,診断,治療リウマチ患者の看護.リウマチ患者に対する栄養指導,服薬指導,患者の転倒の予防,妊娠時の注意,患者への精神的なサポート等,その内容はきわめて広範囲なものになっています.
 以上のようなリウマチ患者へのケアに関する一連の説明に加えて,リウマチ患者を支援する様々な制度についても,その利用法を含めて詳しく記載されています.その意味で本書は正しくその題名である「関節リウマチのトータルマネジメント」を学ぶためのテキストブックであり,リウマチ患者のケアにあたる医療関係者,行政,患者団体の方々も含めた全てのリウマチの関係者に読んでいただくことを希望しています.
 2011年8月
 公益財団法人 日本リウマチ財団
 代表理事 久史麿

「関節リウマチのトータルマネジメント」発行にあたって
 関節リウマチのトータルマネジメントという言葉自体,昨今わが国では日常的に用いられるようになった.関節リウマチのトータルマネジメントは2つの側面から言及される.1つは関節リウマチの治療が単に薬物療法,リハビリ,手術といった治療手段だけではなく,ケア,さらには基礎療法ともいわれる教育や指導(単に患者だけではなく,医療を行う当事者に対しても)を含んだ多面的アプローチの大切さが一般によく理解されるようになった.
 さらにもう一面としては,これらマネジメントが医師だけで行われるものではなく,多職種の関節リウマチをよく理解している専門職との相互の協力によるチームアプローチ(multidisciplinary management)という側面もよく理解されるようになってきたことを意味する.
 1997年,松山赤十字病院リウマチセンターのリウマチ医およびリウマチセンターに所属する看護師,理学療法士,作業療法士を中心に,自分たちの行っている日常のリウマチ診療をわかりやすく紹介する「テキストRAのマネジメント」を上梓した.幸い好評で,改訂版を2001年に発行できた.今回内容のさらなる充実とレベルアップを試み,執筆陣はわが国でRAマネジメントに携わるトップレベルの医師,コメディカルにお願いした.表題も「関節リウマチのトータルマネジメント」と変え,日本リウマチ財団の監修のもと発行のはこびとなった,
 本書の企画編集は日本リウマチ財団リウマチのケア研究委員会およびRAトータルマネジメント研究会が担当した.本テキストは,関節リウマチ患者の診療に携わっているリウマチ財団登録医など実地医とコメディカルを主対象と考えて,その趣旨での執筆をお願いした.リウマチ医のみならず,これから関節リウマチを勉強しようと考えている医師,研修医,医学生,コメディカルの方々にも利用していただければ幸いである.
 本テキストの執筆陣の一新により関節リウマチのマネジメントの要点をさらに明確にし,レベルの高い内容になったと自負しているが,皆様方の御指導,御批判を仰ぐものである.
 2011年8月
 (公財)日本リウマチ財団リウマチのケア研究委員会委員長
 RAトータルマネジメント研究会代表
 山本純己
 序文(久史麿)
 「関節リウマチのトータルマネジメント」発行にあたって(山本純己)
I.総論
 1.わが国における関節リウマチマネジメントの歩み
  1.はじめに
  2.1950年代 リウマチマネジメントの黎明期
  3.1960年代 戦略なき治療の時代
  4.1970年代 国内・外研修と人工膝関節(TKA)の開発
  5.1980年代 リウマチセンター設立,チーム医療とトータルマネジメント
  6.1990年代 リウマチ科標榜,早期RAとMTX-パラダイムシフト
  7.2000年代 生物学的製剤の時代へ
  8.おわりに
 2.歴史,疫学
  1.歴史
  2.疫学
II.診断,症状
 1.関節リウマチの診断
  1.診断
  2.関節リウマチと鑑別すべき代表的疾患
  3.機能評価
 2.関節リウマチの血液検査
  1.関節リウマチの診断,経過観察,鑑別診断に必要な血液検査
  2.薬剤の副作用をチェックする血液検査
 3.画像診断
  1.生物学的製剤時代の画像診断
  2.画像診断の役割
  3.リウマチ診療で利用可能な画像診断法
  4.MRI法と超音波法の比較
  5.関節リウマチの早期診断のために新しい分類基準(2010ACR/EULAR)と画像診断
