発刊に寄せて
この本ができるまでには,多くの年月がかかっています.才能と情熱にあふれ,先見の明を持った女性グループの努力によって完成に至りました.とても大切な教科書であるとともに,教科書以上の価値があります.なぜなら,本書はフォレンジック看護が日本において一つの専門領域であることを示すものだからです.
著者たちは,日本の女性たちのために正義の実現を促し,他のアジアの国々のモデルとなるより高い基準を作る開拓者です.保健医療の新しいモデルをもたらす展望を示すのみならず,患者中心ケアのSANE-SART(性暴力被害者支援看護師-性暴力対応チーム)モデルを実現しようとするものです.各人の犠牲や忍耐,多くの困難を乗り越える献身があったにちがいありません.
私が米国で創ってきたモデルを,日本の女性たちの求めに合う形で彼女たち自身が適用するという仕事にかたわらで協力できるのはとても光栄です.辛い出来事にあった女性たちが望みかつ必要とする支援やケアを女性自身が獲得できるように手伝い,それらを阻む多くの障壁を乗り越えるための展望と必要なコミットメントをする力を加納尚美さんと共著者のみなさんは持っていると私は確信しています.
私は,この本が保健医療従事者および日本における性暴力の被害者により良いケアを提供したいと考える人々にとって重要なガイドになることと確信します.また,彼女たちが女性とともに働く時,問題を正し,後に続く人たちのために,より良い世界を実現できるモデルとなることを期待しています.
Linda E Ledray
RN,SANE-A,Ph D,FAAN
Director SANE-SART Resource Service,Minneapolis,MN,USA
リンダ E リドリー
登録看護師,性暴力被害者支援看護師(成人),アメリカ看護アカデミーフェロー,米国ミネソタ州ミネアポリス市SANE-SART資源センター長
第2版 序
本書の初版発行から,9年が経ちました.この間に性暴力被害者支援をめぐる社会の大きな変化がありました.第一に,2010年に民間から始まった「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター」は,政府の第4次男女共同参画基本計画に盛り込まれ,2018年には全国都道府県に各1カ所ずつ開設されました.第二に,性暴力関連刑法の改正が110年ぶりに2017年,2023年となされました.
そのため,今回の改訂では,フォレンジック看護として押さえておきたいデータをアップデートし,基礎知識および考え方を加えています.
表紙は,こうしたフォレンジック看護の歩みをイメージできる絵を前回と同じく大久保シエリルさんに描いていただきました.大久保さんはニューメキシコ大学(美術教育及びアートセラピー専攻)の修士課程を修了し,アメリカアートセラピー協会公認アートセラピストの資格をお持ちです.アメリカではトラウマに苦しむ子どもたちへのアートセラピーを小児病棟で担当されたご経験があり,その後来日されてからは約30年間,つくば市や土浦市を中心にアートセラピーの啓発活動を行っています.米国政府の資金提供による筑波大学主催の「アートセラピー入門」講師も務められました.
さいごに,本書を手に取ってくださるすべての方々と一緒に,フォレンジック看護における人権が尊重される平和な社会へ向けて歩みを紡いでいけることを,心より願っております.
2025年8月 編者を代表して 加納尚美
序
日本におけるフォレンジック看護の歩みは,孤高の山々から雪解け水が湧き出て,細い流れがあちこちに生まれ,水が合流し川を作っている途上にあります.
例えば,私が性暴力被害者の看護に関わるようになったきっかけは,約20年前,一本の電話からでした.大病院の救急外来に勤める知人の看護師からで,彼女は「勤務中に強姦被害者が一人で来院し,自分も含めて誰もどのように対応していいかわからず,とにかく『あなたは悪くない』と伝えるのが精一杯だった」と話し,そして「今後どうしたらいいのか」と電話で私に相談してきたのでした.当時,私は大学のゼミで学生と勉強していて,その内容を看護系雑誌が取り上げ「性的暴力・レイプ被害者への看護」について教育の立場から論考をまとめたことはありましたが,現場の方に助言できるような実践経験はありませんでした.そこで,病院の有志数名の看護師が集まって「クローバーの会」という定期的な勉強会を始めました.目的はいたって明確で,現場で看護師としてできることを形にしたい,可能性をはっきりさせたいということでした.常に現場で看護師として何ができるのかを意識しながら,事例検討や,関連の勉強会への参加,講演会企画などを重ねていきました.
