やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

改訂版の序

 本書の姉妹書である「この薬の多剤併用副作用」とともに,上梓以来本書は大変なご好評をいただき,お陰様で数回増刷することができた.
 しかし出版以来,すでに6年の歳月を経たため,掲載した薬剤のなかには重大な副作用や薬効再評価など何らかの理由で,すでに発売中止になっていたり,また一方では多数の新薬が登場しているにもかかわらず,これらについては全く記載がないという憂うべく事態になっている.
 このような現実を反省し,削除すべきは削除し,収載すべきを収載し,また訂正すべきは訂正することを作業目標に,ここに全面改訂版を出版することとした.編集の際に心がけたのは,従来にも増して見やすく,また理解しやすくすることであったが,この点は十分達成できたと考えている.
 さらに重視したことは,内容をより学問的に信頼性の高いものにする,ということである.この目的を達成し,正確を期すために,本書に掲載した当該の薬剤を製造・販売している製薬会社の学術部に依頼して,すべての原稿に目を通していただいた.それを踏まえ編集者の責任において,少なからぬ箇所を訂正あるいは加筆し,また削除したが,この作業によって,より信頼に足る書が出来上がったと自負している.労をいとわずご協力をいただいた各製薬会社の担当者各位に,この場を借りて厚く御礼申し上げる.
 編集中に新たに出現した副作用を有する何種類かの薬剤があったが,出版の段階で脱稿が間に合わなかった項目を含め,願わくは次回の増補改訂版を出版する際に収載することにしたい.
 本書が医師,薬剤師の方々のみならず,看護婦,臨床検査技師,栄養士などのコメディカルの方々,あるいは医学生,薬学生の諸君の記憶しておくべき薬の副作用のバイブルとしてお役に立つことを願っている.
 2000年6月 編者記す



 最近製薬会社の医薬情報担当者(medical representative,MR)の院内での行動が何やら活発である.時あたかも製造物責任法(PL法)の実施時期と一致しており,恐らくは,と推察していたとおり「医薬品使用上の注意改訂のお知らせ」のリーフレットを持参しての右往左往である.
 「医薬品の適正使用に欠かせない情報です.必ずお読み下さい.」と記されたリーフレットは,今までになくやたらとアンダーラインが目立つ注意事項に満ちあふれてはいるが,では一体今まで我々が受けていた副作用情報は何であったのかと首を傾げたくなるほどである.
 さらに気になるのは,アンダーラインを付された副作用や注意事項を字義通りに受け取ると,どの薬であれまず患者には使用できなくなることに気付くはずである.まあ,これは過剰反応ではあるが,向後はこれまで以上に十分に注意した上で,主作用と副作用とを勘案しつつ投薬することを促しているのであろう.
 ここで求められるのが,使用する薬物に精通することである.たくさんのリーフレットが出回っているのでこれにしっかりと目を通しておくことがまず肝要であろう.しかし,語弊があるが,どちらかというと責任逃れ的なリーフレットだけを参考にしていると,時には投薬できなくなることも確かである.このような場合,より科学的な根拠に基づき,また客観的な立場から見た薬物の情報が得られたらどんなに心強いか,との考えから纏めたのが本書である.
 編集に当たっては,姉妹書『この薬の多剤併用副作用』の編集方針を踏襲し,薬物情報集や薬物辞典としてではなく,実際の日常診療の現場で役立てて頂けるよう,見やすくかつ読みやすい構成を取り入れた.一口メモとして線で囲んである文章も必ずやお役に立つと考えている.
 現在多用されている薬物をほぼ網羅した心算であるが,収載できなかったものや市販後調査(post marketing surveillance,PMS)によって新たな副作用が生じた薬物などについては,幸いにして改訂版を上梓できる機会があれば追加する所存である.
 大変ご好評を頂いた姉妹書『この薬の多剤併用副作用』ともども本書をご愛読頂き,読者各位の日常診療のお役に立てば編者望外の喜びである.
