はじめに
2004(平成16)年度から医師免許取得後,すべての医師に2年間の医師臨床研修を受けることが義務づけられ,保健所で地域保健領域の研修を受ける機会がある.この研修では,医師として必要な地域保健に対する基本的な考え方を身につけ,地域保健における医師の使命を認識することを目的としている.
医師臨床研修の地域保健領域で研修すべき内容は,主として次の3つの分野があると考えている.
I.生活習慣病予防,子育て支援などのヘルスプロモーション
II.感染症・食中毒対応などの健康危機管理
III.精神障害者社会復帰対策,介護保険などの保健・福祉サービスの総合理解
本書は,これらの3つの分野を軸として,序章と11の章から構成されている.それぞれの章では,保健所研修・実習で少なくともこれだけは学んでいただきたい重要な研修のポイントをまず最初に示し,本文ではこれらのポイントに沿って地域保健の基本的な考え方を中心に解説を進めた.また,著者自身の経験も踏まえて,具体的な事例を多く取り入れるようにし,読者の参考となる事項も加えて,公衆衛生活動の具体的実践に役立つよう心がけた.
本書は,医師臨床研修の地域保健領域の保健所研修テキストとして利用されるよう企画・執筆したが,医学生,保健師・看護師,理学療法士・作業療法士・言語聴覚士,管理栄養士,社会福祉士など,すべてのコメディカル専門職を目指す学生の保健所実習や日頃の地域保健学習でも活用できるよう編集されている.また,保健所や市町村保健センターなどの現場で働いておられる方々にも役立つよう具体的事例も多く取り入れている.本書をご活用いただき,読後のご意見・ご感想をいただけましたら幸いです.
本書を執筆するきっかけは,私が広島県の保健所に勤務していたときに,当時広島県福祉保健部長としてご指導いただいた中谷比呂樹先生から,平成16年に広島市内で,「いよいよ医師臨床研修が始まるが,保健所で学ぶべき地域保健研修の内容を明確にしてほしい」旨のことを私におっしゃったからである.本書を執筆するにあたり,ご助言いただきました保健所,広島県庁の方々に厚く御礼申し上げます.私を公衆衛生学の実践活動および教育・研究の道へ導いていただきました恩師・吉永文隆先生(広島大学名誉教授),坪田信孝先生(広島産業保健推進センター所長),土肥信之先生(兵庫医療大学リハビリテーション学部長)に深甚なる謝意を表します.
本書を作成するにあたり,平成17〜19年度科学研究費補助金基盤研究(C)課題番号17590457および広島県立保健福祉大学(平成16年度)・県立広島大学保健福祉学部(平成17〜20年度)から研究費の助成をいただきました.ここに深く感謝申し上げます.
また,医歯薬出版株式会社の斎藤和博氏には,本書の企画,編集から刊行に至るまで多くのご助言ご指導をいただきました.心より厚く御礼申し上げます.
平成20年8月
県立広島大学保健福祉学部教授
安武 繁
2004(平成16)年度から医師免許取得後,すべての医師に2年間の医師臨床研修を受けることが義務づけられ,保健所で地域保健領域の研修を受ける機会がある.この研修では,医師として必要な地域保健に対する基本的な考え方を身につけ,地域保健における医師の使命を認識することを目的としている.
医師臨床研修の地域保健領域で研修すべき内容は,主として次の3つの分野があると考えている.
I.生活習慣病予防,子育て支援などのヘルスプロモーション
II.感染症・食中毒対応などの健康危機管理
III.精神障害者社会復帰対策,介護保険などの保健・福祉サービスの総合理解
本書は,これらの3つの分野を軸として,序章と11の章から構成されている.それぞれの章では,保健所研修・実習で少なくともこれだけは学んでいただきたい重要な研修のポイントをまず最初に示し,本文ではこれらのポイントに沿って地域保健の基本的な考え方を中心に解説を進めた.また,著者自身の経験も踏まえて,具体的な事例を多く取り入れるようにし,読者の参考となる事項も加えて,公衆衛生活動の具体的実践に役立つよう心がけた.