次第にわかってきたことは,自分たちの枠組みや偏見の見直し,性暴力のみならず様々な暴力の背景や,被害が起きた際に生じる特有の心身への影響等の理解がないと,被害者に会っていても気がつかないこと,医療者や看護師は司法や警察とは役割が違うこと等でした.さらに,会の活動を通じて,多くの先駆的な実践や研究をしている人々と出会いました.それから,NPOの立ち上げや運営に関わり,次第に具体的な実践活動につながり,国内外へと人の輪が広がっていきました.そして,これらの活動を含み,かつ,さらに幅と奥行きのある「フォレンジック看護学」という学問領域が,海外ではすでに実績が蓄積されているということを知りました.
そこで,日本でも看護師としてできること,フォレンジック看護が社会に貢献できる中身を作っていこうということで,心ある人たちとともに「日本フォレンジック看護学会」を立ち上げ,その一環としてこのテキストの企画案が生まれたのです.
本テキストの編集では,そのコンセプトづくりに議論を重ねてきました.日本では,残念ながら,未だ「性暴力被害者へのケア」は,ほとんどの看護師にとって「未知」な領域と言えます.なぜならば,これまで日本の看護師養成機関では,性暴力被害者支援,フォレンジック看護学はカリキュラムとして存在せず,ほとんど教授されてこなかったからです.
そこで,本書ではまず「すべての看護専門職・学生に学んでほしいエッセンスが書かれている本」であること,そして「実際の性暴力被害者支援の場面で役に立つ指南書」で「誰もが理解できる入門書」とすることを目指しました.本書はフォレンジック看護学原論,フォレンジック看護に必要となる重点知識,性暴力被害者支援の実践の3編構成で,理念・知識・実践を一連として学ぶことができます.本書が,性暴力被害者への全人的ケアを提供するための一助となることができれば幸いです.
また,これらの願いを込めて,表紙はアートセラピストであるシェリルさんに描いていただきました.本書に触れた方が少しでも癒されますように…
さいごに,この企画は,全く新しい看護の分野への挑戦に,医歯薬出版の皆様のご理解があり初めて実現いたしました.心から感謝するとともに,本書が,日本におけるフォレンジック看護の大きな河流をつくり,世界をつなぐ海へと注ぐためのひとつの道具になってくれることを期待しています.
この本が,ひとりでも多くの方々にご活用いただけましたら幸いです.
2016年6月 編者を代表して 加納尚美
この本ができるまでには,多くの年月がかかっています.才能と情熱にあふれ,先見の明を持った女性グループの努力によって完成に至りました.とても大切な教科書であるとともに,教科書以上の価値があります.なぜなら,本書はフォレンジック看護が日本において一つの専門領域であることを示すものだからです.
著者たちは,日本の女性たちのために正義の実現を促し,他のアジアの国々のモデルとなるより高い基準を作る開拓者です.保健医療の新しいモデルをもたらす展望を示すのみならず,患者中心ケアのSANE-SART(性暴力被害者支援看護師-性暴力対応チーム)モデルを実現しようとするものです.各人の犠牲や忍耐,多くの困難を乗り越える献身があったにちがいありません.
私が米国で創ってきたモデルを,日本の女性たちの求めに合う形で彼女たち自身が適用するという仕事にかたわらで協力できるのはとても光栄です.辛い出来事にあった女性たちが望みかつ必要とする支援やケアを女性自身が獲得できるように手伝い,それらを阻む多くの障壁を乗り越えるための展望と必要なコミットメントをする力を加納尚美さんと共著者のみなさんは持っていると私は確信しています.
私は,この本が保健医療従事者および日本における性暴力の被害者により良いケアを提供したいと考える人々にとって重要なガイドになることと確信します.また,彼女たちが女性とともに働く時,問題を正し,後に続く人たちのために,より良い世界を実現できるモデルとなることを期待しています.
Linda E Ledray
RN,SANE-A,Ph D,FAAN
Director SANE-SART Resource Service,Minneapolis,MN,USA
リンダ E リドリー
登録看護師,性暴力被害者支援看護師(成人),アメリカ看護アカデミーフェロー,米国ミネソタ州ミネアポリス市SANE-SART資源センター長
第2版 序
本書の初版発行から,9年が経ちました.この間に性暴力被害者支援をめぐる社会の大きな変化がありました.第一に,2010年に民間から始まった「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター」は,政府の第4次男女共同参画基本計画に盛り込まれ,2018年には全国都道府県に各1カ所ずつ開設されました.第二に,性暴力関連刑法の改正が110年ぶりに2017年,2023年となされました.