 1995年12月1日 松田重三
◇アカルボースと腸閉塞様症状 …… 2(山内俊一)
◇L-アスパラギナーゼと血液凝固障害 …… 4(日笠 聡,垣下榮三)
◇アスピリンとライ症候群 …… 6(川杉和夫)
◇塩酸アミオダロンと角膜混濁 …… 8(後藤 晋)
◇アミノ配糖体系抗生物質と第VIII脳神経障害 …… 10(藤川 敏)
◇アムリノンと血小板減少症 …… 12(氏家幸子,東原正明)
◇アルプロスタジルとショック …… 14(合地研吾)
◇アルミニウム/マグネシウムと高Mg血症 …… 16(岡部紘明)
◇アロプリノールと再生不良性貧血 …… 22(奈良信雄)
◇アンジオテンシン変換酵素阻害薬と咳 …… 24(保嶋 実)
◇アンジオテンシン変換酵素阻害薬と味覚障害 …… 28(高橋敦彦,久代登志男,上松瀬勝男)
◇アンレキサノクスと皮疹 …… 32(落合豊子,森嶋隆文)
◇ポリスチレンスルホン酸型陽イオン交換樹脂と結腸壊死 …… 34(荻野和秀,久留一郎,重政千秋)
◇イソニアジドと肝障害 …… 36(猪狩 淳)
◇イプリフラボンと消化性潰瘍 …… 38(吉川敏一,高木智久,吉田憲正)
◇イプリフラボンと血中テオフィリン濃度上昇 …… 40(井上洋西,後藤心一)
◇インターフェロンとうつ症状 …… 44(松崎淳人)
◇インターフェロンと眼障害 …… 48(姜 和哲,江口秀一郎)
◇インターフェロンと糖尿病 …… 50(神田享勉,小林 功)
◇インターフェロンと発熱 …… 52(増田道彦,溝口秀昭)
◇インドメタシンと痙攣 …… 54(坂根 剛,永渕裕子)
◇インドメタシンと高カリウム血症 …… 56(浜崎 健,猪熊茂子)
◇インドメタシンファルネシルと大腸炎 …… 60(小林茂人)
◇イソプロピルウノプロストンと角膜障害 …… 62(岩崎 隆,澤 充)
◇ST合剤と低血糖 …… 64(河津捷二)
◇塩酸エタンブトールと視機能障害 …… 66(上甲 覚,沼賀二郎)
◇HMG-CoA還元酵素阻害薬とCK上昇,横紋筋融解症 …… 68(寺本民生)
◇H2受容体拮抗薬と錯乱,痙攣 …… 72(藤原研司,松井 淳)
◇H2受容体拮抗薬と汎血球減少症 …… 74(松井秀隆,恩地森一)
◇エチドロン酸二ナトリウムと消化性潰瘍 …… 78(中野 浩)
◇エノキサシンと光線過敏症 …… 80(岩田 充)
◇エリスロポエチンと高血圧性脳症 …… 82(松田重三)
◇カルシウム拮抗薬と血液凝固障害 …… 86(小原壮一,丸山征郎)
◇カルシウム拮抗薬とパーキンソニズム …… 90(保嶋 実)
◇カルシウム拮抗薬と頻脈 …… 92(八木 洋,榎本光信)
◇塩酸カルテオロール点眼液と気管支喘息 …… 96(後藤 晋)
◇カルバマゼピンと無菌性髄膜炎 …… 100(廣瀬源二郎)
◇ガンシクロビルと造血機能障害 …… 102(三間屋純一)
◇金製剤と間質性肺炎(肺線維症) …… 104(鏑木淳一)
◇金製剤と造血器障害 …… 108(飯塚秀樹)
◇塩酸クロニジンと見当識障害 …… 110(斎藤文雄,八木 洋,上松瀬勝男)
◇クロフィブラートとCPK上昇 …… 114(櫻林郁之介)
◇抗ヒト胸腺細胞ウマ免疫グロブリンと感染症悪化 …… 116(池田和真,原田実根)
◇静注用免疫グロブリン製剤と血栓・塞栓 …… 120(松田重三)
◇血液製剤とプリオン感染症 …… 124(新名主宏一,大勝洋祐)
◇血管造影剤と血圧低下,ショック …… 128(冨澤康子,遠藤真弘,小柳 仁)
◇血漿分画製剤とパルボウイルスB19感染 …… 132(西田幸世,藤村吉博)
◇フマル酸ケトチフェン点眼液と接触眼瞼皮膚炎 …… 136(岩崎 隆,澤 充)