本書は,医師臨床研修の地域保健領域の保健所研修テキストとして利用されるよう企画・執筆したが,医学生,保健師・看護師,理学療法士・作業療法士・言語聴覚士,管理栄養士,社会福祉士など,すべてのコメディカル専門職を目指す学生の保健所実習や日頃の地域保健学習でも活用できるよう編集されている.また,保健所や市町村保健センターなどの現場で働いておられる方々にも役立つよう具体的事例も多く取り入れている.本書をご活用いただき,読後のご意見・ご感想をいただけましたら幸いです.
本書を執筆するきっかけは,私が広島県の保健所に勤務していたときに,当時広島県福祉保健部長としてご指導いただいた中谷比呂樹先生から,平成16年に広島市内で,「いよいよ医師臨床研修が始まるが,保健所で学ぶべき地域保健研修の内容を明確にしてほしい」旨のことを私におっしゃったからである.本書を執筆するにあたり,ご助言いただきました保健所,広島県庁の方々に厚く御礼申し上げます.私を公衆衛生学の実践活動および教育・研究の道へ導いていただきました恩師・吉永文隆先生(広島大学名誉教授),坪田信孝先生(広島産業保健推進センター所長),土肥信之先生(兵庫医療大学リハビリテーション学部長)に深甚なる謝意を表します.
本書を作成するにあたり,平成17〜19年度科学研究費補助金基盤研究(C)課題番号17590457および広島県立保健福祉大学(平成16年度)・県立広島大学保健福祉学部(平成17〜20年度)から研究費の助成をいただきました.ここに深く感謝申し上げます.
また,医歯薬出版株式会社の斎藤和博氏には,本書の企画,編集から刊行に至るまで多くのご助言ご指導をいただきました.心より厚く御礼申し上げます.
平成20年8月
県立広島大学保健福祉学部教授
安武 繁
序章 地域保健の研修・実習について
1 地域保健の研修・実習の重点項目と保健所医師の役割
2 保健所には2つのタイプがある―「都道府県」と「市・特別区」
1.保健所の業務
2.「都道府県」型保健所と「市・特別区」型保健所の違い
参考 市町村合併の進展により,どのくらいの人口規模になれば保健所を設置すべきか,また設置する際の課題は何か
3 地域保健領域における医師臨床研修の意義
1章 地域保健サービスの体系を理解する
1 地域保健法で求められる保健所の機能
・保健所機能強化のための方策
1.保健所に求められる総合的企画・調整機能と「地域保健対策協議会」の活用
2.健康危機管理センターとしての位置づけ
参考 実地訓練を行う意義
2 地域保健サービス提供における市町村と都道府県の役割分担
母子保健事業における都道府県と市町村の役割分担の具体例
・市町村の機能強化と都道府県による支援の必要性
1.県による専門的指導
2.市町村合併による専門職種の共有化
・地域保健領域における都道府県の役割
1.今後の都道府県の担う役割
2.難病対策からみる専門的保健事業における県と市町村の役割分担
2章 「健やか親子21」を推進する
1 母子保健対策の最近の動向
1.少子化対策と子育て支援策
2.心の問題の重視
3.妊娠届および母子健康手帳の交付
4.乳幼児健康診査の充実
2 「健やか親子21」の4本柱と重要課題
1.思春期の保健対策の強化と健康教育の推進
2.妊娠・出産に関する安全性と快適さの確保と不妊への支援
3.小児保健医療水準を維持・向上させるための環境整備
4.子どもの心の安らかな発達の促進と育児不安の軽減
3 児童虐待防止の取り組み
1.一次予防:児童虐待の発生予防
2.二次予防:虐待予備群の早期発見・適切な対応
3.三次予防:虐待群の再発防止
・事例紹介 広島県東広島地域保健所管内における児童虐待防止のための医療機関と行政機関との連携システム
1.医療機関と地域保健との連携の必要性
2.育児支援連絡票による医療機関と行政機関との連携
3.医療機関相互(産婦人科,小児科,精神科)の連携
4.医療機関を中心とした子ども虐待対応のためのネットワークの構築
3章 精神障害者の社会復帰対策について理解する
1 精神障害者の社会復帰対策