そのため,今回の改訂では,フォレンジック看護として押さえておきたいデータをアップデートし,基礎知識および考え方を加えています.
表紙は,こうしたフォレンジック看護の歩みをイメージできる絵を前回と同じく大久保シエリルさんに描いていただきました.大久保さんはニューメキシコ大学(美術教育及びアートセラピー専攻)の修士課程を修了し,アメリカアートセラピー協会公認アートセラピストの資格をお持ちです.アメリカではトラウマに苦しむ子どもたちへのアートセラピーを小児病棟で担当されたご経験があり,その後来日されてからは約30年間,つくば市や土浦市を中心にアートセラピーの啓発活動を行っています.米国政府の資金提供による筑波大学主催の「アートセラピー入門」講師も務められました.
さいごに,本書を手に取ってくださるすべての方々と一緒に,フォレンジック看護における人権が尊重される平和な社会へ向けて歩みを紡いでいけることを,心より願っております.
2025年8月 編者を代表して 加納尚美
序
日本におけるフォレンジック看護の歩みは,孤高の山々から雪解け水が湧き出て,細い流れがあちこちに生まれ,水が合流し川を作っている途上にあります.
例えば,私が性暴力被害者の看護に関わるようになったきっかけは,約20年前,一本の電話からでした.大病院の救急外来に勤める知人の看護師からで,彼女は「勤務中に強姦被害者が一人で来院し,自分も含めて誰もどのように対応していいかわからず,とにかく『あなたは悪くない』と伝えるのが精一杯だった」と話し,そして「今後どうしたらいいのか」と電話で私に相談してきたのでした.当時,私は大学のゼミで学生と勉強していて,その内容を看護系雑誌が取り上げ「性的暴力・レイプ被害者への看護」について教育の立場から論考をまとめたことはありましたが,現場の方に助言できるような実践経験はありませんでした.そこで,病院の有志数名の看護師が集まって「クローバーの会」という定期的な勉強会を始めました.目的はいたって明確で,現場で看護師としてできることを形にしたい,可能性をはっきりさせたいということでした.常に現場で看護師として何ができるのかを意識しながら,事例検討や,関連の勉強会への参加,講演会企画などを重ねていきました.
次第にわかってきたことは,自分たちの枠組みや偏見の見直し,性暴力のみならず様々な暴力の背景や,被害が起きた際に生じる特有の心身への影響等の理解がないと,被害者に会っていても気がつかないこと,医療者や看護師は司法や警察とは役割が違うこと等でした.さらに,会の活動を通じて,多くの先駆的な実践や研究をしている人々と出会いました.それから,NPOの立ち上げや運営に関わり,次第に具体的な実践活動につながり,国内外へと人の輪が広がっていきました.そして,これらの活動を含み,かつ,さらに幅と奥行きのある「フォレンジック看護学」という学問領域が,海外ではすでに実績が蓄積されているということを知りました.
そこで,日本でも看護師としてできること,フォレンジック看護が社会に貢献できる中身を作っていこうということで,心ある人たちとともに「日本フォレンジック看護学会」を立ち上げ,その一環としてこのテキストの企画案が生まれたのです.
本テキストの編集では,そのコンセプトづくりに議論を重ねてきました.日本では,残念ながら,未だ「性暴力被害者へのケア」は,ほとんどの看護師にとって「未知」な領域と言えます.なぜならば,これまで日本の看護師養成機関では,性暴力被害者支援,フォレンジック看護学はカリキュラムとして存在せず,ほとんど教授されてこなかったからです.
そこで,本書ではまず「すべての看護専門職・学生に学んでほしいエッセンスが書かれている本」であること,そして「実際の性暴力被害者支援の場面で役に立つ指南書」で「誰もが理解できる入門書」とすることを目指しました.本書はフォレンジック看護学原論,フォレンジック看護に必要となる重点知識,性暴力被害者支援の実践の3編構成で,理念・知識・実践を一連として学ぶことができます.本書が,性暴力被害者への全人的ケアを提供するための一助となることができれば幸いです.
