序文
近年,Nutrition Support Team(NST)の実践による医療面,経済面での臨床効果が徐々に明らかにされ,その必要性が注目されていますが,適正かつ効率的なNSTの実践には,栄養管理に必要な基礎的,臨床的知識の把握は最重要課題といえます.
栄養管理があらゆる疾患に対する医療の基盤となり,患者さんのQOLや予後に大きな影響をおよぼすことは明らかですが,適切な栄養管理が十分になされていない,患者さんの栄養状態の細かな変化に十分に目が行き届かない,たとえ異常であることに気づいても栄養評価が不十分なために適切な管理に至っていないなど,日常の臨床ではさまざまな場面に遭遇します.
適切な栄養管理の実践には栄養スクリーニングの実施と正確な栄養評価が必要で,それに基づいて栄養管理計画を立てなければなりません.スクリーニングと栄養評価は定期的かつ継続して行い,患者さんの栄養状態の変化を早期に,正確に判断することが求められます.その結果,栄養管理計画ならびに栄養療法の変更を余儀なくされる場合も少なくありません.これらの作業を効率的かつ正確に行ううえで,チーム医療であるNSTは有効な手段と考えられます.
そこで本書では,NSTの実践のうえで最低限必要,あるいは必須と考えられる基礎的・臨床的知識についてまとめました.さらに,NST運営の現状と問題点,診療報酬改定とその対策,栄養療法の実践で必要な病態別栄養剤の知識と選択法,なかでも現在注目されているImmunonutritionの適応と問題点,酸化ストレスと抗酸化療法などについてわかりやすく解説しました.
本書が栄養管理の実践において皆さまのお役に立ち,かつ医療の質の向上につながれば幸いです.
2007年2月
田中芳明
推薦のことば
田中芳明先生に「本を書いたら」,と薦めたのは私です.田中先生の講演を聴き,その内容の豊富さに驚きました.正直いいますと,私自身は,講演の内容は理解しきれませんでした.そこで,自分がこの講演内容を理解したい,じっくりと本を読んで理解したいと思い,まったくの私自身の都合で「本を書いたら」と薦めたのです.
そして,すばらしい本が完成しました.ここまで深い知識をもってNSTを実践しているのだ,と感銘を受けました.ゲラを3回読んで「これまでのNSTに関する本に比べてレベルが高い!」という印象をもちました.基礎から臨床まで,という内容になっておりますが,その基礎も,理解しやすいよう,たくさんの図や表で工夫しています.大きな本って,基礎の部分は理解しにくいんですよね.最初の段階でつまずいて,最後まで読めなくなってしまうんですよね.この本は最後まで読めます.さらに,一人で書いているというところに意味があります.分担執筆では得られない,一貫した考え方で貫かれた本だということに意味があると思います.
NSTを実践するに際して,わかりやすい本はたくさん出ています.多くの方がNSTをはじめるときに読む本はたくさんあります.しかし,NSTとは,本来,専門性の高い知識をもって活動するチームであるべきです.わが国におけるNSTも,普及の段階は過ぎ,内容が求められる時代になりつつあります.NSTの初歩段階は過ぎ,栄養療法の専門チームとして活動している施設も増えています.そのチームが求めている,1ランク高いレベルの本が…これです.
私は,自信をもってこの「NST栄養管理パーフェクトガイド」を推薦します.きっと栄養療法専門チームの方々にとって役に立ちます.さらっとではなく,じっくりと読んで,日々の臨床に役立てていただきたいと思います.そんな本です.
医療法人川崎病院外科総括部長
日本静脈経腸栄養学会理事
井上善文
近年,Nutrition Support Team(NST)の実践による医療面,経済面での臨床効果が徐々に明らかにされ,その必要性が注目されていますが,適正かつ効率的なNSTの実践には,栄養管理に必要な基礎的,臨床的知識の把握は最重要課題といえます.