1.行政機関の役割分担
参考 精神保健福祉業務の市町村への移譲と都道府県による支援の必要性
2.市町村が行う社会復帰対策の3本柱
3.精神保健福祉手帳の交付
4.地域精神保健福祉資源の活用
2 精神障害者の入院形態
1.診断を行う精神保健指定医の資格要件
2.「自傷他害の疑い」の通報と公権力行使による法的措置
3.精神保健福祉法第23条「いわゆる一般人からの通報」について
4.適正な入院医療の審査
3 わが国の精神医療・福祉の課題
1.法律による福祉制度の充実
2.わが国の精神医療・福祉の現状
3.今後の地域精神保健医療福祉施策の基本的考え方―社会的入院の解消のために
4章 学校保健の課題を理解する
1 学校保健の体系
1.学校保健の目的
2.学校保健活動の責任者
3.学校医の役割と学校保健委員会の活用
2 学校保健の重点課題例と学校医に求められる保健活動
地域保健の資源を活用した学校保健の取り組みの具体例
3 学校伝染病への対処
1.学校保健法に定める「学校伝染病」の取り扱い
2.学校における結核予防対策
4 学校伝染病の流行の際の学校現場での感染症に対する偏見の解消
1.1996(平成8)年に発生した学校給食を原因とするO157食中毒大流行時の学校保健の混乱
2.学校での二次感染予防
3.現在の学校伝染病第三種としての対応
4.偏見の解消
5章 メタボリックシンドローム予防
1 メタボリックシンドロームの健康教育の留意点(何を伝えるか?)
1.メタボリックシンドロームの診断基準
2.メタボリックシンドロームと血管障害
3.メタボリックシンドロームの予防医学上の意義を啓発すること
4.メタボリックシンドロームの概念を正しく理解してもらうこと
5.メタボリックシンドロームは生活習慣改善を主体とするが,個々の病態に応じた薬物治療も重要であることを啓発する
6.肥満の所見があってもメタボリックシンドロームとは診断されないハイリスクグループがあることを知っておくこと
7.メタボリックシンドロームを中心とした生活習慣病対策の推進(まとめ)
2 運動によるメタボリックシンドローム予防とメディカルチェック
1.中高年者が運動をする目的
2.運動の種類
3.運動負荷試験
運動負荷試験の実際
4.「生活のなかに運動を取り入れる」ことと安全なウォーキングのすすめ
3 運動をすすめる健康教育の実践例
4 高齢者の介護予防(地域支援事業)の取り組み
1.高齢者の寝たきりの原因
2.転倒防止のための身体活動
3.介護予防にかかわる地域支援事業
6章 産業保健の重要課題に取り組む
1 アスベストによる健康障害と地域保健医療における取り組み
1.アスベスト規制の経緯
2.アスベストによる健康障害について地域保健医療で健康管理を行う必要がある理由
3.アスベストによる健康障害の特徴的所見
4.アスベスト関連疾患
5.今後取り組むべき地域での健康管理体制および啓発
6.アスベスト健康被害救済制度
2 過重労働による健康障害防止対策
1.過重労働による健康障害
2.産業医による面接指導
3.長時間労働者に対する面接指導にかかわる医師(産業医)の職務
4.長時間労働者に対する面接指導の事後措置の実際(参考)
5.事業者の安全配慮義務
6.定期健康診断の結果通知と保健指導および事後措置
7.精神疾患による長期病気休暇・休職者の職場復帰
7章 災害医療体制,医療安全対策
1 医療従事者にかかわる法律
1.医療法
2.医師法
2 災害時における医師の役割
1.災害医療システム
2.災害拠点病院の役割
3 院内感染事案への対応の基本的考え方
1.院内微生物サーベイランスの意義
2.アウトブレイクの際の初動調査
3.院内感染事案への対応
4.職員の健康管理
4 安全な医療提供のための体制づくり
1.医療安全の確保
2.用語などの共通理解―医療事故と医療過誤
3.事故が起きる背景の分析の重要性
4.組織的な安全管理の必要性(システムアプローチ)
5.医療過誤の防止策
6.過重労働対策
5 ヒヤリ・ハット事例の収集・分析の意義,配慮すべき事項