また,これらの願いを込めて,表紙はアートセラピストであるシェリルさんに描いていただきました.本書に触れた方が少しでも癒されますように…
さいごに,この企画は,全く新しい看護の分野への挑戦に,医歯薬出版の皆様のご理解があり初めて実現いたしました.心から感謝するとともに,本書が,日本におけるフォレンジック看護の大きな河流をつくり,世界をつなぐ海へと注ぐためのひとつの道具になってくれることを期待しています.
この本が,ひとりでも多くの方々にご活用いただけましたら幸いです.
2016年6月 編者を代表して 加納尚美
第1編 フォレンジック看護学原論
1 フォレンジック看護学とは(加納尚美)
1)フォレンジック看護の定義
(1)フォレンジック看護とは何か
(2)臨床法医学とフォレンジック看護
2)フォレンジック看護の役割
3)フォレンジック看護の視点
4)性暴力被害者支援の国際的な活動
(1)米国の女性運動とレイプ・クライシス・センターの設立
(2)レイプ被害者の心理に関する研究
(3)世界各国での性暴力に関する法律改正の動き
(4)フォレンジック看護の世界の状況
2 フォレンジック看護の専門家(SANE)とは(加納尚美,三隅順子)
1)国際フォレンジック看護学会(IAFN)のSANEの教育ガイドライン
2)性暴力被害者支援における多職種の協働
(1)性暴力対応チーム(Sexual Assault Response Team;SART)とSANE
(2)日本でのSART研修
3)SANEに求められるもの・能力
(1)米国の例
(2)日本におけるSANE養成の取り組みから(三隅順子)
コラム:日本で初めてSANEが紹介された時(加納尚美)
コラム:SANE研修の経験で得られたもの(大屋夕希子)
3 健康問題としての性暴力(加納尚美)
1)性暴力とは何か
(1)WHOによる性暴力の定義
(2)類似・関連する用語の整理
2)性暴力とドメスティック・バイオレンス(DV)
3)ジェンダーと性暴力(世界の動向,歴史,人権)
(1)女性の人権獲得の経緯
(2)暴力と健康についての宣言
(3)リプロダクティブ・ヘルス/ライツの概念の提起
4)ヒューマンセクシュアリティ(Human Sexuality)の視点
(1)ヒューマンセクシュアリティについて
5)性暴力被害の実態とエコロジカルモデル
6)性暴力被害を巡る無理解と誤解
(1)「強姦(レイプ)神話」
(2)被害者と加害者との関係性
(3)被害者の抵抗
コラム:SANE-Jとして働いて(廣山奈津子)
4 日本における性暴力問題への取り組み(加納尚美)
1)性暴力をめぐる実態と対策
(1)性暴力に対する取り組みの始まり
(2)明らかにされる性暴力の実態
(3)被害者支援という法的枠組み
2)性暴力被害者支援の課題
(1)性暴力被害者支援の総合的取り組み
(2)性暴力加害者への対応と課題
コラム:DV被害者が看護師に求めること(坂場由美子)
5 性暴力被害を生み出す社会的背景(李 節子)
1)サイバー空間性暴力(sexual violence in cyberspace)とその対策
(1)蔓延する「サイバー空間性暴力」
(2)ポルノの氾濫と性暴力
(3)サイバー空間性暴力とセクシュアリティへの影響
(4)「サイバー空間性暴力」とリプロダクティブ・ヘルス/ライツ
(5)「児童ポルノ」と「リベンジポルノ」の取り締まり
(6)「サイバー空間性暴力」を予防するための対策
2)災害・紛争と性暴力
(1)災害と性暴力
(2)戦争・紛争と性暴力
コラム:災害における支援(山本 潤)
6 刑法における性暴力(性犯罪)規定の改正(角田由紀子)
はじめに
1)2017年及び2023年の刑法改正の内容
(1)2017年改正
(2)2023年改正
2)DV防止法の改正
3)残された今後の課題
(1)さらなる刑法改正が必要です
コラム:「同意のない性行為は犯罪」―不同意性交等罪が生まれるまでの道のり(山本 潤)
第2編 フォレンジック看護に必要となる重点知識
1 性暴力の身体的影響(藤田景子)
1)外傷
(1)外傷と治癒時間
(2)外傷の診察と記録
2)妊娠の可能性と予防
(1)妊娠しやすい時期の判断