◇ゲメプロスト腟坐薬と子宮破裂 …… 138(中林正雄)
◇高カロリー輸液とアシドーシス …… 140(桑原敦志,小林 功)
◇高カロリー輸液とウェルニッケ脳症 …… 142(玉井 浩)
◇抗コリン薬と尿閉 …… 144(佐仲雅樹,久山 泰)
◇抗生物質とビタミンK欠乏関連血液凝固障害 …… 146(下川高賢,斎藤英彦)
◇抗てんかん薬と免疫異常 …… 148(藤川 敏)
◇抗不整脈薬と心室頻拍,細動 …… 152(川口秀明)
◇コルヒチンと下痢 …… 156(藤森 新)
◇コレステロール胆石溶解薬と下痢 …… 158(石塚英夫)
◇柴胡剤と膀胱炎様症状 …… 160(盛岡頼子,佐藤 弘)
◇シクロスポリンと腎障害 …… 162(澤田滋正,大久保陸洋,武井正美)
◇シクロホスファミドと出血性膀胱炎 …… 164(奈良信雄)
◇シサプリドと喘息発作 …… 166(山木戸道郎)
◇G-CSFと間質性肺炎 …… 168(竹下明裕,大野竜三)
◇G-CSFと骨痛 …… 170(増田道彦,溝口秀昭)
◇シスプラチンと難聴 …… 172(藤沢紳哉,大野竜三)
◇ジソピラミドとQT延長 …… 174(川口秀明)
◇ジソピラミドと低血糖 …… 178(谷口正幸,多田紀夫)
◇ジダノシンと神経障害 …… 182(吉澤定子,岡 慎一)
◇ジドブジン(アジドチミジン)と大球性貧血 …… 184(後藤守孝,松田重三)
◇小柴胡湯と間質性肺炎 …… 188(寺澤捷年)
◇小柴胡湯と肝障害 …… 190(花輪壽彦)
◇クエン酸シルデナフィルと視覚障害 …… 192(三宅養三)
◇スピロノラクトンと女性化乳房 …… 196(八木 洋,田中秀之)
◇スルピリドと内分泌機能異常 …… 200(廣岡良文)
◇セフェム系抗生物質とジスルフィラム(アンタビュース)様作用 …… 204(猪狩 淳)
◇セフェム系抗生物質と間質性肺炎 …… 208(古田 格)
◇塩酸ダウノルビシンと心筋障害 …… 210(竹下明裕,大野竜三)
◇チアジド系利尿薬と高尿酸血症 …… 212(松本美富士)
◇塩酸チアプリドと悪性症候群 …… 216(廣瀬源二郎)
◇塩酸チアプリドと内分泌機能異常 …… 218(網野信行,泉 由紀子)
◇マレイン酸チモロール点眼剤と眼類天疱瘡 …… 220(吉富健志)
◇テオフィリンと高尿酸血症 …… 222(菅野 智,中川武正)
◇テオフィリンとβ刺激薬併用による効果向上,副作用増強 …… 224(渡邉直人,福田 健)
◇テトラサイクリン系抗生物質と歯牙の変色 …… 230(石橋 明)
◇メシル酸デフェロキサミンと眼障害 …… 234(石井陽子,中塚和夫)
◇テルフェナジンと不整脈 …… 236(菅野 智,中川武正)
◇トログリタゾンと重症肝障害 …… 238(為田靭彦)
◇ナサルプラーゼと出血 …… 242(長束一行)
◇メシル酸ナファモスタットと高カリウム血症 …… 244(小島敏弘,安田圭吾)
◇ニコチン酸と顔面紅潮 …… 248(岩本紀之,石川俊次)
◇ニフェジピンと急激な血行動態の変化 …… 250(南澤康介,梅村 敏)
◇ニフェジピンと血糖値上昇 …… 254(石上友章  ,梅村 敏)
◇ニフェジピンと歯肉増殖症 …… 256(内山隆久)
◇ニューキノロン系抗菌薬と痙攣 …… 258(金光敬二,嶋田甚五郎)
◇ニューキノロン系抗菌薬とテオフィリン代謝異常 …… 262(中野純一,大田 健)
◇ネビラピンと皮疹 …… 266(中村哲也)
◇非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)(酸性)と腎障害 …… 268(近藤啓文)