1.ヒヤリ・ハット事例の収集・分析活動の意義
参考 過誤発生のスイスチーズモデル
2.ヒヤリ・ハット報告のシステムの導入
3.事故事象の把握・分析から改善策の立案に至る過程
6 ヒヤリ・ハット事例の分析方法
1.VTA法
2.M―SHEL法
参考 職員への周知と情報の共有
7 医療事故の分析例
参考 パイロットの危機管理術から学ぶ
8章 結核対策
1 わが国の現在の結核の公衆衛生学的課題
1.結核は超高齢者,抵抗力の弱っている患者,社会経済的弱者に多い
2.臨床現場で結核の存在を忘れないこと,見逃さないこと
3.30代までの若い集団では結核に対する自然免疫がほとんどない
4.確実な治療が最大の予防である
2 結核の診断と医師の届け出義務
1.結核の診断
参考 PCR法に関する留意点
2.改正感染症法に基づく結核対応
3 結核の治療で留意すべきポイント
1.標準治療の徹底
2.DOTS導入の意義
3.治療支援の必要性
4 結核患者の接触者健診(定期外検診)
1.実施する目的
2.健診の概要
3.結核患者の感染源としての評価および健診対象者の選定
4.結核患者に対する精神的サポートと人権配慮
参考 患者に対する説明内容
5.健診実施時期と内容
参考 新しい結核感染診断法
6.健診結果の評価および予防内服適応の決定の過程
7.予防内服者に対する保健指導
8.学校などでの結核接触者健診説明会で説明すべき内容
5 医療機関における従事者の結核予防対策
1.新規採用時における二段階ツ反
2.職員に対するBCG接種
3.定期健康診断の確実な実施と日頃の健康管理
4.職員の結核感染防止対策
9章 エイズ予防対策
1 検査をすすめるべき対象者
2 検査前カウンセリング
3 陰性告知カウンセリング
4 陽性告知カウンセリング
5 エイズ予防のための啓発活動
1.エイズ予防対策の意義
2.保健所における検査体制の充実
3.エイズ予防教育・普及啓発
4.エイズ治療に関する最新の情報源
10章 食中毒対応
1 食中毒様症状の連絡の初動対応
1.初動調査として,食中毒か感染症かの両面から調査を開始する
2.記述疫学の3要素に沿った健康調査とそれに基づく原因推定
3.二次感染予防のための手洗い励行の保健指導
4.学校における健康調査の難しさ
2 医師が食中毒を診断する際の参考事項
1.原因の可能性がある食品の供給を止めることが危機管理の第一歩
2.届け出は集団食中毒を探知する第一歩
3 集団食中毒の疫学調査とその判断
1.集団食中毒のとらえ方
2.集団食中毒の判断
参考 集団食中毒の判断の決め手
3.1人だけの診察で食中毒と診断できるか
4.営業禁止処分の意義
4 腸管出血性大腸菌O157感染症対策
1.死亡・重症例の発生および無症状病原体保有者の存在
2.緻密な食品衛生対策の必要性
3.二次感染の発生と手洗いの重要性
5 給食調理員を対象とした定期検便で病原大腸菌が陽性と判明した場合の対応
6 医師として特に注意を要する食中毒
1.ボツリヌス食中毒
2.溶血性連鎖球菌咽頭炎
3.有害化学物質
4.ふぐ中毒
5.食中毒死亡例が発生した場合の対応
7 高齢者介護施設などにおけるノロウイルス集団感染のまん延防止対策
1.高齢者介護施設でノロウイルス感染症が流行しやすい理由
2.ノロウイルス流行時における予防対策
・著者経験事例 腸管出血性大腸菌感染症O157の集団食中毒に対する対応
11章 感染症の危機管理(特にSARS,鳥インフルエンザ対策)
1 SARSの疫学(流行状況,症例定義,社会的影響)
1.SARSの流行状況
2.SARSの症例定義(WHOによる)
3.SARS流行による大きな社会的影響
2 SARSの感染経路および市中での感染予防対策
1.SARSの感染経路
2.感染予防対策
3 SARS診療が可能な医療機関の体制
1.電話での受診予約が必要
2.医療機関の体制整備
4 SARSのことで前もって電話連絡なしに医療機関を受診した場合の対応
1.病院での対応の要点
2.SARS拡大防止対策のまとめ