(2)緊急避妊法の選択
3)人工妊娠中絶
4)性感染症(STI)の検査と予防
2 性暴力の精神的・心理的影響
1)性暴力によって生じる生活行動への影響(加納尚美)
(1)被害に遭うということ
(2)被害直後の動揺と混乱の中での対処
(3)数日から数週間,ときには数年にもわたる苦悩
2)性暴力とトラウマ(服部希恵)
(1)トラウマとは何か,トラウマを引き起こす出来事とは何か
(2)性暴力被害直後のトラウマ反応とその経過
(3)トラウマ反応の重症化,長期化に関連すると思われる要因
(4)子どものトラウマ反応
3)トラウマ記憶とPTSDの神経生理(長江美代子)
(1)トラウマ記憶の特徴
(2)トラウマ記憶の成立のメカニズム
(3)トラウマ記憶にかかわる大脳辺縁系と神経内分泌系
(4)トラウマの神経生理
4)トラウマによる認知と気分の変化(長江美代子)
(1)自己と感情の調整障害
(2)PTSDにおける高度な心理的機能の障害
5)トラウマ体験による症状(PTSD)(長江美代子)
(1)PTSDの診断基準とその症状
コラム:ポリヴェーガル理論(長江美代子)
3 特別な配慮が必要な対象者
1)子どもへの支援(沼口知恵子)
(1)子どもの性暴力被害の現状
(2)子どもの性暴力被害の特性と特性に合わせたケア
2)高齢者への支援(加納尚美・石田ユミ)
(1)高齢者への性的虐待の現状
(2)高齢者の性的虐待被害の特性と特性に合わせたケア
3)障害のある人への支援(古澤亜矢子)
(1)障害のある人々と性暴力被害の現状
(2)障害をもつ人の性暴力被害の特性と特性に合わせたケア
4)セクシュアル・マイノリティへの支援(藤井ひろみ)
5)外国人女性(移住者)への支援(李 節子)
(1)グローバル化社会における国際移住と性暴力被害者支援の対象
(2)外国人女性(移住者)の性暴力被害の特性(リスク因子)
(3)特に外国人女性(移住者)が生命の危険を伴う性暴力
4 性暴力被害者支援に必要な法律(柳井圭子)
1)性暴力被害者支援に関連する法律とその対応
(1)発見
(2)保護
(3)救済・支援
2)刑事・司法制度
(1)刑事手続について
(2)裁判過程
5 司法プロセスにおける医療の役割(城 祐一郎)
1)捜査段階における医療関係者の役割
(1)被害女性の心理に配慮すること
(2)被害女性の同意・承諾を得ておくこと
(3)性犯罪被害者に意識がない場合の問題
(4)採取方法について
(5)被害申告をためらう被害者への対応
(6)被害者と接した際の記録の作成及び保管
2)公判段階での医療関係者の役割
(1)序論
(2)検察官による証人テスト
(3)法廷での証言の際の留意事項
6 性暴力被害者支援におけるネットワーク機関(梶原祥子)
第3編 性暴力被害者対応の実践
1 急性期における医療機関での対応(家吉望み)
1)性暴力被害者対応における医療機関の役割
2)医療機関における対応・看護ケアの実際
3)看護展開(成人女性)
4)創傷記録・証拠採取チェックリスト(主田英之)
コラム:「二次加害」と「二次被害」(李 節子)
2 性暴力被害にあった子どもへの対応(家吉望み)
1)虐待の防止・発見
(1)子どもへの性暴力の定義
(2)看護として求められること
2)医療機関における対応
(1)医療機関受診時の流れと初期対応
(2)子どもに性暴力被害が与える影響と,子どもにみられる反応
3)看護ケアの実際
4)看護展開(子ども)
(1)アセスメントの視点
(2)子どもへの性暴力被害事例
コラム:性的虐待を受けた子どもの看護(今井 梓)
コラム:性暴力を起こさないために「性と生」について学ぶこと(鈴木琴子)
コラム:親への予防プログラム(宮澤純子)
3 地域における性暴力被害者支援
1)保健師としての犯罪被害者等支援活動(稲吉久乃)
(1)行政の犯罪被害相談の概要
(2)犯罪被害者支援窓口の支援の実際
2)SC活動と外傷サーベイランス(山田典子)
(1)コミュニティ単位での暴力予防
(2)外傷サーベイランスの構築
(3)SC外傷サーベイランス委員会の構成と役割
(4)SCの取り組みの実際
コラム:警察とSANEとの連携(山田典子)