栄養管理があらゆる疾患に対する医療の基盤となり,患者さんのQOLや予後に大きな影響をおよぼすことは明らかですが,適切な栄養管理が十分になされていない,患者さんの栄養状態の細かな変化に十分に目が行き届かない,たとえ異常であることに気づいても栄養評価が不十分なために適切な管理に至っていないなど,日常の臨床ではさまざまな場面に遭遇します.
適切な栄養管理の実践には栄養スクリーニングの実施と正確な栄養評価が必要で,それに基づいて栄養管理計画を立てなければなりません.スクリーニングと栄養評価は定期的かつ継続して行い,患者さんの栄養状態の変化を早期に,正確に判断することが求められます.その結果,栄養管理計画ならびに栄養療法の変更を余儀なくされる場合も少なくありません.これらの作業を効率的かつ正確に行ううえで,チーム医療であるNSTは有効な手段と考えられます.
そこで本書では,NSTの実践のうえで最低限必要,あるいは必須と考えられる基礎的・臨床的知識についてまとめました.さらに,NST運営の現状と問題点,診療報酬改定とその対策,栄養療法の実践で必要な病態別栄養剤の知識と選択法,なかでも現在注目されているImmunonutritionの適応と問題点,酸化ストレスと抗酸化療法などについてわかりやすく解説しました.
本書が栄養管理の実践において皆さまのお役に立ち,かつ医療の質の向上につながれば幸いです.
2007年2月
田中芳明
推薦のことば
田中芳明先生に「本を書いたら」,と薦めたのは私です.田中先生の講演を聴き,その内容の豊富さに驚きました.正直いいますと,私自身は,講演の内容は理解しきれませんでした.そこで,自分がこの講演内容を理解したい,じっくりと本を読んで理解したいと思い,まったくの私自身の都合で「本を書いたら」と薦めたのです.
そして,すばらしい本が完成しました.ここまで深い知識をもってNSTを実践しているのだ,と感銘を受けました.ゲラを3回読んで「これまでのNSTに関する本に比べてレベルが高い!」という印象をもちました.基礎から臨床まで,という内容になっておりますが,その基礎も,理解しやすいよう,たくさんの図や表で工夫しています.大きな本って,基礎の部分は理解しにくいんですよね.最初の段階でつまずいて,最後まで読めなくなってしまうんですよね.この本は最後まで読めます.さらに,一人で書いているというところに意味があります.分担執筆では得られない,一貫した考え方で貫かれた本だということに意味があると思います.
NSTを実践するに際して,わかりやすい本はたくさん出ています.多くの方がNSTをはじめるときに読む本はたくさんあります.しかし,NSTとは,本来,専門性の高い知識をもって活動するチームであるべきです.わが国におけるNSTも,普及の段階は過ぎ,内容が求められる時代になりつつあります.NSTの初歩段階は過ぎ,栄養療法の専門チームとして活動している施設も増えています.そのチームが求めている,1ランク高いレベルの本が…これです.
私は,自信をもってこの「NST栄養管理パーフェクトガイド」を推薦します.きっと栄養療法専門チームの方々にとって役に立ちます.さらっとではなく,じっくりと読んで,日々の臨床に役立てていただきたいと思います.そんな本です.