  6.各画像はどのような時に使うか
  7.早期リウマチ診断のために
  8.生物学的製剤使用時の各画像の使い方
  9.今後画像に求めるもの
 4.関節リウマチの臨床症状
  1.関節症状
  2.関節外症状
III.治療
 1.関節リウマチ治療の組み立て方
  1.治療目標と治療計画
  2.治療ガイドライン
  3.患者教育
  4.チーム医療
 2.関節リウマチの薬物療法
  1.はじめに
  2.関節リウマチの薬物治療指針
  3.非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
  4.糖質コルチコステロイド薬(ステロイド薬)
  5.疾患修飾(性)抗リウマチ薬(DMARDs)
  6.生物学的製剤
  7.薬物療法の実際
  8.おわりに
 3.手術
  1.総論:各種手術の有用性,適応,タイミング,評価
  2.各論:関節別手術法および術後リハプラン
 4.リハビリテーション
  (1)総論
   1.関節リウマチのリハビリテーション
   2.各病期におけるリハアプローチ
  (2)各論
   1.理学療法
   2.作業療法
IV.リウマチ診療とケアの実際
 1.リウマチクリニック,外来
  (1)リウマチ外来診療の要点とコツ
   1.リウマチの外来診療
   2.リウマチ外来診療のコツ
  (2)リウマチ診療外来看護師の役割
   1.リウマチ患者とのコミュニケーション
   2.リウマチ患者への教育と指導
   3.医師とクリニックスタッフのチーム医療
   4.生物学的製剤の投与の実際
 2.入院・看護
  (1)総論:医師,看護師他コメディカルとのケア
   1.関節リウマチのトータルマネジメント
   2.わが国でのリウマチ治療体系
   3.リウマチの入院看護
   4.リウマチのケアと看護の実際
   5.チーム医療と病診連携
  (2)各論
   1.入院患者に対する看護師の役割
   2.疾患活動性の高い患者に対する看護
   3.合併症治療を目的とした患者への看護
   4.手術目的の患者への看護
   5.リウマチ教育入院
V.リウマチ患者に対する指導,教育の実際
 1.栄養指導
  1.はじめに
  2.全身の栄養状態を改善する食事
  3.炎症を抑える作用のある食事
  4.合併症や薬の副作用に対応した食事
  5.リウマチと嗜好品
 2.抗リウマチ薬の服薬指導
  1.抗リウマチ薬の服薬指導
  2.抗リウマチ薬の服薬管理
  3.内服用抗リウマチ薬の副作用と用法
  4.生物学的製剤の服薬指導
 3.リウマチの骨粗霧症と転倒予防
  1.はじめに
  2.関節リウマチの骨折リスク
  3.関節リウマチの骨粗鬆症
  4.関節リウマチの転倒リスク
  5.関節リウマチの骨折防止
  6.おわりに
 4.リウマチ患者の妊娠・出産
  1.はじめに
  2.妊娠が関節リウマチに与える影響
  3.関節リウマチが妊娠経過や児にどう影響するか
  4.薬剤が妊娠経過や児に与える影響
  5.関節リウマチ患者の妊娠・出産・育児のためのプロセス
 5.精神的サポート
  1.関節リウマチと不安
  2.関節リウマチとうつ病
VI.支援,制度,福祉など
 1.リウマチ患者に対する診療体制づくり,地域連携と診療ネットワーク
  1.国のリウマチ施策
  2.医療連携の必要性
  3.地域連携の進め方
  4.まとめ
 2.災害時のリウマチ患者支援
  資料1 災害時リウマチ患者支援事業実施要綱
  資料2 災害時リウマチ患者支援事業協力医療機関台帳
 3.日本リウマチ財団登録リウマチケア看護師制度
  1.はじめに
  2.リウマチ性疾患とは
  3.リウマチ救急医療の出現
  4.リウマチ患者管理における医療連携の必要性
  5.リウマチトータルマネジメントの概念
  6.リウマチケアにおける看護職の役割
  7.日本リウマチ財団登録リウマチケア看護師の概略
  8.リウマチケア看護師制度の期待される効果と今後の展望
  9.おわりに
 4.リウマチ患者支援制度とその利用法
  1.はじめに
  2.医療制度
  3.福祉サービス制度
  4.暮らしを支える制度
  5.おわりに

 索引