4 性暴力被害者へのこころのケア(米山奈奈子)
1)こころのケアの重要性
2)性暴力被害者とアディクション
3)代理受傷
(1)支援者側の代理受傷
(2)支援者のセルフケア体制
コラム:性暴力被害者の声〜医療者に望むこと〜
コラム:トラウマインフォームドケア(米山奈奈子)
索引
1 フォレンジック看護学とは(加納尚美)
1)フォレンジック看護の定義
(1)フォレンジック看護とは何か
(2)臨床法医学とフォレンジック看護
2)フォレンジック看護の役割
3)フォレンジック看護の視点
4)性暴力被害者支援の国際的な活動
(1)米国の女性運動とレイプ・クライシス・センターの設立
(2)レイプ被害者の心理に関する研究
(3)世界各国での性暴力に関する法律改正の動き
(4)フォレンジック看護の世界の状況
2 フォレンジック看護の専門家(SANE)とは(加納尚美,三隅順子)
1)国際フォレンジック看護学会(IAFN)のSANEの教育ガイドライン
2)性暴力被害者支援における多職種の協働
(1)性暴力対応チーム(Sexual Assault Response Team;SART)とSANE
(2)日本でのSART研修
3)SANEに求められるもの・能力
(1)米国の例
(2)日本におけるSANE養成の取り組みから(三隅順子)
コラム:日本で初めてSANEが紹介された時(加納尚美)
コラム:SANE研修の経験で得られたもの(大屋夕希子)
3 健康問題としての性暴力(加納尚美)
1)性暴力とは何か
(1)WHOによる性暴力の定義
(2)類似・関連する用語の整理
2)性暴力とドメスティック・バイオレンス(DV)
3)ジェンダーと性暴力(世界の動向,歴史,人権)
(1)女性の人権獲得の経緯
(2)暴力と健康についての宣言
(3)リプロダクティブ・ヘルス/ライツの概念の提起
4)ヒューマンセクシュアリティ(Human Sexuality)の視点
(1)ヒューマンセクシュアリティについて
5)性暴力被害の実態とエコロジカルモデル
6)性暴力被害を巡る無理解と誤解
(1)「強姦(レイプ)神話」
(2)被害者と加害者との関係性
(3)被害者の抵抗
コラム:SANE-Jとして働いて(廣山奈津子)
4 日本における性暴力問題への取り組み(加納尚美)
1)性暴力をめぐる実態と対策
(1)性暴力に対する取り組みの始まり
(2)明らかにされる性暴力の実態
(3)被害者支援という法的枠組み
2)性暴力被害者支援の課題
(1)性暴力被害者支援の総合的取り組み
(2)性暴力加害者への対応と課題
コラム:DV被害者が看護師に求めること(坂場由美子)
5 性暴力被害を生み出す社会的背景(李 節子)
1)サイバー空間性暴力(sexual violence in cyberspace)とその対策
(1)蔓延する「サイバー空間性暴力」
(2)ポルノの氾濫と性暴力
(3)サイバー空間性暴力とセクシュアリティへの影響
(4)「サイバー空間性暴力」とリプロダクティブ・ヘルス/ライツ
(5)「児童ポルノ」と「リベンジポルノ」の取り締まり
(6)「サイバー空間性暴力」を予防するための対策
2)災害・紛争と性暴力
(1)災害と性暴力
(2)戦争・紛争と性暴力
コラム:災害における支援(山本 潤)
6 刑法における性暴力(性犯罪)規定の改正(角田由紀子)
はじめに
1)2017年及び2023年の刑法改正の内容
(1)2017年改正
(2)2023年改正
2)DV防止法の改正
3)残された今後の課題
(1)さらなる刑法改正が必要です
コラム:「同意のない性行為は犯罪」―不同意性交等罪が生まれるまでの道のり(山本 潤)
第2編 フォレンジック看護に必要となる重点知識
1 性暴力の身体的影響(藤田景子)
1)外傷
(1)外傷と治癒時間
(2)外傷の診察と記録
2)妊娠の可能性と予防
(1)妊娠しやすい時期の判断
(2)緊急避妊法の選択
3)人工妊娠中絶
4)性感染症(STI)の検査と予防
2 性暴力の精神的・心理的影響
1)性暴力によって生じる生活行動への影響(加納尚美)
(1)被害に遭うということ
(2)被害直後の動揺と混乱の中での対処
(3)数日から数週間,ときには数年にもわたる苦悩