5 鳥インフルエンザ(H5N1)への対応
1.指定感染症としての取り扱い
2.県民への啓発
3.協力医療機関での対応
4.検体搬送と確定診断
5.入院勧告
6 SARS患者の接触者調査の方法,健康管理
1.患者および接触者からの情報収集方法
2.質問票の例示
3.接触者健康調査の実際(参考)
索引
1 地域保健の研修・実習の重点項目と保健所医師の役割
2 保健所には2つのタイプがある―「都道府県」と「市・特別区」
1.保健所の業務
2.「都道府県」型保健所と「市・特別区」型保健所の違い
参考 市町村合併の進展により,どのくらいの人口規模になれば保健所を設置すべきか,また設置する際の課題は何か
3 地域保健領域における医師臨床研修の意義
1章 地域保健サービスの体系を理解する
1 地域保健法で求められる保健所の機能
・保健所機能強化のための方策
1.保健所に求められる総合的企画・調整機能と「地域保健対策協議会」の活用
2.健康危機管理センターとしての位置づけ
参考 実地訓練を行う意義
2 地域保健サービス提供における市町村と都道府県の役割分担
母子保健事業における都道府県と市町村の役割分担の具体例
・市町村の機能強化と都道府県による支援の必要性
1.県による専門的指導
2.市町村合併による専門職種の共有化
・地域保健領域における都道府県の役割
1.今後の都道府県の担う役割
2.難病対策からみる専門的保健事業における県と市町村の役割分担
2章 「健やか親子21」を推進する
1 母子保健対策の最近の動向
1.少子化対策と子育て支援策
2.心の問題の重視
3.妊娠届および母子健康手帳の交付
4.乳幼児健康診査の充実
2 「健やか親子21」の4本柱と重要課題
1.思春期の保健対策の強化と健康教育の推進
2.妊娠・出産に関する安全性と快適さの確保と不妊への支援
3.小児保健医療水準を維持・向上させるための環境整備
4.子どもの心の安らかな発達の促進と育児不安の軽減
3 児童虐待防止の取り組み
1.一次予防:児童虐待の発生予防
2.二次予防:虐待予備群の早期発見・適切な対応
3.三次予防:虐待群の再発防止
・事例紹介 広島県東広島地域保健所管内における児童虐待防止のための医療機関と行政機関との連携システム
1.医療機関と地域保健との連携の必要性
2.育児支援連絡票による医療機関と行政機関との連携
3.医療機関相互(産婦人科,小児科,精神科)の連携
4.医療機関を中心とした子ども虐待対応のためのネットワークの構築
3章 精神障害者の社会復帰対策について理解する
1 精神障害者の社会復帰対策
1.行政機関の役割分担
参考 精神保健福祉業務の市町村への移譲と都道府県による支援の必要性
2.市町村が行う社会復帰対策の3本柱
3.精神保健福祉手帳の交付
4.地域精神保健福祉資源の活用
2 精神障害者の入院形態
1.診断を行う精神保健指定医の資格要件
2.「自傷他害の疑い」の通報と公権力行使による法的措置
3.精神保健福祉法第23条「いわゆる一般人からの通報」について
4.適正な入院医療の審査
3 わが国の精神医療・福祉の課題
1.法律による福祉制度の充実
2.わが国の精神医療・福祉の現状
3.今後の地域精神保健医療福祉施策の基本的考え方―社会的入院の解消のために
4章 学校保健の課題を理解する
1 学校保健の体系
1.学校保健の目的
2.学校保健活動の責任者
3.学校医の役割と学校保健委員会の活用
2 学校保健の重点課題例と学校医に求められる保健活動
地域保健の資源を活用した学校保健の取り組みの具体例
3 学校伝染病への対処
1.学校保健法に定める「学校伝染病」の取り扱い
2.学校における結核予防対策
4 学校伝染病の流行の際の学校現場での感染症に対する偏見の解消
1.1996(平成8)年に発生した学校給食を原因とするO157食中毒大流行時の学校保健の混乱
2.学校での二次感染予防
3.現在の学校伝染病第三種としての対応
4.偏見の解消
5章 メタボリックシンドローム予防
1 メタボリックシンドロームの健康教育の留意点(何を伝えるか?)