◇ビタミンAと頭痛,吐き気 …… 272(橋詰直孝)
◇ビタミンDと多尿 …… 274(轡田啓子,風間順一郎,下条文武)
◇硫酸ビンクリスチンと末梢神経障害 …… 276(朝長万左男)
◇フェニトインと歯肉増殖 …… 278(野倉一也,山本子)
◇フェノフィブラートと肝機能検査異常 …… 388(松田重三)
◇合成副腎皮質ステロイド製剤と心筋梗塞(心破裂) …… 282(鏑木淳一)
◇ブシラミンと天疱瘡疹 …… 286(原まさ子)
◇酢酸ブセレリンと低エストロゲン血症 …… 288(岩部富夫,原田 省,寺川直樹)
◇フルタミドと劇症肝炎 …… 290(山本晋一郎)
◇マレイン酸フルボキサミンと消化器症状 …… 292(田島 治)
◇塩酸プロカインアミドとSLE様症状 …… 296(岡田 純)
◇プロトンポンプインヒビターと間質性腎炎 …… 300(神谷康司,中林公正)
◇プロトンポンプインヒビターと血液障害 …… 302(中村孝司)
◇プロパゲルマニウムと肝炎の急性増悪 …… 304(藤原研司,松井 淳)
◇プロブコールとHDLの低下 …… 306(成宮 学)
◇ベザフィブラートとアナフィラキシー様症状 …… 308(白井厚治)
◇ベザフィブラートと横紋筋融解症 …… 310(岩崎雅文,多田紀夫)
◇ベザフィブラートと胆石症 …… 314(石井賢二)
◇β2刺激薬(気管支拡張薬,吸入)と振戦 …… 316(井上洋西)
◇β遮断薬と悪夢 …… 320(藤田孝之,梅村 敏)
◇β遮断薬と気管支攣縮 …… 324(芹澤良幹,福田 健)
◇β遮断薬と後腹膜線維症 …… 326(佐々木 享,中川雅夫)
◇β遮断薬と脂質代謝異常 …… 328(海老名俊明,梅村 敏)
◇β遮断薬と性機能低下 …… 332(高橋敦彦,久代登志男,上松瀬勝男)
◇β遮断薬とレイノー症状 …… 334(井上優子,竹内 勤)
◇ペニシラミンと重症筋無力症 …… 338(高崎芳成)
◇ペニシラミンと腎障害 …… 342(野島崇樹)
◇ペニシラミンと味覚異常 …… 346(無量井 泰,佐々木 毅)
◇ヘパリンカルシウムと血小板減少症 …… 350(川杉和夫)
◇ベラプロストナトリウムと出血傾向 …… 354(加瀬幸則,松田重三)
◇イセチオン酸ペンタミジンと低血糖症状 …… 358(合地研吾)
◇麻黄湯と胃部不快感 …… 360(大野修嗣)
◇麻黄附子細辛湯と肝障害 …… 364(金井成行)
◇ミソプロストールと下痢 …… 366(松田重三)
◇メチルドパとSLE様症状 …… 370(鈴木輝彦)
◇メトキサレンと発癌 …… 372(高田 実)
◇メトトレキサートと急性間質性肺炎 …… 374(大矢直子,山田秀裕)
◇輸血とGVHD …… 378(高松純樹)
◇リファンピシンと副腎クリーゼ …… 380(宮森 勇)
◇ロキシスロマイシンと血小板減少 …… 382(野村昌作,福原資郎)
◇ワルファリンカリウムと止血異常/ワルファリン症候群 …… 384(辻 肇,中川雅夫)

索引
和文…… 392
欧文…… 401

Mg負荷試験 …… 21
高Mg血症 …… 21
加齢性黄斑変性症とインターフェロン …… 49
COX-2選択的阻害薬 …… 59
インドメタシンファルネシル …… 61
光毒性反応の症状発現時期 …… 81
ドーピング …… 85
治療効果判定 …… 107
高血圧症に対する治療目的以外の使用法 …… 113
免疫グロブリン大量療法 …… 123
前立腺肥大症と急性尿閉 …… 145
UDCAと肝疾患 …… 159
メスナ …… 165
抗不整脈薬による高齢者および小児の治療 …… 177