2)性暴力とトラウマ(服部希恵)
(1)トラウマとは何か,トラウマを引き起こす出来事とは何か
(2)性暴力被害直後のトラウマ反応とその経過
(3)トラウマ反応の重症化,長期化に関連すると思われる要因
(4)子どものトラウマ反応
3)トラウマ記憶とPTSDの神経生理(長江美代子)
(1)トラウマ記憶の特徴
(2)トラウマ記憶の成立のメカニズム
(3)トラウマ記憶にかかわる大脳辺縁系と神経内分泌系
(4)トラウマの神経生理
4)トラウマによる認知と気分の変化(長江美代子)
(1)自己と感情の調整障害
(2)PTSDにおける高度な心理的機能の障害
5)トラウマ体験による症状(PTSD)(長江美代子)
(1)PTSDの診断基準とその症状
コラム:ポリヴェーガル理論(長江美代子)
3 特別な配慮が必要な対象者
1)子どもへの支援(沼口知恵子)
(1)子どもの性暴力被害の現状
(2)子どもの性暴力被害の特性と特性に合わせたケア
2)高齢者への支援(加納尚美・石田ユミ)
(1)高齢者への性的虐待の現状
(2)高齢者の性的虐待被害の特性と特性に合わせたケア
3)障害のある人への支援(古澤亜矢子)
(1)障害のある人々と性暴力被害の現状
(2)障害をもつ人の性暴力被害の特性と特性に合わせたケア
4)セクシュアル・マイノリティへの支援(藤井ひろみ)
5)外国人女性(移住者)への支援(李 節子)
(1)グローバル化社会における国際移住と性暴力被害者支援の対象
(2)外国人女性(移住者)の性暴力被害の特性(リスク因子)
(3)特に外国人女性(移住者)が生命の危険を伴う性暴力
4 性暴力被害者支援に必要な法律(柳井圭子)
1)性暴力被害者支援に関連する法律とその対応
(1)発見
(2)保護
(3)救済・支援
2)刑事・司法制度
(1)刑事手続について
(2)裁判過程
5 司法プロセスにおける医療の役割(城 祐一郎)
1)捜査段階における医療関係者の役割
(1)被害女性の心理に配慮すること
(2)被害女性の同意・承諾を得ておくこと
(3)性犯罪被害者に意識がない場合の問題
(4)採取方法について
(5)被害申告をためらう被害者への対応
(6)被害者と接した際の記録の作成及び保管
2)公判段階での医療関係者の役割
(1)序論
(2)検察官による証人テスト
(3)法廷での証言の際の留意事項
6 性暴力被害者支援におけるネットワーク機関(梶原祥子)
第3編 性暴力被害者対応の実践
1 急性期における医療機関での対応(家吉望み)
1)性暴力被害者対応における医療機関の役割
2)医療機関における対応・看護ケアの実際
3)看護展開(成人女性)
4)創傷記録・証拠採取チェックリスト(主田英之)
コラム:「二次加害」と「二次被害」(李 節子)
2 性暴力被害にあった子どもへの対応(家吉望み)
1)虐待の防止・発見
(1)子どもへの性暴力の定義
(2)看護として求められること
2)医療機関における対応
(1)医療機関受診時の流れと初期対応
(2)子どもに性暴力被害が与える影響と,子どもにみられる反応
3)看護ケアの実際
4)看護展開(子ども)
(1)アセスメントの視点
(2)子どもへの性暴力被害事例
コラム:性的虐待を受けた子どもの看護(今井 梓)
コラム:性暴力を起こさないために「性と生」について学ぶこと(鈴木琴子)
コラム:親への予防プログラム(宮澤純子)
3 地域における性暴力被害者支援
1)保健師としての犯罪被害者等支援活動(稲吉久乃)
(1)行政の犯罪被害相談の概要
(2)犯罪被害者支援窓口の支援の実際
2)SC活動と外傷サーベイランス(山田典子)
(1)コミュニティ単位での暴力予防
(2)外傷サーベイランスの構築
(3)SC外傷サーベイランス委員会の構成と役割
(4)SCの取り組みの実際
コラム:警察とSANEとの連携(山田典子)
4 性暴力被害者へのこころのケア(米山奈奈子)
1)こころのケアの重要性
2)性暴力被害者とアディクション
3)代理受傷
(1)支援者側の代理受傷
(2)支援者のセルフケア体制
コラム:性暴力被害者の声〜医療者に望むこと〜
コラム:トラウマインフォームドケア(米山奈奈子)
索引