1.メタボリックシンドロームの診断基準
2.メタボリックシンドロームと血管障害
3.メタボリックシンドロームの予防医学上の意義を啓発すること
4.メタボリックシンドロームの概念を正しく理解してもらうこと
5.メタボリックシンドロームは生活習慣改善を主体とするが,個々の病態に応じた薬物治療も重要であることを啓発する
6.肥満の所見があってもメタボリックシンドロームとは診断されないハイリスクグループがあることを知っておくこと
7.メタボリックシンドロームを中心とした生活習慣病対策の推進(まとめ)
2 運動によるメタボリックシンドローム予防とメディカルチェック
1.中高年者が運動をする目的
2.運動の種類
3.運動負荷試験
運動負荷試験の実際
4.「生活のなかに運動を取り入れる」ことと安全なウォーキングのすすめ
3 運動をすすめる健康教育の実践例
4 高齢者の介護予防(地域支援事業)の取り組み
1.高齢者の寝たきりの原因
2.転倒防止のための身体活動
3.介護予防にかかわる地域支援事業
6章 産業保健の重要課題に取り組む
1 アスベストによる健康障害と地域保健医療における取り組み
1.アスベスト規制の経緯
2.アスベストによる健康障害について地域保健医療で健康管理を行う必要がある理由
3.アスベストによる健康障害の特徴的所見
4.アスベスト関連疾患
5.今後取り組むべき地域での健康管理体制および啓発
6.アスベスト健康被害救済制度
2 過重労働による健康障害防止対策
1.過重労働による健康障害
2.産業医による面接指導
3.長時間労働者に対する面接指導にかかわる医師(産業医)の職務
4.長時間労働者に対する面接指導の事後措置の実際(参考)
5.事業者の安全配慮義務
6.定期健康診断の結果通知と保健指導および事後措置
7.精神疾患による長期病気休暇・休職者の職場復帰
7章 災害医療体制,医療安全対策
1 医療従事者にかかわる法律
1.医療法
2.医師法
2 災害時における医師の役割
1.災害医療システム
2.災害拠点病院の役割
3 院内感染事案への対応の基本的考え方
1.院内微生物サーベイランスの意義
2.アウトブレイクの際の初動調査
3.院内感染事案への対応
4.職員の健康管理
4 安全な医療提供のための体制づくり
1.医療安全の確保
2.用語などの共通理解―医療事故と医療過誤
3.事故が起きる背景の分析の重要性
4.組織的な安全管理の必要性(システムアプローチ)
5.医療過誤の防止策
6.過重労働対策
5 ヒヤリ・ハット事例の収集・分析の意義,配慮すべき事項
1.ヒヤリ・ハット事例の収集・分析活動の意義
参考 過誤発生のスイスチーズモデル
2.ヒヤリ・ハット報告のシステムの導入
3.事故事象の把握・分析から改善策の立案に至る過程
6 ヒヤリ・ハット事例の分析方法
1.VTA法
2.M―SHEL法
参考 職員への周知と情報の共有
7 医療事故の分析例
参考 パイロットの危機管理術から学ぶ
8章 結核対策
1 わが国の現在の結核の公衆衛生学的課題
1.結核は超高齢者,抵抗力の弱っている患者,社会経済的弱者に多い
2.臨床現場で結核の存在を忘れないこと,見逃さないこと
3.30代までの若い集団では結核に対する自然免疫がほとんどない
4.確実な治療が最大の予防である
2 結核の診断と医師の届け出義務
1.結核の診断
参考 PCR法に関する留意点
2.改正感染症法に基づく結核対応
3 結核の治療で留意すべきポイント
1.標準治療の徹底