医療法人川崎病院外科総括部長
日本静脈経腸栄養学会理事
井上善文
消化管機能の基礎と臨床
1.消化管の微細構造
2.三大栄養素の消化吸収のメカニズム
(a)消化吸収の概要
(b)トランスポーター(輸送担体)
(c)糖質の消化と吸収
(d)たんぱく質の消化と吸収
(e)脂肪の消化と吸収
1)刷子縁膜における吸収機構
2)細胞内輸送とTGの再合成
3)リポ蛋白の合成と細胞外への輸送
(f)中鎖脂肪(MCT)の消化吸収
3.栄養素の吸収における消化管の部位別特性(臨床栄養に必要な消化管の臨床解剖)
(a)ビタミンB12,葉酸の吸収
(b)胆汁酸塩の作用と吸収
(c)ビタミンB1(チアミン)
4.腸管の役割と腸管免疫
(a)生体防御作用:分泌型IgAの誘導とT細胞による生体防御
(b)経口免疫寛容
臨床栄養管理の実際(I)
1.栄養スクリーニングとアセスメント
(a)主観的包括的評価(SGA)
(b)客観的栄養評価(ODA)
2.栄養療法の選択と経静脈栄養,経腸栄養の特徴
(a)栄養療法の選択
(b)経静脈栄養,経腸栄養の特徴
3.処方設計
(a)エネルギー必要量の算出
(b)投与エネルギー組成の意義(糖質による蛋白節約効果とその限界)
(c)non protein kcal/N比を理解した処方設計(たんぱく質必要量)
1)侵襲時
2)小児,特殊病態としての腎不全
(d)脂肪の投与意義
4.栄養管理の問題点(TPN,EN)とその対策
(a)TPNの問題点
1)TPNに関連した種々の生体内障害
2)TPNに伴う肝障害の病因・病態
a)生体側因子
b)TPN側因子(投与量,投与組成,投与方法)
(b)EN管理における問題点
1)管理上の問題点(投与栄養剤の温度,濃度,浸透圧,投与速度,組成)
2)栄養剤,栄養器材の汚染
3)栄養チューブの留置上の問題点
5.腸管に対するメンテナンス
(a)大腸での消化吸収
(b)食物繊維の種類と特徴,腸管の栄養素
(c)水溶性食物繊維とその代謝産物である短鎖脂肪酸の効果
(d)腸内菌叢が腸管免疫に与える影響
(e)腸粘膜の健常度の指標となるdiamine oxidase(DAO)活性と各種病態下における測定意義
References
索引
1.消化管の微細構造
2.三大栄養素の消化吸収のメカニズム
(a)消化吸収の概要
(b)トランスポーター(輸送担体)
(c)糖質の消化と吸収
(d)たんぱく質の消化と吸収
(e)脂肪の消化と吸収
1)刷子縁膜における吸収機構
2)細胞内輸送とTGの再合成
3)リポ蛋白の合成と細胞外への輸送
(f)中鎖脂肪(MCT)の消化吸収
3.栄養素の吸収における消化管の部位別特性(臨床栄養に必要な消化管の臨床解剖)
(a)ビタミンB12,葉酸の吸収
(b)胆汁酸塩の作用と吸収
(c)ビタミンB1(チアミン)
4.腸管の役割と腸管免疫
(a)生体防御作用:分泌型IgAの誘導とT細胞による生体防御
(b)経口免疫寛容
臨床栄養管理の実際(I)
1.栄養スクリーニングとアセスメント
(a)主観的包括的評価(SGA)
(b)客観的栄養評価(ODA)
2.栄養療法の選択と経静脈栄養,経腸栄養の特徴
(a)栄養療法の選択
(b)経静脈栄養,経腸栄養の特徴
3.処方設計
(a)エネルギー必要量の算出
(b)投与エネルギー組成の意義(糖質による蛋白節約効果とその限界)
(c)non protein kcal/N比を理解した処方設計(たんぱく質必要量)
1)侵襲時
2)小児,特殊病態としての腎不全
(d)脂肪の投与意義
4.栄養管理の問題点(TPN,EN)とその対策
(a)TPNの問題点
1)TPNに関連した種々の生体内障害
2)TPNに伴う肝障害の病因・病態
a)生体側因子
b)TPN側因子(投与量,投与組成,投与方法)
(b)EN管理における問題点
1)管理上の問題点(投与栄養剤の温度,濃度,浸透圧,投与速度,組成)
2)栄養剤,栄養器材の汚染
3)栄養チューブの留置上の問題点
5.腸管に対するメンテナンス
(a)大腸での消化吸収
(b)食物繊維の種類と特徴,腸管の栄養素
(c)水溶性食物繊維とその代謝産物である短鎖脂肪酸の効果
(d)腸内菌叢が腸管免疫に与える影響
(e)腸粘膜の健常度の指標となるdiamine oxidase(DAO)活性と各種病態下における測定意義
References
索引