2.DOTS導入の意義
3.治療支援の必要性
4 結核患者の接触者健診(定期外検診)
1.実施する目的
2.健診の概要
3.結核患者の感染源としての評価および健診対象者の選定
4.結核患者に対する精神的サポートと人権配慮
参考 患者に対する説明内容
5.健診実施時期と内容
参考 新しい結核感染診断法
6.健診結果の評価および予防内服適応の決定の過程
7.予防内服者に対する保健指導
8.学校などでの結核接触者健診説明会で説明すべき内容
5 医療機関における従事者の結核予防対策
1.新規採用時における二段階ツ反
2.職員に対するBCG接種
3.定期健康診断の確実な実施と日頃の健康管理
4.職員の結核感染防止対策
9章 エイズ予防対策
1 検査をすすめるべき対象者
2 検査前カウンセリング
3 陰性告知カウンセリング
4 陽性告知カウンセリング
5 エイズ予防のための啓発活動
1.エイズ予防対策の意義
2.保健所における検査体制の充実
3.エイズ予防教育・普及啓発
4.エイズ治療に関する最新の情報源
10章 食中毒対応
1 食中毒様症状の連絡の初動対応
1.初動調査として,食中毒か感染症かの両面から調査を開始する
2.記述疫学の3要素に沿った健康調査とそれに基づく原因推定
3.二次感染予防のための手洗い励行の保健指導
4.学校における健康調査の難しさ
2 医師が食中毒を診断する際の参考事項
1.原因の可能性がある食品の供給を止めることが危機管理の第一歩
2.届け出は集団食中毒を探知する第一歩
3 集団食中毒の疫学調査とその判断
1.集団食中毒のとらえ方
2.集団食中毒の判断
参考 集団食中毒の判断の決め手
3.1人だけの診察で食中毒と診断できるか
4.営業禁止処分の意義
4 腸管出血性大腸菌O157感染症対策
1.死亡・重症例の発生および無症状病原体保有者の存在
2.緻密な食品衛生対策の必要性
3.二次感染の発生と手洗いの重要性
5 給食調理員を対象とした定期検便で病原大腸菌が陽性と判明した場合の対応
6 医師として特に注意を要する食中毒
1.ボツリヌス食中毒
2.溶血性連鎖球菌咽頭炎
3.有害化学物質
4.ふぐ中毒
5.食中毒死亡例が発生した場合の対応
7 高齢者介護施設などにおけるノロウイルス集団感染のまん延防止対策
1.高齢者介護施設でノロウイルス感染症が流行しやすい理由
2.ノロウイルス流行時における予防対策
・著者経験事例 腸管出血性大腸菌感染症O157の集団食中毒に対する対応
11章 感染症の危機管理(特にSARS,鳥インフルエンザ対策)
1 SARSの疫学(流行状況,症例定義,社会的影響)
1.SARSの流行状況
2.SARSの症例定義(WHOによる)
3.SARS流行による大きな社会的影響
2 SARSの感染経路および市中での感染予防対策
1.SARSの感染経路
2.感染予防対策
3 SARS診療が可能な医療機関の体制
1.電話での受診予約が必要
2.医療機関の体制整備
4 SARSのことで前もって電話連絡なしに医療機関を受診した場合の対応
1.病院での対応の要点
2.SARS拡大防止対策のまとめ
5 鳥インフルエンザ(H5N1)への対応
1.指定感染症としての取り扱い
2.県民への啓発
3.協力医療機関での対応
4.検体搬送と確定診断
5.入院勧告
6 SARS患者の接触者調査の方法,健康管理
1.患者および接触者からの情報収集方法
2.質問票の例示
3.接触者健康調査の実際(参考)
索引








